しかし、『魔法』に加えて空中移動の足場……ちう様のマンタとモロ被ってて、思わずツイッターで叫んでしまった……。ヤオモモ期末回の時に詳しくって前書きに書いたけどこんな事になると思わないだろ普通……。あと『魔法ヒーロー』被りしても問題なかった可能性があってビックリだよ……。
能力を先に出したのはこっちとはいえ……これ連載続けてて大丈夫か不安になる。(公式こわい)
ウォルフラムが気絶したことで金属の瓦礫の山となったタワーの屋上。
千雨はデヴィッドが右肩から出血しているのを見て、急いで彼の着ていたスーツのジャケットを脱がしてそのまま止血のために縛って応急手当を行っていた。
「うう……」
「再現、コチノヒオウギ、ハエノスエヒロ」
三分以上経過しているためコチノヒオウギによる治癒は出来ないが、30分以内の状態異常を治すハエノスエヒロを使う。感染症対策だ。何もしないよりは良いだろうという事と、これだったらこの後病院に搬送されても怪しまれることはないだろうという打算込みである。
傷口からして銃で撃たれたのだろう、止血をしていても出血がひどい。しかも貫通しきっていない。千雨は右手を傷口にあてて小さな声で「
そこにオールマイトがやってきた。その姿は半分ほどマッスルフォームが解けてトゥルーフォームになっている。
「デイヴ!」
「……オール、マイ……ト……」
「救けにきたぞ、デイヴ」
そう言ってオールマイトはいつもの満面の笑みを浮かべている。オールマイトが救けにきてくれたことにデヴィッドは嬉しさと苦しさと申し訳なさでいっぱいだった。
「長谷川少女、一体なにを?」
「電子精霊たちのエネルギーを博士の身体に流して治癒力を高めている。微弱な電流を流すことで細胞の治癒力を活性化させたり痛みを軽減させる電気治療に似た個性治療だ。
本来は違法だが、緊急時における個性での人命救助は無免許でも行えるからな」
「まさか治療行為も出来るとは……君の個性は本当に応用が利くというか、応用が利きすぎじゃないかい……?」
「疑う気持ちは分からなくもねぇけど、元の能力から逸脱したモンじゃねぇよ。エネルギーを自分自身に纏う身体強化と、電子機器の電気信号を弄くるのを組み合わせたようなものだ。
さっきの敵の付けてた装置に関しちゃ攻撃に対処するのが精いっぱいで手が回せなかったけど」
「そ、そういうものか……」
個性による治療は医療行為の一種にあたるため、本来ならば免許のない者が勝手に個性を用いた治療をしてはいけない。しかし緊急時、それも人命が関わる場合は行っても良いとされている。
千雨の能力は元々周囲よりも応用が利くものだと認識していたオールマイトですら千雨の能力の万能性に感心を通り越して疑念すら抱いたが、千雨はそれっぽい嘘を並べたててオールマイトの追及を逃れた。
「……ありがとう……オールマイト……君も、救けてくれて……」
「礼なら、メリッサと緑谷に」
千雨がそう言うと同時に、デヴィッドに離れた場所にある瓦礫の山の上にいるメリッサと緑谷がこちらに向かって手を振りながら声をかける。
「パパ!」
「オールマイト!長谷川さん!」
嬉しそうに手を振っている二人と、今も自身の手当をしている千雨。オールマイトは子供たちが頑張ってくれなければこうして敵を倒してデヴィッドを救けることは出来なかっただろうと改めて実感した。
「ところで……彼女は、君の現状を、知って……?」
オールマイトの姿に慌てることも気にすることもせずに治療を続けている千雨に、デヴィッドは傷の痛みに顔を歪めながら訊ねた。それに対して千雨は呆れていると言わんばかりに半目の表情でため息交じりに返事をした。
「オールマイトが色々と詰めが甘いのは、博士もご存じでは?」
「……ああ……まぁ、トシだからなぁ……」
呆れ交じりの千雨の言葉に、デヴィッドも思い当たる節があるのだろう。オールマイトはデヴィッドと知り合った学生時代から、パワーやヒーローとしての精神があるのにどこか詰めの甘いところがあった。
