Fate/EXTRA NEET   作:あけろん

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「さて、またまた随分と間が空いてしまいましたが40話をお送りします」
「作者のダメさ加減はいつものこととして、エクストラの続編にアタシの出番があるのかが気になるっスね」
「……ないんじゃね?」
「またまたご冗談を。GOにも(強化外装の端っこで)出演し、語録がカルナさんのコミュニケーションバイブルになるほどのVIPであるアタシが続編に出ないわけがないっスよ」
「フラグ乙」


炎と鉄の輪舞

 アーチャーの弓から放たれた長剣が赤い稲妻となってカルナに迫る。

 やっと弓を使ったと思ったらコレだよ。

 いちいちセオリーを無視しないと気が済まないのかあの褐色白髪ニキは!

 

「カルナ!」

「問題ない」

 

 アタシの声に短く応えるとカルナは槍を一閃。

 アーチャーの矢は標的を貫くことなく弾かれる。

 

「芸としては面白かったが、正面から放たれた矢に射抜かれてやるほど槍の英霊は甘くないぞアーチャー」

「そんなことは百も承知だとも。しかしそれでも標的を射抜くのが弓の英霊というものだろう?」

 

 アーチャーが不敵に笑うと弾かれたはずの矢が突如方向を変え、再びカルナ目掛けて突っ込んできた。

 

「ちょっ!? なにそれ!?」

 

 驚きの声を上げるアタシの目の前で再びカルナが矢を弾く。

 しかし弾かれても矢は地面には落ちず反転し、まるで猟犬のように三度カルナに襲いかかる。

 

「俺が矢として放ったのは英雄ベオウルフが振るった呪いの魔剣《赤原猟犬(フルンディング)》だ。その矢は標的を貫くまで何度でもお前を狙い続けるぞ」

「ではこうするまでだ」

 

 カルナの槍が炎に包まれる。

 魔力放出(炎)のスキルにより攻撃力が強化された槍は飛来した矢を弾くことなく打ち砕いた。

 

「お見事。さすがに仕留めることはできないか。まぁ、魔力を削れただけ上出来としよう」

「弓の英霊の名に恥じない一矢だった。今度は槍の英霊の一刺しを受けるがいい」

 

 炎の槍を携えてカルナが駆ける。

 

構造強化(トレース・オン)

 

 アーチャーの両手に白黒の双剣が現れ、カルナの槍を受け止める。

 しかしまだカルナのターンだ。

 槍の纏う炎が受け止めた双剣ごとアーチャーを焼き尽くそうと猛り狂う。

 

「チッ!」

 

 その刹那、なんとアーチャーは炎に包まれた双剣をあっさり手放した。

 炎は双剣を飲み込むがアーチャーまでは届かない。

 続くカルナの追撃を新たな双剣で受け止め、またも炎が自身に届く前に手放す。

 次々に新しい双剣を生み出しながらアーチャーは炎の槍を凌ぎ続ける。

 

「なんつー受け方。あの双剣てばどんだけ残機があるんスか」

 

 しかし接近戦の技量はやはりカルナの方が上だ。

 アーチャーは炎にこそ焼かれないものの徐々に押され始める。

 

「クッ!」

 

 カルナの猛攻を嫌がったアーチャーが大きく下がり間合いを取ろうとする。

 

「逃がしちゃダメっスよカルナ!」

「分かっている」

 

 距離が開けばまたあの厄介な魔剣を撃たれるかもしれない。

 カルナは追撃の為に間合いを詰めようと駆ける。

 

「ハァッ!」

 

 その時アーチャーは裂帛の気合いと共に迫るカルナに向かって両の双剣を投擲した。

 弓を撃つ時間を稼ぐ為なのだろうが、カルナほどの英霊にとってそれは余りにお粗末な攻撃だ。

 回転しながら飛翔する双剣の軌道を瞬時に見切り、速度を殺すことなく回避するカルナ。

   

「今度こそ捉え……っ!?」

 

