ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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9/1で拙作が六周年を迎えたので更新です。


tell the truth

「国際太陽系開発機構……?聞いたことがない機関だが」

 

オールマイトは聞いたことのない機関名に首を傾げつつも、二人から視線をそらさない。

この状況下での接触など、ただ事ではないと経験が告げていた。

それは相澤も同じだったようだ。

 

「お前らは下がってろ。

ここはエンデヴァー事務所の敷地内だ。騒げばすぐに他のヒーローが来るぞ」

「いいえ。残念ながら、ここには誰も来ないですよ」

 

事実、誰一人としてこの場に来ない。それは夕映が人払いと対電子精霊傍受のための結界を敷いているからだ。

相澤とオールマイトは大手事務所にもかかわらず応接室からここまでサイドキックにも事務員にもすれ違うことがなかったことを思い出し、既に敵の手の内にいるのだと察する。

今の相澤は会見での黒い背広で捕縛布を持っていない上に、一緒にいるオールマイトはやせ細った姿で戦えるはずもない。

 

「意識を操作するタイプの"個性"か!?少年たちは下がっていなさい!」

「俺の生徒に手出しさせるか!」

「……仕方がありません、のどか」

「うん、夕映」

「八百万!捕縛布を……!!」

 

手にしている長い杖を構える夕映にオールマイトが右腕を伸ばして生徒たちを背後へと下がらせる。同時に会見用の背広のままの相澤がすぐさま捕縛布を創造するよう八百万に指示を出しながら個性を抹消するが、八百万の創造よりも先に夕映が一瞬で距離を詰める。

"個性"を抹消したにもかかわらず、それに動じることなく杖の石突での棒術と近接格闘を仕掛けてくることに相澤は驚いた。

大半の敵は"個性"を封じられることで隙が出来るし、"個性"を封じられない異形型の近接戦闘も熟知している。しかし彼女はそれらと異なり、格闘技術が段違いに高い。

それもそのはず、夕映はネギを手本として鍛えて魔法剣士スタイルを身に着けている上に、戦乙女騎士団と副業の探偵業務で実戦経験も数多く積んできたのだ。魔法技術だけに特化しているわけではない。

すぐさま相澤を地面に転がしてうつ伏せにし、右腕を捻り上げながら抑えつけて無力化してみせた。

 

「相澤くん!」

「知ってはいましたが、抹消は厄介ですね。『無効化』よりは弱いですが」

 

相澤を押さえつけた夕映はすぐさま収納魔法でしまっていた布を使い相澤に目隠しをして捕縛結界で動きを完全に封じる。

 

「先生!」

「複数能力持ち……!!

少年たちは逃げなさい!敵う相手じゃない!」

「んな事言ってる場合じゃないっス……!」

「相澤先生を、放せ!」

 

切島、轟、緑谷、爆豪、飯田が相澤を捕縛した夕映に攻撃しようと接近するが、のどかが夕映を守るように一瞬で現れ、彼らの攻撃にカウンターを決めたり先に攻撃して五人を地面に転がす。

まるで、どこからどういう攻撃がくるか未来を知っているかのように的確に。

 

「……ですから、抵抗は無意味ですよ」

「この人たち、強い……!」

「君たちは一体何が目的だ!」

 

オールマイトから向けられた気迫を気にすることもなく夕映が答える。

 

「我々の目的は、千雨さんの計画を阻止することです」

 

その言葉に全員動きを止め、緑谷が問う。

 

「長谷川さんの、計画……?

あなたたちは、ヨルダ=バオト……もう一人の長谷川さんの仲間なんですよね?

