ハイスクールD×W   作:ジャッキー007

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新年、あけましておめでとうございました。
新しい職場での仕事の都合、自宅にいる時間が殆どなくスマホで書き、途中推敲してたらえらく遅くなってしまいました。


拳で語る送別会 下

午前中の教室は、まるで通夜のように静まりかえっていた。

というのも…

「大神…お前、熱でもあるのか?」

普段サボってばかりの俺が、席について授業を聞いてるからだ。

先公は唖然とした表情で、周りの奴らはこの世の終わりを目の当たりにしたような目で俺を見てやがる。

「…テメェは授業をしてんのか?それとも喧嘩売ってんのか、あ?」

ビキィッ!と音が鳴らんばかりに額に青筋を浮かべて睨みつけると、慌てて先公が板書を始め授業が再開する。

そんな中…俺は、今朝の事を思い出す。

 

 

「真人さん!」

下駄箱で靴を履き替えてると、横からデカい声が聞こえてきた。

視線を向けた先には、赤いTシャツの上から短ランを羽織り、髪を逆立てた一年坊が居た。

「…んだよ、ワン公。朝から吠えんなや」

そう言って、ウンザリとしながら俺は一年坊…五十嵐小太郎を見た。

此奴と出会ったのは、まだ一年坊の頃…ゲーセンの裏手の路地だ。

その頃、俺はタバコを切らすはゲームで負けるはでイラついていた。

そんな時…他所の馬鹿にカツアゲをされていたのに遭遇したって訳だ。

 

そいつらをボコって、財布から幾らか巻き上げて迷惑料としてワン公に渡して終わった筈だったんだがな…。

此奴は、俺が通う高校を調べ、自前で用意した短ランを羽織り。

眼鏡をコンタクトに変え、下ろしていた髪を逆立て俺に舎弟宣言してきやがった。

 

「で、何だよ」

慌てた様子のワン公に呆れながら問いかけると、頭突きをかまさんばかりに詰め寄ってきた。

「真人さん…学校を辞めるって、本当なんですか?!」

俺は、ワン公の言ってきた言葉の内容に目を見開いた。

俺が学校を辞め、駒王に移る事は祖父が昨夜連絡したばかりで、まだ誰にも話していない内容だ。

何故ワン公がそれを…そう考えたとき、俺の脳裏に一人の男が過ぎった。

「…アイツから聞いたのか」

小さく、ため息まじりに呟くと、ワン公は確信を得たのか信じられないとばかりに身体を震わせた。

「そんな…どうして、急すぎますよ!」

 

ワン公の糾弾も無理ないが…俺だって、話を聞いたのは今朝だし反論の余地もない。

「仕方ねぇだろ、もう決まったんだよ」

そう言って、教室に向かおうと踵を返した時

俺は、俯いたまま拳を握るワン公の姿を見た。

 

 

 

 

時間は昼を過ぎ、放課後。

机に入れっぱなしにしていた教科書を全部カバンに放り込んで帰ろうとしていた時だった。

「大神真人!」

教室の出入り口から、俺を呼ぶ声が聞こえる。

俺や、残っていた生徒が視線を向けた先にはワン公の姿があった。

いや…正確にはワン公だけじゃなく、他にも3人居る。

長ランを羽織った蛮カラにブレザーを着崩した優男、それと…学ランを几帳面に着こなした男だ。

 

「マジかよ…4強が揃ったぞ」

出入り口を見ていた隣の野郎が、小さく呟く。

4強…それは、この学校で囁かれている呼名だ。

「最強の生徒会長」大蛇一眞

「平成の番長」須藤虎徹

「シャケ」…荒巻至

そして…俺、「銀狼」大神真人の4人を指している。

 

「…何の用だ」

「何…直ぐに終わらせる」

怪訝な表情を浮かべる俺に須藤が歩み寄るや否や…。

「…憤っ!」

豪快に、俺の顔面目掛けて振り抜いた。

 

 

 

 

