織斑一夏転生記~転生者の生きる道~   作:如月 霊

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第六十七話 大戦の英雄は再び英雄となる

トントン━

 

俺が執務室で書類処理をしていると部屋の扉をノックされた。

 

『提督、大本営より緊急伝です』

 

「入れ」

 

そう言うと書類を持った大淀が入ってきて書類を受け取った。

 

「なになに?‘鈴鹿鎮守府に接近する深海悽艦の大艦隊を捕捉す’だと?」

 

そう題付けられた書類の下に目をやる。そこには敵艦隊の詳細情報が書かれていた。

 

姫級十隻

鬼級八隻

レ級十三隻

タ級二十隻

ヲ級十三隻

イ級五十隻

 

「こ、こりゃヤバイな」

 

「どうしますか?」

 

横から大淀が聞いてくる。そりゃあ、勿論決まってるさ。

 

「大淀、今回は俺が出る。一応全艦隊に待機命令を出しておいてくれ」

 

「わかりました。では提督も発進を」

 

そう言われた扶城は勿論だと言って発進口に向かった。

 

□■□■□■□■□■□

 

「ふぅ~…行きますか」

 

発進口についた扶城はカタパルトに足を乗せると一度深呼吸をした。それから自分の中にある艦の記憶を呼び覚まし、その名前を叫んだ。

 

「扶桑型戦艦三番艦、扶城!抜錨するぞ!」

 

その直後、扶城の乗っているカタパルトが動きだし、射出され、深海悽艦の元に向かっていった。

 

 

□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、レーダーに捉えた」

 

扶城が海に出てしばらくすると扶城のレーダーに深海悽艦の反応が現れた。

 

「いっちょやりますか」

 

「垂直発射菅に追尾式奮進弾を装填」

 

「垂直発射菅解放!奮進弾、撃てェェェ!」

 

そう言うと扶城の艤装についている垂直発射菅の蓋が開き、総数27本の追尾式奮進弾が発射された。

 

 

 

 

 

 

 

■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その数分後━

 

 

 

「一隻残った…?」

 

 

奮進弾を発射し、その進路をレーダーで見ていた扶城であったが、百発百中のはずの奮進弾が敵を一隻だけ残った事に驚きを隠せなかった。

 

 

 

■□■□■□■□■□

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、しばらくするとその艦影が見えてきた。

 

「れ、レ級…フェイス…だと?」

 

「レ!」ゴゴゴゴ

 

レ級は現れて直ぐに主砲を放ってきた。それを時雨は軍刀を出し、それでレ級の砲弾を叩き切った。

 

「レ?レレレ‼」

 

レ級は何やら楽しげに近接戦に持ち込もうと扶城の懐に向かって突っ込んできた。

 

「危ないn…何⁉グハッ」

 

扶城はレ級によって弾き飛ばされた。レ級の攻撃を軍刀で防いだ扶城だったがレ級の尻尾に弾かれたのだ。

 

そして、レ級の攻撃から立ち上がろうとした扶城だったが、目の前にレ級が砲を向けてきている。

 

「まだ…まだ…な、に?」

 

そして、扶城の脳内に絶望の二文字が浮かんだ次の瞬間、扶城の周りから無数の砲弾が飛んできてレ級を吹き飛ばした。

 

「い、一体…「指揮官!」」

 

唖然としていた扶城に後ろから聞きなれた声が聞こえた。

 

「し、シュペーか?」

 

「ええ!指揮官、ご無事ですか‼」

 

そこに居たのはアドミラル・シュペー達、鈴鹿鎮守府所属の約600人のアズレンと艦これの普通は混じり会うことのない艦娘の大艦隊がたたずんでいた。

 

「指揮官、指揮を」

 

それに見惚れていると、シュペーがそう言って扶城に帽子を渡してきた。それは扶城の大日本帝国海軍の第二種軍装の帽子だった。

 

「フッ…」

 

扶城は立ち上がり、帽子を被ると艦娘達を見回すとレ級に向き帰り、命令を下した。

 

「全艦‼撃ち方始め‼」

 

その声と共に約600人の艦娘達が砲弾を放つ。レ級はそれを避けようとする。が、その弾幕は避けきれず、次々に命中する。そして、ものの数分でレ級は海の藻屑と消えて行った。

 

 

□■□■□■□■

 

あれから一ヶ月後、深海凄艦過激派のトップが倒されたことで深海凄艦の和平派が大多数を絞め、ついに人類と深海凄艦との長い戦争に終止符が打たれ、人類は平穏を手に入れた。

 

 

そして、それは例外もなく人類側の英雄にも━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄の平和は長くは続かない━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄は━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━そういう運命なのだから━

 

 

 

 

 

平和がなった一週間後、英雄は忽然と鎮守府ごとこの世界から消え去った━━いや、この世界から元の世界に帰ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その様子を神界から眺める女神が一人

 

 

「時雨君、君の仲間達と姉達は皆始めの世界に送るよ」

 

「喜んでくれるかな?だけど時雨君は…いや、あなたは、必ず私が…」

 

その女神の呟きは…誰にも聞かれず、その場に響いていた。

 


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