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皆、長谷川千雨は絶賛大人気の一大ブームだぞ!書こう!いえ是非とも書いてくださいお願いします……お願いします……あとオススメあったらマシュマロで教えてください……。
「緑谷少年たちは!?」
「今は160階を抜けた所で交戦している!
一応メリッサさんと緑谷が先に進んでるが、外から急ぐぞ!」
千雨はそう言って外へと繋がる非常口の扉を開けてマンタを実体化させ、オールマイトと二人でマンタに飛び乗る。
「全速力で上昇させるけど、酔ったりすんなよ!」
「長谷川少女、くれぐれも無理だけは」
「そりゃ今更すぎる話だな!」
グイッと手綱を引っ張り、マンタが重さの分遅くなっているが出来る限りの最大速度で飛行する。
周囲の風はプログラムに組み込んでいる風魔法のプログラムで軽減されているが、それでも千雨のドレスの裾がはためいている。
「どれくらいで着くんだい?」
「タワーがだいたい800メートル位で、その周囲を斜めに飛んでるから1分半ってとこだな」
「君にはずっと驚かされっぱなしだよ、長谷川少女」
「……一応、作戦ってほどでもねぇが、180階部分の風力発電エリアまで向かったらオールマイトは先に最上階目指してくれ。私は160階に降りて戦ってる飯田たちを回収する」
「わかった。
長谷川少女、敵はデイヴを連れて行った。彼とその助手も救けねばならん」
「他にも人質がいるのかよ」
「ああ。私の親友、デヴィッド・シールドだ」
「デヴィッド・シールドって、あの個性科学の天才発明家か!?
……となると、敵の目的はやっぱり何らかのアイテムか研究データってところか」
千雨は敵のリーダーが動く時を待ち構えながら、敵の目的をある程度予測していたのだが、その予測がどうやら的中している可能性が高いことに眉をひそめた。
「やっぱり、ということは想定していたのかい?」
「待機してる間、わざわざ敵がここのシステムを乗っ取った目的をずっと考えていた。
敵の動きとしては、このタワーの屋上からヘリで島を出て、近海にある密航船で逃走するってとこだろ。脱出するためにセンサーの類を解除する可能性も考えたが、ただ脱出経路の確保の為だけにここまでするなんてバカげてる。しかも建物を封鎖してるんだ、金目当てって訳でもねえ。
となると目的は、パーティー会場にいた人か、何らかのアイテムか、データだ。
そもそもこの島は研究施設だからな、わざわざセキュリティの高いこの島に入り込むことを考えるほどのものってなりゃそのどれかしかねぇ。
博士を連れて行ったってんなら、そのまま拉致して軟禁して悪の発明でもさせる腹積もり……って所か」
「敵の好きにはさせない。必ず、阻止しよう」
「……そうだな」
オールマイトの普段の授業などとは違う、『平和の象徴』という称号を背負うヒーローとしての低く真剣な声に千雨は少し間を空けて返事をした。
敵たちは武器や装備をいったいどこで手に入れたのか。島にあったものを奪ったのだろうが持ち込んだものだろうが、セキュリティの高さからしてどちらもそう簡単にいくとは考えにくい。首尾よく手に入れたとして、十名以上もの武装した人間を、警備システムにも気付かせることなく、島の中心にあるタワーに送り込めるだろうか?しかもセキュリティルームを誰にも気付かせずに乗っ取るなんて……普通に考えて、あり得ない。
当直の人間を脅迫して操作させてるとか?いや、それなら尚更緊急時の対策があるだろうから、警備ロボットの操作権を他に委譲したりと抵抗するのでは?救難信号だって出せるだろう。しかし、それらをしていない。また、操作方法を聞き出して操作は敵がしてるというのもないだろう。
