最後の更新から遅れてすみませんでした。
今回は日常?パートです
あと、今作のEDは内に宿る獣というイメージで
「ARMOUR ZONE」でお願いします
駒王学園2年のとある教室。
その中の一角は、朝から元気だった。
「おい、イッセー聞いたか?教室学校に編入生が来るんだってよ!」
「なに、それは本当か?!」
長身の坊主頭から、イッセーと呼ばれた少年…兵藤一誠は思わず話に食い付く。
というのも、駒王学園はつい数年前に共学化した女子高で、通っている女子生徒は結構レベルが高い。
そんな学校に編入生が入る…変態3人衆と揶揄される一誠達の妄想が捗らない訳がなかった。
「たまたま職員室の前を通った時に聞いたんだがな、2年に4人、1年に1人入るらしい」
そう言って、小太りの眼鏡を掛けた男子…元浜の言葉に、3人の妄想話はヒートアップする。
…が、熱くなるのはその一角のみで話を聞いていた女子達の視線はツンドラ並の冷たさを帯びたものへと変わっている。
「おーい、SHR始めるぞ〜」
妄想話が更に熱くなろうとした時、担任が入ってきた事で教室の空気は元に戻り、各々席につく。
「まぁ、一部は知ってるかもしれないが今日は、このクラスに編入生が入る」
担任の言葉に、ガタンッと音を立て立ち上がる生徒。
言わずもがな、一誠、松田、元浜の3人だ。
「先生、編入生は女子ですか?!」
「残念だったな、男 だ」
一誠の言葉に慣れてしまったのか、あしらう様に答える担任の姿に3人は渋々と椅子に座る。
「んだよ、ヤローか」
「萎えたな、後でお宝本でも読もう」
「イケメンだったら抹殺してくれる」
その態度に女子達は台所に出た黒光りするヤツを見る様な視線を向け、担任は大きく溜息を吐いた。
「お前らな…まぁ良い、入って来なさい」
『…うっす』
担任の言葉に促され、扉の向こうから聞こえた声に生徒は驚いた。
何せ、声の高さから容易に男だと想像出来たからだ。
特に、一誠達の反応は凄まじかった。
目を見開き、額から滝のように汗を流している。
体の震えを抑えながら、油の切れたブリキ細工のように開かれた扉へ首を向け…大きく口を開いた。
教室に入ってきた生徒を見て感じたのは、恐怖と既視感。
頭髪は根元から銀色に染まり、気怠げに開かれた目からは茶色の瞳が覗いている。
学校規定の制服ではない、男子用の制服…所謂学ランの前は全開になり、中に着ている白のTシャツが見えている。
女子生徒はその出で立ちに、一誠達は生徒そのものに恐怖を覚えた。
「九頭龍学園から来た大神真人だ…野郎で残念だったな、馬鹿ども。積もる話もあるしよ…後で体育館裏まで面貸せや」
朝に起きた馬鹿どもとの顔合わせから時間が流れ、昼休み。
俺たち元九頭龍の生徒は体育館裏に屯していた。
「まさか、貴様が兵藤一誠達と同じクラスになるとはな」
「知らねぇ奴らに囲まれるよかマシだ」
そう言って弁当をつつく大蛇は…俺の尻に敷かれ、俯せに折り重なる三馬鹿を見た。
「痛て…まさか、編入生が九頭龍4強だとは…」
「俺の情報収集能力も、落ちたかな…?」
ボコられたイッセー達が呟く中、俺は改めて飯を食っている三人を見た。
「つか、テメェらが此処に来るとはな。何考えてやがる?」
「貴様が風紀を乱さないか監視する為だ」
食い終わった弁当を片付けながら大蛇が答えるのを聞き、俺はこれから退屈せずに済みそうだと口角を吊り上げた。
それから更に時間は流れて放課後。
俺は、支取に生徒会室へ呼び出されていた。
「大神君…いえ、これからはマサトと呼びましょう。貴方を呼んだのは他でもありません」
椅子に座って俺に対面している支取の後ろには女が6人と男が1人立っていて、俺に対して奇異と敵意を込めた目で見ている。
中でも、男が込めた敵意が1番強く、俺と支取を交互に見ていた。
「貴方なら『匂い』で判ると思いますが、此処に居る生徒会のメンバーは私の眷属…貴方にとっては仲間になる子達です」
