この章はまだもうちょっと続く。
時は少し遡り。
飛行魚にて召喚魔たちを撃退していたプロヒーローたちは上空が一際強く光るとともに召喚魔たちが白く光る魔力片に変わっていったのを目撃した。
「これは……!」
「見ろ!泥が……!」
上空と地上を覆っていた黒泥が漣を起こすように白い魔力片となっていく。夜明け頃にもかかわらず昼かと見紛うほど明るく、空から降る光の雨はとても幻想的だ。
「ヨルダ=バオトの反応が消滅しました!千雨さんの勝利です!」
「無事に倒したのか……!」
「ぃやったぁーーー!!」
「良かったーーー!!」
歓喜の声が船内に響くと共に、麻帆良組の姿が少しずつ金色の粒子となって解けていく。
「今度はなんだ!?」
「千雨ちゃんの意識が薄れかけてるのかも」
「ガンガン戦ってたし、ガス欠してもおかしくはない」
「千雨ちゃんだしねぇ」
ケラケラと笑う麻帆良組に対してプロヒーローたちが慌てる。
「笑っている場合ではないだろう!?」
「いやでもマジでマズイね。私が消える前に地上に戻らないと空中に放り出される」
「……マジェスティック、足場を頼めるか?一般人と戦えないものを地上に降ろし、千雨くんと合流をしよう」
「それが良さそうだ」
マジェスティックの足場に乗ったプロヒーローたちを見送りながら麻帆良組は一人また一人とその姿を消していく。
「リアルヒーローってあんな感じなんだねぇ」
「アメコミっぽかった!」
「仕方ない、今回の報酬はまた後日だな」
「まだ受け取る気なんスか……」
「千雨さんたちは大丈夫でしょうか?」
「いざとなれば電子精霊たちがいるから大丈夫だよ茶々丸」
「さよちゃん、バッチリ撮れてたよ!」
「えへへ〜」
「朝倉さん、あんなことして長谷川さんに怒られませんか?」
「そりゃあもう……めちゃくちゃ怒るね。でもたとえそうだとしても、私は真実を報道することを諦めないわ!」
「パパラッチ根性たくましいなー」
「なになに、面白いこと?」
「トトカルチョでもするの?」
「桜子、あんたはやめとけ」
「えー?」
金色の粒子に解けていきながらも最後まで騒がしい彼女たちの声を背に、エンデヴァーたちは千雨の元へと向かう。元凶の敵が落下してきていない以上、千雨と同じマンタに乗っていると予想されていたからだ。
一方で、マンタに乗っていた千雨たちだが、先に立ち上がれる程に回復した未来の千雨は身体を起こすので精一杯の千雨の耳元に屈んで一言囁く。その言葉に千雨は一瞬で目を見開き、まじまじと見る。
同時にプロヒーローたちがマジェスティックの足場で空中移動して駆けつけた。
「まだ生きて動けるとは……!」
「両手を上げて大人しくしろ!!」
「……ああ、ヒーローか」
一歩でも動けば攻撃すると言わんばかりのエンデヴァーたちに対し、背を向けたままゆっくりと立ち上がる彼女は、朗々とエンデヴァーたちに目的を語った時に放っていた異様な雰囲気や、背中から生えていた異形もなくなっている。
その場でゆっくりと両手をあげる振りをしながら右手の指を鳴らすと、千雨たちの乗るマンタが強く光り、強烈なつむじ風が周囲の魔力片を巻き込みながらマンタごと包むように吹き荒れる。
すぐさま動くヒーローたちにニヤリと笑いながら振り返る。
「残念だが、テメーらじゃ捕まえられねぇよ」
つむじ風と光は勢いを増し、周囲のヒーローたちが近づこうとするのを阻み、ヒーローたちの攻撃は見えない壁に防がれる。
「待て!!」
「長谷川少女!」
「……」
「あばよ、ヒーロー」
千雨はヒーローたちの声を無視するように俯き、二人の千雨は旋風を残してマンタごとその場から消えた。
「……敵名『ヨルダ=バオト』による拉致により、行方不明者一名。
捜索と同時並行で現場の救助に向かう」
エンデヴァーたちは苦渋の決断をして地上へと向かった。
黒泥が無くなった地上だが、瓦礫やガラスの破片などを取り去って怪我をしないようにと人為的に作られたであろう安全な場所に、泥に飲まれたプロヒーローのみならず、瓦礫の下に埋もれていたはずの一般市民たちが集められていた。
