レイテ島沖のアメリカ艦隊に突入してから約20分後、艦橋に衝撃が走った。
「グッ、状況報告!」
「敵弾!第一航空甲板に被弾‼」
それを聞いた直ぐに一夏は被弾した第一航空甲板にあるものの存在を思いだし、航空甲板を向きながら叫んび、被弾箇所を切り離すように指示をする。この航空戦艦扶城には一夏が前世で知っていたいたミッドウェーでの赤城の悪夢を参考に切り離すことで被害を最小限に押さえることを目的として第一、第二航空甲板につけられていた。
「なに⁉甲板には魚雷を抱えた機体があるんだぞ!」
「急いで第一航空甲板!並びに左舷強化部を切り離せ‼」
「は、はい!」
そう言うと被弾した航空甲板とそれの補強パーツが切り離され、海に落ちると同時に被弾部は爆発したのだった。
「左舷バラストに注水急げ!」
「第二雷撃隊全機発艦‼」
「それから全機発艦後、第二航空甲板!並びに右舷強化パーツを切り離せ!」
それから直ぐに一夏は左舷バラストに注水してから第二航空甲板にあった航空機を全て発艦させると片方に重心が傾き過ぎている原因の第二航空甲板も切り離すように指示をした。
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あれから数時間後…
扶城が囮作戦を実施し、敵の集中砲火を浴びながらも戦っていた。
敵駆逐艦からの雷撃が扶城に向けて放たれた。
「左舷より魚雷!数4!」
それを発見した艦橋要員が報告をあげる。
「取り舵一杯‼」
一夏がそう叫び、舵が切られたが回頭速度が間に合わず魚雷が命中して艦が左に30度程傾いた。そして、次々に被害報告が入って来た。
「魚雷、左舷に命中!左舷機関室浸水!」
「機関出力低下!」
「艦、傾斜左30度!」
そして、被害報告が一段落する前に次の指事を出した。
「浸水部所ハッチ閉鎖!」
「右舷バラストタンク緊急注水!ポンプ回せ!傾斜復旧急げ!」
「各砲塔照準‼撃てェェ‼」
そして艦の傾きがやっと直ったとおもったのもつかの間。すぐに後方から衝撃と痛みが来た。
「後方格納庫に被弾!…グッ!格納庫にて誘爆を確認!要員総員戦死!」
「右舷バラストタンク満水!浸水、さらに拡大中!」
後方の格納庫にいた乗員の戦死が報告される。それと同時に右舷バラストタンクの満水が報告され、艦の傾斜がまた広がりだす。そしてまた魚雷が接近して来た。
「右舷より魚雷!数3!」
「取り舵一杯!」
副艦長が指事を出した。しかし、それを切り壊して一夏が別の指揮を出した。
「いや!進路そのまま!魚雷を右舷にぶつけて傾斜を戻す!」
しばらくすると魚雷が右舷に命中した。すると命中したところから浸水が始まった。
「右舷中央部に魚雷命中!浸水始まりました!」
「傾斜30度‼」
「なっ!…傾斜もとに戻りません!なおも拡大!」
艦橋要員の観測係が声をあげた。右舷からの浸水が左舷の浸水に及ばずに左舷に傾き出したのだ。
「傾斜復旧の見込み……クッ…ありません!」
「傾斜復旧見込み無し‼」
すると艦橋要員の残念がった声が聞こえだした。そして一夏は艦長席から立ち上がると艦橋を見回し、口を開いた。
「全乗組員が一生懸命努力したが、この通り飛行甲板や主砲が使用不能にまでやられてしまった。しかし、米軍の本隊への足止めはできたのだ」
「諸君らの奮戦に感謝する…総員退艦‼」
一夏がそう言うと乗組員達は敬礼をし、急いで退艦をしていった。その中で一人、副艦長の伊川偲(いかわ しのぶ)中佐が質問をぶつけてきた。
「艦長!」
「早く貴様も退艦しろ!」
「艦長は…どうするのですか」
「…俺は…この艦に残る」
一夏は言いどよみながら答えた。
「いいんだ。俺はこの艦と死にたいのさ…帝国海軍の一軍人として、この艦の艦長として、な」
「だから!だから貴様は生きろ!生きて、先に死んで行った英霊達の存在した意味を見出だしてこい‼」
一夏がそう言うと伊川中佐は、敬礼をし、一夏の遺品を求めてきた。
「はっ‼なら!…なら何か遺品になるものを下さい」
そう言われた一夏は腰のホルダーごと拳銃を伊川中佐に投げ渡した。
「ほら、くれてやるから早く退艦しろ!」
伊川中佐は拳銃を受けとると急いで退艦していった。伊川中佐が艦から飛び降りて退艦するのを見届けた一夏は自ら舵を握り、敵艦に進路を執った。
そして艦長席に座り、敵戦艦に突撃する瞬間一人呟いた。
「…日本は…守れたな」
そう言って一夏は目を瞑る、それと同時に足元の床が張り裂け艦橋が爆発した。敵戦艦の中央部に見事突撃し、敵戦艦を道連れに沈んだのだった。
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その後の調査で扶城は戦艦4隻、航空母艦5隻、重巡洋艦11隻、軽巡洋艦13隻、駆逐艦78隻撃沈という大戦果を単艦で納めていた事がわかった。
あの後、大東亜戦争はレイテ島、ミッドウェー島、アメリカの重要基地を占領されていったアメリカが日本側、五ヶ国同盟に無条件降伏し、それに伴い他の連合国も次々に降伏していき五ヶ国同盟が勝利するという形で終戦を迎えた。