テンプレ乙っス。
「んぅ……う~ん……」
眠りから覚めたアタシは目を開く。
外は薄っすらと明るくなってきているが、まだ朝とよべる時間ではない。
なんだか変な夢を見たせいで早く目が覚めてしまったようだ。
あれは聖杯戦争の予選だった気がするんスけど。
あの時アタシは昇降口であの2人に出会って、そして……。
ん? あの2人って誰だ?
アタシは首をかしげる。
聖杯戦争の予選での記憶がどうも曖昧になっている気がする。
そもそもアタシは予選ではずっと用具倉庫に引き篭もっていたはずだ。
ならばなぜ本選でアタシは ”外に出ていた” のだろう。
予選と本選の間に何かがあったような気はするんスけど……。
自分の中の記憶をたぐりよせようと考え込もうとしたその時。
『ジナコォォォォォォォォォォ! お主の心の師匠、臥籐門司が参ったぞ! 今日もお主の人生の海原をモーゼのごとく導いてやる所存なり。我が神もお待ちかねである!』
『ジィィィィィナァァァァァァァコォォォォォァァァァァァ!!』
……なんだかいろんな事が頭からふっとんだっス。
なんかアルク様までアタシの名前絶叫してるし。
ご近所のマスターから苦情が来たらどうしてくれるっスか。
マイルームの扉の向こうから聞こえてきた大声に、アタシは仕方なく布団から身を起こす。
同時にカルナが姿を現した。
「珍しく早起きだなジナコ。それでどうする。寝た振りをしてもまた布団ごと連れ出されるだけだと思うが」
「本当に連れ出されるのを止める気はないんスね。それでもアタシのサーヴァントなんスか?」
「言っただろう。あの男にお前を傷つける意志はない。なんの酔狂なのかは分からないが本当にお前を鍛えたいだけのようだ。それならば俺はそれを邪魔する気はない」
「全くおっさんといいカルナさんといい何を考えてるんだか……」
仕方なくアタシは布団から這い出す。
本当にアタシは何をやっているのだろう。
今更自分を鍛えた所で3日後には全てが無になるというのに。
「まぁ、所詮は死ぬまでの暇つぶしっス。おっさんの気が済むまで付き合ってやるっスよ」
そう言いながらアタシは激しくノックされているドアへと向かう。
それは『修行』という名のモラトリアムの始まりだった。
◆ ◆ ◆
今日も朝の4時からアリーナに篭りながら交互にエネミーを狩り続けるアタシとガトー。
といってもガトーがエネミーを狩るのは5回に1回、あとの4回はアタシが狩っている。
ガトー曰く「我が神をつまらぬものと戦わせるのは忍びない」だそうだが。
結果アタシは4回に1回の休憩を挟みながら延々とエネミーを狩り続けることになるわけだ。
そう、夕方まで……。
「ああ……今日も夕日の赤が目に染みるっス……。大体ジナコさんは争いは嫌いなんス。植物の心のような生活がしたいんスよ。なのにどうしてこうなった……」
校舎に戻ってきたアタシは盛大にため息をつく。
「はっはっは! ジナコよ! 植物のように全てを受け入れ強く生きることを目指すとは我が弟子ながら見事な
「うわーたのしみー(棒)。なんだかこの意思疎通がまったくできない会話にも慣れてきた自分が怖いっス」
このおっさんをを爆破するコードキャストが作れないもんスかね。
触ったものを爆弾にしたり、遠隔自動操縦で爆破したり、時間ごと吹き飛ばしたりとか。
アタシがブツブツ言っているとガトーが急に立ち止まる。
やばっ! 口に出てたっスか!?
「いや、別におっさんの手を集める嗜好に目覚めたとかじゃないっスよ! でも『爪』が伸びるのを止められる人間はいないわけで……」
「何を言っておるのか分からんが、着いたぞジナコ」
へ……?
着いたってどこに?
