Fate/Dangerous Reality 現実世界で聖杯戦争   作:沢井きよ

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※現実世界にサーヴァント達が召喚されて聖杯戦争が起こったら な設定の二次創作です。
※マスター達は全員オリキャラ+サーヴァント達は五次サーヴァントです。
※今後、各話ともに修正・加筆される可能性があります。
 (修正により本筋を大きく変えることはありません)
 


第1話 現実へと滲み出す

『風越(かぜごえ)市で本日未明…………

 ミイラ化した男性の…………発見者はジョギング…………』

 

 朝飯時に突然聞こえて来た地名に、テーブルについてる俺とキッチンにいる母さんは同時にテレビへと視線を移した。

 

「ねえ亮介、今、風越って言った?」

「言った言った。中央公園でミイラが見つかったんだってさ。野球場の横のあそこ」

「やだ、つまり殺されてからそこまで運ばれたってことよねえ」

「そりゃミイラは自分で動かねえし」

 

 手を拭いた母さんはテーブルの横に立ち、アナウンサーの言葉を聞き漏らさないようにテレビに集中してる。

俺も同じような感じで、食いかけのトーストを手に持ったままテレビへ顔を向け続けた。

 

「亮介も気をつけなさいよ」

「わーってるよ。つか、気をつけようがなくね?」

 

 母さんとは普通に会話してるに見えて、実際は俺かなり動揺してる。変な汗でも出そうだ。

風越市は今でこそ城も取り壊されてしまっているものの歴史のある城下町で、人口もたしか30万を超えるそこそこの街だ。

近所で強盗があった、とかなら極々たまにだけど今までもニュースで見ることもあった。

それでもこんな事件で風越の名前を聞いたのは初めてだ。

他と比べて特に治安が悪いでもない普通の街。そこで殺人事件っぽいミイラが見つかったなんて聞けば動揺して当然だろ。

そのまま脳内で「公園までどうやって運んだんだ?」とか「そもそもミイラ化するにはどれくらいかかるんだ?」とかをうっかり具体的に考え込んでしまったら、なんだか気持ちが悪くなって来た。

よし、朝飯食いながら考えるのはここまでにしよう!な!

 

 

 

「うあー……やっぱ今日はさみぃ……」

 

 吐く息が白い。年が明けてもうすぐ1ヶ月になろうって頃合だから、そりゃ寒いに決まってるか。

 

「あれ、藤森先輩? 先輩! おはようございます!」

 

 堪える寒さからポケットに両手を突っ込みながら我らが城星学園のスクールバスのバス停に着くと、小室勇太(こむろ ゆうた)が後ろから声をかけて来た。

他にもぞろぞろやって来る連中を見るに、電車が丁度着いたみたいだ。俺は毎日チャリでバス停のある駅まで来るけど、遠い奴だと電車で1時間弱かけて東京から来てる奴もいるっけ。

 

「おう、勇太じゃん。おはよ、今日もさみぃな」

「ですね。妹が朝起きれないって毎日愚痴ってます」

 

 おおげさに手を擦り合わせながら苦笑いを浮かべてる勇太に、俺もだよとこちらも似た表情で返した。誰だってこの時期は布団から出たくないに決まってる。

勇太は昔のバスケ部の後輩で1個下、後輩の中でも俺によく懐いてた奴だ。進学してからは俺も勇太もバスケはやめてしまったけど。

バスに乗って学園に着くまで適当な雑談をしているとこいつもニュースで見たらしく、例のミイラ事件について触れて来た。

 

「あの公園ってもしかして先輩の家の近くだったりします?」

「あー、どうだろな。あそこならチャリで15分くらいだな」

 

 事件現場の公園は役所なんかがある風越の中心部に近く、俺の家から中心部までチャリで10分、中心部から現場まで5分って所だ。

 

「近いのか遠いのか微妙な距離ですね」

「歩きゃ40分弱くらいはかかるけどなー。でもまあ、近い方じゃねーの」

「先輩も気をつけてくださいよ。俺らくらいの年でミイラとか嫌過ぎますよ」

「それ、母ちゃんにも家出る前に言われた」

「ははっ。と言うかあれって別に通り魔とかじゃないですし風越の人間じゃない可能性も十分あるんですよね」

「あー、そう言やそうだ」

 

 その後はくだらないやり取りをして、勇太と昇降口で別れた後はいつも通りに教室へと向かう。その途中も色々な奴とすれ違う。

前も同じ学校だった連中、去年同じクラスだった連中、そいつらを通じて知り合いになった連中、教室は2階だから適当に挨拶を交わしているとすぐに着いてしまう。

俺の交友範囲はそれなりに広く、自分のことながらよくやってると思う。

 

