翌日。
僕は考え事をしながら座っていた。
考え事とは、昨日殺した隊長が死に際に言っていた『妖力』についてだ。一億年も殺ってなかった為か理性が吹っ飛んでいたから、あの時の事は余り覚えて無いんだけどね。
取り合えず、僕には『妖力』があるらしい。あの黒いオーラみたいなやつだ。
あの隊長の言葉からすると、妖力は妖怪しか持っていないようだ。
此が示すのは、僕が妖怪であること、いつの間にか僕は妖怪になっていたらしい。
何で成ったのかって…凄~~~い心当たりがあるんですけど…。
これは絶体アレのせいだ。アレ。心臓。真っ黒だったし。
アレを食べてから、身体能力は上がるとか、年は取らないとか。挙げ句の果てには同じ色の妖力まで出るとか起きたし。やっぱりアレのせいだよ。神は関係無かった。
で、何であんなに妖力が出たか。多分一億年もアレを食べ続けたからだろうな…。
あの心臓には、微量だけど妖力が宿っていた。それを365日、毎日3食食べる生活を一億年も送っていたら、とんでもない量になる。その結果、地響きを起こさせる程の妖力になったんだと思う。あの時は多分、ほぼ全開だった。そんな妖力が有ったら、あの結界の中なんて到底入れないだろう。
そして、今の妖力だが。どうしたものか、体から全く感じられない。あれ程の妖力なら体外に溢れ出てもおかしくないが、溢れるどころか全く感じられないのだ。外見は完全に只の中学生だ。
一体何故…
「あ、もしかして…」
ふと頭に浮かんだのは『理性』だった。
あの時、僕は理性が吹っ飛んでいた。約90%くらい。殺意だけが体を支配し、本能のままに行動していた。
だが、今は違う。ちゃんと理性がある。理性が飛ぶ前は、あの隊長も『妖力が感じられない』と言っていた。だが、本能に入った途端、大地が震える程の妖力が溢れ出てきた。
つまり、理性がストッパーの役割をしているということだ。
「はぁ…普段から少し位は出せないのかな?」
もし…このまま妖力無しでこの周辺に居ると、只の人間にしか見えない為、何時妖怪に襲われるか分からない。少しでも妖力が有れば、妖怪と判断され、襲われないだろう。
「でもなぁ…」
危ない。
殺意を少しでも出すと直ぐに理性が飛び、手当たり次第にその辺の生物、妖怪問わず、殺しかねないからだ。まだ、1度も妖怪と会ってない上、コンタクトも取れていない。この世界に来たら、まずは会って、何かしらの接点を持っておく。来る前から決めていた事だ。
「…やっぱり、特訓なのかな。」
ハァ…
溜め息が出てしまった。本能を抑える練習なんて面倒くさい事はしたくないんだけど…。
「此処じゃあちょっと危ないかな…。」
森の中…死体が消えていた所に居るが、周りに妖怪達が居るかもしれない。だから、少し離れた広い場所に移ることにした。
「それじゃ、せっせと移動しますか。」
ひょいっと立ち上がり、特訓する場所を求めて歩き出す欠であった。
ーーー欠が歩き始めた時、背後の木の陰。
すぅっ、と何も無かった陰から子供が現れた。
「…ホッ」
良かったぁ…。バレなかったよぉ…。
幼い人間の女の姿。黒く澄んだ眼。おかっぱで、黒い着物を着ている。まるで人形の様な姿だ。
「まだ未熟な私が尾行なんて…」
欠の尾行、及び監視。それが彼女の目的だ。
勿論こんな森に人間が居るわけがない。彼女も妖怪なのだ。
「親方直々の命令…しっかりやらないとぉ…うぅ…」
親方とやらの命令で監視をしているようだ。
見た目と同じで、行動がおぼつかない。
「って…あれ?見失った!?」
…見失ったようだ。
「…親方に…怒られる…」