「ウワバミ!虎!」
あの恐ろしい泥に飲まれたウワバミも虎も外傷は無く、眠っているだけだった。
「あれ、私……」
「む……?」
「二人とも無事か!?」
「ん……あ、あれ……え、園長は……?」
揺すられて起こされたウワバミは困惑して周囲を見回す。
目覚めるまで、彼女は人生で一番幸福の中にいた。
彼女が絶賛片思いしているとある動物園園長をしている兎頭の男性と恋仲になり、デートを重ね、プロポーズされ、結婚式を上げ、幸せな家庭を築いていた。人生の全てが順風満帆で不幸というものが一欠片もない日々。
しかし、今彼女は荒れ果てた元市街地の中にいた。
「……え……?」
園長とのデートも、素敵な夜景を見ながらプロポーズされた事も、一番の友人に結婚式でブーケを渡した事も、幸せな二人の一軒家での生活も。夢と言うにはハッキリと覚えている。五感全てが幸福を味わい、歓喜して謳歌していたこの世の春のごとき日々!
しかし、現実は無情である。
「ウワバミ?」
「……ウソでしょ……?」
儚く散った甘美な幸福の世界に対し、ウワバミは全て幻想であったなどと信じたくなかった。
「嘘だッッ!!!」
「どうしたウワバミ!?」
「虎、泥に飲まれてからお前たちに一体何があった?」
「我も困惑しておるが……なるほど、そういう事か……」
虎はウワバミほどではなかったが、虎もまた幸福な夢を見ていた。
ワイルド・ワイルド・プッシー・キャッツのメンバー全員で無事にヒーロー業を続け、ピクシーボブが最初に結婚し、ラグドールもマンダレイも公私共に充実した日々を送る。その中でも虎はヒーロー・ボディービルディングの世界大会に出場が決まり、その肉体美をより極めるという夢だった。
虎は特別に強い願いを持っていなかったことからウワバミほどの混乱を生じていなかった。
だからだろう、その幸福な夢の直前に見たことを覚えているのは。
「ジョーカーは?」
「何か覚えているのか!?」
「うむ、彼女が我らを守ったことをな」
迫り来る黒泥の暴流が虎を飲み込んだ時、虎は虹色に輝く泡の中に包まれた。薄い泡の膜の向こうから亡者の手が怨嗟の声と共に伸ばされるものの、虎には届かない。
救助対象者の"個性"が暴走したのかとも考えたが、それよりも先に姿が見えずとも聞こえた声に意識を向けた。
「全く……リア充に効きにくいって、デメリットとして博打過ぎるだろ」
「その声は、ジョーカーか」
その声はまだ会って間もないが虎自身もよく覚えている、長谷川千雨のものだ。
となれば、この虹色に輝く泡も彼女によるものかもしれない。
「ジョーカー……ああ、
あんたらの代わりに救助もしてやっから、ここでしばらく眠っててくれ」
面倒臭そうにそう言われてから虎は急激な眠気に襲われ、幸福な夢を見たのだ。
あの瞬間はしっかりと目覚めていたのを虎は確信していた。
「泥に飲まれた我らを、ジョーカーが眠らせたのだ。ただ、我らの代わりに救助もすると言っていたが」
「虎、それは『どちら』の彼女だ?」
「『どちら』?どういう事だ、彼女は一人で……」
「君が飲まれた後、長谷川千雨が二人いたんだ。
変装して我々に同行していた彼女と、もう一人な」
「……詳しく、聞かせてくれ」
虎とウワバミをはじめ、泥に飲まれたヒーローと一般市民たちが一人また一人と目を覚ましていく。
その中には敵との交戦中に倒壊するビルの中にいた者、瓦礫のなかで生き埋め状態にされた者、両足をコンクリートに挟まれたと証言する者や衣服に血が付いていたり破れている者などもいたが
また、瓦礫の中から見つかると思われていた死者も行方不明者も発生しない
後に、オールマイト引退前最後の事件である『神野の悪夢』と共に『神野の奇跡』あるいは『奇跡の夜明け』と呼ばれるようになる。
「……や……みど……緑谷!しっかりしろ!」
「う……切島、くん……?」
