八百万メインで番外編用意しました。大きな変化ではないのですが変化は変化ということでご査収くだせえ。
ところで、八百万の冬休みインターン先……魔法ヒーロー……?……魔法っぽい"個性"ってこと……?
……先生、そいつァどういう"個性"なんですか?説明してください……今、冷静さを欠こうとしています……。
一学期期末、実技演習試験。
例年と方針を変えて教師との対人戦闘演習と言われ、八百万は轟とチームで相澤先生と戦うこととなった。
そして試験開始の合図と共に住宅街を模した演習場からゲートに向かって走りながら八百万は轟に質問をぶつけていた。
「轟さん!相澤先生相手に、逃げ切れるのですか!?」
「かといって立ち向かったら個性を封じられるだろ!
いいから八百万は個性を発動し続けて警戒しろ!見つかったら俺が時間を稼ぐ。その間に走ってゲート目指せ」
「…………」
八百万を見ずに指示を出し、周囲を警戒しながら角を曲がって先を走る轟。八百万は彼に意見することをためらった。
体育祭2位の実力者。あの鮮烈なまでの試合をした彼の判断を疑うというのかと、心の中のもう一人の自分が囁く。
彼は、憧れるほどに眩い千雨さんと競る人だと。
同じ推薦入学者であっても、私では到底敵わない人だと。
前を走る轟の背を見ながら、八百万は千雨と特訓した閃光弾の入ったマトリョーシカを創造してベルトに固定して、何も入っていないマトリョーシカを創造しながら回想する。
雄英入学から今日までの自分を。
私はずっと、自分が優秀であることを疑うことはなかった。
万能と呼べるほどのこの個性ならばヒーローとして人々の役に立てると、誰よりも素晴らしいヒーローになれると信じていた。
雄英入学初日の私は、気炎を上げんばかりにやる気に溢れておりました。
国内最難関にして最高峰、国立雄英高校のヒーロー科。推薦枠入学者として推薦してくださった母校とこれまで築き上げてきた努力に恥じない結果を出し、プロヒーローになる。そのためには常に努力し学びあらゆる物を糧としていく。今日がその第一歩だと。
この場所で私は長谷川千雨さんに出会いました。
20人のはずの教室で一つ飛び出た私の後ろの席。特別入学者という肩書きを持った彼女は、第一印象こそ冷たい人でしたがとても素晴らしい人格者でした。
超人的で多彩な能力、即席の作戦、柔軟な対応、的確な指揮、ヒーローに相応しい志。私を副委員長にと推薦してくださった彼女は、私にとって競いあえる相手であり、認めあえる存在。
そしてUSJ事件を経て、とても素晴らしい友人を得る事が出来ました。
そんな自信に溢れ意気軒昂にいた私でしたが、現実はそう上手くいかないというのでしょうか。雄英体育祭で私はそれを強く感じました。
体育祭の予選、障害物競走では上位10名に入れず18位。騎馬戦では轟さんの指示下に入り一度は1000万ポイントを手にしたが、それも最後には奪い返された。なんとか進めた本選トーナメントも、一回戦で常闇さんに為す術なく敗退。
そんな私とは反対に、千雨さんは予選から女子トップの好成績に加えて数々の新技を披露。トーナメントでは私と同じ推薦入学者の轟さんと準決勝に試合をした。結果は引き分けになったものの許容量ギリギリということで千雨さんが辞退されましたが、彼女は観客全員の心に火を点す言葉と力で彼女の持つヒーローの精神を魅せた。
推薦枠で入学した私と、特別枠で入学した彼女。
クラスメイトたちに認められた彼女と、その彼女から推薦された私。
栄光と勝利を手にした彼女と、連敗続きでパッとしない私。
……今の私は、評価に見合う人間でしょうか?