何やら想像している…親方に怒られる所だろう。どんどん顔色が悪くなっていく。
「うぅ…こうなったら能力を使って…」
能力を持っているらしい。能力は人、妖怪又はそれ以外の生物に生まれつき備わっている物。だが、持っているのはかなり珍しい。その能力を使った彼女の体が透明になっていく。
「え~っと…もう1つの能力を…」
更に能力を発動する。
能力を2つも持っている事は非常に珍しい。
「索敵…居たっ!」
二つ目の能力を使って、欠を発見出来たようだ。
「早く行って監視しないと…」
索敵能力を維持しながら、欠の居る方向へと走っていった。
ーーーそして欠の方は…
「…やっぱり洞窟が良いんだよなぁ。」
洞窟を探していた。やはり周囲への負担を考えると、洞窟が一番良いのだが、一向に見つからないのだ。それっぽいものも有ったが、小さすぎたので断念した。
もう探すのも疲れたし、もっと斬新な方法で解決しよう…
「…造っちゃうか。」
洞窟を造る。そう言ったのだ。冷静に聞くと、有り得ない発言だが。今の欠の身体能力なら可能かもしれない。包丁や武器を駆使すれ…
「思いっきり殴れば造れる気がする…。」
…どうやら殴って造る気らしい。
「…崩れないと良いんだけど。」
下手すると崩壊する可能性もある。恐らく大丈夫だろうが、瓦礫の下に埋もれるのは嫌だ。
「でもなぁ…その辺りで特訓して、肝心の妖怪殺っちゃったらそれこそ本末転倒だからなぁ…迷うなぁ。」
散々悩んだ末、結局殴る事にした。一番大事なのは自分の身より娯楽だ。
歩いて壁に近付く。
「…構えってこんなので良いのかな?」
取り合えず、少年漫画によくある構えをとってみる。右手を後ろに引き、足を踏ん張る形にした。
「…ふぅーっ」
精神統一。正面だけを見る。崩れる事を考えると、衝撃の方向を正面だけに限定しないといけない。貫通させる。それを頭の中でイメージさせて、拳を引く。
そして大きく振りかぶりーーーー
「ーーーッ!!!」 ヒュンッ…
突き出した
ドゴォォォォォオオォォン!!!!!
パラパラ…
「ーーーどう…かな?」
砂煙が晴れ、壁が露になる。
「崩れ…ない。やったね。」
壁は見事に一直線に穴を開けた。崩れる事もなく、無事成功した。
洞窟内を少し覗いてみる。暗くて良く見えないが、長さ100m程はあるだろう。
ベタッ
「…?」
後ろで何やら音がした。今は洞窟に集中してるのに一体なんだ?
振り向くと其処には…
「ふぇ!?」
黒い着物を着た幼女が倒れていた。
ーーー数分後
例の幼女は…
「うぅ…何も吊るす事はないじゃないですかぁ…」
木に吊るされていた。
「だって逃げるでしょ。その為だよ。」
勿論縛ったのは欠だ。制服の糸を無限化させ、束ねて頑丈な縄にした。そして枝に吊るした。プラーン、と左右に揺れている。
「ふぇぇぇぇぇえん!!」
幼女が泣き出した。うるさい。
「うるさいなぁ…」
…そんな時には、あれしかないな。
袖から包丁を取り出し、幼女の体に近づける。
「あんまり騒ぐと…刺すよ?」
「ピタッ!…」
脅迫。眉間に刺すよりはよっぽど手っ取り早い。
「良い子だ。」
包丁を仕舞う。
「えっぐ…」
泣き止んだが、また泣きそうだ。
取り合えず、優しく(?)接してみる。
「で、君は誰なの?」
「ひっく…えっぐ…」
「…もう一度聞こうか。君は誰なのかな?」
「…く…黒雛《くろひな》…うぅ…」
黒雛…ねぇ。見たところ、妖怪っぽいな…。
というか、全く敵意が感じられないから降ろそうかな。
スパンッ
手刀で縄を切った。もちろん自由落下で地面に落ちる。
ドシンッ!!!
