第五十二話 転移と戦艦扶城
「…ん?ここは…」
一夏が目を覚ますとそこは海の中では無く、見慣れ知った扶城の第一艦橋だった。そして一夏は艦橋を見回している内に体に何か違和感を感じ、自分の体に問題が無いか確認し出してすぐに叫んだ。
「なんで私が女になってるのッ‼」
そして、大日本帝国の士官服一人の人間が急に現れ、喋りかけてきた。
「織斑艦長お久しぶりです。自分が誰かお分かりですか」
「ん?…お前、伊川偲か?」
一夏は恐る恐る扶城の副艦長の名前を言った。
「そうですよ、現世で死んだら人達は何故か妖精みたいなのになってこの艦に来てるんですよ」
そして一夏は自分自身の事に付いて聞いた。
「私はどうなってしまったんだ?」
「艦長は…
この艦のメンタルモデルになられました。その為にこの艦には艦長以外の人は居ません。他の人員は言うなれば全員妖精です」
「な、何だと⁉」
それを聞いた一夏はすぐに艦長席から立ち上がり大声を上げた。一夏は艦を運営するために最低限必要な人数は居るものだと思っていたのだ。しかし、艦の乗組員は航空隊等の要員も全員が前世で死んだ後妖精としてここに来ているとのことだった。それから一夏は艦長席に再び座ると扶城の現在位置を副艦長に聞いた。
「副艦長、本艦の現在位置は」
「はっ、レーダーにて観測したところ本艦の現在位置は北緯33度5分、東経139度48分、八丈島200㎞の海域です」
「そうか…わかった」
そう言うと一夏は黙り込んだ。そして一夏自身がこの艦のメンタルモデルになっている事を把握してからしばらくすると観測係から報告が上がった。
「艦長!レーダーにて本艦に前方より接近する艦隊があります!距離2000㎞!」
「…接近する艦隊、だと?」
観測係からその内容を聞いた一夏は艦の指揮を執り出した。
「総員戦闘準備!各砲塔に砲弾装填、但し、砲塔は何時でも回頭出来るようにしておけ、それから偵察部隊の川木小隊を出すぞ!対潜・対水上戦闘用意ッ!」
「了解、総員戦闘配置!対潜・対水上戦闘用意!偵察機川木小隊発艦!」
副艦長の指揮と共に先程まで和やかだった艦の空気は一転した。それから数分後…
「所属不明艦隊!進路変更確認出来ず、本艦に向け依然接近中!」
それを聞いた一夏はソナーを覗き込み潜水艦の存在を確認した。
「水上艦のみか…よし、対潜戦闘用意解除、対水上戦闘のみに戻せ」
「対潜戦闘準備を解除!」
そして一夏は観測係に所属不明艦隊が射程に入るまでの時間を聞いた。
「所属不明艦隊が本艦の射程圏内に入るのは後何分後だ?」
「あと3分ちょっとって所です」
射程圏内に入るまでの時間を聞いてすぐに偵察に出ていた川木小隊から通信が入った。
『川木小隊ヨリ土佐。敵艦種、陽炎型駆逐艦三隻、長良型軽巡洋艦数隻ヲ含ム水雷戦隊ト判明セリ』
『ソシテ敵艦隊旗艦ニハ、長門級戦艦ト思ワレル存在ヲ確認セリ』