そんな2人にオールマイトは心外だと言わんばかりに驚く。
「デイヴまで!?二人とも酷くないかい!?」
「君は凄いヒーローなのに、いまいち締まらない所があるからね」
「今もそうだしな」
「そ、そんなに言うほどか……」
二人からハッキリと言われてぐうの音も出ないといった様子のオールマイト。
博士の顔色が手当をし始めた時よりも良くなってきたところで、電子精霊のしらたきがパッと現れた。
「ちうたま!タワーから少し離れた場所でレセプション出席者の生存確認が始まっております!」
「ん、あっちも無事に避難したか。
いつまでもここに居る訳にもいかねぇし、あいつらも避難させねぇと……。ねぎ、マンタで残ってる奴ら回収してこい。
あーあと敵の捕縛もだ。屋上以外に居る奴らも、人間は全員クラゲで回収してこい」
「イエッサー!」
暗に『キャプチャー・ゼリーフィッシュで捕縛してでも良いからタワーから人を連れ出せ』という千雨の指示を受けながら、緑谷とメリッサのいる方向に飛んでいくねぎ。それを見送りながら、千雨はその場にマンタを実体化させて移動の準備をする。
「私たちもここから離れて博士を病院にと言いたいところだが……オールマイトがその姿じゃ流石にマズいな」
「す、すまない、流石に力を使いすぎてマッスルフォームには……」
今はもう完全にトゥルーフォームのガリガリな姿でコスチュームもぶかぶかだ。これで人前に出たらそれこそ社会に混乱が生じる。
にっちもさっちもいかない状況に千雨は仕方ないと一言ぼやいてから、ごそごそと肩にかけたパーティーバッグの中をあさって、青い飴玉を取り出した。
「ここから離れる前にコレ呑め」
「これは……飴かい?随分と派手な青色だけど……」
「いいから、呑め」
「ぐっ!?」
千雨はオールマイトの口に青い飴玉を無理矢理突っ込む。すると煙と共に姿がマッスルフォームへと変わった。
「こ、この姿は!?一体、どういう…!?」
「授業参観の時に使ったの見てただろ、アレと同じもんだよ。五感すら騙せる。
仕組みを説明する気はないが、見た目だけであってパワーとか出ねぇからな」
オールマイトは信じられないものを見たかのように、自身の手や身体を動かして確認する。身体にピッタリとフィットしたコスチュームと鍛え上げた肉体は紛れもなく本物だと感じる。怪我の痛みこそあれ、これなら人前に出てもなんら問題ないだろう。
デヴィッドも驚きで目を見開いていた。
「助かったよ長谷川少女」
「ここから離脱するのとソレで合わせて貸し2だからな」
「は、長谷川少女に借り……なんか怖いな……」
「会場で救助してやった分は戦闘して貰ったことで相殺してるが、相殺しないで貸し3にした方が良かったか?」
「相殺でお願いします」
教師と生徒と言うには、彼女はオールマイトに対してだいぶ不遜な態度だが……これはフレンドリーと言うべきなのだろうか。
二人のやり取りを聞いていたデヴィッドは、一瞬フラリと視界が揺れるような感覚になる。千雨のおかげでいくらかよくなったとはいえ、出血によって血圧が下がっているのだ。
オールマイトがそんなデヴィッドに肩を貸しながら千雨の出したマンタの後ろ側に乗る。
千雨は二人がマンタに乗ったのを確認してから二人の前に立ち、マンタの手綱を握りながら静かに告げる。
「……オールマイト。今回は事件が事件だったし状況が状況だったからこうして手を貸してるが、今後も手を貸してもらえると思って頼るなよ。
私があんたのヒーロー続行をよく思わないのは今も変わらねぇ」
「…………」
デヴィッドは、黙って千雨の言葉を聞いた。
このハセガワという少女は、オールマイトの秘密を知ると同時に、オールマイトがヒーローを続ける事を快く思っていないのだろう。本来ならば、彼の友人である自分もまた彼自身の事を考えるべきだったのだ。しかし、どうしても……どうしても、憧れたヒーローの終わりを見たくないと思ってしまった。それこそが、間違いだった。