思うようにいかない現実によって失われた自信と共に、彼女が推薦して下さった副委員長の肩書が、推薦入学という経歴が、プレッシャーのように私にのしかかって手足を重くする。
職場体験で行ったウワバミさんに、選んだ理由が「可愛いから」という、私の持つ知識でも能力でもなく外見的理由だったのも、私がこれまで築き上げてきたものと関係ないのもまた私の自信を失わせました。
自信を無くして特訓してほしいと頼んだ私を千雨さんは見限ることも失望する事もなく、手を貸してくださいました。一緒に試行錯誤してくださいました。私に合った戦い方を考えてくれました。いつだって、私を勇気付けてくださいました。私の努力を評価してくださいました。
ですが私は、彼女のように対人戦闘と予測することは出来ずにいました。
彼女と競いあえる轟さんのように、瞬時にどうするべきか決めて指示を出すことも出来ません。
それならこの試験は、私より結果を出している轟さんの指示に従えばいい。渦巻く不安も、自尊心の痛みも、何もかも無視して。ただ、格上の指示に従えば。それでいい。
回想していた八百万は轟の指示である【個性を発動し続け、異常を感じたら知らせる】のを忘れてしまい、周囲を警戒していた轟が八百万を見て"個性"の発動が封じられているのに気付き声をあげた。
「おい八百万!"個性"!」
「あっ!」
「八百万!走れ!」
「来ると分かったなら」
周囲を警戒する轟さんの背後に音も立てずに相澤先生が上から姿を現し、捕縛しにかかる。それを見て指示通り逃げねばと思ったのと同時に、試験が始まる前に言われた言葉を思い出す。
『――――大丈夫だ、頑張れ』
鼓膜を震わせる、女子にしては少しだけ低い声。
千雨さんは私を信じてくれた。私なら大丈夫だと言ってくれた。今日この日のために、一緒に努力してきた。彼女の与えてくれたものを、彼女と築いてきた私自身の努力を、一度だけでいいから信じたい。
たとえ傷ついたとしても、間違っていたとしても、一度だけでいいから抗ってみたい。
感情からくる熱が、考えるよりも先に八百万の身体を動かしていた。
「轟さん!」
「いいから走れ!ゲートに!」
「ああ、そういう作戦か……っ!?」
轟の指示を無視した八百万は、轟の後ろに走り抜けて捕縛布で釣り上げたイレイザーヘッドの眼前にくるように、用意しておいたマトリョーシカごと中に入った閃光弾を投げ、続けて煙幕弾と爆竹を複数創造して投げる。
イレイザーヘッドによって釣り上げられた轟が驚いている間に八百万は相澤の引っ張っている捕縛布を創造したナイフで断ち切る。
ピンと張られた捕縛布は炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んであるため固い。だが、それは決して切れない訳ではない。
捕縛布を切り、轟が無事に着地したのを確認してそのまま煙幕の中を轟と八百万は走ってその場から離脱し、何度か角を曲がって適当に住宅街の庭に入り、息を整える。
間一髪で無事に窮地を抜け出した。閃光弾と爆竹で視覚と聴覚をふさいだ為しばらくは持つだろうが、見つかるのも時間の問題だろう。
「悪ぃ……助かった……」
「偶然、です……。それよりもすみません、作戦を無視して……私……!」
「やっぱお前、スゲェな」
「……え……?」
息を整えた轟が呟いたその言葉が、八百万は一瞬なにか分からなかった。
「さっき……瞬時に俺を救け出して離脱する方法、考えただろ」
「それは、本当に偶然で……」
「偶然だとしても、咄嗟にそれを思い付いた。戦闘訓練の時に長谷川の作戦に意見してたのを見て……お前はそういうのに長けた奴だって思ったから、俺は学級委員決めの時にお前に一票入れた。
長谷川も、そういうお前だから、推薦したんだろ」
「そんな事は……!」
轟の言葉を否定しようとして、八百万は千雨の言葉を思い出す。特訓をお願いする時に言われた言葉。
『――――自分を卑下するのは……お前を認めている私に対する侮辱だぞ』
今ここで轟さんの言葉を否定するのは、轟さんと千雨さんを侮辱することになる。
認めてくれている。私が追いつけないと思っている二人が。私の努力を。私の能力を。信じてくれている。
八百万はグッと歯を食いしばり、轟を見た。
「……轟さん。私、ありますの。先生に勝つためのとっておきのオペレーションが」
八百万の瞳に迷いはなくなっていた。
一方でイレイザーヘッドは閃光弾と爆竹によって封じられていた視覚と聴覚がようやく戻った。
あの状況で思わぬ反撃だった。おそらく轟の作戦ではなく八百万が単独で判断した結果だろう。
体育祭以降、自信の喪失が見てとれた八百万。もとより応用力や咄嗟の判断力に長けていないのに加えて、それを上回る長谷川と轟を『格上』と決定づけて自身の考えに自信を持てなくなったといったところだろう。
一方で授業参観以降、独断専行が増えた轟。十中八九、長谷川が人質役をしたからだ。良くも悪くも力と判断力がある上に、人が傷つくのを恐れるようになった。周囲を戦闘から遠ざけて自分の力だけで全てを乗り越えようとする部分が見て取れる。
