ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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合宿編!キターーーーーー!ようやく……ようやく合宿です。

8月の一か月間のお気に入り登録数がすごかった。ちう様がハッキングして数値変えてるんじゃないかって疑うくらい伸びてた。びっくり。

そして本日連載開始から二周年。これからも拙作をよろしくお願いいたします!


Forest training camp
林間合宿


「……くぁぁ……ねみ……」

 

7月30日、現在時刻は7時20分。

欠伸を噛み殺しながら、リュックサックを背負いキャリーバッグを手で引きながら雄英高校の校門をくぐる千雨。

今日から一週間、千雨たち雄英高校の一年ヒーロー科は強化訓練のための林間合宿である。

しかし千雨は集合時刻の8時より前……7時30分に学校の職員室に来るように相澤から言われていたのだ。

 

雄英高校ヒーロー科の林間合宿はただクラスや同学年の仲を深めるためのものではない。一週間の個性強化合宿、普段の学校では出来ない強化訓練をするためだ。

千雨が呼ばれたのは、その合宿中の強化方針についてである。通常であれば個性の許容量や強度、基礎体力の強化などそれぞれの課題を伸ばしていくのだが、千雨の場合は能力の幅の広さから、どういった方向を伸ばしていくか決めるので一苦労なのだ。

そこで千雨の特訓内容については、本人の意思を確認することとなった。

 

「朝から呼び出して悪いな」

「いえ、こちらこそ先日の一件で学校側にご迷惑をおかけしたようで……」

 

千雨は相澤から早めに来るようにという連絡と共に、I・アイランドでの件はオールマイトから聞いていると言われていた。

千雨がハッキングしたことと治癒についてはオールマイトから学校側に連絡されるだろうとは考えていたが、まさか会場にいた客からの問い合わせが学校に殺到するとまでは千雨も予想していなかった。

 

「まぁ確かに予想外の出来事ではあったが、それほど気にするな。稀にだがある事だ。

それよりも、こうして呼んだのは合宿での特訓内容についてだ。今のところ持久力をつける特訓を予定している。もしも他にあるなら他の特訓内容でも良いが」

「私も持久力を付けたいと思ってます。……ただ、他にも試したいことはあって……」

「何だ?」

「体育祭トーナメントで上鳴に使った技よりも飛距離のある攻撃の特訓をしたいんです。出来れば、人目につかない状況が望ましいんですが……」

 

千雨自身の課題としては、やはり持久力をつけることだ。エンデヴァーのもとで行っている特訓も、現在は持久力をつけることと体術中心である。

しかし、せっかく合宿に行くのであれば、攻撃魔法の特訓もしたいのだ。知識として身に着けてはいるものの、流石に室内や住んでるマンションの周囲の屋外などでコッソリと特訓する事は出来ないため、実戦訓練をしたいと前から考えていた。

千雨がよく目にしてきた、魔法学校でも唯一教えられるという戦闘呪文――魔法の射手(サギタ・マギカ)を。

 

「……完全に誰の目にもつかない場所というのは無理だが、わかった」

「ありがとうございます」

「それから、オールマイトからも聞いたんだが、長谷川の使える治癒について教えてほしい」

「治癒と言っても、本当に些細なものですが……」

 

今の千雨に出来るのはちょっとした切り傷など軽い怪我の治癒である。骨折や貫通創などの大怪我は3分以内にコチノヒオウギを使わなければ治せない。勿論、コチノヒオウギに関しては話せないものだ。

相澤には、電気治療に似た治療法で電子精霊を構成するエネルギーを付与しているのに近い、とオールマイトにI・アイランドで説明した内容と同じ説明をした。

千雨は些細なものだと言ったが、それでも応急処置が出来るというのはヒーローにとって強力な能力である。

 

「……長谷川、今回の合宿で怪我人が出た場合にお前のその治癒を使って貰っても良いか?」

「はい、大丈夫です。私にとっても特訓になるので」

「そうか」

 

千雨にとって、相澤の提案はとても嬉しいものだ。これまで行ってきた治癒の特訓は、孤独な黒子で誰にも気付かれずに近付いて治癒をする、無差別治癒であった。流石に治癒するからといって、自身の肌を傷付けるのも動物を傷付けるのも躊躇われた結果である。

 

「…………」

「あの、相澤先生?」

「ん、ああ、話はこれで終わりだ。今は……45分か。集合時間までまだ時間がある、好きにしろ」

「はい、失礼いたしました」

 

千雨が職員室を後にしたのを見届け、相澤は合宿先であるワイルド・ワイルド・プッシー・キャッツに特訓内容を保留にしていた生徒に関しての連絡をした。

 

 

 

現在時刻は8時。雄英高校のバス乗り場には2台のバスが停まっている。

その近くでA組委員長である飯田の張り切る声と、飯田から少し離れた場所で同じくB組委員長の拳藤がB組に呼びかける声が響いている。

 

「A組のバスはこっちだ。席順に並びたまえ!」

「B組のバスはこっちだよー、早くしな」

 

そしてソワソワと落ち着きのない生徒たちの中で、一人の声が響く。

 

「え?A組補習いるの?つまり赤点取った人がいるってこと!?

ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なはずなのにぃ!?あれれれれぇ!?」

 

嬉々とした様子でベラベラと喋っているのはB組の物間である。

千雨はあまりB組のことを知らない。何人かは入試の実技演習で同じ会場だったものもいるが、ちゃんと知っているのはB組の委員長である拳藤、体育祭本選トーナメントの二回戦で千雨と戦った塩崎、尾白と共に体育祭本選トーナメントを辞退した庄田、A組に体育祭前に来て本選に出場した鉄哲くらいだ。

物間については、体育祭で爆豪の騎馬からハチマキを一度奪ったB組の生徒としか知らなかったのだが、ここまでA組に敵対心を持っているとは思わなかった。どうやらA組に赤点を取った生徒がいることでB組の方が優秀だと遠回しに言いたいらしい。

そんな物間の言動に対して、拳藤が手慣れた様子で手刀をいれて物間を気絶させる。

 

「ごめんな」

 

そう微笑みながら言った拳藤は、物間と物間のキャリーバッグを引きずってバスに向かう。どうやら拳藤は物間のストッパーらしい。緑谷や飯田は見た事があるのかあまり驚いてはいなかった。

千雨は驚くよりも呆れが勝っていた。ツッコミして回収されるというのは麻帆良でも時々あった。

 

「物間、怖」

「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくね、A組」

「ん」

 

B組の女子たちは物間と違ってそこまでA組を敵視していないようだ。体育祭でいくらか話したとはいえ、普段は交流することが皆無と言っていい。お互いそんな非日常にソワソワと落ち着きのない様子だ。

 

「B組も粒ぞろい……よりどりみどりかよ……!!」

 

ただ一人、峰田だけ違う方向に向けてテンションを上げているが。

 

 

飯田が席順に乗り込もうと提案し、それに対して芦戸や上鳴が自由に座りたいと声を上げている。千雨は正直席順でも自由でもどうでもよかった。

席の割り振りに関しては、相澤がさっさと乗れという一言ですばやくバスに乗り込んだ。A組の生徒は相澤が無駄な時間を嫌うのをよく知っていたため、素早く乗り込んだせいで全員バラバラである。

千雨は最後尾の五人用座席に着席した。窓側から常闇、千雨、中央に爆豪、そして反対側に口田、障子の順だ。

 

「んで俺がテメェの隣に……!」

「私は寝るし、常闇は瞑想するし、騒がしくしないなら隣は誰でもいい。

それに爆豪、テメーも授業で移動中のバスじゃ寝る派だろ」

「……チッ」

 

言い当てられたのが気に食わないのか、大きく舌打ちをした爆豪。

千雨と爆豪は口の悪さだけでなく、内面もかなり似た者同士なのだ。だからこそ千雨は爆豪の考えを六割ほど読めて、的確に煽れるのだ。

ちなみに読めない四割は、緑谷や轟など爆豪の気に入らない人物が関係した場合である。

 

「おい……半分野郎がやたら見てくるのは」

「知らん。寝る」

 

千雨は自身の席の前にあるテーブルを開いてメガネを仕舞ったケースを置き、ブランケット代わりに持ってきていた白いロングカーディガンを身体にかけて目を閉じた。轟に関しては完全に無視を決め込むらしい。

爆豪はこれ以上言っても疲れるだけだと思ったのか、千雨の隣で腕を組んだ姿勢で目を閉じ、寝る姿勢になった。

そんな二人と静かに瞑想する常闇を慮ってか、同じく最後列にいる口田と障子は話しても最低限度で声も小さくしている。

 

しばらくしてから、エンジンのかかったバスが僅かに揺れて走り出す。

 

「一時間後に一回止まる。その後はしばらく――」

 

相澤が全員に向けてこの後の予定を話そうとしたのだが、どうやらバスが走り出したことで完全に気が緩んだのか、A組の生徒たちは相澤の話を聞いていない。

 

「音楽流そうぜ!夏っぽいの!チューブだチューブ!」

「バッカ夏といやキャロルの夏の終わりだぜ!」

「終わるのかよ」

「席は立つべからず!べからずなんだ皆!!」

「しりとりの『り』!」

「りそな銀行!う!」

 

ワイワイとにぎやかな生徒たちはまるで小学生の遠足のような浮かれっぷりである。

 

「ねぇ梅雨ちゃん、後ろの方静かやない?」

「そう言われるとそうね」

「爆豪と長谷川が寝てるみてぇだぞ」

「え、轟それホント?ちょっと見てみたい!」

「おい止めとけって。二人とも怒るぞ」

「上鳴の言う通りだぜ」

「長谷川さん、よくかっちゃんの隣で寝れるな……」

「そうか?あの2人はよく言い争ってっけど、言うほど険悪って訳じゃねぇし、むしろ気が合うと思う。二人ともやる時ゃやる奴らだし、否定するけど似てるしな!