長谷川さんの計画って、どういう事ですか!?」

「話をきいてくれるのであれば話しましょう。

ちゃんとした自己紹介と説明は()()が揃ってからが良いですね」

「全員って……」

 

夕映が指を鳴らすと相澤を拘束していた捕縛結界がパキリと音を立てて解除され、それと共に地面に光る魔法陣からクラスメイトたちと、千雨の捜索のために警察署の会議室にいたはずの根津と各地を捜索していたエンデヴァーとそのサイドキックたちが現れた。

 

「ムッ!?」

「うわっ!?」

「何!?ここどこ!?」

「敵か!?」

「あ!相澤先生に、オールマイト!」

「耳郎さん!お茶子さん!」

「ヤオモモ!」

「うわ、え、エンデヴァー!?」

「焦凍!!?」

「切島!それに爆豪!!って事は、お前ら……!」

 

家にいたのか裸足やスリッパの者も含めて千雨以外のA組全員が転移させられて揃ったと同時に、瀬呂たちは緑谷たちが皆の制止を振り切って爆豪救出に赴いたことを理解した。

一方で、千雨の捜索にあたっていたエンデヴァーたちは攻撃態勢を取る。

 

「今のは、もう一人の千雨くん(ヨルダ=バオト)の転移……!」

「ヨルダ=バオトって、あの長谷川を攫った!?」

「じゃ、じゃあこいつら敵なんじゃ……!?」

「エンデヴァー、落ち着いてください。お前らもだ。

……彼女たちは我々に話があるようです」

 

すかさず攻撃しようとしたエンデヴァーたちの個性を相澤は抹消する。

同じ事を繰り返すのは合理的じゃないからだ。

そんな相澤に対してエンデヴァーが大声で怒鳴る。

 

「話だと!?何を悠長なことを言っている!

すぐに塚内たちに連絡を……!」

 

エンデヴァーが連絡しようとスマホの入ったポーチに伸ばした手を一瞬で接近したのどかが止めた。

 

「今ここは聞かれないようにしていますが、千雨さんに盗聴される危険があります。電子機器の使用はいけません」

「貴方がた全員知りたいのでしょう?千雨さんたちがどこに居るのか、何をしているのか」

「長谷川がどこに居るのか知ってるのか!?」

 

轟の言葉に頷き返した夕映は隣に戻ったのどかと共に自己紹介を始める。

 

「改めて自己紹介を。

私は国際太陽系開発機構・ISSDA所属にして白き翼(アラ・アルバ)の一員、綾瀬夕映」

「同じく国際太陽系開発機構(ISSDA)所属にして白き翼(アラ・アルバ)の一員、宮崎のどかです。

私たちは貴方たちに『千雨さん』の計画を止めていただきたくて強制的にお呼びしました」

「千雨ちゃんを、止める?」

「計画だと?」

 

その反応を見た夕映は眉をしかめた。

 

()()()も『千雨さん』だから呼び分けにくいですね。

我々の目的はヨルダ=バオト……いえ、これも混乱しますね。黒いローブを着ていた方の千雨さんを『ヘカテー』と呼びましょう。

彼女に対してです。

『ヨルダ=バオト』は我々の宿敵ですから」

 

自分で言っていて混乱した夕映が『ヘカテー』に呼び名を改める。ヨルダ=バオト(同じ名前)を使うと口頭では説明しにくい状況だからだ。

そのことにエンデヴァーが眉間にしわを寄せて聞き返す。

 

「待て、貴様らの言う『ヨルダ=バオト』は……その、ヘカテーと同一人物じゃないのか?」

「違います。……いえ、勘違いするのも無理はないですが。

『ヨルダ=バオト』は我々の宿敵であり、奴は倒した相手に憑依するという能力があるのです。

見ていたでしょう?ヘカテーの背にとり憑いていた金髪の女性のような異形を」

「えっと……じゃあつまりアレって……!」

「ゆゆゆ、幽霊ってこと……!?」

 

青褪めたまま聞き返す峰田と耳郎。二人はホラーが大の苦手だった。

その他の面々も一部顔を青ざめさせている。

 

「具体的には違うんですが、まぁその認識で良いでしょう。

あれは2,600年を生き、祟り神級の亡者を引き連れ怨嗟の泥を操る精神生命体ですので」

「オカルトホラーかよ!?」

「じゃあ緑谷が夢で見たのは!?」

「何!?どゆこと!?」

 

突然の転移、味方らしき謎の二人組、千雨の計画。ヨルダ=バオトについて。

一気に色んなことを聞かされて混乱している彼らを見て、夕映とのどかは顔を見合わせた。

 

「……一から全て話した方がいいみたいですね」

「話が長くなるけど仕方がないよ」

 