 

 

「よーっす」

「亮介、よーっす!」

「おはよー、亮介」

 

 2-Bの教室の扉を開けて俺の席に向かうと、堂々と俺の椅子に座っている正弘、そして机を挟んで前の席から後ろを向いて座っている星香がいた。

 

「おー、って正弘、星香、そこ俺の席じゃね。俺の席だろ?」

「ニュース見たー? 私達も危なくないかな? 帰り道に誘拐されたり刺されたり……」

「俺らの行動範囲に危なそうな所ないだろ? な、亮介?」

「いいからお前はとっととどけ!」

 

 俺の質問を親友くんと幼馴染ちゃんがスルーしたので、とりあえず無理やり正弘をどかせる。いい笑顔で「な、亮介?」じゃない。

 

 久保正弘(くぼ まさひろ)。

3年前に知り合った俺のダチ。真面目に頑張ってサッカーやってるなと思っていたら「休みがなくて趣味が潰れる!」と、あっさりやめていた。

親友と呼べる仲になった今でもたまに真面目なんだかよく分からん時があるけど、きっと本質的部分は真面目なんかではない。

割りと男前で運動神経も良いせいでサッカーやってた時はそこそこ女子からも人気あったんだよな、こいつ。

 今成星香(いまなり せいか)。

こいつの家は俺の家の斜向かいにある。幼稚園も同じで気がついたら幼馴染やってたという筋金入りの幼馴染。

昔は長かったのに今は肩の少し上くらいに髪を切ったせいか当時より活発そうに見える。と言うより実際に活発な星香には今くらいの髪の方が性格に合う。

俺らは昨年度は三人ばらばらのクラスだったけど今は三人一緒だ。運が良い。

 

「お父さんとお母さんが大分心配ちゃっててさー。私もそれに引っ張られて、みたいな……」

 

 普段明るい星香も目に見えて分かる程度には元気がない。地元での殺人事件に耐性のある人間なんているはずがないもんな。

正弘は正弘でお気楽過ぎるんだよ、この馬鹿。

 

「心配なら帰りも行きも一人になんなきゃいいだろ。流石に複数でいる所を襲いやしねえって」

 

 星香の目の前に鞄を置き、中身を机にしまいながら星香だかじゃなく俺自身にも言い聞かせるようにそう言ってやる。

 

「なんだなんだ、亮介。「俺が毎日行き帰り一緒してやる」宣言か、それ?」

「アホ」

「バカ」

「まあでも、実際しばらくはそうしてみるか?」

「うーん、家が一番近いのが亮介だしね。そうしよっか」

 

 正弘から茶々が入ったが星香の気分もいくらかは和らいだようだった。

 

 

 

「汝、三大の言霊を纏う七天! 抑止の輪より来たれ! 天秤の守り手よ!」

 

 俺が自室で制服を脱いでベッドに仰向けになった所で、右手を見つめながらこんなことを口走っているのも昨日劇場版のDVDを見たせいだろう。

だから俺は悪くない。仕方ない。厨二大好きだ!詠唱カッコイイ!

そう、俺はオタクである。ついでに正弘もである。

正弘と出会った時には既に隠れオタク気味だった俺が、同じクラスで仲良くなった正弘に漫画やゲームを貸していると気がつけば正弘もオタクになってた。

あいつがサッカーをやめた理由の趣味も……うん。すまん、正弘。

今でも隠れオタクであり続けてる俺にとって、正弘は普段もオタク趣味もどっちの面でも良い親友だ。

俺も正弘も人前じゃオタ話はしないし、中身はともかくとしていわゆるアキバ系とは遠いからクラスの奴らなんかにはバレてない……と思う。

ただし、幼馴染の星香にはとっくにバレている。

何年か前に「亮介ってアレだよね。アレでしょ?何て言うか、オタクってやつだよねぇ」と面と向かって言われた時には、バレていないワケがないのを分かっていても、相当にダメージがデカかった。

そして正弘が俺の仲間であることも当然知っている。

正弘や星香を始めとする俺の正体を知ってる一部の奴らを除いて、こんな詠唱をしてる所を見られたら多分俺は死ぬ。

喜べ御三家!俺への効果は抜群だ!

