さてーどこまで続くかなー。
「貴様が小生の相手か。……ぬるい面持ちをしておる。後生戦いどころか労働とも無縁な、カピバラを思わせる面構えだな。さしたる覚悟も高尚な目的もついでに定職すら持たずに欲界から逃げてきた無業者。そんなところかな?」
野太い声に振り向くと一人の大男がアタシを見ていた。
首からいくつもの数珠と手には十字架を下げ背には三度傘。
修行僧のような佇まいだが、なんの宗派なのか統一感がないことこの上ない。
このおっさんが臥籐門司っスか。
なんか暑苦しそうで苦手なタイプっスね。
ていうかブタとかカピバラとか月にはジナコさんを人間扱いしてくれるヤツはいないんスか。
「初対面の相手に随分な言いようっスね。そう言うおっさんもまともな職業についてる人間には見えないっスよ」
「何を言うか小娘。小生は我が神に仕え、その威光をあまねく知らしめるために日々邁進しておる。これ以上に神聖な職務がこの世にあろうか! あぁ、ハレルヤ! 我が神こそ究極にして至高! 美食家もびっくりな唯一神である! うおおおおおおおお! 神さいこぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!」
うわぁ……コレに殺されるのかアタシ。
殺られるならカワイイ弟キャラマスターに『ごめんね。おねぇちゃん♡』て言われながらピチュりたかったっス。
どうして対極なのが出てきちゃうかなー。
「というわけだ小娘。この臥籐門司が相手とあってはヴァルハラも黄泉平坂も待ったなし。諦めて我が神の軍門に下るがよい!」
「好きにすればいいっス。ジナコさんに戦う気はないっスから」
「ぬぅ? それは不戦敗を選ぶということか?」
「そんなのはカレンが許さないだろうから決戦場には行くっスよ。あとはなるべく痛くないように殺してくれればいいっス。楽に勝ちを拾えてラッキーだったっスね。おっさん」
どうせアタシが戦ったって勝てるわけがない。
死ぬのは怖いけど仕方ないよね。
「ふむ、確かにカレンちゃんなら無理やりにでも決戦場に放り込むであろうな。あの足に踏まれようものなら小生は即解脱できる自信があるぞ」
「おまわりさんこいつです。じゃあそういうわけっスからもう話しかけないで。ジナコさんは部屋に戻るっス」
これ以上の会話は無意味。
アタシは臥籐門司の脇をすり抜けてマイルームへと歩き出す。
「待てぃ、ジナコよ」
「話しかけないでって言ったっスよね? まだ何かあるんスか」
「お主、小生の弟子になれ」
「ファッ!?」
いきなり何言ってんスかこのマジキチ坊主。
意味不明にもほどがあるっス。
「全く嘆かわしい! 確かに貴様の敗北及び死は確定しておる。しかし生への執着を捨てることはまかり通らぬ! カピバラのまま死しては輪廻転生の輪からも外れよう。この臥籐門司、神に仕える者としてそのような救われぬ魂を見過ごすわけにはいかぬわ。ならば我が神の教えをもって貴様の魂をカピバラからヴァルキリーへとプロデュースすることこそ小生の使命である! さぁ、ジナコよ! 小生と共にガンダーラへと旅立とうではないか!」
「助けてカルナぁ! 暑苦しいおっさんが鼻息荒くしながら迫ってくるよぉ! これ薄い本できちゃうぅ!」
「少なくとも悪意は感じられない。相手の情報を引き出す為にしばらく付き合ってやったらどうだジナコ」
アタシは迫ってくる臥籐門司の顔を必死に押し返す。
「
「一番肝心なアタシの同意は!? こんなの絶対おかしいよ!」
笑いながら去っていく臥籐門司とその場に崩れ落ちるアタシ。
「殺される相手に弟子入りとはたいしたものだ。俺もサーヴァントとして鼻が高い」
「こういう時は間違えないんスねカルナさん。はぁ……もういい。寝て全部忘れるっス」
そうしてアタシはマイルームで眠りにつくのだった。
◆ ◆ ◆
眠りから覚めたアタシの目に飛び込んできたのはまたもや深い闇と入り組んだ通路だった。
なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁとでも言うと思ったっスか。
はいはいアリーナアリーナ。
驚きの展開も2度目になればもうテンプレなんスよ。
それじゃあとっとと出口まで行きますかね……っと?
