ひねくれ魔法少女と英雄学校   作:安達武

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 お ま た せ 
今の抱負は『ヒロアカアニメ5期が終わる前に神野編まで書き終わりたい』です。月一更新になりかかっている安達武にそこまで書けるのかが問題である。


緊急事態

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!

我ら敵連合、開闢行動隊!!」

「敵連合……!?何でここに……!!」

「社会の片隅で静かに暮らしてろっての」

 

意気揚々に名乗りを上げた爬虫類の体を持つ男に全員の警戒心が上がるなか、千雨は悪態をつく。そんな千雨の態度が癪に障ったのか、名乗りを上げた男の隣にいた人物がしゃべる。

 

「あら、そんな事言うなら……この子の頭、潰しちゃおうかしら。どうかしら?ねぇ、どう思う?」

 

サングラス男の足元にはピクシーボブが倒れており、その頭に布にくるまれた柱のようなものをぶつけた。ゴツ、という硬いものを骨にぶつけた音が響く。

 

「させぬわ、このっ……」

「待て待て、早まるなマグ姉!虎もだ、落ち着け」

 

一触即発状態のなか、爬虫類男が間に入り宥め、言葉を続ける。

 

「生殺与奪は全て――――ステインの仰る主張に沿うか、否か!!」

 

その言葉に飯田がハッと気が付いた顔をした。

 

「ステイン……!()()()()()連中か――……!」

「アァそう!俺は、そうおまえ、君だよ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

申し遅れた、俺はスピナー。――彼の夢を紡ぐ者だ」

 

スピナーと名乗った男はそう言いながら背負っていた大剣を構える。それはいくつもの刃物を無理矢理固定したかのようなものだった。その異様で危険な武器に引き下がる緑谷に対して、千雨と虎は一歩前へ踏み出す。

 

今の飯田への発言内容から、スピナーはステイン逮捕の『真実』を知っているということだ。

保須に脳無が居たことに加えて死柄木弔と黒霧の姿もNHAテレビが捉えていたことから、ステインと連合の繋がりも示唆されていた。彼らは敵連合と無関係で名乗っている模倣犯ではなく、死柄木と繋がっていて、直接情報も与えられているとみて良いだろう。

 

「何が彼の夢を紡ぐ、だ。このクソ野郎」

「何でもいいがなぁ、貴様ら……その倒れてる女……ピクシーボブは最近婚期を気にし始めててなぁ。女の幸せ掴もうって……いい歳して頑張ってたんだよ。

そんな女の顔キズモノにして、男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ!」

「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」

「ヒーロー以前に人間だろうが!」

 

千雨が感情のままスピナーを攻撃しようと身体強化をしたが、マンダレイが千雨の前に出て飛び出すのを制した。

 

「虎!『指示』は出した!他の生徒の安否はラグドールに任せよう。私らは()()()ここを抑える!!

長谷川さんたちは行って!!良い!?決して戦闘はしない事!

委員長、引率!」

「承知しました!行こう!!」

「……チッ!」

 

飯田がこの場に残っていた口田、峰田、尾白、緑谷、千雨に声をかける。

しかしその時、緑谷は何かに気が付いたような表情をした。

 

「飯田くん、先行ってて」

「緑谷くん!?何を言ってる!?」

「マンダレイ!!僕、()()()()()!」

 

そう言ってから一人で駆け出して森の中に入った緑谷。

 

「なっ!?あのバカッ!おい飯田、私が行くから先に避難し……っ!」

「長谷川くん!?」

 

千雨が緑谷を追いかけようとしたが、その身体は突如として敵側に向かって引っ張られた。

 

「貴女は逃がさないわよ、子猫ちゃん」

「っ!シールド!神珍鉄自在棍!」

 

グンッと見えない力に引っ張られる感覚に、千雨はすぐさまシールドを展開して敵のもとに飛んでいく前に偽・虚空瞬動で距離をとり、神珍鉄自在棍を地面に深く突き刺して左手で掴み、なんとか引力に対抗する。

マグ姉と呼ばれたサングラス男の能力は引き寄せる力なのだろう。電子精霊が調べた警察の出している指名手配犯一覧によると、本名は引石健磁、敵名マグネ。『磁力』という"個性"を持っており、強盗致傷9件、殺人3件、殺人未遂29件等の罪に問われる犯罪者。"個性"からして持っている柱のようなものは磁石だと推測した。

スピナーの方は指名手配されていなかったため本名も"個性"も不明である。知るには本人から聞き出すなどしなければならない。

 

「……しばらく逃げられそうも無いんで、戦闘にならない範囲でどうにかします。

飯田、お前らは先行け」

「くっ……皆、行こう!」

「長谷川さん、無理だけはしないで!」

 

