Fate/EXTRA NEET   作:あけろん

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あけましておめでとうございます。
今年最初の投稿になります。
これからもこの小説をよろしくお願いします。


真の英雄

 アタシはポシェットを開くとごそごそと中を探る。

 中に一緒に入れていたキャンディがこぼれるのも構わず『とっておき』を引っ張り出した。

 圧縮したデータの塊であるそれはアタシが作ったコードキャストだ。

 

 一晩で作ったヤツだから効果はお察しっスけどね。

 でも戦うと決めたなら何もしないわけにはいかないじゃない。

 ノーマル人でニートなアタシがアルクェイド相手にできることなんて、

 これくらいしかないんスよ。

 

「ささやかな嫌がらせっス!」

 

 引っぱりだしたコードキャスト《cheat_atk();》をアルクェイドに向かって放つ。

 このコードキャストは相手に微量のショックを与え、魔力を削り取る効果を持っている。

 カルナとの戦闘に注意を割かれているアルクェイドにコードキャストが命中し、

 その動きをわずかに鈍らせた。

 

「シッ!」

 

 それだけの隙があればカルナには十分だ。

 再び右手に具現化した炎の槍が突きこまれ、身を焦がしたアルクェイドが押し返される。

 

「コードキャストまで用意していたとは、あのカピバラがよくぞここまでに至ったものよ。小生の指導がよほど良かったと見える。来世ではプロデューサーになるのも悪くないかもしれんな」

「おっさんのプロデュースじゃアイドルがランクFで終わっちゃうっスよ。でもまぁここで負けるおっさんが来世の心配をするのは当然か。なれるといいっスね、プロデューサー(笑)」

「言いおったな小娘。我が神の御力でエデンの彼方までその汚れた身体を葬り去ってくれるわ!」

「昨日はちゃんとお風呂に入ったもん! ジナコさん汚れてないもん!」

 

 アタシは続けざまに《cheat_atk();》を放つ。

 効果はわずかだが速射できるのがこのコードキャストのいいところだ。

 アタシのコードキャストが作り出すわずかな隙をカルナは的確に捉え、

 炎の槍でダメージを与えていく。

 

「ガアァ!」

 

 アルクェイドがその身体のあちこちに火傷を伴なった傷を負いながら苦しげにあえぐ。

 槍のダメージに加えて魔力も削り取られているのだ。

 2重の痛手にさすがのアルクェイドも平気ではいられない。

 

「どうっスか! このジナコさんが布団を出たからには手ぶらでは帰らないっス。ここでおっさん相手に大金星をゲットさせてもらうっスよ!」

「威勢がいいことだなジナコ。だが小生は負けるわけにはいかんのだ!」

「ガアァァァァァァァァァァ!!」

 

 咆哮と共にアルクェイドの身体にさらなる魔力がみなぎる。

 

「小生は現世を神の教えにて救うべく、あらゆる宗教を学び全ての教えを体現してきた。だが小生は気づいてしまったのだ。神とは人間が望んで作り出した己への究極の罰なのだと! 人間を救う神などいないのだとな!」

 

 ガトーの叫びと共により苛烈さを増したアルクェイドの攻撃がカルナを襲う。

 動きを読みながら懸命に攻撃をそらすカルナだが、

 予測を上回るアルクェイドのパワーとスピードを殺しきることが出来ず

 その爪が身体をかすめ始める。

 

「だが絶望していた小生の前に真の神が現れたのだ! それこそ我が神アルクェイド・ブリュンスタッド様である! 小生はこの聖杯戦争を勝ち抜き、神の威光で必ずや世の人々を救ってみせる! 我が神! 我が祈りよ! 準備はよろしいか!?」 

「ハアァァァァァァァァァッ!」

 

 アルクェイドから膨大な魔力が立ち昇る。

 血のように赤い魔力が地面に波紋のように落ちた。

 その中心で赤い月の化身が獲物を引き裂こうと両手を広げる。

 

 あれはなんかやばそうっス!

 敗北イベントで食らう敵必殺技みたいな雰囲気ビンビンっスよ!

 

「カルナ!」

「ああ、わかっている。『宝具』というよりはそういう『権能』のようだがどちらにしろやっかいな一撃がくるぞ。今の俺でしのげるかどうか」

「そ、それならこっちも宝具を出すっスよ! カルナも何かすごい宝具持ってるんスよね!?」

「あるにはあるが今の俺では扱うことは難しいな。お前の魂が燃え尽きるまで魔力を回せば1回くらいは使えるかもしれないが、どうする?」

「そんなの聞くまでもないでしょーが! ああ、もうダメだぁ! おしまいだぁ!」

 

 頭を抱えるアタシとカルナに狙いを定め、

 アルクェイドの体が沈みこみ――――。

 

「我が神! 麗しの月よ! ここに黄金の地獄を解き放ち給え!!」

 

 ――――放たれた。

 