 しかしそこでカルナの動きがわずかに鈍った。

 先程回避したはずの双剣が弧を描きながら旋回し、左右からカルナに襲い掛かかったからだ。

 同時にそれまで距離を取ろうとしていたアーチャーは逆にカルナへと踏み込む。

 左右から飛来する双剣に合わせてアーチャーの手にした双剣が振りぬかれる。

 

「《鶴翼三連》!!」

 

 アーチャーの繰り出した左右正面からの同時斬撃。

 カルナは咄嗟に左右の双剣を弾き飛ばすが、そこに生まれた隙にアーチャーの手にした双剣が滑り込む。

 しかし首筋に向かって放たれた斬撃はかろうじて間に合った槍に受け止められた。

 アーチャーは驚いた顔をしながら今度こそ大きく距離をとる。

 

「これはやられたな。今のは入ると思ったのだがね」

 

 そう言ってアーチャーはカルナではなくアタシを見た。

 そのアタシは右手を突き出した状態で冷や汗をかいている。

 今のは危なかった。一歩間違えば勝負が決まっていたところだ。

 

「魔力を削りつつ行動を阻害するコードキャストか。ただの素人かと思っていたが、どうやらそうではないらしい」

 

 そう、アーチャーの双剣がカルナの首筋目掛けて放たれたあの刹那。

 アタシはコードキャスト《cheat_atk();》を撃ってアーチャーの動きを一瞬だけ遅らせたのだ。

 結果カルナの防御がなんとか間に合い、辛くもアタシ達は命を拾ったというわけである。

 

「助かったぞジナコ。お前のサポートがなければ今頃この首が落ちていた」

「後でプレミアムロールケーキっスからね。それにしても本当に弓の英霊なんスかアレ」

 

 カルナの炎の槍は2回戦でランサークラスのエリザベートにすら大ダメージを与えたほどのスキルだ。

 それなのにランサークラスより近接戦闘で劣るはずのアーチャーがそのスキルを凌いだだけでなく、逆にあの2対の双剣によるスキルでカルナの命を脅かした。

 あれだけの強力な近接戦闘スキルを持っているサーヴァントがアーチャーだなんてことがあるだろうか。

 正直あの赤い外套の襟首を締め上げて「お前のようなアーチャーがいるか」と問い詰めたい。

 

「だが分かったこともある。奴の武器は全て『投影』の魔術によって創り出されたものだ」

「とうえい?」

「簡単に言うとイメージしたものを魔力によって物質化するスキルのことだ。奴がこれまでに使っていた双剣や魔剣はオリジナルではなく投影によって創りだされた複製品だったのだ」

 

 なるほど、どうりでいくら燃やされても砕かれてもぽこぽこと次が出てきたわけっスね。

 魔力が尽きない限りアーチャーはどれだけでもあの双剣や魔剣を創り出すことができるのか。

 

「そしてもう一つ。奴の投影の精度が徐々に上がってきている。短く隙のない術式を重ねて戦闘中に強化しているようだな」

「精度が上がるとどうなるんスか?」

「これまでより複雑なイメージを物質化できるようになる。時が経つほど奴は強力な宝具を創り出すことができるようになるだろう」

「ゲゲッ! マジっスか!」

 

 時間をかければかけるほど相手の武器が強力なっていくというのは脅威だ。というかチートだ。運営(ムーンセル)出てこい修正はよ。

 しかし文句を言っても仕方がない。こうなったらもうやる事は一つしかないのだから。

 中国の偉い兵法家の人も言っていた。

 『やられる前にやればいいじゃん?』と。

 アタシは温存していた “切り札” を使うことにする。

 

「カルナ、『アレ』を使うっス。これで勝負を決めるっスよ」

「そう言うと思っていた。……天に坐する我が父スーリヤよ。願わくばこの一時だけ目を閉じていてほしい」

 

 覚悟を完了したカルナとアタシは横に並ぶ。

 こちらのただならぬ気配を察知したアーチャーが双剣を構えながら警戒の色を浮かべる。

 さぁ、見せてやる。アタシ達が血と汗と羞恥心を犠牲にして会得したこの技をッ!

