あれから半年後、一夏は島風型駆逐艦『島風』を旗艦とした初春型駆逐艦『夕暮』『若葉』、朝潮型駆逐『朝潮』『山雲』を配下に置く第二十八駆逐隊の艦隊司令兼島風艦長に少佐として着任していた。
そして今、一夏のいる第ニ十八駆逐隊は所属している横須賀鎮守府からラバウル航空隊基地に山本五十六聯合艦隊司令長官座乗の戦艦『長門』を護衛しながら太平洋を航海していた。
何も起こらないことで暇をもて余していた一夏は、側にいた副艦長の高瀬新輝(たかせ しんき)大尉に話しかけた。
「なぁ、副長」
「何ですか、織斑艦長」
「いやさ、何も起こらないな~って思ってさ」
「ですね。けどだからこそ気を引き締めなければいけませんよ?艦長?」
一夏は気楽にしようと思って言ったことばを高瀬大尉に正論を返されてガックリと肩を落とした。
「だいたい聯合艦隊司令長官の護衛なんですからね」
「と言うかなんで今時になってラバウルに山本長官が行くんだ?」
一夏の質問に高瀬大尉は悩みながらも答えた。
「ラバウルの士気を上げるためらしいですよ~」
それを聞いて直ぐに一夏の脳内に雷が走った。
「対潜ソナー感度最大!探知初め‼」
「か、艦長?!」
急な指事に驚いていた高瀬大尉を横に通信要員から
「対潜ソナーに反応‼数6!深度57m地点から速度15ノット程度で左舷より接近を確認‼」
と報告が上がったのだった。報告が上がると直ぐに一夏は指揮を取り出した。
「総員!第一種戦闘配置!対潜水艦戦闘用意!」
「各艦に打電!『我、敵潜水艦隊発見セリ!速力二十五ノットニテ左舷ヨリ我ガ艦隊に接近中』」
一夏の号令と共に各乗組員が持ち場に着いた。そこで一夏は通信要員にまた新たな指事を出した。
「至急戦艦長門に敵艦接近の電文を打電しろ!」
それを聞いた通信要員はなぜ戦艦に?と言いたそうな顔で一夏をみた。それに気がついた一夏はその通信要員に怒鳴った。
「バカかお前は‼戦艦長門には対潜ソナーがないんだよ‼さっさとしろ!」
「は、はい‼」
一夏の怒声にビビりながらも長門に打電を打った。
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あれから数分後、やはり一夏率いる第ニ十八駆逐隊が敵潜水艦隊と遭遇した。しかし戦いはこちらが有利に進んでいった。何故なら海戦が始まってすぐに一夏が艦隊全艦に
『ハチノマイ』
と打電していたからだった。この暗号文は第ニ十八駆逐隊流の戦術でその戦術とは各艦ごとにジグザグに動き網を描くように爆雷を投下するとゆうものだった。そして、敵潜水艦6隻の4隻目を撃沈した時にまた敵潜水艦の接近を感知した時と同じ稲妻が頭に落ちた。それとほぼ同時に通信要員から報告が上がる。
「長門の左舷に敵潜水艦の接近を確認‼」