二人とも優秀とはいえまだ15歳の子供。未熟な所があって当然。
だからこそ今回の試験で相澤は上手くコミュニケーションを取らせて八百万の自信を轟に取り戻させ、轟には八百万を頼るように誘導しようと考えていた。
しかしこの視覚と聴覚の両方をふさぐ組み合わせ。真正面から対処しようとする八百万らしくないと言うよりも、この後に控えている
「長谷川と特訓しているとは知っていたが……」
万能で汎用性の高い個性を持つ反面、応用力と判断力に欠けた八百万。彼女に発想力と応用力に長けた長谷川が知恵を貸したのだろう。先ほどの反撃からして、長谷川が対人戦闘も加味して特訓していた可能性もある。
イレイザーヘッドは目薬をさしてから近くの住宅の屋根にのぼり居場所を探る。
「……八百万に関しちゃ、そこまで心配ないってところだな。
閃光弾に加えて爆竹で足音を消されてたし、一旦ゲート近くを探るか……」
想像以上のスピードで成長していく生徒たち。イレイザーヘッドは捕縛布の下に隠した口角が上がっていた。
八百万は千雨から聞いていたイレイザーヘッドの戦闘パターンとそれに対する対策を思い出す。
『先生の場合はゴーグルで視線がどこに向いているかを隠し、捕縛布で相手の身動きを封じる他に腕や足を引っ張ることで不安定な体勢にしたり壁や他の敵にぶつけたりも出来る。また、相手の持っているものを奪うことも出来るな。
一度でも"個性"が使えないって思わせるだけで、相対している間に相手は"個性"を使おうとはしないからな。実際は常に発動している訳じゃなく、インターバルがある。それを知られる前に相手の動きを封じて倒す訳だ。
だから、インターバルを不意打ちすりゃなんとか勝てる』
『わざと離脱して誘い込んだ先で閃光弾で目つぶしして砲撃とかも割と良いんじゃねぇか?』
千雨が話していたことと、今日まで特訓して身に付けたこと。これらから自分と轟の二人で取れる作戦を八百万は轟に話す。
一言で言ってしまえば相澤をおびき寄せて罠にかける作戦だ。
相澤から逃げるのは先ほどの一瞬で現実的ではないと二人とも実感している。だからこそ八百万はカフスをかける方針を打ち立てた。
「だが先生相手じゃ"個性"を消されるだろ」
「轟さん、先生の戦闘パターンはある程度決まっていますわ。
先生の"個性"とこの住宅街ステージ……先ほどの動きからして、住宅の屋根の上からなるべく視野を広げて私たちを見つけて接近し"個性"を消す。
しかし相澤先生の"個性"は常に発動している訳ではありません。瞬きをする瞬間、インターバルが出来ます。そのインターバルに加えて、相澤先生の"個性"は目を封じてしまえば"個性"は使えます。
加えて、先生の"個性"は不安定です」
「不安定?」
「元々のドライアイに加えて、USJ事件で負われた傷の後遺症です。長時間の抹消は出来ませんわ。……とはいえ、閃光弾は先ほど使ったから手の内は知られているのですが。
今から必要な道具を作り出します」
そう言って八百万がコスチュームの胸元を広げてそこから創造していくのを轟は直視しないように後ろを向いたまま作戦会議を続ける。
「勝負は一回だけ、同じ手は使えません。よろしいでしょうか?」
「ああ、問題ない」
ゲート付近に戻ってから周囲を警戒していた相澤の視界にマントを被った人影がひとつよぎる。
轟か八百万か。単独行動で脱出ゲートを目指す作戦だろうか。
「どちらか分からない上に見えなきゃ消せないとはいえ、それじゃ目立つだろ」
素早く屋根から屋根へと移動して追い、捕縛布で捕縛しようとするが、マントの下からバンッという発砲音が響き、イレイザーヘッドのいる場所に向けてボーラと呼ばれる狩猟に用いられる投てき武器が複数飛んできた。
「見られなきゃ個性が使えるとはいえ、そうくるか……!」
すっぽりと身体を覆う布によって、何が出てくるかイレイザーヘッドには分からない。おそらく八百万の身体から創造しながら発射したのだろう。とはいえまだ命中させるには精度が低いのもあり、イレイザーヘッドは向かってきたボーラを軽々と避ける。
すると避けたボーラの紐の両端にある球状の重りが閃光を発して爆発する。
「当たれば捕縛、当たらずとも閃光で威嚇と個性潰し、よく考えてるようだが……移動に追いつかれて捕縛されたらそこまでだろ……!」
屋根から飛び降り八百万を捕縛布でマントの上から捕縛しようとすると同時に、物陰から捕縛布によく似た布製の帯が飛んできた。飛んできた方向を見ると、もう一人マントを着た轟と発射済みのカタパルト。
捕縛の邪魔か、それとも攪乱か、氷結するためか。空中で身動きが取れない一瞬にイレイザーヘッドは思考するが、マントを被った轟は相澤に直接氷結を当てずに左腕からの炎を地面に走らせる。
地面から昇る熱風。それと同時に、周囲に飛んできた帯から金属のきしむような音。
「先生相手に、"個性"での攻撃を決め手にするのは極めて不安でしたので。
ニチノール合金、ご存知ですか?