飯田が峰田、口田、尾白を連れてこの場を去るなか、マンダレイの言葉を聞きながら千雨は状況を冷静に分析し始めた。

訓練後にコスチュームから私服に着替え終えており、今の持ち物はスマホ、仮契約カード、白き翼のバッヂ、魔法発動体の腕輪と指輪のみ。

仮契約カードがあるからアーティファクトアプリは使えるものの充電器がないため、アデアットしない状態で使える電撃技は魔法の射手と白き雷のふたつ。身体強化に帯電出来るかの実験はまだ済んでいない。そして上鳴は合宿所で補習中。身体強化に電撃を乗せることは不可能だと想定するのが良いだろう。

 

千雨を逃さないと言った以上、奴らの狙いは千雨の拉致と考えられるが、他に狙われている生徒がいないという確証はなく、こうも堂々と襲撃しておいて拉致のみとは考えにくい。

今の千雨に出来ることは敵に捕まらないこと。そして、戦闘にならない範囲でプロヒーローの手助けをすること。

 

自分が生き残るためにも、仲間を生き延びさせるためにも、()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 

「――――電子の王、再現。いどのえにっき(ディアーリウム・エーユス)自在なリボン(リベルム・レムニスクス)

 

地面に突き刺した神珍鉄自在棍を右手で掴んだまま、千雨の目の前には一冊の本が浮いており、左手は桃色の新体操用のリボンを手にした。

 

「本とリボン?一体何を……」

 

千雨がリボンのスティックを振ると、桃色のリボンは元の長さより更に伸びて勢いよくマグネの持つ磁石に巻き付くと奪い取って空高く放り投げ、続けざまにスピナーの持っていた大剣も上空へと投げる。

二人はリボンのスピードと千雨の身体強化のパワーを前に、武器を奪われないよう阻止することすら出来なかった。

 

「キャプチャー・ゼリーフィッシュ×2」

「武器がっ!」

 

上空へと投げた敵の武器をクラゲが絡めとり、合宿所へとふわふわ飛んでいく。武器を失ったこともあってか、先程まで千雨が感じていた引力は消える。

そして空を見上げていた隙に素早くマグネの足元にいたピクシーボブもリボンで救出して横抱きにする。額から血を流して意識を失っているものの、致命傷には至っていないようだ。

武器の奪取と人質の救出をした千雨は宙に浮く本を前に、続けて言葉を発する。

 

「敵名マグネ、本名引石健磁。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』」

「急に何を言って……まさか……!」

 

マグネは不可解な質問にいぶかしんでから、ひとつの可能性を導きだす。本来ならばあり得ないことだが、それしか考え付かなかった。そしてそれは、マグネが予想した通りであった。

 

「敵の狙いは私と爆豪の拉致、生徒の殺害、血液採集、ラグドールの拉致、プロヒーローの足止め!

襲撃者は十名、さらに脳無一体!」

 

宮崎のどかのアーティファクト、いどのえにっき。

自身の心、または本名を知っている相手の心を絵日記形式で読むことが可能。

 

千雨が襲撃計画の内容を声高に読み上げれば、マンダレイと虎が目を見開き、マグネとスピナーは動揺した。

 

「こ……心読みだとっ!?」

「それがあなたを拉致する命令の理由って訳ね!厄介すぎるから眠ってて頂戴!」

 

千雨の言葉にうろたえるスピナー。拉致の理由に納得したマグネは攻撃しようと千雨に一気に近付いたが、虎がボディーブローを仕掛けて押し止める。

 

「させぬわ阿呆!」

「ここでの戦闘はお願いします!

しらたき、お前は連絡役として残ってマンダレイに情報を!」

「はいですー!」

「よくやってくれた!後は任せろ!」

「内容は全て拡散するから、ピクシーボブを頼むわ!」

 

いくらここが私有地で敵が襲撃してきたとはいえ、無免許の千雨たちは無許可で正当防衛の範囲を越える攻撃は出来ない。ここで千雨に出来ることはすべて行った。

 

追加の情報を得られる可能性も考えられるため、いどのえにっきは手元に残して自在なリボンと神珍鉄自在棍を消し、ピクシーボブを横抱きにして走りながら額に解析魔法と治癒をかける。

頭部を攻撃されてからそこまで時間は経っていないとはいえ、重大な障害を残しかねない。また、広範囲への攻撃や索敵が出来るピクシーボブの戦線離脱は深刻な問題でもあった。

 

そうして千雨が走っていると先に避難していた飯田たちに追い付く。身体強化した状態で走って離脱した千雨と異なり、飯田たちは周囲を警戒しながら"個性"を使わずに移動していた。

 

「長谷川くん!」

「お前、あの状況から助けたのかよ!?」

「ピクシーボブの怪我は?」

「現場をプロに任せるために救出した。頭部を強く打って気絶してるだけで脳に異常はない、切れた額の怪我は治したから大丈夫だろう。

飯田、ピクシーボブを合宿所に連れていってくれ」

 

