事は半年前に遡る・・・・・・
「別世界で確認された未知の魔法に対する現地調査任務・・・?」
「別世界って言っても場所は第97管理外世界、まあうちらの出身世界なんやけどな」
この日僕は管理局内のはやてさんのオフィスで調査任務の話を持ち掛けられた。
「調査期間は1年間から。もしええ成果があったら調査エリア、人員を増やして長期間になるんやけど・・・どうや?」
本来ならこの手の調査は管理局の専門の調査員の仕事であり、民間協力者である嘱託魔導師に委託する様な任務ではないらしい。
でもはやてさんの話によると、今は別の案件に対して人員を割っており、別世界に長期滞在してまで調査を行う様な人員が不足しているそうだ。
今まで僕は何度か別世界での任務に携わってきた。だから話を聞いた時は今回も承諾しようと考えていた。
だけど一年間からという長期間に関して少々尻込みしていた。
「一応言うとくけどな、別に一年間ずっと向こうに居っ放しって事や無いで?ちゃんと自分のペースにあった休暇を取って帰ってくればええんよ。まあ、休みっ放しはさすがにあかんけどなぁ」
浮かない顔で考え込んでいた僕に、はやてさんは笑いながらアドバイスをくれた。
だけどその微笑には微かに疲れの色が見えていた。
「あの、一つ質問宜しいですか?」
「ん?何でも聞いてくれてかまへんよ」
「もし僕が断ったらどうするんですか?」
そう僕が言うとはやてさんはこめかみ辺りを押さえながら考え込み、
「どうにかして人員を搾り出すしかないかなぁ。もしくは出身者であるウチやなのはちゃんとかが短期間で何度も繰り返し調査するとか・・・」
とまで言って言葉を濁らせた。
なのはさんの出身世界も第97管理外世界だ。きっと僕が行くよりも早く世界に馴染め、多くの成果を持ち帰る事が出来るだろう。
でも、それには多くの問題がある。
なのはさんは航空武装隊の戦技教導官だ。戦時は勿論の事平時も装備や戦闘技術のテストや研究、演習での仮想敵役や技能訓練とやらねばならぬ事の多い大変な仕事を為さっている。
それに加えて娘さんのヴィヴィオが学校から帰る頃には帰宅し、母親としての家事をも為さっている。
そんな方にこれ以上の負担をかける訳にはいかないだろう。
勿論、それははやてさんにも言える事だ。
時空管理局海上司令という大変な役職に就かれている。僕などでは計り知れない苦労もしているはずだ。
だから・・・。
「はやてさん。僕にやらせて下さい」
「ほんまにええんか!!」
僕がそう言うと、お疲れモードのはやてさんはパァッと表情を明るくして席から立たんばかりの勢いで声を上げた。
「は、はい。いつも管理局の皆さんにはお世話になっていますし、そういった恩に報いる一環として嘱託魔導師になった訳でもあります」
はやてさんの変わり様に気圧され気味になりながらも、僕は自分の考えを述べた。
「そんな恩返しなんてええのに。ま、手伝ってくれるんなら喜んで手伝ってもらおうか!」
「はい!僕に出来る事であれば何でもします!徹底的に扱き使ってやって下さい!」
その後、現地での滞在場所やカモフラージュの為の身分等が決まり次第連絡をするという話を進めて僕は帰路についた。
そしてその数日後、突然の呼び出し連絡を貰って再びはやてさんのオフィスを訪ねる事になった。
オフィスのドアの前で立ち止まり、僕はインターフォンを押した。
「ルクレール・八神です」
『おー、来たかー。入って入ってー。皆待っとったんよー』
そうとだけ言って応対用スピーカーからの音声が途切れる。
というか皆って一体だれなのだろうか?
考えていてもしょうがないと思い、僕は室内へと足を踏み入れた。
「失礼しま・・・・・・ぁ」
部屋の中は妙な組み合わせのメンバーが揃っていた。
はやてさん、リイン曹長、なのはさん、シグナム師匠、ヴィータさん、シャマル先生、ユーノ司書長。
「さて当人も来た事やし、あの話と例の問題を進めよか」
あの話。僕がいる時点で話の内容は例の現地調査任務の話であろうと推測できる。
でもその話に何故このメンバーが関係するのかが分からなかった。
それに例の問題とは?
とりあえず僕は、はやてさん達の話を聞く事にした。
「まずは現地調査の場所が決まったで。場所は日本の麻帆良市、麻帆良学園や」
麻帆良学園。という事は教育施設なのだろうか。そこと魔法が何の関係があるのだろうか。
「次にカモフラージュの身分として、ルクレールには麻帆良学園中等部に通って貰うで」
中等部。僕の今の年齢は13歳。確か日本の義務教育年齢でいう所の中等部に相当する筈だ。ここまでは問題無い。
「で、ここからが少々問題が発生しとる。簡単に言えば現地協力員との連絡ミスや」
連絡ミス?一体何が・・・?
そう考えていた僕の耳に、とんでもない言葉が飛び込んできた。
「調査員が転入するのは女子中等部や。尚、向こうの学校は全寮制やから現地滞在時の住居も女子寮になるみたいや」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ。
「あ、あの・・・はやてさん・・・?」
僕は油切れのロボットの様に首をギギギと回し、ついさっき耳に入った情報について質問する。
「女子中等部と聞こえたんですけど、僕の耳がおかしかったんですよね?」
「いやいや。ルクレールの聴覚は正常やろ。今年の初めに計測したデータによると常人よりよっぽど良いで?」
耳にした言葉は本当だった。寧ろ人より優れているとまで言われてしまった。
なら間違っているのは・・・・・・。
「あのはやてさん、僕の性別は男なんですけど・・・」
「当たり前やん、誰がどっから見たって男の子って分か・・・いや、分からへんからこんな問題が起きたんやったな」
話を聞いたところ、現地の協力員が僕の容姿を見て女の子と間違えただけという小さなミスだとはやてさん達は笑っていた。
けど僕としては笑えない。全く持って笑えなかった。
「という訳でルクレールには女の子として学校に通いながら現地の魔法を調査してもらう事になったからな。で、これからの予定なんやけど・・・」
「ちょっと待って下さい!無理でしょ!?女の子として何て無理でしょう!?」
僕ははやてさんの言葉を遮って、自分の主張をする。
さすがに不可能だ。少なくても1年間を女の子として過ごすなんて無茶すぎる。終始一人行動ならまだしも、女子校に通って尚且つ女子寮に住むとかばれるに決まってる。もし滞在中に男だってばれて見ろ、変態さん扱いは必至だ。いや、変質者として向こうの司法機関に突き出され兼ねない。
「ルクレール、何事も無理やら無茶やら言っとったら何も出来へんで?大丈夫や、女の子になる方法はちゃんとあるから」
「女装しろって事でしょう!?四六時中大勢の女の子と一緒ですよ?絶対ばれますから!!」
「何言うとん?女装なんてそんな不確かな事なんかさせんよ」
「じゃあどうやって・・・」
そう疑問に首を傾げる僕に、はやてさんは当たり前の事の様にサラッととんでもない事を言った。
「だからいったやん。女の子になればええんよ。肉体的にな」