一夏は今は呉鎮守府にいた。連合艦隊司令長官山本五十六大将の執務室に出頭するように本国から通信があり、駆逐艦夕暮で呉鎮守府に来ていた。そして一夏は山本長官の執務室に向かっていると、鎮守府の港に未完成の戦艦が一隻停泊しているのを見つけ、執務室に案内してもらっていた花和木曹長に質問した。
「なぁ、あの戦艦はなんなんだ?」
「はっ、あの戦艦は扶桑型戦艦三番艦の扶城ですね」
「扶城、か」
「戦艦はもう時代遅れらしく、未完成で放棄されることが決まって置いてるだけみたいです。まぁ、欠陥戦艦を残しとくほど余裕が我が海軍にはないのかもしれないですしね」
「さっ!そんなことより、早く行きますよ!」
「ん、わかったよ」
そう言われた一夏は曹長に案内されて執務室に向かった。
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そして執務室前に付いた一夏は扉を叩き、入室の許可を取った。
トントン
『入れ』
一夏は司令長官の返事を聞いてから執務室に入ると自分の所属と名前、階級を大声で言った。
「日独英伊ソ同盟航空隊、第703航空隊隊長!織斑一夏中将!只今出頭いたしました!」
執務室に入ると山本五十六連合艦隊司令長官が椅子に座るように勧めてきた。しかしそれを一夏は拒み、立ったままで居ることを選んだ。
「まぁ中将、座ってわどうかね」
「いえ、自分はこのままで結構です」
山本長官は少しため息をつきつつも話し出した。
「実はだね、私が次の海軍大臣に就任する事が決まってね」
「は、はぁ。おめでとうございます」
「だから上層部や陛下は君に次の連合艦隊司令長官を君にするようなんだよ。もちろん私も推薦している。受けてくれるな?」
そして一瞬固まったが、一夏は復活し、返事をした。
「…わかりました。次の連合艦隊司令長官の任、受けます」
そう一夏が言うと山本長官はにこやかになり“ああ、忘れていた”といい机の中から何度も見たことがある辞令書を引き出し、その辞令を読み上げた。
「織斑一夏中将を明後日付けで大将とする!任命式は後日連絡する」
「はっ!」
「そして君には大勲位菊花章頸飾の授与の話が来たそうだ」
「は、はぁ」
「それから天皇陛下から君の乗艦は好きに選ばせるようにと辞令が来ているが…どうするかね?」
そう山本長官に言われた一夏は、執務室に来るまでに見つけていた未完成で放棄されていた戦艦扶城を思い出した。
「…なら、未完成で放棄されている戦艦扶城をいただけませんか?」
「何?扶城を?」
山本長官は一夏が何故扶城を要求したかが分からずに聞き返した。
「自分は扶桑型が好きなのです。だから欠陥戦艦の汚名返上のためであります」
そう一夏が言い切ったのを聞いた山本長官は、許可を下ろしてくれた。
「扶城はどちらにしろ廃艦だ。好きにしてもいい」
「それと長官、扶城を独自に改修したいと考えています。そのための改修費用は自分が持ちますので」
それを聞いた山本長官は、少し悩んだような顔をしたが、直ぐに一夏の方を向き、返事をした。
「うむ、わかった」
「ありがとうございます」
そう言うと一夏は山本長官に一礼を済まし、執務室を退出した。
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あの後、一夏は知り合いの造船所に扶城を搬入し、改修工事を開始した。そして改修の資材は一夏の創造能力、≪物を作る程度の能力≫を使い、出された物を使うことで賄うことに決まったのだった。