デヴィッドは改めて自身の行いがどれほど間違っていたのか理解し、その心情を吐露し始めた。
「……オールマイト……私は……君という光を失うのが、築き上げた平和が崩れていくのが……怖かった」
デヴィッドの言葉をオールマイトはじっと聞いている。親友の言葉を聞き逃すまいと。千雨もまた、何も言わずに聞いていた。
「君がヒーローを続けられるようにと、考えていた。君の願いが、叶い続けられるようにと。
だが私の考えも、あの装置も……しょせんは現状維持の産物だ。私は私がかつて憧れた君という光しか、見えていなかった……君のいない社会が来ることを憂いて、自分を見失っていた」
オールマイトの輝きはとても強い光だ。世界が彼の光に照らされている。デヴィッド自身も、彼の光に憧れ続けた。
だが、彼の光がもしも失われたとしても、ヒーローが全ていなくなるわけではない。
「未来が、希望が、すぐそこにあるというのに、私は目を逸らしていた」
デヴィッドは痛む身体に鞭をうって身体を動かし、顔を上げる。千雨がマンタを進めている先には、メリッサとともにマンタに乗って麗日たちに手を振っている緑谷がいる。
「メリッサが私のあとを継ごうとしているように、ミドリヤ・イズク……彼が……君のあとを継ぐ者なんだろう……そして、彼と共に……平和のために戦うヒーローたちが、いる……」
あの時見た緑谷の姿は、デヴィッドがかつて憧れたオールマイトの姿と重なって見えた。これからの未来を担うヒーローの姿があったのだ。
それは勿論、緑谷だけではない。共にデヴィッドを救けようと戦ってくれた子供たち全員が、これからの未来であり希望の光だ。
「長谷川ー!オールマイトー!」
「千雨ちゃーん!」
こちらに向けて大きく手を振る彼らに、千雨は静かに手を高く上げた。
タワーから少し離れた場所にある広いスペースに、パーティー会場にいたVIPたちとプロヒーローたちがいた。オールマイトとともにやって来た千雨たちに彼らから歓声が上がる。
「ヴィランは?」
「全員捕縛しています」
フワフワと浮いている大きなクラゲに捕らえていた中の敵たちを地面におろすと、I・アイランドの警備員たちが拘束して連行していく。
「怪我をされた方は治療します、こちらへどうぞ」
「デヴィッド・シールド博士が背後から右胸上部に被弾、銃弾の除去はまだです。肩甲骨および肋骨が骨折の可能性あり。
応急手当はしましたが貧血状態です」
「ありがとうございます、今すぐ病院で手術の手配を」
「メリッサさんも一応診断受けて下さい。破傷風になったら危ないですから」
「長谷川さん……ありがとう」
現場に駆け付けていた医療関係者にデヴィッドとメリッサを預けて、千雨もまた簡易救急所で軽い検査をしてもらい、その場に集まっているVIPの人々から感謝されていると、オールマイトと共にスーツを着た男が3人ほど千雨に近付いてきた。
「I・アイランドの管理関係者です……お時間よろしいでしょうか?オールマイト氏もご同行頂ける同意を頂いております」
「……わかりました。少々友人たちに話をしてからでもよろしいですか?」
「構いません」
管理関係者、もっとわかりやすく言えばI・アイランド上層部の人間が出てきたという事は、まぁそういう事だろう。
千雨は簡易救急所で検査し終えて集まっていたクラスメイトたちのもとに向かい、轟に声をかけた。
「轟、ちょっと用事が出来たから、ホテルには先に戻っててくれ」
「……あいつら、この島の上層部の人間か?俺も一緒に……」
「いや、私個人に話しかけて来たんだ。私だけに用があるらしい」
千雨の言葉に轟は不満そうな顔をする。
保須の時同様に千雨が矢面に立って対処するのが目に見えていたからだ。
「……納得してねぇか。なら、こう言えばわかるか?