照りつける日差しの中、のどかは話し始めた。

 

「私たちとヘカテーは同じ平行世界の地球出身で、ヨルダ=バオト討伐を目標としていました」

「急にSF!?」

「平行世界って……あの、映画とかゲームでよくあるやつだよね?」

「んな馬鹿な」

「つかオカルトホラーがどうしてSFになるんだよ……」

 

懐疑的な面々に夕映が反論する。

 

「平行世界は空想(フィクション)ではなく、実際に存在します。

そもそもヒーローなんて架空(ゆめ)が現実になっているのに『ありえない』なんて事がありえないでしょうに。

世界というものは大樹の枝葉のように無数に存在しているのです。奇跡的な確率で世界を移動する場合もありますが、本来は移動することは出来ません。それが『平行世界線』と『異界』との差でもあるのですが……いえ、話をもどしましょう。

我々の世界に存在するヨルダ=バオトの討伐に向け、ヘカテーは強力な道具を作ったのです。

『特定の条件を達成するまで対象を星に縛りつける』と説明を受けたのですが……実際は『使用者と指定した対象者を、指定した平行世界へ移動させ、特定の条件を達成するまで星に縛り付ける』というものでした。

その対象があなた方のクラスメイトとなった千雨さんであり、この世界です。

我々はヨルダ=バオトの前憑依者を倒したものの本体は討伐出来ず、私とのどかは鎮め石として取り込まれ、ヘカテーがヨルダ=バオトに憑依されるとともにこの世界へと転移しました。

それが今から一年前になります」

「一年前……」

「……多分だが、事実だろうな」

「相澤先生!?」

 

夕映の語る突拍子もないことを一番信じなさそうな相澤が真っ先に事実だろうと言い、続けて話をする。

 

「あいつが別の世界から来たというのには納得がいく。こいつらと同じく"個性"と言うには()()()()()()()()()

……それにこれはプライバシーに関わる事だから本来は本人から言うべき事なんだが……あいつは、特一級"個性"被害者だ」

「特一級……?」

「時間や空間に関する"個性"事故の被害者だ。

若返りや老化、転移事故などにより治癒・帰還が困難と判断され元の生活に戻れない者を認定し保護する特別制度。

あいつは、一年前の雄英に突如として現れたんだが……さっきの転移の光は長谷川が現れた光と同じだった」

 

相澤の言葉に信憑性が増したのか、先ほどよりは皆の雰囲気が緩む。

 

「事故と言えば事故でしょうね。彼女は一方的に巻き込まれたと言っても過言ではないです。

そしてヘカテーの目論見通り、千雨さんはヨルダ=バオトを討伐しました。おかげでヨルダ=バオトの内側で鎮め石となっていた我々が解放されたのです」

「そちらの緑谷出久さんがヘカテーの記憶の一部を見たのは……体質によるものでしょう」

 

のどかの言葉に緑谷は確信した。記憶を見たのは"ワン・フォー・オール"を持っているからだと。

体育祭にて心操と戦って洗脳状態になった時、突然知らない人たちの面影が浮かんだ。おそらくあの時と同じことが起きた結果、記憶を見たのだろう。

それと同時にあえて『体質』と誤魔化してくれたのだということも理解した。

 

「今、ヘカテーが最後の計画に入っていると思われます」

「それは一体?」

「【長谷川千雨】を元の世界へ帰すこと」

「帰す……」

「そんなことが出来るのか?」

「当然です。此処に『来た』なら『帰る』ことも出来ます。

この地球の魔力濃度から考えても世界線転移の魔法発動に支障はないでしょう」

「ん?」

「今……"()()"って言ったか?」

 

投げかけられた疑問に夕映は固まる。

つい()()()()()で話してしまったが、彼らは夕映たちからすれば【魔法を知らない一般人】に他ならず。

 

「……のどか、もしかして私はオコジョ刑確定でしょうか?」

「……こ、この世界には魔法世界は存在しないし、本国のエージェントにバレなければ大丈夫だよ!