 

「あーあ、キャスターかライダーかセイバー出ねえかな。いっそアーチャーでもいいや」

 

 でもジルドレとかは勘弁な。いくらあいつの守備範囲から外れてるし安心と言っても勘弁してくれ。

俺は四次と五次なら五次の方が好きな人間だ。

ウロブチックなzeroも悪くないけど、やっぱり五次の方が華がある気がする。

まあ、五次は全体的にサーヴァントがチート揃いだったりするからな。

ちなみに五次キャスターが好きなんだけど俺の嫁!ってよりは「葛木とお幸せにな」的な気持ちがけっこう強い。

あとはまあ、人妻な葛木メディアさんもおいしいよな!っていう。

 

「とりあえずまず最初に一画消費して凛方式で効果は薄いだろうけど絶対服従の命令だな。

でもってよく考えりゃキャスタークラスって対魔力スキルないよな。もしかしたら三騎士よりも効果は上が………………って、痛っ!!?」

 

 

 

 上半身を起こして自分の右手を見つめつつニヤニヤと妄想していると、突然右手の甲に

強烈な痛みが走り、右手を抱え込むような体勢で蹲ってしまう。

 

「………なっ…………あ……ぐっ!」

 

 なんだこれ、なんだよこれ!

痛い熱い痛い熱い痛い熱い。

それに加えてドクドクと疼くような感じさえする。

最初の悲鳴から後はまともな言葉を発することも出来ない。

呻くだけで「いてええええええ!」と叫ぶ余裕すらないのだ。

経験したことがないので想像でしかないが、カッターやナイフで切り裂かれたら多分こんなか!?といった感じだ。

ただひたすらに左手で右手の甲を押さえて、痛みが少しでもマシになるのを祈るのみだった。

 

 数十秒……いや、実際はもっと短かったのかも知れない。

傷ならば消えることのないはずの痛みが、これまた急にスッと引いた俺は痛みの原因だった自分の右手へと視線を向けた。

そしてそこに在るモノに俺はこれまでの人生の中で一番の驚きを経験した。

 

「おいおいおいおいおいっ!」

 

 蹲った体勢から勢いよく膝立ちになり、改めてそれを凝視した。

胸を打つ鼓動が、時間が経てば経つだけ速くなるのを妙にはっきりと感じる。

これが興奮ではないのだけは分かる。心臓が早打ちをしているのは驚愕と混乱、その他の上手く言い表せない諸々の感情によって、だ。

そこにあったのはそれぞれの線が交差した三角形。トライバルデザインとも少し違うようなソレ。

手の甲に三本の暗い赤色の線を主体に描かれた複雑な図形。

原作で“彼ら”にコレが出た時には自分のようにあれほどまでに苦しむ描写があっただろうかと考える。

何度見ても俺の右手にある物はアレにしか思えない。

 

これをFateシリーズを知っている人間が見れば、きっと皆がこう言うに決まってる。

「それって、モロに『令呪』じゃん」……と。

 

 

 

 次の日俺は右手に包帯を巻いて登校した。

Fateの二次創作で主人公が手に包帯を巻いて登校しようもんなら、教室で凛辺りに目ざとく発見されて屋上へ呼び出しコースなアレだ。

だけど、幸いと言うか当然と言うかここには遠坂凛はいない。ついでに桜もワカメもいない。

バスの中で知ってる奴に聞かれた時には昨日の夜に熱湯で少し火傷したという話にしておいた。

手に包帯してる理由としてはまあまあ無難だよな。

星香と正弘には最初は顔を会わせた瞬間から全力で心配されたと思ったら、軽いから心配ないと言った途端に今度は全力でドジを連呼された。

まったく、ひでえ奴らだよ!

 

 

「来い! セイバー!!」

 

 反応がない。

 

「来い! ランサー!!」

 

 これまた反応がない。

そんなこんなでとりあえず同じことを全部で8回やってみたけど、俺の右手の令呪はウンともスンとも言わない。

8回なのは正規の7クラス+一応アヴェンジャーで試してみたからだ。むなしい。

そしてそのままの流れでサーヴァント召喚呪文の詠唱も済ませた。やはり何も起きなかった。

昨日の夜の右手に令呪らしきモノが出た混乱から戻った後の俺の頭は、既に二次小説脳やファンタジー脳モードに入ってる。

『現実世界の俺の右手に何故か唐突に令呪が宿った』なんていうふざけたことが実際に起きてるんだから、いっそのことサーヴァント召喚も出来ちゃっていいと思うんだよ。

令呪が宿った理由なんてどうせ考えても分からないんだし、他に気になることはあるんだ。

それは『原作通りに令呪はマスターの証であるのか?原作通りに召喚出来ちゃったりするのか?』に尽きる。

 