「あふっ!!」
うわぁ…顔面から落ちたよ…。痛そう。
「…えっぐ。」
打った所が赤くなってる。まあ、首が折れてないだけマシだろう。
「…大丈夫?」
「大丈夫…で…す…。」
フラフラしながら、頭の上をお星さまが回っている。よくアニメで見るけど、実物は初めて見た。
「…ほいっ。」ベシッ
邪魔なので、星は手ではたいてやった。
すると、朦朧としていた幼女…黒雛は何とか立ち上がり、此方を向く。
「…もう大丈夫かな?」
「はい…何とか…」
さて、聞きたい事がたくさん有るし、質問タイムと行きますか。
まず最初に…
「何で僕の後ろに居たの?全く気配が感じられなかったんだけど。」
「それは…その…」
「言わないと…ね?」…キランッ
「ひぃ!?」
包丁を袖から、ちらつかせて脅す。
やっぱり包丁で脅すのが一番だね。話が進むし。
「分かりました…言いますよぅ…うぅ…」
「私は…その…親方の命令で…貴方を監視してたんです…」
「…親方?」
「…ええっと…その…言わなきゃダメですか?」
キランッ!
「…私の父上、兼、この周辺の妖怪の頭領…です…。」
「妖怪の頭領?」
「はいぃ…人間達が力をつけたので…この周辺の妖怪は皆、山へと移っていて…その妖怪達の頭領が私の父上なんです…うぅ」
「へぇ…妖怪達の頭領ねぇ…。」
良いことを聞いた。一億年、ずっと探していた妖怪の所在地。山に居たとは、全然気づかなかった。
「じゃあ、何で監視を?」
「…そこまで言わないと…ダメなんですか…?」
「だって気になるし。ね?」
「…昨日、この森に突如膨大な妖力が現れて…それを感知した親方が、その原因を突き止めて可能なら連れて来てくれ。って…」
「で、其の妖力の所に居たのが僕だった…と」
「そういうこと…です」
…これは好都合だ。向こうからやって来て、更に連れていってくれるらしい。だけど…今は妖力を上手く操れないし、只の人間という訳だが。
「…あの…本当に…妖怪なんですか…?」
「何で?」
「だって…妖力が…全然無いじゃないですか…」
「…試す?」
鋭い眼光と共に、殺気を飛ばす。
「ひっ!?」
少し狂気も混じってしまった為、黒雛は硬直してしまった。
「…冗談だよ。僕は妖怪。洞窟造ってるの見てたんじゃないの?」
「は…はい…。」
「人間にそんな事出来るわけ無いじゃないか。」
「そう…ですよね。」
黒雛を取り合えず納得させる。
今は無いにしろ、僕には妖力が有るから大丈夫だろう。
「で…どうするのかな?」
「えっと…直ぐに来てもらえますか?」
「良いけど。今はちょっと無理かな。」
「?何でですか?」
「そこの洞窟で修行するから。」
「修行…ですか。」
修行というのは、もちろん本能、そして殺意を抑える修行だ。その為に洞窟を作ったんだし。
「では、その修行が終わったらで…良いですか?」
「良いんだけど…、ちょっと時間が掛かるかもね。大体…一年位かな。」
「…一年…ですか?」
「うん。かなり危険な修行だからね、それなりに時間が掛かるよ。」
「分かりました…。一年後にまた来ます。」
「ん。良い子だ。」
ポンッと頭を撫でてやる。
僕がここまで優しく接するのは初めてかもしれない。
まあ、頭領の娘とは仲が良い方が都合が良いからなんだけど。
「…///」
「さて…」
手を離し、洞窟へと体の向きを変える。
「暫くはこの洞窟には近付かない方が良い。危ないからね。」
「そんなに…ですか。」
「だから、他の妖怪にも伝えといて。」
「…伝えておきます。」
「それじゃ、また来年。」
「はい。待ってますね。」
その言葉を最期に歩き始め、そして僕は洞窟の中、暗闇の世界へと入っていった。
もう忙しくて…、見直してないので多分誤字があります。