それに……もう、正直に話すしかないみたい……」

 

青い顔ののどかたちが視線をそろりそろりと動かせば、突き刺さるほどの視線と交わる。

 

「長谷川の能力は、"個性"じゃないのか?」

 

向けられた視線に夕映とのどかは観念するほかなかった。

 

「我々が扱うのはあなた方のような遺伝性固有能力……そちらでの呼称でいうところの"個性"ではありません。

体系化された学問で、"魔法"と呼ばれます。

精神力と呪文で世界に満ちる自然エネルギーの『魔力』を操作して現象を引き起こす、あるいは体内に取り込んだ自然エネルギーあるいは生命エネルギーの『気』を引き出して身体能力を強化することが出来ます」

「オカルトホラーからSFだと思ってたのが、急にファンタジーに……」

「濃い……」

「どうなったら幽霊と平行世界と魔法が繋がるんだよ……つーか、どれか一つに絞れよ……!」

 

内容が突飛すぎると言うべきか、濃厚過ぎて頭痛を覚えるほどだが、そんな反応をしている面々に対して心外だと言わんばかりに夕映が反論する。

 

「それはこっちのセリフです。どうしたら社会がこんな非現実的なアメコミ調になるのやら……」

「夕映、"魔法"と彼らの"個性"に互換性がある事やこの世界の魔力濃度やヨルダ=バオトが居ない事などから考えて、十中八九『討伐時に異界統合』をした世界なんだと……」

「む……統合による魂と肉体の相互作用、それによる固有能力の発現と遺伝、この時代を選んだのも統合により技術継承が途絶えてしまったと思えば……ふむ、なかなか興味深い話ではありますね……」

 

のどかと夕映が世界の構造部分について考察をしていると、切島が声をあげた。

 

「な、なんかよくわからねぇけど、とにかく!

長谷川やあんたらのは"個性"じゃなくて"魔法"ってやつなのか!?」

「ええ、そうです。

まぁあなた方の"個性"より()()()()()色々なことが出来ると思えば間違いないですよ」

「合宿で見たけど、箒に乗るのとか"魔法っぽい"とは思ってたけど!」

「マジで"魔法"だとか思わねぇだろ……!」

「道理で出来ることが多い訳だ……」

 

魔法みたいな"個性"もあるが、魔法は"個性"とは異なるファンタジーの存在。

故に、それが現実にあるというのは驚きだった。

 

「長谷川少女が応用だと説明していたのは、"魔法"だとバレないようにしてたって事かな?」

「ええ。"個性"として誤魔化せるようにしていたのでしょう。事実、誤魔化せる技しか使ってこなかったようですし、アーティファクトについてもヨルダ=バオト戦で本気を出したくらいです。

元の世界での"魔法"は裏社会の技術ですので当然かと」

「裏」

「社会」

 

再び空気が固まった。

裏社会なんてワードが飛び出るとは思わなかったのだ。

そして同時に千雨の行動の数々を思い出す。

 

「……長谷川って、わりとガラ悪いよな」

「堂に入ったガン飛ばすし……」

「あれってまさか……そういう……そういう事なんですか!?」

「何やら誤解しているようですが、千雨さん含めて私たちは裏家業の人間ではありませんよ。

我々の世界はこちらでいう『超常』以前の社会であり、"魔法"は表向き秘匿された技術でした」

「秘匿されていたのは社会に不要な混乱や差別をうまないためかい?」

 

根津の質問に夕映が頷いた。

 

「その通りです。

太古より異能は差別や畏怖の対象で、西洋での魔女狩りなどもありましたから。

それに"魔法"は世のため、人のために陰ながらその力を使うことを是とし、最も尊敬される仕事の一つとして犯罪組織の壊滅、魔獣退治、災害救助、様々なことを行う『偉大な魔法使い(マギステル・マギ)』というものがあります」

「こちらでいうヒーローと似たようなものか」

「長谷川も、それを目指してたってこと?」

「彼女の場合は『偉大な魔法使い(マギステル・マギ)』を目指してはいませんでしたが、私たちは中学三年時に"魔法"と深く関わって……いえ、このあたりの話は本人から直接聞く方が良いかもしれません」

 

懐かしそうに微笑みながら語る夕映。

その様子を見ていた八百万がギュッと胸元を押さえる。

 