 極限まで高められたスピードで瞬間移動のように間合いを詰めたアルクェイドが、

 鋭い爪による無数の斬撃を繰り出す。

 もはやそれはカルナを捕らえる斬撃の檻だった。

 攻撃をいなすことはもちろん回避さえも不可能。

 カルナは両腕を交差させ、懸命に防御する。

 

「ガアァァァァァァァァァ!」

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

 全身を斬り刻まれながらもかろうじてカルナはアルクェイドの攻撃を耐え切る。

 己がサーヴァントの最大の一撃を受けてなお立っているカルナを見て

 ガトーが苛立たしげに口を開く。

 

「神の一撃で往生せぬとは、この不心得者どもが。だがどうやら勝負あったな。その様子ではもう戦うことなどできまい」

 

 アタシはカルナの姿を見て言葉が出なかった。

 身体のあちこちに決して浅くはない無数の傷を負い、

 攻撃を防御した両腕にいたってはついているのが不思議なくらいにボロボロだ。

 両手をダラリと垂らしながらたたずむ様は、倒れないことが不思議な有様だった。

 

「これでも小生は感謝しておるのだジナコ。お主が敵となってくれたおかげで、小生は無抵抗の者を殺す外道に堕ちずにすんだ。せめて最期は苦しまぬようとどめを刺してくれよう」

 

 アタシは膝から崩れ落ちそうだった。

 いや、崩れ落ちてもいいのかもしれない。

 戦いとは無縁でニートのアタシが、敵マスターに宝具を使わせるまでに追い詰めたのだ。

 それだけで大金星ではないか。

 

「ジナコ、お主はよくやった。この臥籐門司が『敵』であったことが不運だっただけだ」

 

 ちがう。

 

 アタシの敵は臥籐門司ではない。

 模擬戦の時の気持ちを思い出せ。

 アタシはあの時『負けたくない』と思ったはずだ。

 本当の気持ちを見つけたはずだ。

 ならば、アタシの敵は――――。

 

「諦めようとするアタシ自身っスよ」

 

 崩れ落ちそうになる足に力を込めて前を見る。

 そう、まだ負けたわけじゃない。

 アタシもカルナもまだ立っているんだから。

 

「カルナ、まだ戦える?」

「マスターが戦うと言っているのだ。俺はその意思にどこまでも寄り添おう」

 

 満身創痍ながら頼もしい言葉を返すカルナにアタシはうなづく。

 

「だが状況が厳しいのは事実だ。俺達に許された攻撃はあと一撃といったところだろう」

「一撃って言ったって……」

 

 アタシはカルナの両腕を見る。

 アルクェイドの宝具により切り刻まれた両腕はもう動かすことすらできないようだ。

 これでは槍での攻撃はおろか素手での攻撃さえも不可能だろう。

 

「心配するな。お前はありったけの魔力を俺に回せばいい。真の英雄が何を以って敵を殺すのか。それを奴らに教えてやろう」

 

 どうやらカルナには考えがあるようだ。

 ならばアタシはカルナの言うとおり ”ありったけの魔力” を用意する。

 

「アタシにはおっさんみたいな大層な願いはないっス。でもアタシはもう自分の気持ちを偽るのはやめたんスよ。アタシは負けたくない。嘘つきなアタシには負けたくないんだ!」

 

 マスターたるジナコ=カリギリが令呪を以って命ずる。

 

「カルナ、次の一撃に全ての力を!!」

 

 令呪とは聖杯戦争のマスターがサーヴァントに対して持つ3つの絶対命令権だ。

 それ自体が膨大な魔力を秘めており、サーヴァントの性能を跳ね上げる効果もある。

 アタシはその魔力を全て最期の一撃に使うように命じたのだ。

 

 令呪の莫大な魔力がカルナへと注ぎ込まれる。

 その魔力で両腕を治すのかと思ったのだが、その様子はない。

 相変わらず両腕を下げたままカルナは視線だけを敵に向けている。

 

「最期まであがくかジナコ。それもよかろう。ならば我が神の慈悲により浄土へ行けい!」

 

 カルナの様子に気づいたガトーがサーヴァントを動かす。

 瀕死のカルナにとどめを刺すべくアルクェイドが疾駆する。

 

 その爪をいなす左腕も炎の槍を持つ右腕も封じられた。

 膨大な魔力をその身に宿そうとも敵を殺す手段がカルナにはない。

 だが彼は言っていた。

 真の英雄が何を以って敵を殺すのかを教えてやると。

 

 カルナをとりまく魔力が収束する。

 それはただ一点、彼の右目へ。

 

 すなわち――――。

 

「真の英雄は眼で殺す!!」

 

 カルナの右目から放たれた強烈な閃光は、

 爪を振り下ろそうとしていたアルクェイドに直撃しその身体を貫いた。




この小説はジナコ視点な為アルクェイドのスキルや宝具の名前なんかは出てきません。
特にアルクェイドはまともにしゃべれないので
「必殺! プルート・ディ・シェヴェスタァ!」
とか言わせるわけにはいかないですしね。
ゲームなら技名が下に出てくるからわかるんだけどなー。
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