 

 過酷な修練によってモーションが染みこんだ身体は考えるより先に動いた。

 アタシの手足はネットの海において嫌というほど目にした『かっこいいポーズ(笑)』を無駄に洗練された無駄のない無駄な動きでトレースし、ラストは荒ぶる鷹のポーズでキメッ!

 隣で寸分の狂いもなく動きを合わせたカルナとの魔力が完璧に同調する。

 いいっスよアーチャー。あんたが宝具という『幻想』を創り出せるってなら。

 

「《gain_mgi(まずはそのふざけた幻想をぶち殺す)》!!」

 

 己が機能を引き出した装備者を祝福するかのように礼装カーマインブレイジが光り輝く。

 同時に礼装に刻み込まれた術式である魔力強化のエンチャントが発動した。

 エクセレントッ! 今のアタシ達はこれまでで一番輝いているに違いない(恍惚)。

 

「フッ……ミッションコンプリートっス」

「よくやったジナコ。失ったものは大きかったがそれに勝る成果を今、俺達は手にしたのだ」

 

 カルナも何やら感極まったような表情で拳を握りしめている。

 ここに至るまでによほどの葛藤があったんスね(ホロリ)。

 そのカルナの身体からは収まりきらない魔力が炎となって噴出している。

 まるでプロミネンスを噴き上げる太陽のようだ。

 

「い、一瞬何が始まったのかと思ったが……なるほど、発動過程はともかくかなり強力な術式のようだな」

 

 アタシ達のアレを見て放心していたアーチャーもすぐにその意図に気づいて表情を引き締める。

 

「戦闘経験があるというのはやはり強みだな。同じ素人でも一度も決戦場で戦うことのなかったこちらのマスターはコードキャストの一つも使えないのだからね」

 

 そう言って肩をすくめるアーチャーにここまで黙って戦況を見守っていた桜さんが口を開いた。

 

「敵にこちらの弱みを教えてどうするんですか。それに戦闘経験についてあなたにだけは言われたくありません。そもそも私が決戦場での戦いを避けてきたのはあなたというサーヴァントを見せたくなかったからなのですから」

「分かっているさ。非難をしているつもりはない。君の強みは戦闘経験とは別のところにあるのだからな」

 

 ここで桜さんはアーチャーからアタシに向き直る。

 

「ジナコさん、あなたがキャスターの世界から出て行った時、私は理解ができませんでした。あの世界にはあなたの望む全てがあったはずです。なのにあなたはそれを拒絶して今の自分を選んだ。キャスターが言っていました。あなたは自身にあの世界に勝る価値を見い出しているのだと」

 

 桜さんの視線が鋭くなる。

 

「ならば私に見せてください。幸せな過去を捨てて選び取った今のあなたの力を」

 

 煽りスキルがカンストしてるアタシをこうも煽るとはいい度胸っスね。

 理解できないなら、これ(・・)でさせてやるっスよ!

 

「カルナ! 食らわせてやるっス!」

 

 カルナがアーチャーに向かって地を蹴る。

 その間合いを一瞬で詰め、今までよりも苛烈な攻撃が繰り出される。

 

「ぐっ!……先程までとは段違いの力だ。ここまで強力なエンチャントだったか」

「これが今のジナコの力だ。存分に味わうがいい」

 

 カルナの槍が再び炎を纏う。

 間髪入れずに繰り出された一撃をアーチャーは双剣で受け止める。

 そして先程までと同じく自身が炎に飲まれる前に剣を手放そうとした、が。

 紅を通り越して白く燃え盛る炎はその間を与えず一瞬でアーチャーを飲み込んだ。

 

「ぐああああああっ!!」

 

 たまらずアーチャーが大きく飛びのく。

 だがそれで危機を逃れたと思うならば甘い。

 なぜならその位置はこれから放つ ”本命” の有効射程距離。

 無数の武器を操るあのアーチャーに教えてやろう。

 真の英雄にとって武器など無粋。この太陽の化身は眼だけで敵を屠れるのだと。

 