神野駅前に避難していた緑谷は一緒にキドウに保護されていた切島に揺すられて起こされた。
周囲は空から降ってくる輝く花弁のようなものにより昼間のように明るく、同じように駅前に避難していた人々が倒れるようにして眠っており、飯田やプロヒーローが起こして回っている。
「……そうだ、長谷川さん!!長谷川さんは!?」
「落ち着け緑谷!……事件は無事に解決したようだぜ。あの怖ぇ泥に飲まれた時はどうなるかと思ったけど……すげぇ夢見たな」
「切島くん……うん、あの夢は――――」
「紅頼雄斗が俺に直接戦い方を教えてくれる夢でよぉ!」
「えっ」
切島の言葉に緑谷は固まった。
緑谷もオールマイトグッズに囲まれて、オールマイトのサイドキックヒーローになる夢を見た。雄英の仲間たちもプロヒーローとして各々が活躍している夢。
しかし、途中から別のものを見たのだ。
「切島くんは、見てない……?」
緑谷ははっきりと覚えている。断片的ではあるもののあの記憶は紛れもなく……もう一人の長谷川千雨の記憶だった。
千雨たちの転移から二時間後の午前七時。
行方不明となった長谷川千雨およびヨルダ=バオト捜索のために警察のもとへ捜索特化のヒーローに加えて千雨が転移したとき現場にいたエンデヴァー、ギャングオルカ、そして雄英教師の根津、相澤、オールマイトが集められた。
捜索特化のヒーロー以外は神野事件と雄英記者会見からそのままの恰好で集まっている。
「それで、長谷川少女は?」
「依然として見つからん」
「こちらで長谷川くんの自宅を確認したんだが『何もなかった』」
「何も?それはどう言うことですか?」
「家具も電化製品も日用品も何もかもなかったんだ。空き部屋と間違えたのかと思うほどに、きれいさっぱりね……」
家具の跡や電気代や水道代からして合宿の直前までそこで生活していたのは確認出来ているが、どこかに売った痕跡すらない。塚内はそう言ってため息をついた。
部屋がヒーロー公安委員会の会長名義で借りられていた事もあり、オールマイトと同等あるいはそれ以上に存在が隠蔽されているとも言えた。
長谷川千雨の公的な記録として残っているのは、円扉中学校に転入して在籍し卒業したこと、それから雄英高校に進学して在籍している事のみ。
公安に保護された特一級"個性"事故被害者という情報が調べつくして出てくるやっとの情報だった。
「警察で調べた限り、手がかりになりそうなものは殆ど何も出てこない」
「校長、公安委員会は?」
「向こうが情報を黙秘していると言うよりも、向こうも突然の出来事で色々と慌ただしいようなのさ。オールマイトの事実上引退に加えて今回の事件規模と内容は国際的にも大きな影響を与えているようだからね。
少なくとも、NHJへの対応はしているようだ」
「そうですか……」
ヨルダに関しては本来ならば世界ヒーロー協会が対応してもおかしくない事件の規模だが、突発的かつ驚異的な速度で広範囲に広がったのだ。加えて、千雨が解決したことは世界の表と裏を問わずに知れ渡ってしまった。敵となれば脅威だが、味方に出来れば頼もしい。
彼女を手にした組織は今後数十年の黄金期が確約されると言っても過言ではない。
対処しなくてはならないことが多く、公安側も千雨の情報を小出しにするつもりはなかった。
「にしてもまさか、千雨くんが特一級"個性"事故被害者とは……しかも、実質公安の後ろ盾付きの。
雄英は把握していたのか?」
「ああ、去年の今頃に雄英に転移して、そこに公安委員会会長が居合せたので。
個人情報ですし、新任のオールマイトさんには業務に慣れてもらうのを優先で伝えていませんでしたが」
「そ、そういう事だったのか……」
オールマイトは自身だけが知らなかった事情を知って安心した。てっきりハブられているのではないかと不安だったのだ。
「今回の件は特一級認定での転移も同一犯と考えられるのさ!」
「失礼、連絡が……これは……」
相澤が自身のスマホに届いたメールを確認する。
それは、千雨からのメールだった。