読心術系の個性持ちが敵にいる可能性もあるが、おそらく。いや、十中八九。I・アイランド側に内通者がいる。パーティーがこのタワーで行われること含めて、いくらなんでも敵が情報を知り得すぎている。
I・アイランドは情報管理がとても徹底していて、島民には守秘義務が課されるというのに、ここまで情報を持っているのは島の内部に協力者がいなければあり得ない。
「……」
「長谷川少女?」
「なんでもない、無茶だけはすんなよ先生」
「……心配してくれているのかい?」
先ほどまでの深刻そうな空気は何処へやら。オールマイトは意外そうな声色で千雨に問い掛けた。
千雨とは良好な人間関係を築けているとは言い難いほどに対立していると認識していたからこそ、ごく自然に千雨から発された言葉が意外だったのだ。
先生という呼び方も、いつも不遜で敬意のかけらすらオールマイトに示さない千雨から聞ける言葉ではなかった。
「……勘違いすんな。テメーが戦力として役に立たなきゃここから放り出してやるって意味だ」
千雨は不機嫌そうにそう言ってオールマイトから顔をそむけるようにタワーの天辺を見上げた。
一瞬。先ほどの、一瞬だけ。隣にいるこの男をネギと勘違いして話しかけていたことから、目をそむけるように。
一方、160階で飯田たちは敵のソキルと警備ロボの集団と戦っていた。
きんちゃが機転をきかせて緑谷とメリッサの二人をマンタに乗せてタワーをのぼり、残りの全員でロボの対処をすることにしていた。緑谷を一緒に向かわせるのは、この場に残った面子の中でメリッサを巻き込まずに攻撃が出来て、何があっても対処が出来るだろうという判断によるものだ。
警備ロボはこの場に残っただいこ一匹だけでもハッキングして無力化出来るとはいえ、警備ロボは個々自律思考するAIが搭載されている上に数が多い。停止しきれずに突っ込んでくるロボを飯田がレシプロで勢いよく蹴り払ったり、麗日が触れて浮かせて落としたり、八百万が創造した粘着性のある砲弾で耳郎が砲撃したり、上鳴が峰田を抱えて移動しながらもぎもぎでロボ同士を接着させて動きを制限していた。
そこに敵の一人であるソキルがやってきたのだ。
「クソガキ共が、手を煩わせやがって!」
刃物に変化させた両腕を振るって攻撃してくる敵のソキル。飯田が戦おうにも、切島のように硬化の個性でもないのにうかつに近付けばただ無駄に怪我をするだけだ。スピードで翻弄することは出来るが、決定打は与えらない。
そこで八百万が創造の手を緩めずに指揮を執る。
「峰田さん!あの敵にもぎもぎを!」
「おう!これでもくらえっ!」
「なんだっ!?」
峰田は飯田がソキルから離れた一瞬を狙って頭のもぎもぎを大量に投げつけ、それを右腕で切り払おうとしたが、それは切れることなく右腕にくっついた。
「麗日さん!飯田さん!今ですわ!」
「うん!飯田くん、お願い!」
「おおおっ!」
「なっ!?」
麗日が浮かせたロボットたちを飯田が勢いよく敵に向けて蹴りだす。多数のロボットがソキルに向かってロケットのように飛んでいく。ソキルは両腕を交差させて切り刻もうとしたが、切り刻む前にロボットが腕にくっついていた峰田のもぎもぎによって張り付いたところで麗日が重力を元に戻したため、腕を動かそうにも重くて動かせない。
これでソキルは身動きがとれない。
「ガキが、調子に乗りやがって……!」
「いけっ上鳴!」
峰田の言葉とともに、上鳴は峰田を床に下してソキルにくっついたロボット越しにソキルに触れる。
他の面々はこの後の攻撃に巻き込まれないようにと離れる。
「ゼロ距離放電、130万ボルトォ!!」
バリバリという音を立てて発された電撃。身動きの出来ないソキルは至近距離で浴びたため、その電撃で気絶した。
「どーよ俺の一撃!」
