これしか思い浮かばなくてつけた。今は反省している。
「ジナコよ。お主は此度めでたく我が神の信徒となった訳だが」
「なってねーっスよ。ていうかアタシいつまで簀巻きで抱えられてるんスか」
「まずは我らが神を紹介せねばならぬな。神々しすぎて直視できんとは思うが、両のまなこを見開きその御姿をしかと目に焼き付けるがよい!」
「このおっさん聞いてねぇー! いいから早く降ろすっスよ!」
暴れるアタシの前に臥籐門司のサーヴァントが具現化する。
金色に輝く髪と赤い瞳。
姿は人間の女性のようだが、カルナと同様纏っている空気が人間離れしている。
「美しすぎるうぅぅぅぅぅぅぅ! この御方こそ我らが神! 真祖にして魔眼の持ち手! 『アルクェイド・ブリュンスタッド』様である!」
「ねぇ、カルナ。サーバントの真名って隠しておくものじゃなかったっスか? ついでにマトリックスぽいものまで駄々漏れてるんスけど」
「お前も俺の名前を隠していないぞ。しかし真祖とはな。とんでもないのが出てきたものだ」
え、真祖ってすごいんスか?
見た目は綺麗でちょっとアーパーそうなお姉さんにしか見えないっス。
「吸血鬼の王にして星の触覚であり、神というよりは自然現象そのものといったところか」
何そのチートサーヴァント。
「さぁ、我が神よ! 新たに信徒の末席に加わったジナコ・カリギリに祝福の御言葉をお与えくだされ!」
「……」
あのー……何もしゃべってくれないんスけど……。
ハッ!? もしかして初見で嫌われたっスか!?
いやぁぁぁ! 十七分割されちゃうぅぅぅぅ!
「どうやら狂化されてまともに言葉を話せないようだな。クラスはバーサーカーというわけか」
「我が神はちょっとシャイなのでな。しかし小生が聖杯を手に入れた暁には、微笑みと共に天上の調べにも似たお声を聞かせてくださるであろう! お主も楽しみにしておれ」
うん、アタシその時もう死んでるよね。
「では神への拝謁もすんだところで至福の修行タイムといこうぞジナコ! ぬおおおおおおお!」
雄叫びと共にアリーナに突入していくガトー。
いいなぁ。
悩みなんてないんだろうなぁ。
それはともかくとして。
「簀巻きにしたまま置いていくな。クソ坊主ぅぅぅぅぅぅぅ!」
アタシの声はむなしくアリーナに吸い込まれた。
◆ ◆ ◆
そして『修行』という名のエネミー狩りが始まったのだが。
「シャオラァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
「カルナさん。君に決めたっ!」
ズガァン! ドガァ!
ペチペチペチペチ……
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁいさっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
「もっと足を使うっス! 小さく! 細かく! 速く!」
ズドォ! メキャア! ズバァ!
ペチペチペチペチペチペチ……
「頼もしすぎるぅぅぅぅぅぅぅ! 小生の嫁ってば強ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「立てぇ! 立つっス! カルナさぁん!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
ぺぺペペペペペペペペペペペペペペペペペペペペ……
……なんだか決戦を待たずに死にたくなってきたっス。
「どうしたジナコ。目が濁っているぞ」
「復活の呪文みたいな攻撃しかできない自分のサーヴァントに絶望しているとこっスよ。同じ素手なのにこの差はなんなんスか? カルナさんもサーヴァントならエネミーを指先一つでダウンさせて『今ので10%の力だ』くらい言えないスか?」
「ガソリンの入っていない車で走れと言われているようなものだ。そちらこそ得物が具現化できるくらいの魔力はまわしてほしいところなのだが」
サーヴァント 魔力なければ ただの人。
川柳作って現実逃避してる場合じゃないっスね。
なんとか自分の魔力量を上げていかないと……。
って何考えてるんだアタシは。
どうせ4日後には死ぬんだからそんなことしたって無意味だよね。
「はっはっは! 気にすることはないぞジナコよ。我が神と比べられてはどのようなサーヴァントも霞むというもの。その戦う御姿はまさにマーブルファンタズム! 我が神の威光は大きいお友達にもあまねく降り注ぐであろう!」
「まさか変身してステッキを振り回したりしないっスよね?」
「ふははは! 我が神は後2回の変身を残しておる。これがどういうことか分かるな?」
「何それ怖い」
「ガトォォォォォォォォォォォォォォ!!」
なぜかいきなり叫ぶアルク様。
「ハッ!? いかん! 虚言を吐いたことで神の怒りに触れてしまったか!? おお、我が神よ! これなる供物で怒りをお静めくだされ!」
「ちょ、おま……! なんでそこでアタシを盾にするっスか! アタシの血はおいしくないっスよ! それよりアルク様、新鮮な坊主の肉はどうっスか? でも頭は食べちゃダメっス。馬鹿が移るっスからね!」
互いを盾にしようと取っ組みあうアタシとガトー。
「マスター同士が楽しそうで何よりだ。短い間だがよろしく頼む」
「アアア……アア……(コクリ)」
何か向こうはサーヴァント同士で通じ合ってるし。
それから誰が楽しそうなんスか!
