「なぁ!?」
突然のとんでもない発言に、僕は驚愕の声を漏らした。
「そうです。女の子の格好ではばれてしまう。ならば身体ごと女の子になってしまえばいいのです!」
驚き過ぎてそれ以上声が出ない僕を尻目に、突然リイン曹長は部屋中に響き渡らせる様に宣言する。
そしてそれに次いでユーノ司書長が口を開いた。
「先日、無限書庫のベルカ方面未整理区画を探索中に古代ベルカの特殊魔法についての記録書を発見しました。そのデータがこれです」
それと同時に複数の空間モニターが開き、術式データが展開された。
「ミッド式にもある変身制御等の魔法があります。そして此度見つかったこの魔法はそれに比べて更に強固に作用し、外面的、身体機能的に完璧な性転換を可能にしています」
「この魔法に掛かったある被験者の生体スキャンですが、ここの部分を見てください」
今度はシャマル先生がそう言いながら誰かのスキャンデータを写し出した。
「言わずとも話の流れでご理解されているとは思いますが、被験者は男性です。ですがこのスキャン結果には男性に有り得ない器官が備わっており、尚且つ本来あるべき器官が消失しているのが確認されました」
皆が示された箇所を確認して、驚きの声を出す。
そしてそれと同時に、僕は冷や汗が止まらなかった。
「じょ、冗談ですよね?このスキャン結果は元々女性の物なんですよね?いやだなぁ司書長、こんな手の込んだ冗談なんて用意してくるなんて・・・」
冗談であって欲しい。僕は心からそう思った。
だけどユーノ司書長の口から出た言葉は、僕の望みを粉々に打ち砕く答えだった。
「事実だよ・・・だって、このスキャンデータの人物は魔法に掛かった僕なんだから」
「――――――」
ユーノ司書長はポツリポツリと喋り出した。
ずっと忙しかった。休み間もないから集中力は勿論、注意力は散漫する。普段なら怪しい魔法書はちゃんとトラップの有無をチェックしている。今回起きた事は不幸な事故だったんだ・・・と。
「まあちゃんと元に戻れたからいいんだけど、もう女体化状態の間はなのはもはやても本当に色々と・・・いや、やめておこうか・・・」
何?一体なのはさんやはやてさんに色々と何されたんですか。というかまさか・・・。
「これで女の子の問題は一先ずクリアや。じゃあシャマル、リイン。ちゃちゃっとこの魔法についてルクレールにレクチャーしてやってくれるか?」
「はい!マイスターはやて(はやてちゃん)!」
――――――無理。
「ちょっと待って下さい!それは無理ですって!というか絶対嫌ですよ!!」
「大丈夫よルクレールくん、痛くしないから」
「最初の方はちょっと違和感があるらしいですけど直ぐに慣れますです!」
「そうじゃなくて!!」
僕の意思とは関係無く僕を女の子にしようとする二人を制止する。
するとそこで、今まで口を噤むんでいたシグナム師匠とヴィータさんがスッと僕の傍らに立った。
「いい加減にしろ、ルクレール。自分の意思で手伝うと言っておきながら何だその態度は。男なら自分の発言に責任を持て」
「お前、先日はやてに言ったんだろ。【何でもします、徹底的に扱き使って下さい】って。ならしっかり従えよ」
「ぁぅ・・・」
「あーここで断られるとまた仕事が増えるわー。そうなるとウチら大変やわー」
「ルクレールくん、あんまり聞き分けがないのはね・・・ちょっとお話、する?」
「ルクレール、諦めて・・・」
退路は、無い。
「・・・・・・はい・・・分かり、ました」
断れる訳無い。
というかはやてさん、僕がこの面々に対して絶対断れないのを見越して呼び集めてますよね。
この後、僕は直ぐにリイン曹長とシャマル先生と共に別室にて性転換魔法の使用に関するレクチャーを受け、実践した。
「只今・・・戻りました・・・」
僕は男で無くなった体ではやてさんのオフィスに戻る。
室内にいた面々はユーノ司書長を除いて一斉に僕へと視線を向け、ジロジロと頭から爪先まで舐める様な視線で観察する。
そんな時、はやてさんが立ち上がって僕の前にきた。
「ルクレール、気をつけ」
「はい・・・」
僕ははやてさんの指示通りに両腕を体の側面に付け、直立姿勢を取った。
「ふむ・・・」
ふいにはやてさんの手が僕へと伸びる。
そして、むんずという表現が良く合う動作で僕の胸を掴んだ。
「おーおーおーー。ええ乳やわーー、これこそ女の子やなーうんうん」
「ぁ゙・・・っ」
はやてさんの突然の行動に僕は硬直し、助けを求める為に視線で回りに訴えかけた。
「あー近頃本っ当に忙しくてこうしてセクハラも出来へんかったからなーー。あー癒されるわーー」
「はやてちゃん・・・うれしそう・・・」
「あたしが不甲斐無いばかりにはやてを満足させてやれなかったからな・・・はやて、今だけは思う存分楽しんでくれ」
「主はやて・・・幸せそうで何よりです」
「ごめん、ごめんよルクレール・・・僕だって通った道なんだ・・・今は、耐えて・・・」
駄目だ・・・誰一人として助けてくれそうに無い。
セクハラ開始から半刻程過ぎた頃、僕の胸ははやてさんの手からやっと開放された。
全身から力が抜けて僕は床にへたり込む。
何というか、男として大事なものを失った気がする。
「完全回復完了や!ルクレール、また揉ましてな?」
「断固拒否します!!」
全く悪気を感じさせない恍惚な笑顔を浮かべるはやてさんに対して、僕は目に涙を滲ませながら腕で胸を隠しながら叫んだ。
「ははは、軽い冗談やん。男なんやさかい胸ぐらいどんと揉ませてくれてもええやん」
「今は女の子です!心行くまで確認したところでしょうが!?」
女性職員に対してセクハラ常習犯だという噂を聞いて来たが、まさか元男相手にもするとは思わなかった。
その後はやてさんは周りの面々に軽ーーく窘められた。
「まずは問題第一関門突破や。で、次が重要なんやけど……」
先ほどとは打って変わって真剣な顔つきで話を進めるはやてさん。
「現地で過ごす為の知識を学ぶ必要がある。ここん所は出身者であるウチとなのはちゃんがみっちり仕込んだる。それと……」
短期間ならまだしも、長期間の現地滞在だ。向こう側の世界の一般常識や知識は必要なのは当然の事だろう。
「女の子として過ごす為の知識も仕込んだる。女の子としての仕草は勿論、衣服、化粧、諸々全部や」
「とりあえず転入する学校の制服はあるからね。あ、それと下着も後で…」
「ごめん、ごめんよルクレール・・・・・・僕が余計なものを見つけた所為で・・・・・・本当にごめん、ごめんなさい」
ハハハ、女の子としての常識も必要なんですか、そうですか。
これから忙しくなるでーーと腕まくりをするはやてさん。
制服の一部と思われるスカートを手にするなのはさん。
楽しそうに化粧台やらアクセサリーやらを用意するシャマル先生たち。
皆からちょっと離れた場所で僕に謝り続けるユーノ司書長。
ああ、何てカオス。
「もう・・・・・・好きにして下さい・・・・・・」
どう足掻いても絶望しかない。
そう思った僕は全てを諦め、嬉々としているはやてさん達に身を委ねた。
そして半年後、こうして僕は――――――
――――――私は、麻帆良学園女子中等部2-Aに転入した。
次回からルクレールの女子中学生生活、始まります。