ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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気が付いたら公園の桜も散ってゴールデンウィークになってました。
ファンブックたすかる……隅々まで見てる……楽しい……


Self-Righteous Hypocrite

夕映とのどかの話を聞き終えた面々は得た情報をもとに話し合う。

 

「つか、なんであいつ"魔法"ってことを隠してたんだ?」

「長谷川が秘密主義だから……ってだけじゃなさそうだよね?」

「長谷川のことだ、俺たちに話すことによるリスクがデカいと判断したんだろう」

「綾瀬くん、彼女の退学願は帰還のためかい?」

「どちらかと言えば帰還の()()()ですね。

欺瞞、暗躍、交渉、裏工作といったものはヘカテーたちの得意分野です。同時に叱咤激励や発想力、説得力など相談役としての才能も持ち合わせているのですが。

ま、問い詰めたところで『信じられるのは自分だけ。騙される方が悪い』と開き直って言い張りますね。一部例外はあれど、自身の安全と日常を第一優先する方なので」

「ケロ……千雨ちゃんなら、言うわね」

「あいつ、妙なところで倫理観が低いっつーか……バレなきゃ何しても問題ないって奴だからな……」

「否定できない……」

 

それぞれの脳裏によぎる、これまでの千雨の行動の数々。

称賛すべきことも多いが、クラスメイト相手に嘘をついたり、隠し事をしたり、プロヒーローと交渉したり、教師に逆らったり、理不尽な怒りを燃やしたりと、色々やらかしている。

 

「公安を含めて各国組織も千雨さんを確保しようと動いている今、ヘカテーは千雨さんが回復次第、最後の計画を実行すると思われます」

「公安!?」

「ええ、ヒーロー公安委員会と取引しているんですよ、千雨さんは。

彼女が戸籍をすぐ取得できたのも、普通の生活を送れていたのも、公安が後ろ盾だからです」

「マジかよ……」

「国内のメディアがどこもアホ毛の名前を出さねェのはそういう事か」

 

公安との繋がりに驚きを隠せない者がいるものの、爆豪などメディアの不審な動きを疑問視していた生徒は国の上層部が各方面に圧をかけているのに納得した。

 

「千雨くんは治癒に強化、他にも多くの技を使った。魔法のことを知らずとも、公安のみならず世界中のあらゆる組織が欲しがるだろうな」

「ああ。長谷川少女がいれば、この先五十年の安全と繁栄が保証されると考えているのは容易に想像がつく」

 

エンデヴァーとオールマイトが苦虫を噛み潰したような表情で語る。

エンデヴァーは今でこそ千雨を弟子にしているが、彼も初めは彼女の持つ能力が有用だと考えていた上に、似たことを考える者が自分だけではない事も理解していた。

オールマイトも、今ここで千雨が公安に捕まれば本人の意思を無視してでも『次の象徴』として担ぎ上げられるのを察した。

ヒーローとは、民衆から羨望を集める職業であると同時に、国力である。

ヒーローがいるからこそ、この世界総人口の約八割が何等かの”特異体質”を持つ超人社会の中であっても人々の生活の安全が保障され、健全な経済活動が活発となり、人口が増え、労働力と技術力が向上し、文化が発達し、国際的影響力を強めることが出来るのだ。

オールマイトは彼の掲げる『国民の心の拠り所となる象徴が必要だ』という思想と国の方針が相反することがなかったからこそ、今日までヒーロー活動をし続けた。しかし、平和の象徴として長年日本に君臨していたオールマイトがもう戦えない体であると世界中に知られてしまった。そうなれば、国民は今の生活を維持するべく次の象徴(オールマイトの代わり)を求めるのも当然の理である。

――たとえそれが、象徴を引き継ぐ気のない十五歳の少女であったとしても。

 

「彼女の見せた能力の幅広さを思えば、()()()()にも期待が出来ると考える人間がいてもおかしくないのさ」

「校長先生!そんなの人権侵害じゃありませんか!」

「そうとも。だが、これはそういった扱いをされてもおかしくない話なのさ。

僕も被験体として扱われていたからね……」

 

そっと顔の右側にある大きな傷跡をさする。

根津は世界で唯一の"個性"を持った()()()だ。今でこそ"個性"道徳教育に尽力した世界的偉()として扱われているが、多くの研究員に弄ばれた過去がある。

未知を前にした人間の愚かさも傲慢さも残酷さも彼はよく知っていた。

 