「オイラの協力があってこそだったけどな」
「二人ともよくやった!」
飯田が嬉し気に上鳴と峰田を褒めるが、まだロボットは押し寄せてきている。
「油断しないで!まだロボットが来るよ!」
「まだ来るのかよ!」
「まずい、レシプロが……!」
「私も、創造の限界ですわ……!」
飯田のふくらはぎにあるマフラーからプスプスという音とともに煙が上がってエンストした。個性をしばらく使えない状態になることに飯田は顔をゆがめる。同様に、脂質を一気に使っていた八百万が息を荒げながら床に膝をつく。
じわじわと、しかし確実に追い詰められていく。
もう駄目だ。その場の全員がそう思った時、後方から爆発音とともに爆豪がやってきて警備ロボを爆破した。
「爆豪!」
続けざまに波のように広がる氷がロボをまとめて飲み込むようにして凍る。
「無事か、お前ら!」
「轟!それに切島も!」
80階で戦っていた三人が追いついたらしい。
「怪我はないな?」
「ヤオモモが限界、飯田もエンジンが使えないよ」
「今デクくんとメリッサさんが最上階に向かってる!」
「わかった。ここでこいつら食い止めるぞ」
「俺に命令すんじゃねぇ!」
轟にそう噛みつきながらも的確にロボットを爆破していく爆豪。
その様子に切島が笑った。爆豪は口でこそ轟に喧嘩を売っているが、コンビネーションは良いのだ。
とはいえ、話をしている余裕はない。すでに個性の使用限界状態の八百万に加えて個性の使えない飯田などがいる以上、守りながらの戦いだ。
しかしその時だった。
それまでずっと襲い掛かってきていたロボットたちが突然動きを止めた。
「警備システムが元に戻ってます!」
「緑谷くんたちがやってくれたのか……!」
電子精霊の言葉に、飯田がパッと顔を輝かせた。どうやら無事にシステムを戻せたようだ。
そこに見慣れたクラスメイトが緑谷とメリッサの向かった方角からマンタに乗ってやって来る。
「お前ら無事か!?」
「長谷川!」
「ちうたまー!」
「パーティー会場の敵も無事に捕縛出来たんだな!」
「ああ、あとは現場にいたプロに任せた。緑谷たちの方にはオールマイトが先に向かってる。
八百万は……個性のキャパオーバーか。ひとまず全員、マンタに乗って……」
千雨が指示を出そうとした瞬間、轟音とともにタワーが揺れる。
「お前ら!急いでマンタに乗れ!タワーの屋上に向かう!」
「ああ!」
ソキルは身動きが出来ないためそのまま捨て置き、マンタを二体出して移動する。
マンタで移動している最中もタワーが大きな音を立てて揺れている。オールマイトの超パワーによるものではなく、敵の仕業だ。敵のリーダーウォルフラムの個性『金属操作』でタワーの金属を屋上にかき集めてオールマイトと戦っているらしい。
180階の風力発電エリアに出て、そのまま一気に屋上までマンタが飛ぶ。屋上に設置されていたヘリポートの形はほとんど残っておらず、ウォルフラムの元へ部品に使われていただろうありとあらゆる金属が集まって、異形の塔を形成している。
「先行くぞ!」
「爆豪!」
「俺も向かう」
「無理すんなよ!」
爆速ターボでマンタから飛び出した爆豪と、氷の道を作って移動する轟が一足先に向かい、オールマイトに向けられて伸びていた大きな鉄柱を破壊する。
「あんなクソだせぇラスボスに、何やられてんだよ。え、オールマイトォ!」
「爆豪少年……!」
「今のうちに……敵を!」
腕に走る痛みに舌打ちしながらも、不敵な笑みを浮かべてオールマイトに発破をかける爆豪と、霜の下りた身体を左から炎を出して体温調節する轟。
頼もしい仲間の登場に緑谷は顔を輝かせる。そんな緑谷のそばに、マンタに乗った千雨たちがやって来る。
「無事だな、緑谷!」
「長谷川さん!みんな!」
「メリッサさんはマンタに乗ってくれ」
