その後、伊402が赤城の真横まで来ると一夏は永木副艦長に向け、口を開いた。
「じゃあ、かっこ良く登場するとしようか」
一夏はそう言うと艦長席に座り、指揮を取り出した。
「重力子エンジン起動……」
「艦体起こせ!偽装解除!」
すると、海底に地響きが起こり周りに積んであった泥や岩が浮上と共に流れ落ちて行く。
「両舷重力子フロート、ブロー!」
一夏の号令と共に重力子フロートから大量の海水が急速に吐き出され、錨が巻き取られた。そして浮上を開始する。
「アップツリム40!重力子機関圧力上げ‼」
すると伊402のエンジン出力が格段に上がり、艦底後部のブースターから勢い良く大量の水が押し出される。
「402…急速浮上‼」
そしてエンジン出力上昇が始まると伊402はぐんぐんと海面に迫り、『ドゴーン』という激しい音と共に海面を突き破った。
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ちょうどその頃、赤城では…
「⁉艦長!」
「どうした!」
稲木准将は急に叫んだソナー要員に何事かと聞き返す。
「対潜水ソナーに反応!…⁉下から何かが急速に接近してきてます‼」
「なに⁉」
今、なんて言った?…急速接近する“何か”だと?それは潜水艦だよな?あいつのあれは…
「艦長‼」
「うわっ!す、すまねぇ」
「謝ってないで指揮を!」
考え込んでいた稲木准将だったが早瀬中佐の声で現実に引き戻され、艦長としての仕事をし始める。
「あ、ああ。面舵一杯!回避行動始め‼」
「急げ!急いで離れるんだ!」
不明艦の存在に焦らされ、ありったけの声で叫ぶ。
そして、その瞬間、『ドゴーン』という水の音を鳴らし、潜水艦が現れた。するとそれは船体の半分を海上に現し、そのまま艦首を海面に叩きつけた。その衝撃で艦が軽く揺れた。それを気にもとめずに稲木准将は艦橋から身を乗り出し、その潜水艦を見る。
ああ、こいつか…
「あんの野郎…」
「稲木艦長!何事ですか!」
稲木准将が伊402を睨み付けていると艦橋に孝美大尉が何事かと状況を聞きに来た。
「私の知り合いのバカが来たんですよ」
そういった稲木准将に早瀬中佐が軽くツッコミを入れた。
「いや、あの人艦長の直属の上司で上官でしょうに」
「気にすんな、あいつからもこう言えって言われてるんだしさ」
「稲木艦長?その方とは一体…」
さっきから話を聞いていて何も入ってこない孝美が稲木が言っている人物の事を聞いた。
「ああ、あいつは三年前のウィザードですよ」
「ならその人は…」
「ええ…
織斑中将ですよ」