「……千雨ちゃんは、それすらも踏まえて……私たちに何も言わずに帰るつもりなんですか?」

「ええ、誰の手に捕まるよりも先に逃げるでしょう。別れすら言わずに去るのはあなた方を巻き込まないため」

「帰還と共に、あらゆる資料と記録から存在を消し、記憶を操作し、過去を改変し、彼女の痕跡を全て魔法で消し去る。

そうして、初めから『あなた方のクラスは20人だった』とするのがヘカテーの立てた最後の計画です」

「既に、僕たちは干渉されていると考えても?」

「『21人』にした時点でそうでしょうね。後の影響を最小限にすべく、途中で数合わせしても問題ないよう介入していた可能性は極めて高いです。

だからこそ、本来送る必要のない退学願は千雨さんの誠意の証拠であり、最後の願いです」

「何だよ……何だよ、それ……!!」

 

轟の悲愴な声が響く。

全ての痕跡を消して無かった事とするなら必要ない退学願。それは、たとえ存在の全てを無かった事にしても、たとえ一時的な間柄だったとしても、緑谷たち(仲間)の未来が閉ざされないようにという、偏屈で卑屈ながらも周囲を常に気にかけて陰ながら手助けをする彼女の最後の願い。

その事実に、重たい空気がその場を支配する。

 

「……あんたらがヘカテーの邪魔をしたい意図は分かった。

でもさ。何であんたらは長谷川を()()()()()()()計画を阻止したいんだ?

エンデヴァーやオールマイト、校長が言ってた事を考えれば長谷川が此処に残ることで被るデメリットはめちゃくちゃ多いのに、あんたらはどうにかして長谷川をこの世界に残そうとしてる。

……他に、何かあんじゃねーの?」

 

冷静な瀬呂の問いかけに綾瀬と宮崎はすぐに答えなかった。

なぜなら二人は感情的に、理論的に、苛烈に、穏和に、その真意を読み取られぬように話術で全員の思考を誘導させていたからだ。それは交渉術のひとつとして有名な「良い警官・悪い警官」の応用とでも言えるだろう。

交渉術を用いられていると気付いていた相澤や根津、エンデヴァーなどは綾瀬たちの一挙手一投足を見逃さんと言わんばかりに目を見張る。瀬呂が問いかけずにいれば大人たちでなるべく学生20名を遠ざけようと考えていたからだ。

 

「本当に、千雨さんは素晴らしい仲間を得たのですね」

 

見破られたことに動揺することなく静かに深く息を吐いてから、夕映が真意を口にした。

 

「……ヘカテーは、彼女を元の世界に返したのち……自らの命を絶つつもりです」

「……はぁ!?」

 

想定外の回答に全員目を見開いた。

 

「な、なんでそんな事を!?」

「あんたらの話じゃ、ヨルダ=バオトって奴は倒したんだろ!?」

「ヨルダ=バオトを討伐したとしても、憑依体というだけで危険視されるのは免れないでしょう。ま、彼女の場合はそれだけが理由ではありませんが。

彼女は元の世界への転移と共に、この世界の全人類だけでなく鎮め石となった我々の記憶すらも改竄し、ヨルダ討伐戦後に彼女がヨルダ共々自爆したという形で死んだことにして自殺する。それが、ヘカテーの企てている計画のラストです。

もともと、ヨルダ=バオト討伐時に彼女の死をトリガーにして千雨さんの帰還と記憶改変等が行われるはずでした。その時は千雨さんに防がれましたが、今は帰還後に自死する気でいます」

「いや、それならそうと!正直に言ってくれりゃあ良いだろ!」

「いいえ。それではあなたたちは()()()()()()()()()()()()()()()。そうでしょう?

それでは彼女たちは止まらない。その場を上手くやり過ごして後日決行するだけです」

 

義務感で助けたところで、ヨルダすらも騙しきった不撓不屈のヘカテーはその考えを折り曲げない。

ヘカテーが今生きているのは千雨に生かされ、千雨を帰還させるという責任があるから。その責任がなくなれば、彼女は灰の一粒すらも残さずに消えるつもりだ。

 

「今のヘカテーを止められるのは彼女の原罪(行動理由)を理解して贖罪の機会()を一度捻じ曲げた千雨さんただ一人。

だからこそ、ヘカテーを止めるには、あなた方が千雨さんを本心から望み、ただ一人の人間としてぶつかり……千雨さんがヘカテーに呼びかけなくてはならないんです。

我々は彼女に騙されました。でも、死んで欲しい訳ではない。彼女に私たちと一緒に生きてほしい。

たとえヘカテーの計画を潰してでも。千雨さんに苦労を背負わせる事になってでも」

「私たちは、もう仲間を欠けさせたくないから。

あの人に、これ以上悲しい思いをしてほしくないから」

 