「わかったわ」
「オールマイト!金属の塊は俺たちが引き受けます!」
メリッサがマンタに乗り、腕を硬化させた切島と飯田がマンタから降りて駆け出し、伸びてくる鉄柱を二人で砕いていく。
操っている数は多いが、破壊出来ないほどの密度は無いようだ。
「耳郎とメリッサさんは八百万のそばに。麗日、お前がマンタの手綱握ってろ。峰田はマンタの周囲を警戒。
上鳴、お前はちょっとこっち来い」
「俺!?」
「私にはお前が必要なんだ」
真剣なまなざしで上鳴を見ている千雨。着飾っている美人にまっすぐと見つめられたうえに必要なんだと言われた上鳴は、わずかにドキリと胸が鳴らせる。
そして続けて千雨はこう言った。
「お前の電力は全部私が有効活用してやっからな、
「で す よ ね !!!」
上鳴は溜めていた電気全てを放電して千雨の電子精霊たちが吸収させたのち、ウェイ状態になって千雨にマンタの上にぽいっと投げられる。
麗日と耳郎と峰田はこれを見て、やっぱりなと納得顔をしていた。千雨が上鳴を必要とするとしたら、上鳴の電力しか無いのである。唯一、メリッサだけが上鳴の心配をしていた。
ともあれ、上鳴から電力を得た千雨は身体強化に電気を纏って敵の鉄柱を爆豪たちとともに砕いていく。飛び散る破片にスカートがボロボロになるが、気にしている余裕はない。
「ここまで来ておいて、無理なんて諦めてんじゃねぇぞ!オールマイト!」
疲弊していようとも戦うのは、この場にいる全員、救けたいのだ。この島の人々を。戦ってくれているヒーローを。
そんな生徒たちの奮闘する姿に、オールマイトの底をつきかけていた力が再び湧き上がってくる。
「教え子たちに、こうも発破をかけられては、限界だなんだのと言ってられないな。
限界を超えて、さらに向こうへ――そう、Plus Ultraだ!!」
オールマイトはそう叫びながら、自身へと向かってくる何本もの巨大な鉄柱を砕きながら進む。勢いはまるで衰えることなく、観念しろと言いながらウォルフラムに向かって突っ込んでいくその姿は衰えた様子はまるで見えない。千雨が移動の補佐をしたこともあって、パワーを温存出来たのだ。
あと少しで鉄拳を叩き込む……といったところで、後方から迫る鉄柱から無数のワイヤーが伸び、オールマイトの四肢を空中で拘束した。
「この程度……っ!」
オールマイトがワイヤーを引きちぎろうとするよりも先に、ウォルフラムの左手がオールマイトの首にかかる。片手で首を絞めるように掴んだウォルフラムの腕が赤く光を帯びながら異様に膨らんでいき、まるで増強系の個性だと言わんばかりに服を破り盛りあがる筋肉が現れた。
「観念しろ!?そりゃお前だ、オールマイト」
不気味な笑みを浮かべながらオールマイトの首を絞めていくウォルフラム。さらにウォルフラムの右手がオールマイトの左わき腹の古傷を的確にえぐった。知られていないはずのその傷をえぐられ、オールマイトは吐血しながら痛みに絶叫した。そして体力と気力が減っていくのを知らせるかのように、オールマイトの身体から蒸気が立ち上る。
オールマイトのピンチに気付いた緑谷だが、すでに満身創痍であることに加えて、千雨たち同様に、襲い掛かる鉄柱に対処するのが精いっぱいでオールマイトに近付くことも出来ない。
一方でウォルフラムに首を絞められ古傷をえぐられながらも、オールマイトはウォルフラムが個性の複数持ちであると思考を巡らせていた。そして霞みそうな意識の中で、オールマイトは嫌な胸騒ぎを感じ、その胸騒ぎは確信へと変わっていく。
宿敵であるオール・フォー・ワン。奴がこの事件に関わっているという事を。
様相の変わったオールマイトに、ウォルフラムは気付いたかと言わんばかりに下品な笑みを浮かべながら、オールマイトの精神を折らんばかりに楽し気に話し始めた。