「仲間、ねぇ…」
そう言う割に、歓迎されてないみたいだがな。と付け足して睨み返してやると、数人の奴が身構える。
「貴方の格好を見て警戒しない人はいないでしょう…貴方達も、マサトに敵意を向けるのは止めなさい」
俺の言葉に小さく苦笑しながら支取が諌めると、後ろに控えていた奴らは渋々といった感じで敵意を抑え込む。
「…で?俺を呼んだのは面合わせの為だけか?」
肩を竦ませて支取に問いかけると、俺の質問に小さく首を振って否定した。
「貴方には、これから生徒会のメンバーとして、私達と行動して貰います」
「断る」
俺を見据えて紡がれた支取の言葉に即座に、簡潔に返事をした。
「俺の命を拾ってくれた恩は返すが…飼い犬になる気は毛頭ねぇぞ」
俺の言葉によって支取の後ろに控えていた奴らは再び敵意を剥き出しにして、辺りに剣呑な空気が漂う。
「…貴方なら、きっとそう言うと思ってました」
だが、支取は小さく苦笑しながら俺を見ていた。
「マサト…貴方のやりたいようにやって構いません」
「会長?!」
その言葉に、後ろに居た奴らが驚いたように支取を見る。
だが、支取の話はまだ終わらなかった。
「ですが、貴方にはやってもらわなければならない事が幾つかあります」
そう言い、真剣な表情になった支取は悪魔について話を始めた。
悪魔は人間と契約し、対価と引き換えに願いを叶えるのが生業。
それは俺のような『転生悪魔』も例外ではなく、誰もが悪魔として仕事をしているらしい。
「…で、俺にも悪魔として誰かと契約しろってか?」
「えぇ、貴方にはこの人物と契約して貰います」
悪魔の仕事について聞き終え支取を見ると、支取は一枚の紙…俺が人間として死んだ日、支取を呼んだ魔法陣の書かれたビラを取り出した。
表は前に見たビラのままだが、ひっくり返すと無地になっている裏面に女が書いただろう、丸みを帯びた字が書かれていた。
『変態3人組をなんとかしてください!』…ねぇ。
「その契約者って奴は、どんな奴だ?まさか悪魔が個人情報を守るなんてねぇよな」
「…全員です」
ビラから視線を外し、皮肉を交えて問いかけるが、支取の言葉に一瞬だけ固まった。
「…貴方に契約を持ちかけたのは、この学園にいる女子生徒、全員です」
「…会長、何故あのような男を眷属に迎えたのですか?」
マサトが居なくなった生徒会室で、後ろに控えていた椿姫が私に声をかけてくる。
椿姫だけじゃない。今生徒会室に居る私以外のメンバーが皆、マサトに対して敵意を持っているのがヒシヒシと伝わってくる。
「椿姫、貴女はマサトを見て、何も分かりませんでしたか?」
「…それは、どういう意味ですか?」
私の言葉に訝しげな表情を浮かべる椿姫を他所に、マサトに出会い、彼を見てきた事を思い出す。
名前はその人を表すと言うが、マサトの場合はまさにそれだ。
人と群れ、下につく事はあっても|飼い犬≪ペット≫に成り下がる事を認めない。
だからと言って弱者にも噛み付く狂犬でもない。
彼の
彼は犬でも、狗でもない。
揺るがない己を持った、一匹の獣。
「彼はきっと、私達の強い味方になってくれる存在ですよ」
そうですよね?気難しい、不器用な狼さん。
「…まさか、悪魔相手に嘆願書とはな」
「正確には生徒会へ、です」
生徒会なら出た俺は、お目付役という名の監視を言い渡された一年の仁村と一緒に廊下を歩いていた。
改めて契約…と言っていいのか分からねぇが確認すると、内容はこうだ。
変態3人組…イッセー、松田、元浜の馬鹿どもは教室だろうが御構い無しに猥談やAVを見せびらかすのは序の口。
覗きで嫌な目に遭った女子は数知れず、先公ですら手を焼いているらしい。
「ったく、あいつらは…」
「…先輩は、あの3人と仲が良いんですか?」
「あぁ、中坊の頃からの付き合いだ。イッセーだけは小さい頃からの幼馴染って奴だな」