そう思い起きようとしたアタシは体が動かないことに気がついた。
よく見ると布団ごと縄で縛り上げられているではないか。
「起きたか我が弟子よ。しかし少々遅いぞ。神に仕える者ならば朝の4時には起きるようにせよ」
そしてなぜか縛り上げられたアタシはおっさんの小脇に抱えられていた。
「な……な……な……」
「我が神が今日はアリーナを修行の場と定められたのでな。迎えにいったら寝ておったので起こすのも忍びないと思い、布団ごと運んだというわけだ」
「ななななななななな」
「ちなみに部屋のカギはカレンちゃんに言ったら開けてもらえたぞ。しかしジナコよ。お主はもう少し体の肉を落としたほうがよいな。小生の腕力でもここまで運ぶのは一苦労であったぞ」
「なんじゃっこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「この早朝からテンションMAXとはさすが我が弟子。その調子で随神の道を踏破するがよい」
どいつもこいつも人のマイルーム(仮)をなんだと思ってるんスか!
ていうかカルナは!?
自分のマスターが敵マスターに拉致られたのにサーヴァントは何をやってたんスか!?
「話しているうちに意気投合してしまってな。すまなかったなガトー。本来ならばサーヴァントである俺が運ぶのが道理だったのだが」
「なんのなんの、察するにかなりの神格を持つ英霊とお見受けする。神の子に
「おい、おっさん。今自分の弟子を駄肉って言わなかったっスか?」
カルナさんまで懐柔するとは恐るべし臥籐門司。
アレ一歩手前は伊達じゃないっスね。
『ぷっくく……おはようございますジナ休さん。今日は絶好の修行日和ですね』
「人の名前を無理やり小坊主っぽく呼んでるんじゃねーっス」
狙い済ましたようなタイミングでカレンの声がアリーナに響く。
あの女絶対今すげーいい笑顔してるよ。
笑いをこらえてるのがここまで伝わってくるもん。
「おお、カレンちゃん! 先ほどは世話になった。今度小生の五穀粥を馳走するゆえ楽しみにされよ!」
『それは楽しみです。いいお茶の葉を出しておきますね。でもカレンちゃんとは呼ぶな』
「うほっ! その冷たい言葉を聞くと小生なにやら胸の動悸が……。ワンモアプリーズカレンチャン!」
『……後はお任せします。カルナさん』
さすがのドS魔人もウルトラ求道僧相手には分が悪かったらしい。
カレンの声が途切れるとこの場を任された(?)カルナが臥籐にたずねた。
「しかし本当にこんなことをしていてよいのかガトー。職業柄とはいえここは聖杯を奪い合う戦場。自分以外の全てが敵のはずだ。お前にとってジナコのプロデュースとやらは聖杯に託す願いよりも重いものなのか?」
「簡単な話だ神の子よ。お主のマスターは小生の敵ではないということよ」
それはつまり……。
「……アタシ程度の実力じゃおっさんの敵にはならないってことっスか?」
「まぁその辺は自分で考えよ。とにかく小生はお主を敵だとは思っておらん。ならばこの臥籐P、見事お主の魂をヘーゲモネーのごとく磨き上げてやろうではないか。ゆくぞ、ジナコよ!
「その劇場を目指すのはやめておけガトー」
こうしてアタシと臥籐門司の奇妙な関係は始まったのだった。
はい、あとがきです。
ガトーさんの感じがCCCに近いですが一応理由は用意してあります。
あとはそれを書くところまでたどりつけるかどうか……。