「この強奪計画を練っているとき、『あの方』から連絡が来たんだよ。『是非とも協力したい』ってな。何故かと聞いたら、あの方はこう言ったよ」
「『オールマイトの親友が悪に手を染めるというのなら、是が非でもそれを手伝いたい。その事実を知ったオールマイトの苦痛に歪む顔が見れないのが残念だけれどね……』」
その言葉に、オールマイトはそれまで苦痛に苛まれつつも浮かべていた笑みが、苦しみと怒りに歪む。人々の知っているヒーローらしい表情が消え、ただの人間らしい表情になった事に対して、ウォルフラムはしごく愉快そうに見下ろした。
「ようやくニヤケ面が取れたか」
怒りのままにワイヤーを引きちぎろうとしているオールマイトに、正面から鉄柱が激突する。それでもオールマイトは意識を失わず、四肢をワイヤーに引きちぎられながらも抜け出そうともがく。今度は左右から四角く大きい鉄の塊が挟み打つ。
さらにウォルフラムの周りに浮かんでいた鉄の塊が磁石に引き寄せられるかのようにして、勢いよくオールマイトを襲う。
その場の全員がオールマイトの絶体絶命のピンチに総毛だつ。全員の視線の先で、ウォルフラムが声高に腕を振り上げた。
「さらばだ!オールマイト!」
その声と共に地面から鋭い鉄柱が何本も瞬時に伸びて、オールマイトを閉じ込めている鉄の塊を貫いた。
「マイトおじさまぁぁあああ!!」
メリッサの悲鳴が響く中、その塊に向かって飛び出す影がひとつあった。巨大な塊に臆することなく向かっていくそれが誰なのか、千雨と爆豪と轟は瞬時に気付いた。緑谷だ。
緑谷はオールマイトを救けたい一心で、自身の身体も顧みずに飛び上がってワン・フォー・オールの力を全身にみなぎらせ、右腕を鉄の塊に向かって引き絞る。
メリッサが渡してくれたフルガントレットによって本来の限界である5%を大きく上回る30%の力で殴りつける。鉄の塊は打ち砕かれ、閉じ込められてボロボロになったオールマイトが抜け出し、舞い上がる土埃によって姿が隠れる。
「あのガキ……!」
「再現、伸珍鉄自在棍!」
「ぐぅっ!?」
オールマイトの殺害を邪魔されたウォルフラムは、目前に突如現れ迫ってくる巨大な円柱のようなものを自身の周囲の鉄で壁を作って遮る。ギャリギャリッという金属の擦れる轟音と火花を散らしたその物体の威力はすさまじく、ウォルフラムが防御に使った鉄片がいくつも弾き返されて偶然ウォルフラムに刺さり、その痛みに意識を取られている間に一瞬で短く縮んでいく。
「チィッ!仕留め損ねたか!」
油断した一瞬の隙を狙った千雨の伸珍鉄自在棍による攻撃は防がれてしまった。しかしウォルフラムの意識がそれたからか、個性で作り上げた禍々しい鉄の塔が崩れ、中に捕らえられて気絶しているデヴィッドが露わになった。
「オールマイト!緑谷!」
「今の攻撃は長谷川少女か!」
ウォルフラムが気付く前にオールマイトと緑谷の姿を見つけた千雨が二人のそばに移動する。緑谷もオールマイトも、そして千雨も、全員満身創痍だ。しかし、誰一人としてその目は諦めていない。
「……露払いと博士の救助は私がしてやる。トドメはテメーらに任せるぞ」
「長谷川さん……」
ウォルフラムの築いた歪な塔はいまだに巨大な金属の塊だ。千雨一人では奴を倒すには力不足である上に、ウォルフラムのいる鉄の塔の内部にデヴィッドが捕らわれている以上、電撃を浴びせる訳にもいかないのだ。
緑谷は自身の右腕のフルガントレットを見る。メリッサが渡してくれた時にオールマイト並みのパワーで放っても三回は持つと言っていたが、この状況ではいつ壊れても不思議ではない。どうか最後まで持ってくれと願いながら、緑谷はウォルフラムのいる前を見据えた。
「――行くぞ!」
「はい!」