時間は事件終息から三時間後の午前八時。
緑谷たちは途中でバーニンに保護された轟、八百万と合流して、爆豪含めて全員がエンデヴァー事務所の一階の奥まったところにある小さめの応接室で保護されていた。
空から降り続ける幻想的な光は、雨にも花弁にも見える。地面に触れると積もる事なく粒子となって消えていくその光景は世界中で見られているらしく、オールマイトの最後の戦いを含めて一晩の出来事全てが一面を飾るニュースになっているが、注目度としてはオールマイトの電撃引退が一番だ。
拉致被害にあった爆豪を保護したことは警察に報告してあるのだが、黒泥の被害の確認が落ち着くまでは緑谷たちとともにエンデヴァー事務所にて保護されることとなっている。
そこで緑谷は、自身が見た長谷川千雨の記憶の夢の話をした。
「……もう一人のアホ毛の記憶を夢に見た、だぁ?」
「確かに興味深い話ではあるが、夢だろう?しかも、緑谷君しか見ていない」
「なんで僕だけが見たのかもわからない。……でも……間違いないとは思う」
「そんな事が本当にあり得るのか?長谷川が見たことのない宇宙船に乗ってたり、宮殿みたいなところにいたりって……」
「『超常』がなければ人類は今頃恒星間旅行をしていたかもしれない、という話は確かに有名ですし……あの黒泥は千雨さんの能力とまるで別物でした。
千雨さんに何か裏があるというのはわかりますが、流石に突飛すぎますわ」
「流石にSFっつーか、オカルトっつーか……」
緑谷の夢の話については誰もが懐疑的だった。証拠として弱すぎる上に空想としか思えない話だったからだ。
大人の千雨が宇宙船に乗っていて、宇宙で敵と戦い、そこからこの世界に転移したなど、どう説明しても理解できるわけがなかった。
「一度、ニュースなどを踏まえて状況を整理しよう。
昨晩、長谷川くんは変装してプロの現場に了承のもと同行していた。そして僕たちの保護をエンデヴァー事務所に依頼した。
オールマイトの勝利の後、長谷川くんに瓜二つの女性敵が電波ジャックしながら強襲。
長谷川くんは変装を解いて応戦。黒泥が全世界に広がる中で勝利し泥が光の雨に変わった後、敵は長谷川くんごと転移した。
僕たちは泥に飲まれてから幸せな夢を見て、緑谷くんだけが敵の記憶を見た。その内容は長谷川くんが別世界からもう一人の長谷川くんと共に転移してきた……」
「クソデクしか見てねぇ以上、ただの夢だろ」
「……あながち、緑谷の言うことは間違いじゃない可能性がある」
「えっ!?」
その場の全員が驚きながら轟を見た。
轟は手にしていたスマホを見せた。そこにはネットニュースが表示されている。
「NHJが今日発売した週刊誌だが、長谷川が去年の八月以前に日本にいた痕跡が無く、突如現れているという内容らしい。
ちなみにそのNHJは昨夜の雄英会見で長谷川の経歴が不確かって質問をしていて……偶然にも今朝、敵組織への資金提供など複数の容疑にて家宅捜索と役員含め社員複数名の逮捕で、実質的に倒産だと」
「どう考えても
「ニュースでも長谷川くんがアンタッチャブルになっているようだ。
純粋に未成年だからというのもあり得るが……それ以上に、何らかの力が働いてるのは間違いない」
偶然にしては出来過ぎている。
勿論千雨が未成年故に取り上げづらいというのもあるかもしれないが、何者かが意図的に情報を制限していると考えられる規模だ。
「ヤオモモ、映画とかで見る証人保護プログラムを長谷川が受けたってのは?」
「保護を受けたなら尚更、体育祭などでメディアの注目を集める機会の多い雄英でヒーローを目指すのは道理に合いません。
千雨さんが名前への反応が遅れたりしたところも見たことがないので、その可能性はゼロかと。
とはいえ千雨さんはもともと体育祭には出場しない予定だったと言っていましたから……」
「長谷川に何らかの事情があるのは確実で、しかも即時に情報制限が出来る立場と繋がりがある……ってことか」
