AIBO   作:モアニン

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オ「初恋の人殺すわ」

虫「」

~夜~

聖「バーサーカー脱落」

虫「」


~一方~

海藻「桜ァ!お前h」

桜「駄目です」

藻屑「」


今二人の男が真っ赤に燃える。
たぶん。





登板

素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師ゾォルケン。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

伽藍洞になった蟲蔵に吹き荒れる風が収まっていく。

お爺様と兄さんの見守る手前、成功した事実にホッとする。

お爺様の拵えたエルトリエの神殿にあった鏡、触媒から呼び出されたのは、妖艶でありつつも馴染みのある聖らかさを持つ女性だった。

ラベンダー色の髪を凡そ170あるだろう高さから地面スレスレにまでストレートに伸ばし、両目を覆う巨大な眼帯が印象深い彼女。

 

「サーヴァント、ライダー。貴女の願いに応じ、推参しました」

 

魔術の知識が乏しい私にも分かった。強烈に私達を圧す存在感とそこに内包される、一目で幻想と分かる絵画の様な現実感のなさと美しさ。これが神秘。

なるほどこれは病み付き(魔術師)になりそうだ。

 

「……貴女も物好きですね。こそばゆい、ですが悪い気はしません」

 

「す、すみません。ジロジロと」

 

初対面でしかもこれから一緒に戦ってくれる人になんて失礼を。

何時も自分に恥じ入ってばかりだなぁ、私。

 

「いえ、構いません。それよりも助けたい人がいるのでしょう」

 

「それだったら」

 

「僕から説明する」

 

落ち着きに欠けた私の前に兄さんが出る。これは前もって決めていた役割分担。

私が魔術で現場担当。

兄さんは参謀で後方担当。

お爺様からの情報を資材に策略を立ち上げたのは兄さん。だから青写真を見ただけの私よりも、大まかな構造から細部に至るまで説ける兄さんがここは適任なのだ。

 

「―――――上手くいかないなら軌道修正は現場で見聞きするヤツに任せる。まぁ、こんなところだな」

 

「…では今晩は大人しくしていろと」

 

夜に参加者と出会(でくわ)せば必ず戦いに段階が進む。

ソレはダメ。先輩だけでなく姉さんとまで事を構えたくない。

「はい、だからライダーは私と来てください」

 

「?……はい」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

――――良くやった、慎二」

 

顎に肩から指頭、他全身の筋肉が解けていく。

大きく緊張を吐き出した慎二が所労を声に滲出(しんしゅつ)させた。

 

「これから美女と暫く一つ屋根の下か、心臓が止まっちゃうね」

 

「ク、儂も久々に生きた心地がしたわい」

 

「なに、お爺様も嫌われてんの」

 

「どうやら、な」

 

「なんでさ」

 

「知らぬ。大方生前の知り合いに似ている。そんな所かの」

 

「んだよ、ソレ……」

 

二人は桜よりも召喚の成否を一足早く認知していた。

召喚陣から迸る暴風。総身が凍て付き心胆を寒からしめんとする奔流。その害意の余りの濃さに、殺意が実体化したと脳が誤認識を引き起こしたのだ。

「あんなのを撒き散らしてんのがうじゃうじゃいるんだろ。物騒だね、聖杯戦争てのは」

 

「その甚だ物騒な争奪戦に、桜は当事者として身を投じる訳だがな、はてさて」

 

「……そうだね…そうさ」

 

軽口の叩き合いの途中で冷や水を浴びせられた慎二はしかし、義妹の置かれた状況が改めて意識された。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「でね、オルタってば可笑しいの。食べなくて良いから料理はしないんだって」

 

「はい」

 

「試したら100倍生きたオルタよりも姉さんの方が料理、美味しかったの。姉さんスゴいでしょ?」

 

「流石にそれは…」

 

「そう、そう言ったらね、オルタがすっごくいじけちゃって…」

 

「何と言うか、その…女神然としていない、人ですね」

 

「そう!そうなの、だから何でもハッキリ言っちゃって…」

 

マスターの私部屋に入室し、ベッドに腰掛け小一時間近くこのペースである。この()―――名はサクラ―――の弁舌は減衰する兆しを見せない。

昔から話すことの滅多になかった私は(かね)て限度を超えてしまった。

もう頭がぼーっとしてきている。

聞き手に徹していると考えることが少ないからだろうか。

 

「…大丈夫?ライダー」

 

「…えぇ」

 

「じゃあライダーの話を聞かせて」

 

「はい?私の、ですか」

 

「ライダーから聞きたいなぁって」

 

困った。

自分のことなんてどう話したら良いものやら。

しかし両姉様と腐るほど言葉を交わしたのだ。大丈夫、私の嗜好にドストライクな少女が目の前にいようとも私は揺らがない。

憶すな私、これはチャンスです。

……眼帯していた事に感謝せねば。

 

「私は……私には二人の姉がいました。上姉様と下姉様、ステンノとエウリュアレ」

 