……まぁ、緑谷に対して爆豪はよくキレてっけどよ」

「切島、俺もあの二人は似てるとは思うけど、気が合うようには見えねぇって」

「上鳴の言う通り、同族嫌悪ってやつだよね」

「あ、でも確か体育祭の昼一緒に食べてるの見たよウチ」

「マジかよ耳郎」

「意外すぎる……」

 

騒ぎ続ける生徒たちに相澤は呆れつつ、仮眠をとるべく目を瞑った。どうせ注意したところで騒がしくするのは分かりきっていた。また、これから一週間生徒たちと寝食を共にしなければならないのだ、無駄なエネルギーをここで消費している場合ではない。

なにより、わいわいと騒いでいられるのも今のうちだけなのだから。

 

 

 

千雨が仮眠を取り始めてから暫く、隣に座る爆豪のキレ散らかす声に眉を寄せながら目を瞬かせる。

 

「んだよ、うるせぇな……」

 

寝ぼけつつも慣れた手つきでケースから取り出した眼鏡をかける千雨。

千雨が寝ている間に何かあったのか、轟が何故か補助イスに座っている。どういう状況なのだろうか。

 

「長谷川も起きたな」

「今、皆でしりとりやってて」

「乗り物酔いしちゃった青山くんの気分転換よ」

 

瀬呂と蛙吹と麗日の言葉に、千雨はしかめっ面のまま返事をする。

 

「乗り物酔い……顎にワンパン入れるか、ビリッと電撃で眠らせてやろうか?」

「長谷川、それは眠らせるんじゃなくてノックアウトだ」

 

千雨は結果が良ければ過程をあまり気にしない性質である。

そもそも、魔法世界で和泉亜子のナギへの恋心をどうにかしたいという大河内の相談に対する助言で、ナギが大会の傷が致命傷となって死ぬというシナリオを提案したような人間である。

そんな女が提案する即座に眠らせる方法など気絶一択となっても、何もおかしくなかった。

特に眠たくてたまらない今はその傾向が強く出ていた。

 

「気絶も睡眠も同じだろ。つかマジで寝みぃんだよ、パスしへ……ふぁぁ……」

「千雨ちゃん寝不足なん?」

「んー……遅くまで色々やってたし朝も早くて……寝たには寝たんだがな」

 

昨夜遅くまでしていたのは、メリッサとのビデオチャットである。事件以降の様子が気になり、ブランドンを通してアドレス交換をしてチャットをしているのだ。

あれからデヴィッド博士の怪我は回復に向かっていて、事件についても問題にはなったが博士もまた被害者であるということで内々での処分となるそうだ。

研究や開発については怪我が治っても暫くはしないそうだが、メリッサさん曰く、

「パパはオールマイト大好きだけど、研究や開発も同じくらい大好きだから、何らかの形で続けることになるかもしれないわ」

とのこと。今も入院中は学会誌など読んで過ごしているそうだ。根っからの科学者らしい。

 

「ともかく、爆豪くんの『か』からだぞ長谷川くん!」

「参加してねぇ!」

「あー……じゃあ『為替』」

「『せ』だな!次、常闇くんだぞ!」

「……『千変万化』」

 

千雨と常闇は仕方が無さそうにしつつも答えたが、しりとりは二周目を迎える前に、青山のために別のことが良いのではないかと蛙吹が言って終了した。

その後もバスの中ではバス酔いした青山のために緑谷がオールマイトに関連しているもののマニアすぎるクイズを出したり、峰田が小学生のころに出会ったホームレスとの良い話をしたり、蛙吹が幼いころに山であった怖い話をしたり、休憩所につくまでの間に楽しい時間は流れていく。

 

そして相澤が言いかけた、一時間後の休憩になった。

乗り物酔いしていた青山も、バスが停止したことで酔いが収まったようだ。千雨たちはバスを降りていく。

 

雄英高校らしい合宿が既に始まっているとも知らずに。

 

 




サギタ・マギカ、実際に使用するには派手だから今まで練習出来ていなかったのです、という。千雨には魔法を教えてくれる教師がいないので全て独学で勉強というのもあるが、特訓場所が無いことも攻撃魔法の学習においてかなり大きな痛手でした。
これ考えると別荘って本当に便利です……時間もだが、広くて人目につかずに色々試せる空間だから、マジで何しても良いからな……。

お知らせ
本誌の展開が怒涛かつ様々なフラグを回収しており、今後の本誌の内容によっては今現在考えている構想から大きく方向転換もあり得るので、更新に遅れが出る可能性があります。
今のところエタる気は一切ないので、その点はご安心ください。
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