「《梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)》!!」

 

 膨大な魔力がカルナの右目に収束し、全てを灼き尽くす熱線が放たれる。

 1回戦でアルクェイドを倒した大技《梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)》だ。

 あの時は令呪の力で一時的に階梯を上げて使ったスキルだったが、この決戦前に訪れた教会で階梯を更新した結果、正式なスキルとして追加されていたのである。

 

「これで決まりっス!!」

 

 エンチャントした魔力を一点に集中して放つ必殺の一撃。

 加えてアーチャーはダメージを負って飛びのいた直後で回避することは不可能。

 必殺にして必中の一撃はアタシに必勝をもたらす……はずだった。

 

「《熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)》」

 

 突如アーチャーの前に七枚の花弁を広げたような光の壁が現れる。

 絶死の熱線は展開する光の壁に激突し、アーチャーまで届かない。

 しかし受け止めた光の壁もただでは済まなかった。

 なおも勢いの止まらない熱線を前に7枚の光の花弁が一つ、また一つと破壊されていく。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 アーチャーが残った花弁に力を込める。

 2つの力のせめぎ合いは激しさを増し、とうとう大きな爆発引き起こした。

 周囲の空気がビリビリと震え、視界が白に染め上げられる。

 そしてその後には。

 

「素晴らしい一撃だった。この威力、かの光の御子が放った《突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)》に匹敵する」

 

 花弁が残り1枚になった光の壁の向こうでアーチャーが言った。

 防ぎ切ったのだ。こちらの切り札を。

 

「そんなバカな! あれで倒せないとかありえないっス!」

「射撃攻撃に対して絶対の防御を誇ると謳われる『アイアスの盾』か。そんなものまで投影できるとはな」

 

 アタシ達は愕然とする。

 今の攻撃は正真正銘こちらの切り札であり奥の手だったのだ。

 弓兵があんな盾を持っていることなど想定外。ましてその盾で切り札を潰されるなど誰が考えるだろう。

 

「これではっきりしました」

 

 わずかな失望をにじませた桜さんの声が聞こえた。

 

「やはりあなたはキャスターの世界に留まるべきだったんです。私を倒す力のない、すなわち未来を切り開く力のないあなたは過去の幸せを選ぶべきだった」

「言いたい放題言ってくれるっスね。まだ勝負はついてないっスよ」

 

 そう言ってもアタシ達はかなり不利な状況だ。

 手札を全て使い切ったにも関わらずアーチャーはまだ立っている。

 これでもし、相手がまだ奥の手を残していたのなら……。

 

「アーチャー、準備はできたかしら?」

「ああ、投影の精度は十分だ。いつでもいけるぞマスター」

「では『宝具』の開帳を。それで終わりにしましょう」

 

 最悪の想像が現実化する。

 アーチャーはまだ奥の手である宝具を残していたのだ。

 桜さんの言葉を受けたアーチャーの魔力が膨れ上がる。

 

『―――――― 体は剣で出来ている。(I am the bone of my sword.)

 血潮は鉄で、心は硝子。(Steel is my body, and fire is my blood.)

 幾たびの戦場を超えて不敗。(I have created over a thousand blades.)

 ただの一度も敗走はなく、(Unknown to Death.)

 ただの一度も理解されない。(Nor known to Life.)

 彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。(Have withstood pain to create many weapons.)

 故に、生涯に意味はなく。(Yet, those hands will never hold anything.)――――――』

 

 決戦場にアーチャーの詠唱が響く。

 

「呪文の詠唱だと? まさか奴の宝具は弓ではなく……」

 

 何かに気が付いたカルナが声をあげるもその言葉を最後まで聞くことはかなわず。

 

その体は、きっと剣で出来ていた。(So as I pray, unlimited blade works.)

 

 アーチャーの宝具が発動し、決戦場を取り囲むように炎が走る。

 その勢いに思わず目を閉じてしまい。

 再び目を開いたその時。

 

「なん……だと……?」

 

 目に映る世界はその姿を一変させていた。

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