四時限目の体育の授業が終わり、昼休みとなる。
他の生徒がそうである様に、私ルクレールもそろそろ空腹を覚えてくる時間です。
という訳で私は木乃香さんの案内で、食堂棟とやらに連れて行ってもらいました。
どういった訳か、木乃香さんは私の事で色々と面倒を見てくれる。
こういった行為は学生経験の無い私にとってとても有難い事である。
いつか、この恩を返さなければなりませんね。
「ここが食堂棟や。地下から屋上まで全部飲食店で埋まってるんやでー」
「へぇ・・・・・・」
ある意味凄かった。ミッドチルダ都市部でもこの様な施設はあまり無い。
そんなものが学校の一施設として存在する事に驚きを隠せなかった。
「ルーク何にする?和洋中印仏伊、何でもあるで」
そう言って木乃香さんは食堂棟のガイドマップを見せてくれる。
地下から屋上までぎっしり飲食店が入っているのは誇張では無いらしく、マップ全体にぎっしりと料理ジャンルや店名が書き記されていた。
「そうですね・・・悩みます」
「昼休みの時間は限られ取るからな、あんまり悩んどったら食べる時間なくなってまうで?」
それは正直困る。実は結構お腹が減っている。
「では勝手が分かりませんので、今日は木乃香さんのお勧めをお願いしても宜しいでしょうか?」
「ええよ。まかしとき。――――――ウチ一押しのお店教えたるわ」
木乃香さんは私の手を引いて目当ての店へと目指していった。
そこの料理は木乃香さんが一押しと言うだけあって、とても美味しかった。
これで午後からの英気を養えた。
さあ、午後の授業も頑張って行きましょうか。
午後の授業も問題なく終わり、本日の授業は終わりを迎えた。
放課後、それぞれの生徒は個々の目的の為に帰宅するものや部活動とやらに勤しむ者等に分かれた。
私は前者の方だ。転入初日で何かの部に入っていないし、これからも入る気は無い。
大人しく帰ってこの世界での任務の為の体力を温存するべきだろう。
荷物を持って教室を、校舎から出る。が――――――。
私の帰るべき場所は一体何処なのでしょうか?
朝に会った、あの人間離れした構造の頭部を持った学園長は一体何と言っていただろうか。
あれは確か――――――。
――――――――――――
「ふぉっふぉっふぉ。初めましてルクレールちゃん。ワシがこの麻帆良学園学園長、近衛 近右衛門じゃ」
「初めまして近衛学園長。ルクレール・八神です。この度は急な転入許可、真に感謝致します」
「ふぉっふぉっふぉ。そんなに畏まらんでも良いぞい。雪広、そして雪広と親交深いバニングスと月村からの懇願と聞いておる。雪広財閥には色々と借りがあるからのう。断る理由はあるまい」
「学園内で過ごす為の準備は整っておるから何も心配する事は無いぞい。他に何か困った事があれば言うといい」
「そういえばこの学校は全寮制とお聞きしたのですが、私は一体何処の寮に住めば宜しいのでしょうか?」
「おお、それなんじゃがまだ決まっておらんのよ」
「はぁ?じゃあそれまで私はどうすれば・・・」
「大丈夫じゃ。当てはちゃんとあるからのう。決まり次第同室になる者に知らせておくからの」
―――――――――――――
そうだった。私の住居はまだ決まっていないのでした。
それにしてももう放課後です。部活の無い一般の生徒は寮に帰る時間です。
まさか忘れているのではないのでしょうか。
野宿は勘弁願います。こうなったら駅前のホテルにでも・・・・・・。
「ルークーーー!おーーーい!」
ん?木乃香さん?