オールマイトの掛け声に気合いを込め、二人はウォルフラムに向かって駆けていく。二人を妨害しようとするようにウォルフラムは鉄柱や風力発電のプロペラなどありとあらゆる金属を無数の塊にして、散弾のように二人に向けて打つ。
しかしその鉄塊は空中を駆ける千雨が伸珍鉄自在棍を長く伸ばして貫き、地面へと落としていく。
「無駄だぞこのクソ鉄野郎!」
「ガキとゴミの分際で!俺の邪魔をするんじゃねぇ!」
「そりゃ、てめぇだろうがぁ!」
千雨の近くまで爆破で飛んできた爆豪が叫びながら、両手から最大限の爆破で絶えず飛んでくる散弾のような鉄塊を吹き飛ばす。爆破による煙と突風の中をなおも変わらず駆け抜けていくオールマイトと緑谷。
すかさず二人にむかって細い鉄柱が矢のように何本も伸びて襲いかかったが、それを今度は駆けつけた轟が氷壁を作り出して防ぐ。
全員が、二人のために道を作っていく。
どれだけ手を尽くそうとも、どれだけ金属を操れようとも、多勢に無勢。それを悟ったウォルフラムは両腕を天に向かって突き出し、上空に鉄片や地面の鉄板を引き剥がして集め始める。
「なに……あれ……」
困惑と不安そうな声を出して麗日は敵の築いた鉄の塔の真上に集まる巨大な金属の集合体を見上げる。唖然としている今もなお、金属がどんどん集まってその大きさを増していく。
「タワーごと、潰れちまえ!!!」
巨大な鉄の塊がオールマイトと緑谷に向かって落ちていく。しかし二人は逃げない。向かってくる鉄塊に向かって伸びるように、淡く光る足場が二人の目の前に現れる。この状況で言葉はいらない。千雨が作った足場をオールマイトと緑谷は駆け上り、鉄塊に向かって加速しながらすさまじいパワーの宿った拳をぶちこむ。
「「ダブルデトロイトォォオオオ!!!スマーッシュ!!!」」
オールマイトと緑谷の二人の攻撃に、ウォルフラムはなんとか押し戻そうと鉄塊を操る両腕に力を込める。しかし二人はウォルフラムの抵抗を受けてもなお、その拳をありったけの力で押し込んでいく。
ウォルフラムが必死で抵抗していたが、後頭部に装着していた個性増幅装置が急激な負荷によるオーバーワークで異常停止する。それによって個性の勢いが落ちたウォルフラムは、両腕を大きく弾かれた。そして鉄塊には亀裂が走って轟音を立てながら瓦解していく。その勢いのままオールマイトと緑谷はウォルフラムに向かっていく。
ウォルフラムの両腕が弾かれたのを見ていた千雨は、二人の攻撃に巻き込まれないようにとデヴィッドを救出して肩を貸しながらその場を離脱する。
千雨が救出をしたと同時に、ウォルフラムにオールマイトと緑谷の拳が叩き込まれた。そのパワーによってウォルフラムのつけていた個性増幅装置は閃光を漏らしながら爆発し、緑谷のつけていたフルガントレットもまたパワーに耐え切れずに砕け、ウォルフラムの制御の無くなった金属片の歪な塔は崩れていった。
「……う……」
千雨に救出されたデヴィッドは朦朧とする意識の中でわずかに目を開き、輝く光を見た。
そこには彼が憧れた、若き日のオールマイトが見えた。
しかし瞬きをすると、それはオールマイトではなく一人の少年だった。あの日のオールマイトと同じように、自身を顧みず、人々を安心させる満面の笑みで右拳を天へ高く突き上げている少年。
親友とそっくりな少年。
――嗚呼、ヒーローだ。
デヴィッドはそう思いながら、その姿を目に焼き付けんばかりに見ていた。
あとちょっとで映画編は終わる。多分。多分あとちょっと。あと一話……か、二話。三話はいかないと思うけど……伸びてく……どうして……。
あ、あと感想でリクエストされると運対入っちゃうので、こういう時こそマシュマロに投げてくれると嬉しいです!感想ごと消されちゃうので!それはとっても悲しいので!