「……こうして聞いていると私たち、千雨さんの事をよく知らないのですね」

「ヤオモモ……」

「仲間で親友だと思っていたのですが……話して貰えなかったんですね」

「気軽に話せることじゃありませんからね。

知れば何かしらの犯罪に巻き込まれる可能性が高いですから」

 

フォローしたのどかに続けて、根津も同意する。

 

「"個性"と異なり後天的に身に着けられる多様な能力なんて夢の話、話したら被験体のモルモットは避けられないと判断したんだろう。隠して当然の判断さ。

僕らに話してくれたのは、彼女の説明のためだろう?」

「ええ。

それにあの偏屈屋な千雨さんが信じて仲間と認められているなら話しても問題ないでしょう」

「偏屈屋?千雨ちゃんが?」

「たしかに完璧主義で抱え込むところはあるが、冷静でよく周りを見ていて賢くガッツのある良い子だと思うのだが」

 

バーニンとエンデヴァーが首をかしげているのを見て、相澤をはじめ生徒たちは首を横に振った。

 

「エンデヴァーさん、あいつはそんな『良い子』じゃないですよ」

「確かに、オールマイトに厳しい態度で色々指摘もしていたが……」

「前から思ってたんだけど、長谷川、B組からもそうだったけど割と勘違いされてるよな」

「きっと体育祭の印象がデカいんだろ。それに正論吐くことも多いし。

俺らも最初はスゲー奴だし良い面ばっか見てたから、間違っちゃいないんだけど……」

「ああ。オイラたちの知ってる長谷川は確かに完璧主義の仲間思いで冷静沈着な頭脳派だけど……同時にリアリストの秘密主義、独善的で贔屓もするし、偏屈で狡猾で二枚舌で粗暴で不良で脳筋な奴だ」

「これは峰田が正しい」

「良い奴だけど、360度ひねくれてるからなぁ……」

 

千雨の複雑怪奇で矛盾だらけの内面を的確に言い切った峰田にクラスメイト一同頷く。

大枠では善人に分類されるし言う事は大体正論なのだが、それは一周回ってそうなっているだけで、実際のところ悪いところが多々ある。

 

「ふふ」

 

そんな会話を聞いていた夕映とのどかがクスクスと笑った。

 

「千雨さんは、本当に()()()()と出会えたようですね」

「え?」

「私たちも中学一年生から同じクラスでしたが、三年生あたりまで彼女は周囲と距離を置いていました。

そんな彼女が出会ってたった数か月で本音をさらけ出して仲良くしているというのは本当に凄いことです」

「仲良く……いや、その、僕はかなり嫌われてるんですけど」

 

緑谷は合宿中にキレた千雨や冷たく睨まれた事、幼馴染である爆豪と共に自分への嫌悪を露わにしていたことを思い出して語るが、すぐさま否定された。

 

「彼女が本気で嫌いなら、感情を隠して表面上だけ愛想よくしていたか、完全に無視していたはずです。

怒るという事はそれだけ気にかけている証拠であり、彼女の琴線に触れている証拠ですよ」

「そう、なんですか?」

 

緑谷は首をかしげるが、周囲はなんとなく理解する。

千雨が馴染んだのはUSJ事件で、それまで隠していた感情をさらけ出したからだ。

きっとあれがなければ、彼女はずっと壁を作ったままで、今のような関係にはなれなかっただろう。

 

「おい、デコ女」

「デコ……失礼なガキですね」

「アホ毛が本気で元の世界に帰る気だったら、テメーらが邪魔しても俺らが引き止めても止まらねぇだろ」

 

爆豪の言葉に、周囲は異を唱えることは出来なかった。

確かにその通りだ。どれほど悲しくとも、千雨が本来いた世界に帰りたいのであれば、引き止めても帰る可能性がある。

 

「だからこそ阻止するんです。

ヘカテーは完璧主義者ですから、無意味になるとしても『余計な嫌がらせ』を嫌うので」

「い、嫌がらせ……?」

 

予想外の答えに拍子を外されたような顔で夕映に聞き返す。

 