市立九頭龍学園高校…県内有数の進学校であり「不良の巣窟」としても有名な男女共学校。

私、ソーナ・シトリーは生徒会副会長にして「女王」の森羅椿姫と学園の校門前に立っていた。

「…大神君、遅いですね」

「会長…まさか、帰ってしまったのでは?」

時間になっても現れない大神君の事を気にする私に椿姫が眼鏡をかけ直しながら問いかける。

 

大神君の事は少し素行は悪いけど、筋は通す子だと説明しましたが、椿姫は彼が持つ「不良」としての印象が好ましくない様子だ。

そんな時だった。

「オイ、戦車と銀狼がタイマン張ってんぞ!」

校内で大きな声をあげる男子生徒の声が、私達の耳に入った。

戦車と銀狼…私達に過ぎったのは、新しく眷属になった一人の少年の姿でした。

「椿姫!」

「はい!」

互いに顔を見合わせ、驚く生徒に目もくれず現場であろうグラウンドへと走った。

 

 

 

 

 

 

「がァ…っ!?」

須藤にぶん殴られ、踏ん張りの効かなかった俺は、窓ガラスをぶち破り背中から地面へと落下した。

肺から空気を一気に吐き出しむせ込む俺だが…そんなの、須藤は待っちゃくれねぇ。

割れた窓ガラスを気にもせず棧に足をかけ、外へ躍り出た。

落下する勢いに抵抗するどころか右腕を振り絞る。

「チィッ!」

次に来る行動、位置を察知して無理やり身体を起こし飛び退いた直後

ズドォォオン!

宛ら、砲弾が着弾するような音が響くのと同時に土煙が舞った。

 

「いきなりぶん殴って来やがって…随分な挨拶じゃねぇか。なぁ、須藤ォ!」

口元に流れる血を手で拭い、俺は砂埃の中に居るだろう須藤虎徹へ吼える。

だが、砂埃が晴れて姿を現した須藤の奴は、立ったまま自分の拳を見つめていた。

「…たった数日で随分と硬くなったではないか、大神」

やがて、須藤は小さく呟きながら俺を見据える。

その目は、これまで喧嘩していた時とは違う…腹の底まで見透そうとする目だった。

「さてね…コッチにも事情ってのがあるんだ。知りたきゃ俺から吐かせてみろや!」

俺を殴った感触から何かを感じたんだろうが…生憎、全部話せる内容じゃねぇ。

肩を回し拳を構えると、俺は須藤に向かって走り、鳩尾目掛けて拳を叩き込んだ。

 

「ぐっ…!」

須藤の拳には劣るがデカい音と共に、鳩尾へ拳が減り込む。

その衝撃に須藤は苦悶の表情を浮かべるが、即座に構えをとり拳を叩き込んで来る。

「っ、舐めんな…!」

教室ではなす術なく吹き飛ばされたが、今度は地面を強く踏みしめる事で踏ん張り、返すように顔面へ拳を叩き込む。

こうして…俺と須藤の、九頭龍での最後の喧嘩が幕を開けた。

 

 

 

 

グラウンドへと入っていた私と森羅の前へ、沢山の人だかりが見えた。

それは、誰かを囲むように円になっているようで、直ぐに大神君がこの先にいることが予想出来た。

「っ、すみません…通して下さい…!」

「会長?!」

人を掻き分け中に進む私を見て、椿姫が慌ててついてくる。

10人くらいでしょうか…人を掻き分け、漸く円の中心へ着いた私達は目を見開いた。

 

「っ、オラァ…!」

「…!ぬんっ!」

そこに居たのは、大神君と…裾を長く改造した制服を着た生徒の姿。

二人は、互いにボロボロになりながらも互いに一歩も退かず、下がるどころか前に出て殴り合う。

右の頬を殴れば左の頬を。

鳩尾を殴れば横腹を。

腹部へ膝蹴りをすれば横っ面に回し蹴りを。

顔は痣だらけになり、殴り合う度に血を吐く。

膝は笑い、力を抜けば崩れ落ちそうなくらいにボロボロになりながら、其れでもなお、殴り合いは激しさを増していた。

「、椿姫…止めますよ」

「はい、か「其れは止めて貰おうか、支取会長殿」?!」

目の前で繰り広げられる戦いに拳を握り、椿姫と止めに入ろうとした時…私達の横から待ったがかかった。

 