二人の脳裏によぎるのは、あの日最期に見たネギの姿だ。

宇宙空間に響いた慟哭に似た声は今もなお鮮明に思い出せる。彼は神楽坂明日菜が魔法世界存続のために眠りについた日から涙を流すことなく、必死に世界の為に活動し続けてきた。そしてそんな彼の力になるために、百年続く偉業を達成する為に支え続けてきたのが夕映、のどか、千雨の三人である。

二人はヨルダ=バオト討伐時に見た千雨の記憶から、ネギが世界の為に活動をすると決めて秘めた初恋の相手が長谷川千雨なのだと知った。だからこそ、彼女がネギの身代わりとなった末にヨルダ=バオトを討ち滅ぼして未来のために自ら永遠の眠りについたと知れば、きっとネギの心は壊れてしまう。

綾瀬と宮崎は深々と頭を下げ、嘆願する。

 

「「どうか、私たちに手を貸してください」」

 

身勝手だと、非道だと、千雨を犠牲にしていると罵られたっていい。

それでも、どうしても、二人はネギのためにヘカテーを連れて無事帰還することを願わずにはいられなかった。

 

「……どうしますか校長?」

「長谷川千雨くんは退学願を提出してきたとはいえこちらで退学手続きをしていない以上、彼女は我が校の生徒の一人。退学の前に教師として面談する必要があるのさ!

何より、救けを求めている人がいて人命がかかっている。ヒーローとして見過ごせないさ」

「エンデヴァー、君たちにも協力を頼んでもいいかい?」

「無論、行くに決まっておるだろう」

「流石にここまで聞かされちゃ断れないっしょ!」

「ウチの事務所、一時保護の監督責任とかあるしなぁ」

 

夕映たちに協力することを決めたのは大人たちだけではない。

 

「人命以前に、長谷川さんには何度も助けられた」

「ああ。このまま何もしないでサヨナラなんてしたくねぇし、忘れるなんてゴメンだ!」

「で、でも、僕らが引き留めても、彼女が元の世界に帰ると決める可能性もあるよ?」

「青山ちゃん……そうね。千雨ちゃんはここに残らないかもしれないわ」

「それでも、ウチはお別れすら出来ないなんて嫌だ」

「私もですわ」

「嗚呼。たとえ餞別を贈れずとも見送らずして何が仲間だ」

「一人で全部全部抱えて、その上勝手に居なくなるなんて嫌!」

「納得できる道理があっても、俺らが納得するかは別だしな」

「それになにより、人命がかかってる」

「先生、我々1年A組もお二人に協力します!!」

「……ま、あの二人もお前らに協力してもらうために転移させたんだろうしな……」

 

本来であれば資格もない学生を巻き込む訳にはいかないが、人命がかかっている上に片方がクラスメイトであるため無関係とも言い切れない。

何より、ここまで聞かされた彼らがここで止まるはずがない。

 

「ありがとうございます」

「感謝するのは計画を止めてからさ!」

「それで、長谷川少女たちがどこにいるのか知っているのかい?」

 

オールマイトの問いかけにのどかが答える。

 

「千雨さんたちは一般人が普段立ち入れない場所にいます。ただし貴方たちなら入れる場所です」

「一般人が立ち入れられなくて、俺たちなら入れる……」

「……それって、もしかして……!」

「皆さんが考えている通り。

 

――――千雨さんは、雄英高校に居ます」

 




長すぎるスランプで楽しみにしてくれていた皆さんを半年以上待たせてマジ謝意。
事前に展開決めてたのに投稿しようとすると「本当にそんな行動しますか?以前の記述と矛盾してませんか?というかこのまま展開進めるとか正気?」みたいなポップアップが脳内無限増殖バグ発生みたいになってて大変時間がかかりました。
なにこの呪い辛すぎぴえんの極み。今後の投稿はどうなっちゃうの~!?
次回、『全力で作者を遂行する』お楽しみに!

はい、というわけでヘカテーの真の計画()でした。
一回ちう様に阻止されたのにまだ諦めていない超合金の意思。ぐるぐると考えた上で悪い方向にしか進まない。まぁ背負ってるものがものだから仕方がないのかもしれないが。
夕映とのどか、ヒロアカ組との接触は善意もありつつエゴ多めでした。まぁネギ君のメンタル考えたら、多少はね???

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