今日使った私の個性関係の話……ハッキングについてだ」
千雨の言葉にその場の全員が千雨を心配そうな目で見る。
違法行為だということは全員が覚悟していた。その中で千雨の行ったことは個性で敵と戦う以上に問題行動だった。
「安心しろ。オールマイトもいるから、向こうも下手な事はしねぇよ」
「…………わかった」
オールマイトもいるという言葉によって渋々とだが一応納得した轟たちに見送られて、オールマイトと共に上層部が用意したであろう黒塗りのバンに乗って移動した。
「……長谷川、大丈夫かな……」
「オールマイトがついていますから、大丈夫ですわ耳郎さん」
「ヤオモモ……うん、そうだよね」
「もしも長谷川に何かあったら俺に連絡が来るだろ。そしたら全員にも連絡する」
「轟くん……」
「長谷川もこうなるって分かってたみてぇだし、何とかする手段があるんだろ」
轟の言葉に、その場の全員が不安を残しつつも大丈夫だと信じた。
ちなみに車で移動中の千雨はこの後のことを何も心配していなかった。というのも、責任を全部オールマイトに擦り付ける気だったからだ。現場にいたプロヒーローであり、雄英高校の教師である以上オールマイトは責任者の立場になる上に、千雨はオールマイトに貸しが2つもある。今回の事件の真相もあいまって、千雨は自身が絶対に安全だという確信と、無罪を勝ち取れるだけのものがあると認識していた。
一方、千雨の隣にいたオールマイトはゾクリと背筋が冷えた気がした。
千雨はオールマイトと共に今回の事件についてI・アイランドの責任者たちと共にI・アイランドの中央ブロック地下、海中部分にあり島の動力などを担う一般人立ち入り禁止のエリアにある特別会議室にて会議を行った。
会議といっても、何があったのかの説明と、今回関わった人物と破壊してしまったものの一覧の提出、そして今回の一件に関する守秘義務契約である。
今回の事件の解決に関しては全面的にオールマイトの功績として隠蔽される事となった。
千雨たちヒーロー志望の学生の将来を守るためという目的以外に、I・アイランド側からしても守っている対象の科学者が敵を内部に手引きしたなど公表出来るはずもない。しかもそれが個性科学研究におけるトップとまで言われる開発者のデヴィッド・シールドが関わっていることが知られればI・アイランドの大きな損失になるのは火を見るよりも明らかであった。
また、こうして千雨たちのことを隠蔽する上で、千雨が能力でハッキングしたことに関してもお咎め無しである。
もっとも、セントラルタワーの上部がほぼ壊滅状態である上に、ご自慢の最新鋭セキュリティを一部とはいえハッキングされてエラーを起こしたなど、I・アイランドの信頼に関わる話になるので当然だが。
「……では、今回の一件はオールマイトが解決したということで。本件に関わった学生にはこちらから内密に通達致します」
「ご協力感謝いたします。招待状をお出しした方々に向けては、こちらから今回の出来事についてご説明いたします。
……ところで、個性の相性でハッキングが出来たとのお話ですが……その能力でI・アイランドの研究にご協力いただくことは可能でしょうか?」
「申し訳ございませんが、お断りさせていただきます」
協力すれば最先端技術や極秘開発についてなども知れるだろうが、流石にヒーロー公安委員会と関係のある千雨は自身の一存で決めることは出来ない。くわえてまだヒーロー候補生の学生だ。承諾するなど出来る筈がない。それでも聞いてきたということは、それだけ脅威でありまた有用であると認識されているのだろう。
気持ちは分からなくもないが、事件を隠蔽するI・アイランド側がそんな依頼をするなど厚顔無恥にも程があるのではないだろうか。
ともあれ、無事にI・アイランドの上層部とのやり取りを終えた千雨は、オールマイトと共に地上にまで案内されてホテルに戻ることになった。
千雨はホテルまで一人で帰るつもりだったのだが、オールマイトが流石に一人は心配だから送ると言ってきた。セキュリティが通常状態に戻っているのにそう言うということは何か話したいことがあるのだろう。千雨は渋々ながらもオールマイトと並んで歩く。
流石に騒動があったからなのか、夜明けが近いということもあるのか、辺りに人影はひとつもない。
「……長谷川少女、良かったのかい?会場での大立ち回りまで隠してしまって……」
「隠すなら全て隠した方が良いだろうが。私は名声欲しさに大立ち回りしたんじゃねぇ。あの時動ける面子の中で、私が適任だったからしただけだ」
面倒臭そうに言い切った千雨。そんな千雨にオールマイトは相変わらずだな、と思った。
千雨は他の生徒、特に爆豪のように目立つために進んで前に出ると言うよりも、自分が適任だからという理由で役割を担う。入学して間もない戦闘訓練の時からそうだ。自身の力を過信せず、冷静に見極める。盤上の駒のひとつと言わんばかりに自身をも動かす。