「緑谷さんが見たとおっしゃる記憶が断片的ですし、情報が少なすぎますわ」
情報が曖昧で足りな過ぎる。
そんな話し合いをしていると、応接室のドアが開いた。
「元気そうだなお前ら」
「相澤先生!それに、オールマイト!」
様々な対応に追われつつも、保護された緑谷たちのところに急いで駆けつけたのだろう。相澤は昨日の会見での黒い背広姿のまま、オールマイトはぶかぶかのヒーローコスチュームのままだった。
映像で見た以上に痩せ細ったオールマイトの姿に緑谷以外は悲痛な表情になり、緑谷は残り火もなくなったんだという事実に今にも泣き出しそうだった。
「先生!あの、千雨さんは!?」
「……警察やプロも捜索しているが、今の所はまだ見つかっていない」
「そんな……」
千雨の行方については手がかりすらない状況だった。
千雨がエンデヴァー事務所に用意していた偽物の囮は掌大の人型の紙切れ一枚に変わっており、千雨が使用していたマンションは家具どころか埃ひとつ残っておらず部屋の鍵も郵便ポストの中に入っていた。
まるで、最初から居なくなるのが分かっていたかのように。
「……今朝、長谷川から退学願のメールが届いた」
「た、退学願!?」
「暗号など他に情報がないか詳しく調べたが……間違いなく、長谷川からの退学願だった」
「何で……」
「お前たち五人は昨日、神野に爆豪救出に赴いたそうだな」
相澤の言葉にギクリと五人は固まる。
法を犯していないとしても、それは怒られないことにはならない。
「長谷川が、無謀な計画の
お前たちの行動の責任はすべて自分にあると」
「違う、あれは俺が!」
「クラスの仲間としてお前たちにしてやれる
否定する切島の声をかき消すように、相澤は強く怒鳴る。
相澤の顔は見たことがないほど苦しそうに眉間にしわをよせていた。
「『だから
分かるか、飯田、轟、緑谷……分かるだろ、お前らなら!!!」
相澤の吐き出した言葉に三人は俯いてこぶしを強く握る。
【長谷川千雨】という人間は、視野が広く合理主義で無駄を嫌い自分を最優先すると同時に『いざという時に仲間の為なら何でもする覚悟が出来る人物』であると。
保須で、I・アイランドで、林間合宿で。何度も何度も救けられ、守られた。自分たちがヒーローになれるようにと、夢を諦めずにいられるようにと手を尽くしてくれた。
相澤は千雨が転移してきてからの約一年間、ずっと千雨を見てきた。
出会った当初の千雨は周囲全てを敵と見なすように警戒していたが、雄英に入学してUSJ事件や体育祭など様々な出来事を経て徐々に周囲を信じるようになった。
トラブル続きのクラスだからか、無茶ばかりの周囲のために助言をしたり陰ながら助けたり世話をするようになった。教師として簡単に容認できない反面、彼女の実力や判断力の高さはプロに匹敵していた上に、なによりも彼女が馴染んできた証として受け入れた。
誰よりも周囲と馴染もうとしなかった千雨が、誰よりも周囲を守ろうとすることを。
「……俺たち教師やプロが後手に回って、結果長谷川が戦うことになったのも事実だ。
今まで長谷川の行動を俺が止めないでいたのは、あいつは引き際を分かっていて、誰にも迷惑をかけない範囲で出来ることをする奴だからだ。
命を捨てるような……間違った自己犠牲をしない奴だからだ」
それが、この結果である。
相澤は千雨が退学願を出したのは、公安直属のヒーローになる道を選ぶのだと考えた。
これ以上、雄英に迷惑をかけないように。ヒーローとして表に出ることが出来ないと判断したのだと。
「色々棚上げして言わせてもらうが……真実がどうであれ、行動には責任が伴う。
お前らの責任をあいつが負うと決めた。その責任の取り方が
相澤の言葉に、八百万が顔を真っ青にする。
尊敬する親友の未来を、自分が台無しにしてしまったのだと。
「わた、私……そんなつもりじゃ……!」
「八百万のせいじゃねぇ!……俺と切島が」
「落ち着きなさい八百万少女、轟少年。相澤くんもだ。