加熱によって瞬時に形状を復元する――形状記憶合金ですわ!」
八百万が囮をしつつマント越しに個性で牽制、その上で轟に用意しておいたカタパルトで形状記憶合金の帯を飛ばしてもらい、炎熱で加熱する。それすらも攻略されたとしても、マントのおかげで個性は消されていないからまだ使える。
これが八百万が考えられる最大限の作戦だった。
八百万のニチノール合金を編み込まれた捕縛布で身動きの取れないイレイザーヘッドの両手首に、八百万がカフスをかける。それを轟は驚き混じりの表情で見ていた。
「……八百万の作戦、こんなすんなりいくとはな……」
「いえ……この作戦は千雨さんとの特訓で教わったからで……」
「八百万なら出来ると思ったからだろ」
「!」
相澤の言葉に八百万が驚く。
「……長谷川は、人のことをよく見て判断する。出来ない事を人にさせる奴じゃない。なにより……教わったことからこの作戦を組み上げたのは八百万、お前だろう。
単独行動したお前を捕らえようとした俺を、お前の作戦が上回った。
轟の救出の時もだが……囮に閃光、形状記憶合金が失敗しても二人とも"個性"を消されていないから、そこから起死回生出来る。
……二重三重の策略、完敗だよ」
「……っ!」
八百万は涙をこらえて口元を手で覆う。
プロヒーローとして常に厳しく教える相澤先生が完敗と言った。それほどまでに自身の作戦が通じた。
その事実が何よりも八百万にとって嬉しいものだった。そして高らかにリカバリーガールのアナウンスが流れる。
「報告だよ。条件達成最初のチームは、轟・八百万チーム!」
怪我のなかった二人はそれぞれ更衣室で制服に着替えて教室に戻る。
まだ他の生徒が戻っていない教室に二人きり。口数の少ない轟が、小さくなにかを呟いた。
「轟さん?どうかされましたか?」
「いや…………もっと、強くなりてぇなって」
「もっと、ですか?」
「今日の試験、八百万に助けられまくったし。そもそも俺がもっと八百万の意見に耳を傾けてりゃ、ピンチになることもなかっただろ」
「轟さん……」
「……個性の力だけじゃなく、もっと……人として、強くなりてぇ」
自らの左手を見ながら轟が呟いた。轟なりに今日の演習の反省をしているようだ。
その横顔に、八百万は足掻いているのは自分だけじゃない。自分より前にいると思っていた轟もまた自らの未熟さを憂い、強くなろうと足掻いているのだと分かった。
「……『学校は学び力を身に付ける為にある。誰だって最初は未熟で当然なんだ。』……特訓をつけて頂く約束をする時に、千雨さんに言われた言葉です。
私、この雄英ヒーロー科でもっと学んで、もっと研鑽しますわ。心も身体も個性も。
誰もが認める素晴らしいヒーローになるために。
鍛えてくれた千雨さんを助けられるほどのヒーローに」
前向きに研鑽を誓う八百万。轟は八百万のその言葉で体育祭で立ち向かってきた緑谷の言葉と真っ直ぐと見据えてきた千雨の眼を思い出した。
誰もが必死に強くなろうとしている。夢を叶えるために。ヒーローになるために。必死に、目の前のものに向き合って勝とうとする。
「……俺も、負けていられねぇな」
轟は改めて今よりも強くなることを胸に誓った。
オールマイトと戦闘し治癒されてもまだ気絶したままの爆豪を除き、他のクラスメイトが教室で待っていると千雨が戻ってきた。
いの一番に八百万が駆け寄る。
「千雨さんっ!」
「八百万。試験クリアおめでとう」
「それで、千雨さんの方は……」
「勿論合格した」