「ええそうです。

あの人……ヘカテーは昔から捻れた心の持ち主です。頑固で、偏屈で、面倒くさがりで、大事な事を何一つとして教えてくれない秘密主義です。今回の計画は私たちにも嘘をついていました。

昔からそういう人だと知ってましたが、二十年来の付き合いでもまさかここまで大規模なことをやるとは思いもよりませんでした。

よって、これは正当な復讐です」

「お、落ち着いて落ち着いて」

 

のどかが夕映に声をかけるが、夕映の恨み節は止まらない。

 

「本当に昔から……私が……私がアリアドネー留学と戦乙女騎士団で向こうの実績を積んでからISSDAに入るために麻帆良に戻って探偵事務所を構えて必死に実績を積んでいた横で!

彼女は大学卒業以降引きこもりながら特別顧問の肩書きを得たのを隠して!

私が実績作りのために探偵として学園の治安維持に貢献したり!武闘大会に出場したところを!暇つぶしのように野次馬して!!

必死に実績を重ねてISSDAに応募しているのを知ってて!!」

「よく分からねぇが、恨みが深い……!?」

「落ち着いてよ夕映!ほ、ほら!それは前から学園長の依頼や先生の相談に乗ったり、セキュリティを担ったり、向こうの提督とも色々してたし……」

「私たちは二十年も共に支えてあってきた仲間だと思っていたのに裏切られたんですよ!?

人生の半分以上ですよ半分以上!半分以上一緒にいて!命懸けの作戦で我々を騙したんですよ!?

結果的に救っていようと許せる筈がありません!」

「騙されたのはそうだけど」

「彼女の計画に傷をつける絶好にして唯一のチャンスです!

私の為に協力するですよ!!」

「……私情しかねぇ……」

 

私怨を煮詰めた綾瀬からは裏があるようには見えなかった。

 

「そっちのあんた……宮崎さんは?」

「私はその……同じく騙されたとはいえ、ヘカテーがどうしてここまでの事をしたのか、どうして彼女を選んだのかを『知っている』ので、その決意と計画を否定はしません。もし私が同じ立場で同じ状況であれば……同じ選択をしないとは言い切れません。

ですが、彼女を選んで一方的に転移させた時と同じように、彼女の意思を無視して一方的に帰すのは、違うと思うのです。

なにより……一人で遠くに行こうとしている人を止めようとするのは、私たちもした事です。

ですから、あなた方も……何も言わずに一人で遠くに行こうとしている彼女に置いていくなと怒っていいんですよ」

「それは……」

「泣いて、怒って、喧嘩して……謝って、仲直りして、笑えばいいんです。

本心をさらけ出してぶつからなければ、たとえ相手の心が読めたとしても本当に絆を深めることは出来ないから」

 

のどかは微笑みながら思い出す。

夕映との絆が深まったのは、夕映の恋心を知ったからだ。あの時逃げる夕映を追いかけて、怒って、本心でぶつかって、謝って、一緒に泣いたから今がある。

 

「私たちがヘカテーの計画を阻止したいように、あなた達も一人で勝手に遠くに行こうとしている千雨さんを怒って止めても良いと思うの。

付き合いが短くても、知らないことがあっても、仲間は仲間。

なにより、一方的に守られてるだけなんて嫌でしょう?」

 

ニコリと微笑んで言うのどか。

夕映にも、のどかにも、裏があるようには思えなかった。

 




ついに!!!魔法バレ!!!!
これ大丈夫ですかね……多分大丈夫だと思うけど。いやもう大丈夫っスかねえ!?!?と怯えながらの投稿。
こっから先の展開は未来の安達武がどうにかするので大丈夫です。

はい、というわけで妻妾同衾本好き親友コンビこと、のどか&夕映の目的は千雨の強制帰還の阻止。
一方的に巻き込んでおいて、一方的に帰すのはどうなんだという善性からヒロアカ組のもとにきました。
まぁ片方は色々と恨みが深いのですが。さもありなん。
ちなみに夕映がうっかり話してしまったのはどっぷり魔法社会に浸かっているのと、魔法世界に留学した経験から亜人相手と同じ反応してしまったという裏設定があります。

ここからどうなるのか、千雨たちがどこにいるのか、詳しくはまた次回!

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