「ここまでので無反応だと、残るはやっぱアレかー? 魔法陣だよな」

 

 流石に俺でもあのサーヴァント召喚の魔法陣の細かい所までは覚えていない。なんとなくでならイメージ出来るんだけど。

パソコンを付けて作中でマスターの達が描いてたのと同じ魔法陣の画像を探す。

「サーヴァント召喚 魔法陣」辺りで画像検索すれば出てくる。ネット万々歳だ。

やっぱり魔法陣は手描きじゃないと!ってことで適当なデカい紙に赤マジックで拡大しながら間違えないようにひたすら描き写していく。

大判ポスターの裏ってのが雰囲気ぶち壊しだけど、これしかデカい紙がなかったんだよ!

 

 床に敷いたポスターにマジックを走らせていると召喚に使う触媒のことが頭をよぎった。

……が、もちろん俺に英雄の聖遺物なんて用意出来るわけもない。

セキュリティー厳しいだろうどこかの博物館に盗みに入れってか?無理無理。

しかも奇跡が続いて見事にソレっぽい物を盗み出せたとしても本物かどうかが怪し過ぎる。

誰が出るか分からないけど、触媒無しの召喚しかない。相性任せ性質任せ。

 

「アヴァロンなんかそもそもこの世界には実在しませんよ、っと」

 

 Fateの英霊って四次のジル・ドレやイスカンダルことアレクサンダー大王なんかは史実の人物だけど、神話や古い伝承の中の登場人物がほとんどで実在が怪しいのが大半だよな。

まあ万が一、伝承のアーサー王がこの世界に実在していたとしても男だろうし、聖剣から極太ビームは出さないのは間違いない。

 

「くっそ、文字書きづれえ!」

 

 魔法陣の図形自体はほとんど書き終わった。

残るは最後の仕上げ、と後回しにしていた周囲に書かれている文字だけだ。

これがけっこうな曲者で、見たことのある文字と違って知らない文字を書き写すのは予想以上に苦労が伴う。

しかも一文字でも間違えれば効果がなくなるだろう魔法陣。一文字一文字、慎重になるせいで余計にだ。

結局小一時間かかってそれなりの大きさの魔法陣を完成させることが出来た。

 

 この魔法陣を前にして詠唱しても何も起きなかったら、その時点から俺の右手の令呪もどきはただの消せない落書きでしかなくなる。

毎日包帯をして登校するのは勘弁して欲しい。かと言って丸出しも痛々しい。

さらにFateを知ってる人間には一発でバレてしまい、自ら俺はオタクだ!と言って歩くようなものだ。死ぬ。

 

「よしっ、行くぜ! 来いよ、葛木メディア!」

 

 用済みになった赤マジックをその辺に放り投げてると気合をいれて立ち上がり、床に置いたポスターの上へと右手を突き出して詠唱を始める。

別に大げさじゃなく俺は今まで100回じゃ済まない回数、これを唱えて来た。一言一句間違えることはない。自信を持って言葉を発して行く。

 

「閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)、閉じよ(みたせ)!

繰り返すつどに五度! ただ、満たされる刻を破却する!」

 

 最初のフレーズを言い切った瞬間、床の魔法陣の上を光が走り、体の中心から末端へと何かが吸い出される感覚に襲われる。

何かを吸われた分だけ、魔法陣の光が強くなっているのは俺の見間違いじゃない。これは、これならイケる!

 

「抑止の輪より来たれ! 天秤の守り手よ!」

 

 

 

 部屋の中の本棚の中身が崩れ落ちた光景の中にそのサーヴァントは立っていた。

 

「――聖杯の召喚に従い参上した。君が私のマス――――む。すまない、少し待ってくれ。聖杯から与えられた情報にどうにも違和感を感じるのでね」

 

召喚光が収まると同時、俺より高い位置から声を発したその男は一方的に話し始めたと思ったら、急に考え込んだ挙句。

 

「風越の……聖杯戦争だと……!? 私の記録にそんな聖杯戦争はっ……!」

 

肌の色のせいでいまいち分かりづらいが、一人で顔を青くしたり赤くしたりして。

 

「冬木ではないとは、どういうことだ!」

 

 ――最終的にはこっちを見て喚きだした。やたら迫力のある目つきで。

いや、俺も知らねえよ!?

気持ちは分かるけど落ち着け、軽くキャラ崩壊してるから!

 

 

 ってか、やっぱり令呪だけじゃなくて聖杯戦争起きるんだな……。

この世界には円蔵山はないしイリヤもいねえんだから、大聖杯と小聖杯どこなんだよ!

 

 




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