声がした方を向くと、木乃香さんが此方へと走って来るのが見えた。
一体何事かと思いながら、私は木乃香さんの方へと駆け寄った。
「どうしたんですか木乃香さん。私に何か用ですか?」
「あーうん、まあそんなところや。これから用事とかあるん?」
「いえ、特には。強いて言うなら本日の宿を探しに行こうかと・・・・・・」
「は?何なんそれ?まあ、ちょっと歩きながら話し聞かせてくれるか?」
因みに木乃香さんが私を追ってきた理由は、ちょっと教室に来て欲しいとの事だった。
そういう事で、私は木乃香さんに誘われて歩きながら朝の事情を話す。
「じゃあルークはまだ住む所が決まってへんの?」
「ええ。だからとりあえず今日の所はホテルか何処かに泊まろうと思っていまして・・・」
「もーーお爺様ってばすっかりボケとるなー」
「お爺様?確か木乃香さんも近衛姓でしたね・・・もしかして・・・」
「うん。ウチはお爺様の孫娘や。あ、アレやったらウチがお爺様に直接言うてみようか?」
「はい。では用事が済み次第お願いします」
「あー用事が済んでからやとちょっと遅くなるかもしれんわー」
「はい?」
教室に着く。そこで何故か木乃香さんは私を先頭にして教室に入る様に促す。
朝の様に私は教室の扉の前に立つ。何故か戸のガラス窓は目張りされ、中の様子を伺う事が出来なかった。
そして戸越しに放課後とは思えないほどの人の気配を感じた。
中で大人数で作業でもしているのでしょうか?もしかしてその作業に私も加わって欲しいとの事なのでしょうか。
とりあえず思案していても始まりません。私は特に気にする素振りを見せない様に、何気なく教室の戸を開けました。
突如、鳴り響く乾いた破裂音。降り注ぐ紙吹雪、そして・・・・・・。
「「「ようこそ!!ルクレールさん!!!」」」
一斉に私の名を呼ぶ2-Aの皆様方。
「え?あ、あの木乃香さん、これはどういう事なのでしょうか?」
一体全体どういう事か分からず、私は困惑してしまいました。
「何ってルークの歓迎会やで。さーさー主役は真ん中や。行った行った」
そう言って木乃香さんは私の背を押して私を皆の中心へと誘う。
それから私は皆さんから飲食物を進められ、朝からあまり出来なかった質問等の受け答えをしました。
「さーて、ここは新聞部員であるこの朝倉和美に仕切らせて貰うよー!」
そう言って朝倉さん率いるクラスの皆さんは録音機器とメモ帳片手に私へと質問が始まった。
最初は当たり障りの無い出身地や好物等の質問から始まる。
だけど回を重ねる毎にその質問は答え辛い方面へとズレて行った。
「好きなタイプ・・・・・・ですか?」
「優しい人とか寡黙な人とか色々いるでしょ?どういったタイプが好みかなって」
そうは言っても・・・困りましたね。
今まで特定の誰かを好きになった事はありません。
基本的に私は見知った人ならみんな好きですから。
首を傾げて考え込む私に、朝倉さんはヒントをくれた。
「ほらほら例えばジャニーズ系とか硬派系とかダンディなおじ様系とか年端もいかない男の子とかさー」
何だか色々と偏りのあるヒントですね・・・って。
「それって男の人のタイプばかりじゃないですか」
「当たり前じゃん。あ、ついでに彼氏の有無も聞いとこうかな~」
「か、彼氏ぃ!?」
「ほら好きな男子の恋話の一つや二つあるでしょ~」
そんなバカな事ありません。今は肉体的に女性の姿になっていますが、精神的には正常な男性です。知らないとはいえそんな私に彼氏の有無を聞いてくるとは・・・。
ここは一つ、今後の事も踏まえてガツンと言う必要がありますね。
「そんなものいません!!男性に対してそんな特別な好意を抱いた事なんてありません!!第一、私は普通に女の子が好きなんですからね!!」
と私は皆さんに向かって大声で言い放ちました。
すると何故か、皆さんは私を見つめたまま呆然としていました。
何故でしょうか・・・。
あ・・・。
今の私は肉体的に女性です。精神的には男性ですが。
そして今、この場で私が男性だと知るのは私だけ。後の方々は私を女性だとしか知らない。
という事は・・・・・・。
「うん、人にはそれぞれの好みがあるしね」
朝倉さんが遠い目をしてメモ帳を仕舞い、私に背を向けた。
「いや、ちょっと」
他の人へも視線を向ける。私の方へと顔を赤らめる人もいれば目を背ける人もいる。残念な視線を向ける人もいれば何故かとても良い笑顔で親指を立てている人もいた。
「ちょっと待って下さい、誤解、誤解なんですよ」
「大丈夫。このクラスにはそっち系はいるか分からないけどこの学園なら同じ趣味の人もきっと見つかると思うよ。うん、応援してるね」
何が大丈夫なんでしょうか。何を応援して下さるのでしょうか。
「すいません、ちょっとだけ私の話を聞いて下さい」
「さーて皆、そろそろお開きにしようかー!」
「ガン無視ですか!?私ちょっと泣きそうなんですけど!」
「大丈夫だって、人の噂も75日っていうじゃん」
「その理屈でいうと少なくとも私は75日間勘違いされっぱなしって事になりませんか?」
「ハハハハ!」
「笑えません!笑えませんから!!」
その後先程の失言に対する弁解の時間を与えられる事無く、私の歓迎会は終幕を迎えた。
この後、各々女子寮へと戻るのですが未だに私の所在に対する学園長からの連絡はありませんでした。
「ルーク、まだお爺様から連絡無いん?」
「はい。もしかしたら忘れているのかもしれませんね」
「じゃあウチの所泊まるか?アスナには言うとくし遠慮せんでええんよ?」
木乃香さんに私の今晩の寝床についての提案を受けていた、その時だった。
「あ、いたいた。八神、君の住む部屋は私達の部屋に決まったようだよ」
そう誰かに声を掛けられて、私は後ろを振り返った。
真夜中の妙なテンションで書き上げたので文体が安定していませんがご了承ください。
いやぁ、インフルエンザって久しぶりにかかりましたよ。皆さんも体調管理には気をつけてくださいね。