長谷川少女については今捜索しているヒーローを信じよう。
……緑谷少年たちはまず帰宅だ。一晩帰っていないんだ、親御さんたちも心配している。
轟少年は事務所に残っても問題ないと思うが……」
「……いえ……一度家に戻ります」
「そうか。
じゃあ駐車場に移動しよう。爆豪少年についても我々が送り届けることになるから安心したまえ」
オールマイトの先導のもと、緑谷たちは静かに応接室を出て廊下を移動し、事務所の裏口から駐車場へと出た。
その時だった。
「残念ですが、あなた方には我々と共に来てもらいます」
「誰だ……!?!?」
突然現れた二人の女性が行く手をふさいだ。
三日月の飾りのついた杖を手にした魔女の三角帽子を被ったパンツスタイルにゆるいおさげ髪の女性と、本を手にした金と黒と白のヒーローコスチュームにも見えるフルボディースーツを着たショートヘアの女性。
緑谷はその二人に初めて会ったはずにも関わらず、既視感を覚えた。
一方で、相澤とオールマイトは警戒心を強める。
「ここに我々がいることはごく一部の人間しか知らないはずだ……」
「『彼女の記憶』を見たのでしょう?」
「!!」
「隠し事は無意味ですよ、
ショートヘアの女性の持つ本がパラパラとページをめくる音を立てて開かれる。
飯田は千雨が合宿襲撃時に持っていたものと同じだと分かった。
「我々は国際太陽系開発機構所属、
「抵抗は無意味と心得てください」
その言葉で緑谷は思い出した。
この二人は緑谷が断片的な記憶の中で見た
宮崎のどかと綾瀬夕映だった。
ヒロアカ完結記念更新です。完結ということにまるで実感がわいてなくて次号で続きを読もうと探しそうです。
堀越先生、素晴らしい作品をありがとうございました!!ヒロアカ最高!!!!
最終巻(書き下ろしあり)、フルキャラクターブック、画集、全世界キャラ投票、大規模原画展、どれも楽しみです!!!
はい。という事でここから急展開です。ちう様もプロヒーローも雄英もクラスメイトも敵も社会も全てどうなっていくのか。
ここまで大風呂敷広げてるけど大丈夫なのかって?全然大丈夫じゃないので頑張ってPlus Ultraします。
以下、今回の解説
平行未来ちう様の敵名(現時点での小説内での呼び方)は『ヨルダ=バオト』ですが、これは憑依されてる時にヨルダ=バオトと名乗っていたからです。本物のヨルダ=バオトは消滅してます。
この時点で説明するのにややこしいにも程がある。表記を『ヨルダバオト』にしてもいいんだがややこしいのでここは次回以降どうするか考えてます。お楽しみに。
ちう様たちは共に逃亡。
このまま元の世界へ帰るのか、退学願のメールを送りつけたり部屋の中を空っぽにしたり色々と暗躍している模様。ちう様が二人いたら完全犯罪になりそう。どうなるのやら。
緑谷だけが断片的に記憶を見ました。これはワンフォーオールによる副作用。※オールマイトは泥に飲み込まれてないので見てないです。
また、先代たちの人格は目覚めてないので回想編のさらに断片的なものです。
マスゴミことNHJを潰したのはちう様ではなく公安になります。
法律的にも常識的にも未成年の過去暴露なんてアウト中のアウトをやる会社なら消えない筈がなく。
とはいえ全部の罪が本当かは不明。
少なくともちう様の情報を止めたのは公安。こちらも色々と行動中。
相澤先生はメンタルがかなり追い詰められてます。
オールマイトが勝利した後千雨=ヨルダ出てきたし、オールマイト庇ってた黒髪ヒーローが千雨だったし、今は叶わぬ学生時代に思い描いていた夢を見せられて、目覚めてから千雨が誘拐されて、千雨からの退学願読んで、緑谷たちの無謀な行動を知った状況からの今回なので。
そして遂にネギまキャラが追加。
宮崎のどかと綾瀬夕映です。外見はUQ12巻表紙にある未来軸の姿。
ここからどう動くのか!
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