私の生は常に彼女達と在った。だからこの二人を外すことは出来ない。

なら私達三姉妹の出自から。

黄金のリンゴを摂取することで老いを防ぐオリンポスの神々。一方、私達は不老不死を生得としていたので彼等に倣う必要は無かった、筈でした。

寸分違わず、同一の存在として生を受けた三姉妹の内、私にだけバグがありました。それは不老不死という概念の欠落。

図体を肥大化させていった私に比べ、何時までも幼気(いたいけ)で愛らしい上姉様と下姉様。

そう、姉様方は愛らしく――――

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

「すごい、すっごく可愛いんだ、お姉さん」

 

「ええ、そうです、そうなのです」

 

三時間にも及んだ専守の末、私の精神は疲弊していた。

汲めども尽きぬライダーの上姉様と下姉様への歪んだ愛。偏らせたのはその姉様方だが、一言で表すと歪に尽きる。

私には少々刺激的に過ぎる愛情表現の数々。

特別強烈だったのは、付け始めの眼帯に嗜虐心を燃え立たせた上姉様、ステンノ、彼女が馬さんごっこで平手を用いた愛撫を股下のライダーに施したという話。蕩けた顔のライダーは魅力的というか…煽情的だった。

 

奥手かと思えば爛れた姉妹愛を滔々と紡ぐライダー。

相槌を打つもそれは淡白なものになりつつある。

思考に空白が時折生まれる。

切り上げたいという思いと邪険にして憂わしげにしたくないという思い、そして早く寝なきゃという育ててきた倫理観が手を取り合い、私の停まっていた頭脳は熱を宿してケイデンス(回転数)を引き上げる―――――!

枕元に寝転がった私が手に取り見るのは、そう、目覚まし時計!

 

「ねぇ、ライダー」

 

「はい?」

 

「明日もあるから、ね」

 

長針と短針が指すのは2の数字。

夜は深く、規則正しく生活をおくる子供達は寝静まるお時間なのです。

 

「サクラ!申し訳ありません、つい…」

 

薄々感じていながらも止め時を失っていた所だろうか。オーバーリアクションではない。

 

「ううん、ライダーが一杯喋ってくれて嬉しかった。ありがとう」

 

「いえ、そのようなことは…」

 

こうして腰が引けないよう次に繋げる。

自己満足だけど先に進んでいる、成長しているという充足感がある。

 

「私はこれから寝るけどライダーは?」

 

「私には睡眠は必要ありませんので…」

 

「四六時中立つの?」

 

「そういう事になりますね」

 

気を紛らわす物もないのに、これではとんだ拷問を強いてしまう。

 

「お布団持ってくるね」

 

「サクラ、要らぬ手間は…」

 

必要ないと言われて小癪に感じる。冗談まじりに弧を描いた口で言葉を投げ掛けた。

 

「じゃあ一緒に寝ます?」

 

「……」

 

ライダーがもじもじしてる。

もしやこれは攻め時では…?

謎の直感が私につつめく。

 

「ライダー、一緒に寝よう?」

 

「い、いえ、それでは礼を欠きます」

 

「私もライダーもしたいなら問題なしです」

 

「……し、失礼します」

 

風に吹かれた紫水晶の砂塵めいて消え去るライダー。

潮合いを誤ったかな、これは。

催された間の悪さに躊躇われるが念話を通して伝える。

 

『寝たくなったら来ても良いですからね、ライダー』

『……』

 

出来ることはした。果報は寝て待てと言うし、天井から垂れ下がる紐を引いて電灯の明かりを消す。

脳内に蓄積した程よい疲れが私を眠りに誘っていく。今晩は良く寝れそうである。

 

 

 

 

暗い瞼に浮かぶ残念を自己弁護で押し殺す。コミュニケーション中は不安を感じては相手に伝わってしまう。だから守りに入ってはいけないのです。空気がどこか不安定になってしまう。相手と楽しむ為にはその感情に蓋をするのだ。

 

……それにしたって初対面の相手にがつがつしすぎちゃったかも。

追われる側の気持ちもわかる身としてはライダーが引いてないことを祈るばかり。

反省、反省です。

反省は悪い事ではありません。悦ばしい未来を導く()める営みなのだから。

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「平気で人を殺す、お前みたいなヤツに…!」

 

迫る赤槍。

己から流れ出した命を固めた様な穂先。

突然、青が視界に降りる。

 

「おわっ」

 

「ちっ」

 

吹き付ける突風、バブルピンクの花吹雪。掃除していた土蔵に引っさげられては瀰漫(びまん)した塵埃(じんあい)

体を震う轟音を認知し、(ついに)に何かが天井を突き破って落ちてきたのだと呑み込んだ。

心做(こころな)し乱暴な召喚ですが、宜しい」

 

立ち込める暗雲から見える一筋の光明が、朝焼けの奇跡を画いて黒雲を切り払う。

ついた土埃もそのままに、怜悧な相貌の少女がこちらを向く。

 

「問おう、貴方が私のマスターか」

 

 

 




NGネタ

「ほう。その剣、その眩耀、手前みてぇな小娘がかの騎士王とはな」

「これからその小娘の細腕に咽び泣くのだ。胸を張れ、英雄」

「…へぇ、漢気のある嬢ちゃんだ。気に入った」

「……ふむ、先程の非礼を詫びよう。私はブリテンの赤き竜、この剣を畏れぬなら掛かってこい」

「…アイルランドの万夫不撓、クランの猛犬だ。推して参る」


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