そして、こうして二人だけで話せる珍しい機会だからこそ、聞きたいと思ったことがオールマイトにはあった。
「長谷川少女は……その……今回のことを……」
「あ?……ああ、今回の一件を悔いてんのか?そりゃそうだよな、今回の事件はもとをただせばオールマイト、テメェが蒔いた種であり、テメェを思うがゆえに起こされた事件だ。
『自らを一切省みずにいるテメェがこれからも平和の象徴で居続けることが出来るように』という願いによってな」
「それは……その通りだ。言い返す言葉もないよ」
千雨は、デヴィッドの気持ちがよく分かる。光を失う恐怖を知っている。だからこそ、その原因を許す心はなかった。周囲の気持ちを蔑ろにする存在を認めることは出来なかった。
「自業自得だとしか思えねぇ話だよな。周囲の気持ちを無視して、優しさを踏みにじって、世の為人の為にとヒーローを続けた。……その結果、今回の事件が起きて多くの人に迷惑がかかった。これは変えようのない事実だ。
私や緑谷たちが動かなきゃ、世界中で多くの人が犠牲になっただろうよ」
千雨たちが動かず、敵がデヴィッドを連れて島を脱出していたら、きっともっと大きな事態になっていたことだろう。デヴィッドの個性増幅装置を付けただけであれほどの力を持てるのだ。それが裏社会に広がれば、世界の平和が崩壊して混沌に満ちることとなっただろう。
千雨は知らないことだが、今回の敵はオールマイトの宿敵であり裏社会の伝説的存在であるオール・フォー・ワンともつながっていたのだから。
「…………私は長谷川少女の指摘する通り、周囲の優しさを犠牲にしてひた走り続けてきた。
君たちの世代では実感がないだろうが……私が学生の頃は、人々はいつも不安そうな顔をしていた。どれだけヒーローがいても、人々を明るく照らす光が、社会を支える象徴が無かったからだ。
ならば、私がそれになろう。そうしてこの道を選び続けた。だからこそ、得られたものもあると思っている。私はこれまでの選択を後悔していない」
オールマイトは静かに語る。千雨はその言葉を黙って受け止めた。
ああ、そうだ。そうだろうとも。走り続けて犠牲にした代わりに得たものはあるのだろう。ネギもそうだった。ネギもまた多くの代償を払って、多くのものを得た。身の丈に合わないものを、魔法世界の未来、英雄の称号、百年続くネギにしか出来ない仕事を背負った。
後悔していないと、お前らは必ずそう言う。そう言って人間の当たり前の幸福を、ありきたりな日常を、なに不自由無い平穏を、周囲の願いを、私の願いを、お前自身を、切り捨てていく。
切り捨てたものを振り返ることもなく、戻る事の出来ない道を進んでいく。
それだけは許してはいけない。受け入れてはならない。人として生きる彼らの為に。人であってほしいと願う私の為に。
絶対に、許容してはならない。
「…………後悔してなかろうと、私はそれを絶対に許容しねぇ。切り捨てられるものの重さを知っている以上、絶対に」
「……」
「何のために周囲が手助けするのか。誰の為に周囲が戦っているのか。……すべては、当たり前でどうでもいいような日常のためだ。他の誰でもない『お前』がいる日常のためだ。
そんな周囲の願いを、あんた自身を、切り捨てなきゃ手に出来ないものなら……手にするべきじゃない」
「それは……」
今も鮮明に思い出せる。ネギの背を押してしまったあの日。千雨にとって、ネギにとって、世界にとってのターニングポイントであったあの日。
ネギがあちら側へと進むきっかけとなった罪を。
長谷川千雨の、消えることのない罪を。
「……話は終わりだ。じゃあな」
千雨はそう言うやいなや、マンタを実体化させてホテルに向かって飛んでいく。
マンタに乗りながら千雨はいくつものビルの向こう側に広がる、うっすらと白み始めた夜明けの空を見た。空は嫌味なほどに澄み渡っており、ラカンの住んでいたオアシスであの日見たものと変わらないものに見えた。
個性による医療行為に関しては映画第二弾の感じからしてこうだろうな、という予想から決めました。じゃなきゃ普通にアウト行為を堂々としてることになるし。
そしてちう様の治癒についての言い訳は家で治癒魔法の特訓中に考えてた設定。あり得ないと言い切れないんだぜっていう。まぁ魔法なんですけどね。
そして千雨の能力の幅の広さがシャレにならなくなってきた。
特殊な武器(アーティファクト)複数、超パワー、超スピード、無音の中距離攻撃、遠隔からの戦闘支援、電子精霊の偵察、戦闘指揮、電気属性攻撃、マンタなどの移動補佐、ハッキングによる後方支援、そして医療行為も出来るってお前……お前こそが
ところで「○○の為に」ってタイトル回がオールマイトと対立回になってるんですけど、いつ和解するつもりなのか作者にも全くわからない。
オールマイト、早くちう様にちゃんと話してくれ……。