其処に居たのは、学生服を校則通りに着こなした男子生徒とブレザーを着崩した生徒

そして…裾を短く改造した制服を着た男の子。

「貴方は…」

「この学校の生徒会長、大蛇一眞だ」

そう言って、彼…大蛇君は私達の前に立ち塞がる。

「どいて下さい…生徒会長ならば、生徒の喧嘩を止めるべきでしょう?」

「確かにそうだな…だが、コレは大神の自主退学に関係している」

私の言葉に小さく頷く大蛇君の呟きに、小さく首を傾げた。

あの喧嘩に…大神君の事が関係している。

その言葉の意味が、いまいち理解出来なかった。

「大蛇の言葉に最初は俺も須藤も半信半疑だったんだがな…実際に見ると、良く分かったぜ」

小さく首を傾げた私を見て、大蛇君の隣に居る青年…荒巻君が面白そうに笑みを浮かべる。

「…いったい、何が言いたいんですか。貴方たちは」

其れが面白くないのか、後ろに控えていた椿姫が表情を険しくして彼等を睨みつける。

 

「…あの一見普通の殴り合いに見える喧嘩だが、蛮カラ…須藤虎徹は本気を出している」

「…あの、もっと解るように説明して頂けませんか?」

大蛇君の言葉に、私達の疑問は増えるばかり。

無意識に語気が強くなり始めた時、彼等と一緒にいた男の子が口を開いた。

「…駒王じゃ知られてないでしょうけど…虎徹さんの本気の一発をマトモに受けて、立てる人は0なんです」

「比喩でも誇張でもなく、『コンクリートを打ち抜いて、厚さ10cmの鉄板を凹ませる』からな…須藤の本気の拳は」

男の子の言葉に続き、煙草を咥え呟く荒巻君の言葉に、私達は耳を疑った。

只の人間の高校生が、コンクリートを砕く威力のパンチを放てるという事実は、到底信じられる内容ではない。

けれど…喧嘩を見据える3人の目は冗談どころか真剣そのもの。

其れが、私達に強い信憑性を持たせた。

 

「その圧倒的な火力と持ち前の耐久性、力強さから戦車(ティーガー)と呼ばれる須藤虎徹だが…奴と互角に渡り合えている大神真人も異常だ」

「そうだよな…『数日前まで2発で堕ちてた大神が10発耐えるどころか、互角に殴り合ってやがる』」

彼等の呟きを聞いていた私達の驚きは増し、更には背中に冷たい汗が流れる。

彼等…特に、大蛇君と荒巻君の二人は、目の前の喧嘩を見ただけで大神君に起きた『目に見えない異変』に気付いている。

「それが、あの男が退学し駒王に入る理由なのだろう、支取会長?」

そう言って私を見据える大蛇君の眼差しは鋭く…研ぎ澄まされた刃のようだった。

私が口を開こうとした瞬間、津波のような歓声が響く。

その声に導かれるように視線を向けた先には

互いの拳を顔に叩き付け、崩れ落ちる二人の姿があった。

 

 

 

 

 

「っ、ハァ…どうした、大神。膝が笑っているぞ」

「ゼェ…ッ、ゼェ…ッ。抜かせや須藤、テメェも足がおぼついてねぇじゃねぇか」

互いに本気で拳と蹴りの応酬を繰り返した俺たちは、正直立ってるのがやっとの状態だった。

顔面は痣だらけで腫れ上がり、口や瞼を切ったのか血が流れ出ている。

学ランは砂で汚れて汚ぇし、所々破れそうな箇所もあった。

力を抜いたらどっちもぶっ倒れんのは間違いない。

だが…俺たちは、意地で立ち、殴り合った。

「…強くなったな、大神」

 