そう言ってニッと右の口角を上げて笑う千雨。普段でもなかなか見せないほど機嫌が良いようだ。
「本当に、ありがとうございます。演習試験を合格出来たのは千雨さんが特訓してくれたおかげです」
「いや合格出来たのは試験本番で八百万が頑張ったからだろ」
「ですが、その作戦を立てられたのは千雨さんが特訓してくださったからで……」
「わ、私はその、戦い方を一緒に模索しただけで、作戦立てて実行出来たのは八百万の実力だよ。私も、八百万と特訓してたおかげで試験合格出来たようなもんだし……。
一緒に特訓してくれて……あー……ありがとな、八百万」
「……はいっ!」
試験合格によって自信が戻ったようだ。
嬉しそうに頬を染めて微笑む八百万と、恥ずかしかったのか顔を赤くして視線をさ迷わせる千雨。
ほわほわとした空気に見ていたクラスメイトの面々が癒されつつ、耳郎や麗日など試験クリアした女子たちが近寄り千雨に声をかけていく。
なお、女子で唯一試験を合格出来なかった芦戸は自身の席で突っ伏している。
「おつかれ長谷川」
「千雨ちゃんお疲れさま!」
「試験クリアおめでと、千雨ちゃん」
「長谷川、結局お前誰とペアだったの?」
「悪い、それ口外禁止されてる。
なんでも試験的に試したことだからって」
「へぇ……あ、でも対人演習試験も今回からって言ってたもんね!」
「そっかぁ」
心操の編入についてはまだ未確定ということもあり、今回の試験については内緒にするようにと言われているのだ。
「……ところで芦戸……アイツ大丈夫か?」
「合格出来なかったのが、よっぽどショックだったみたいよ」
「……そっとしておくか……」
このタイミングで声をかけても泣きつかれるだけである。ちなみに他にも突っ伏していたり白く燃え尽きているクラスメイトがいるが、同じように触れずに自席に向かう。
「長谷川、お疲れ」
「常闇もお疲れ。どうだった?」
「蛙吹の咄嗟の機転に助けられた。だが……」
「……自分の中で反省点があるってところか?」
「うむ。何度も間合いに入られてな……最後は巨大なエクトプラズムによって飲まれて捕まった」
「ああ……エクトプラズム先生は複数で間合いに入れる上に近接格闘が強いもんな……。
私も、近接格闘は課題だよ」
心操の見た目に変えていたとはいえ、千雨はイレイザーヘッドの捕縛術に手も足も出なかった。やはり近接格闘に関しては師匠を探すしかないようだ。
「長谷川もか」
「お互い、これから課題対策だな」
拳をこつんとぶつける二人。それを目の前で見せつけられて怨念を燃やす生徒が一人。
「……こンのリア充どもがぁ……!」
「峰田くん、顔が……!」
緑谷は峰田の血涙を流し呪わんと言わんばかりの形相と真っ黒い嫉妬のオーラにドン引きする。
「…………?」
そして峰田の形相と負のオーラで周囲が気が付かない中、轟はチクチクとした痛みと胸に広がるモヤモヤとした気持ちに首を傾げていた。
まさか本誌に魔法ヒーローって言葉が出てくると思わないじゃないですか……!思わないじゃないですかぁ……!
※以下、本音※
いやもー個性名称と〇〇ヒーローの所、魔法にしなくてよかった!してたら似た個性と比べてどう考えても完全別物と余計疑われるルートだった!ナイスだぞっ過去の自分!
捻くれてるし疑ってるから虚偽&認識ズレでの個性申請にして良かった!グッジョブ!新年早々に過去からのファインプレー発生だ!
あとは頼むぞ未来の安達武よ……!全て貴様に託すからな……!
※作者は後で逃げやすくしつつもちゃんと能力解説を単行本でするという芥見先生を尊敬しております。