廊下を歩きながら苛立たしげに呟いていると、仁村が声をかけてきた。
それに短く答えながらも、俺は何かを探すように辺りを見回しながらスンスンと鼻を鳴らす。
獣人の血を自覚してからというもの、異様なまでに鼻が効くようになった。
犬や狼の嗅覚は人間の倍以上、とはよく言ったもので…1m離れているにも関わらず、仁村から漂う女子特有の甘い香りが鼻につく。
まるで…密着してるんじゃねぇかと錯覚する程に、強く。
(って、何考えてんだ俺は…あいつらじゃあるまいし)
考えていた事のアホらしさに頭を振って気を取り直した瞬間、発達した嗅覚が探していた匂いを捉えた。
「…近いな」
「え?っちょ、先輩?!」
俺は微かに漂ってきた匂いを元に、慌てる仁村を放って歩き出す。
行き先は…
嗅覚を頼りに、次第に強くなる匂いを辿って歩いた先に馬鹿二人は居た。
女子テニス部の部室、その裏にある人気の少ない場所で覗きを敢行していやがった。
で、そんな二人がどうなったかと言うと…。
「で、何か言い訳があるか?」
『あ、ありません…』
俺にボコられ、椅子になっている。
「お前らな…ハーレムを作るだ何だ言っときながら何やってんだよ」
「そうは言ってもなぁ、俺たちの熱いリビドーは止められないんだよ!」
「そうだ!真人みたいなイケメンに俺たちの気持ちなん…ぶべっ!?」
呆れたように呟く俺に反省はおろか、開き直ったように喚き立てる馬鹿の姿に思わず顔面を踏み付ける。
「あぁ、そうだな。変態な犯罪者の気持ちなんて分からねぇし分かりたくもねぇ…そこでだ、お前らには二つの道を用意してやった」
顔面を押さえプルプルと震える
「まず一つ目、今後一切こういった事をしないと約束して反省文50枚」
「んなっ?!真人、それは俺たちに死ねと言うのか?!」
「エロスを取ったら俺たちに何が残るって言うんだ!」
俺が提示した案に二人は声を荒げる…が、今度は踵に体重をかけ顔面を踏み付ける事で黙らせる。
「これを聞いてもそう言えるか?二つ目は…女子生徒から
深くため息を吐きながら提示した二つ目の案を聞くと、馬鹿二人は固まった。
二人だけじゃねぇ、近くで見ていた仁村でさえも固まっている。
「ま、真人?冗談だよな?」
「お前らが此れ迄やってきた事で警察の世話にならなかったのが冗談だろ」
血の気が引いた顔で見上げてくる松田を見下ろしながら呟く。
と言うか…此処まで性欲に正直な奴に惚れる女が居たらソイツの正気を疑う。
「さんざん場所を弁えろと言ったのに無視したお前らが悪い…で?自粛するのか社会的に死ぬのか、返事は?」
『…反省文50枚で、お願いします』
「…先輩」
「あ?なんだ?」
馬鹿二人を生徒指導室に放り込んだ後、俺は仁村と廊下を歩いていた。
陽は沈みかけ、窓からはオレンジ色の光が辺りを照らしている中、仁村はまっすぐ俺を見ている。
「あの、先輩が言っていた二つ目って…」
「あぁ…マジで反省してる様子がなかったら実行してたな」
仁村の言葉に溜息を吐きながら答えると、頭を掻きながら階段を登る。
「アイツら、細かい気配りは出来るし根は良いから、アレだけ何とかすりゃ女が出来るのは早いのによ…」
イッセーだけじゃない、松田と元浜のヤツもちゃんとしてりゃ良いやつだ。
松田なんかは中坊の頃は野球部のエースでそこそこ人気はあったから、あの下心さえ抑えりゃ惚れるヤツも居るだろう。
「…なんか、意外です。先輩、見た感じ怖い人なのにちゃんとしてるんですね」
「仁村こそ、思った以上にズケズケと言うじゃねえか」
階段を登り終えるとズボンから財布を取り出して仁村に放る。
急に放られたからか慌てながらもキャッチした仁村は、ポカンとした表情で俺を見てきた。
「自販機で飲み物買って先に戻ってろ…支取たちの分も忘れんなよ?」
そう言って、俺は再び歩き出す。
仕事後の一本を吸いに、な。