不意に、須藤が下手くそな笑みを作って呟く。

「数日前まで一発貰えば白目を剥いていたお前が、今や互角に殴り合えるとはな…彼処に居る、彼女達が関わっているのだろう?」

そう言って、何時の間にか後ろにいた支取を見る須藤に言葉が詰まった。

殴り合いを始めた時は頭に血が上ってたから気付けなかったが、須藤の奴は最初から『本気で』俺を殴っていた。

周りの連中は兎も角、毎回殴り合っていたコイツや大蛇と荒巻、それを見続けてきたワン公はとっくに気付いた筈だ。

今、俺に起きている異変の事を。

「…で?そうだと知って、喧嘩を止めるか?」

「…分かりきっている事を聞くな、大神よ」

口では話さなかったが、バレちまったもんは仕方ない。

開き直って問いかける俺に、須藤は先程とは違う、獰猛な笑みを浮かべて拳を構える。

「だよなぁ…!」

返すように牙を剥き出しにして笑うと、俺たちは力強く立ち上がり、向かい合う。

 

他の連中がどうかは知らねぇが、俺たちの喧嘩には、一つの決まりがある。

それは、どちらかが倒れるまでが喧嘩という、単純なルールだ。

「オォォォォァア!」

「怒ぅぅん!」

互いに今持てる力を込め、一気に拳を繰り出す。

放つ拳も、繰り出す速度も、顔面に叩き込むのも同時。

そして…ぶっ倒れるのも、同時だった。

 

 

「大神君!」

俺たちの喧嘩が終わり喧騒とする中、支取ともう一人…知らない奴が俺の方へと走ってくる。

「おぅ…支取じゃねぇか。時間に行けなくて悪ぃな」

「そんな事を言ってる場合ですか?!」

仰向けにぶっ倒れたまま煙草を咥える俺を見て如何にも怒髪天を突く勢いで怒る支取。

その姿を見て、もう一人の奴が呆れたように溜息を吐いてやがる。

「で…次はお前らか?」

紫煙を吐きながら視線を向けると、大蛇達がゆっくりと歩いてくるのが見える。

それを見て支取達が少し身構えるが…。

「いや、貴様が退学を選んだ理由は解ったのだから十分だ。それに、万全でない貴様とやってもつまらん」

須藤に手を貸し起こしながら、大蛇は首を横に振った。

ただ、そう呟き大蛇は俺を見た。

「強くなったと思い上がるなよ?今の強さに胡座を掻いていたら、その足…掬って噛み砕いてくれる」

そう言って、他の3人を連れ校舎へと入って行くのを見届け…俺はため息混じりに紫煙を吐いた。

こうして…俺の最後の登校は、幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

其れから数日、支取に命令され自宅での謹慎という名の療養を終えた俺は駒王へと足を運んでいた。

「…結局、私が渡した制服は着なかったんですね」

律儀に家まで迎えに来た支取と二人で。

「コイツが慣れてるからな、今更他の制服なんて着ても似合わねぇよ」

横目で睨んでくる支取に言葉を返しながら、煙草代わりにパイポを咥えて溜息を吐く。

コレは、駒王でこれまでの様に喫煙出来んだろうと爺と支取が渡してきた物だ。

 

途中、周りから変なもんを見る様な目で見られながらも他愛ない話をして歩き…駒王の校門に差し掛かった時だった。

「遅いぞ、大神真人」

此処にいる筈のねぇ奴…大蛇が、腕を組んで待ち構えていた。

大蛇だけじゃねぇ。須藤や荒巻、ワン公までいやがる。

須藤は相変わらずの蛮カラ姿だし、ワン公は前と同じ短ランだ。

だが…問題は残る二人にある。

「テメェら…なんだ、その格好」

そう、大蛇と荒巻は、駒王の制服に身を包んでいた。

大蛇は生真面目に校則通りキッチリと制服を着て、荒巻は前の様に緩く着崩し、袖を捲くっている。

「見て分からないか?俺たちも今日から、駒王に編入する事になった」

「あぁ?!聞いてねぇぞ、んな事!」

軽く鼻で笑いながらさらっと抜かしてきやがる荒巻に思わず怒鳴る。

支取も知らなかったようで、俺の隣で目を見開いている。

「これからもよろしくお願いします、真人さん!支取の姐さん!」

ワン公はワン公で俺たちの前に来るや否や直角に頭を下げてきやがる始末だ。

 

こうして、俺の駒王での新しい生活が始まったんだが…解った事が一つある。

これからも、俺は退屈しねぇ日々を送れるみたいだ。

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