意識不明のピクシーボブを抱えて離脱してきた千雨に驚愕している峰田と彼女の怪我を心配する尾白へ簡潔に説明し、千雨は飯田に有無を言わせずピクシーボブを抱えさせた。

 

「お、おい長谷川!?」

「敵の狙いが長谷川くんと爆豪くんの拉致だとマンダレイからテレパスがあったんだ、一緒に合宿所まで撤退しよう!」

「いや、私は生徒の救助と並行して緑谷のバカがどっかに行ったから探す。お前らは合宿所に避難。

ちくわふ、飯田たちに同行して合宿所との連絡役を頼む」

「イエッサー!」

「なっ!お、おい!」

「長谷川くん!?」

 

言うだけ言って、千雨はUSJの時と同じようにその場から暗い森の中へ飛び出していった。

千雨は自身が狙われていると知っても、仲間の誰が殺されてもおかしくない切羽つまった状況下で、安全な場所へと避難することは選べなかった。

たとえそれが敵の狙いであったとしても。

 

来たれ(アデアット)!コスチュームチェンジ、ヒーローコスチューム!

電子の王、再現、オソウジダイスキ(ファウォル・プールガンディ)、天狗之隠簑!」

 

力の王笏を手にヒーローコスチュームへと服を変え、天狗之隠簑を纏い、いどのえにっきを手の届く場所に浮かせた状態で箒に跨がり十数メートル上空へ飛ぶ。

上空から見た山荘とその周囲は、合宿所の近くでは青い炎による山火事が起きており、肝試しのルート周辺はいつ発生したのかわからない白いガスが一定の範囲内で渦巻くようにして漂っている。山火事の黒煙を避けて風上に移動して全体を俯瞰しようにも、木々が多くて見通しの悪い森では難しい。

 

「こんにゃ、あの白いガスは?」

「解析しました!吸引することで昏睡状態を引き起こすほか、四肢を麻痺させるなどの毒ガスですー!」

「毒ガス……マスタードとかいう敵の仕業か。十中八九B組と前半のペアの奴らが巻き込まれてるな……八百万がガスマスクでも創造して全員救出出来てりゃ多少は楽になるが、人数が多いし敵もいるし、ガスの作用で動けなくなってる奴が多いと救出しきれるとも限らねぇ。

こんにゃ、しらたきに連絡!きんちゃ、生徒と敵の居場所を探れ!だいこは雄英高校と近隣の警察に詳しい情報のメール!

ねぎ、単独行動してる緑谷はどこだ!?」

「すこし離れた崖上に……!」

 

ねぎが報告していた最中に、合宿所とマンダレイたちのいる広場の中間あたりにある少し小高くなっている岩場が大きな音を立てた。

 

「今崩れた場所が、緑谷たまのスマホの最終反応ポイントですー!」

「あのバカ、やっぱ疫病神か何か憑いてんだろ!?

クソ、どう考えても私一人じゃ手が足りねぇ!あの単独行動バカを最優先で確保に行くとして、ガスの方にも手を回さねぇとマズい……!

電子の王、再現、渡鴉の人見!」

 

現れた六体の偵察ロボのうち三体に、天狗之隠蓑から取り出したガスマスクをビニール袋で密封してくくりつける。ガスマスクの数がないため、一体のロボに対してつけられるのは二個までだ。

 

「きんちゃ、はんぺ、だいこ、おまえらはそれぞれ偵察ロボ二体と一緒にガスの所に向かってガスマスクを配れ。その後は敵を避けてガスと火災現場から離れた場所までマンタに乗せて避難!

私はこんにゃとねぎを連れて緑谷の所に向かう!」

「イエッサー!」

 

千雨は緑谷がこの状況で無意味な行動をする筈がないと確信していた。緑谷は、千雨には理解できないほどに『人を助ける』という思いが強いのだ。緑谷が向かった先には必ず誰かがいる。

そして補習対象者以外の生徒全員とワイプシ四人のいる肝試しの最中にたった一人で合宿所から離れた崖にいる人間なんて――――千雨は、一人しか知らない。

 

「くそっ!頼むから、間に合ってくれよ……!」

 

どうか無事でと願いながら、千雨は大きな破壊音と土埃をあげている崖に向かって空を飛んだ。

 




ちう様がこの状況で誰を優先するか考えた結果、こうなりました。緑谷は他の面々と違って自傷を厭わないヒーローバカだし、崖にいる人物で思い当たるのが一人しかいないしという。
そしてワイプシの前でいどのえにっき使用。他のアーティファクトならともかく言い逃れするには厳しいアーティファクト使用しました。はたして。

ところで、映画第三弾に既視感というか……世界崩壊を仲間とともに阻止の実績トロフィー解放してるんだよな、ちう様……。いやまぁ映画第三弾まで書くとは決まってないけどさ。
まぁ大丈夫だ!全部なんとかなる!!!未来の自分が全部何とかする!!!全部ちう様のおかげだ!!!ヨシ!!!
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