アタシは辺りを見回す。
いつのまに外に出ていたのかそこは噴水のある広場だった。
そしてアタシたちの正面には教会が建っている。
電脳空間で教会っていうのもおかしなもんスね。
セーブしてコンテニューできる場所なら大歓迎なんスけど。
ガトーは教会の扉を開けて中に入っていく。
アタシも慌てて後を追いかけた。
「こんなところでお祈りでもするっスか、おっさん」
そう言いながらアタシも教会の中に入る。
入ると同時に目につくのは奥に設置してある不思議な光を放つ装置。
そしてその装置を挟んで座っている2人の女性がアタシ達を見た。
「あら、ガトーさんじゃない。この前来たばかりだと思ったけどまた来たの? もしかして例の『サーヴァントに猫耳を付けて欲しい』っていう改造かしら? こっちは準備できてるわよ」
装置の右に座る赤い髪の女性が陽気な声でガトーに話しかける。
自分の神様に何しようとしてるんだこのおっさん。
ていうかこの女の人も『準備できてる』とか大概なんですけど。
「ミスターガトー。あなたの嗜好や性癖は否定しないが、そこの女に頼むのだけはやめておけ。頭に猫耳をつけるついでに体を三頭身にされて、どこかの喫茶店に売られることになるぞ」
今度は装置の左側に座る青い髪の女性の静かな声が響く。
なんかそれはそれで強そうっスね。
ビーム出したり、ジェットで飛んだり、無限に増えたりできそうっス。
「い、いや……あれは言った後で我が神に引っ掻かれたので断腸の思いで諦めたのだ。今日は青子殿と橙子殿に弟子の『魂の改竄』をお願いしたい」
そう言ってアタシを指差すガトー。
魂の改竄?
なんか危ない臭いがするんスけど。
「簡単に言うとサーヴァントを強化する儀式のことね。まぁ、マスターの霊格に左右されるからあなたのレベルが上がってないと意味がないものなんだけどね。」
青子と呼ばれた赤い髪の女性が説明してくれる。
じゃあ、アタシがやっても意味がないんじゃないだろうか。
何日かアリーナで戦ってるけど全然強くなってる気がしないし。
「まぁ、やってみて損はない。君は自分の実力を客観的に見た方がいいと思うがね?」
橙子と呼ばれた青い髪の女性が辛辣な言葉を放つ。
普通なら反感の一つも覚える所だが、全身から放たれる彼女の説得力にアタシは何も言い返せなかった。
「……じゃあ、とりあえずお願いするっスよ」
拗ねたような声を出すアタシに送り出される形でカルナが中央の装置に入る。
青子が装置の端末を操作すると、カルナの体が光に包まれた。
「うん、マスターの霊格が規定値に達しているわ。これならサーヴァントの階梯を上げることができるわね。何よ、ちゃんとがんばってるんじゃない」
「ほ、本当っスか?」
青子の言葉にアタシは目を見開く。
どうやら知らないうちにアタシの魔力はアップしていたらしい。
しかしそうなると納得できないことがあるのだが……。
「でも未だにカルナさんはランサーなのに槍の一つも出せないんスよ。もしかしてボクのサーヴァントはどっかに欠陥があるんじゃないっスか?」
「欠陥? とんでもない。あなたのサーヴァントはかなり上級、いや超級と言ってもいいサーヴァントよ。でも、槍が出せないなんておかしいわね。この内臓魔力なら……」
青子が言葉を続けようとしたところで、カルナがそれを目で制した。
「ジナコ、少しだが力が戻ったのを感じる。よくがんばったな」
「な、なんスかカルナさん。褒めても何もでないっスよ」
憎まれ口を叩いたアタシだが顔がニヤけるのを止めることはできなかった。
自分の努力を他人に認められるのは随分と久しぶりだったからだ。
無理やりにやらされていた修行だったが一応成果はあったらしい。
まぁ、悪くない気分っスよね。
引き篭もってた15年間では味わえなかった気持ちっス。
謎の感動に浸るアタシには青子の言いかけたことはもうどうでもよくなっていた。
「さて……そろそろかのぅ……」
そしてそんなアタシの顔を見ながら真剣な面持ちでつぶやくガトーにも、この時のアタシは気がついていなかったのだった。
はい、あとがきです。
ジナコはネットスラングや少々のメタ発言をしても違和感のないキャラなので書いていて楽しいですね。
題名を少しいじりました。エクストラは小文字じゃなくて大文字だったですね。