こんなおっさんウザいだけなんスからね!
◆ ◆ ◆
エネミー狩りは夕方まで続き、アタシ達は校舎へと戻ってきた。
「あー……もうダメっス……。天国のパパとママが見えるっス……。ただいまー……ジナコさん今帰ったっスよー……」
「どうやら魔力を使いすぎたようだな。朝から夕方まではやりすぎだったのではないかガトー」
「なんのまだまだ。小生の弟子ならば阿修羅すらも凌駕する存在でなければならん。明日も朝から修行を始めるゆえ精進するがよい! では小生はマイルームに戻るのでチャオ!」
そう言って歩くのもやっとなアタシを置いて帰っていくガトー。
明日もマイルームに迎えにくるのだろう……朝4時に。
「あ、あの電波坊主……。いつか脳天にジナコスペシャルを食らわせてやるっス……」
体を引きずりながらマイルームへの道を歩くアタシ。
と、アタシの行く手をふさぐ形で2人の少年が何やら話しているのが見えた。
「フン、これで分かっただろう岸波? お前じゃ僕には勝てないってね。ああ、お前が弱いんじゃない僕が強すぎるのさ。今からでも遅くない。このアジア圏屈指のゲームチャンプ『間桐慎二』の子分になりたいというのなら考えてやらなくもないぜ?」
なんか聞いたことのある名前っスね。
しかもアジア圏屈指のゲームチャンプとな?
……ああ、もしかして。
「そうやって人を見下すクセ、やめたほうがいいっスよ~シンジさんクン?」
アタシの声に少年の一人が振り向く。
「うおっ、何だよいきなり後ろから! っていうかオタク誰? どこの三流マスター?」
「本当に
「なっ!? ジナコってお前あの『じな子』か!? FAプレイ時間6000越えのトータルチャンプ!?」
まぁ今は4日後の死を待つヘッポコマスターっスけどね。
自分のことを「エリートニート」とか言ってた時期が懐かしいっスよ。
「ここではトータルチャンプの称号なんて何の役にも立たないっス。ましてや『アジア圏屈指のゲームチャンプ』なんてなおさらっスよ。人に嫌がらせをしてる暇があったらサーヴァントのレベル上げでもしてきたらどうっスか?」
「ふ、ふん! 僕のエル……サーヴァントは最強なんだ。凡人共のようにあくせく努力する必要なんてないのさ。じゃあな岸波、子分の件は考えておけよ」
そう言って慎二は立ち去った。
自分より上の称号を持つ人間と一緒にいるのは我慢できないんスよね。
気持ちは分かるっス。
でもゲームと違ってここではアタシはシンジさんクンには勝てないっスねきっと。
「あの……何かありがとう」
その時アタシにもう一人の少年が声をかけてきた。
「ああ、別にいいんスよ。ああ見えて悪い人間じゃ……」
答えようとしたアタシの言葉は少年の顔を見て途切れてしまう。
NPCと言っても信じてしまいそうな特徴のない顔つき。
服装もカスタマイズされたものではなくデフォルトである月海原学園の学生服だ。
「俺は白野。岸波白野だ」
そう言った少年の顔をアタシは凝視してしまう。
初めて出会ったはずのこの少年にアタシは妙な懐かしさを感じたのだった。
はい、あとがきです。
われ等がザビエル登場。
どのサーヴァントかは次話のお楽しみ。
3日目の夕方にザビエルとシンジが話しているイベントはありませんが話の都合により捏造させて頂きました。アリーナでのやり取りの後ならこんな会話なんではないかと。