騎「やっべこの娘超タイプ」
桜「えっちだ…」
―――――
士「誰だお前は!」
剣「自分召喚雑過ぎない?まま、ええわ」
士「あ、どうも」(かわいい)
「アーチャー、アレ宝具よね」
「そうでないことを切に祈る」
血相を変えたアーチャーに途中から抱き抱えられ、僅かな間に衛宮君の家が見えてくると、天まで
「―――
「のわ―――っ!?」
漆喰壁と瓦、そして直撃を免れた槍兵が、共々に路上に投げ出されるのが見えた。
「バカ野郎!宝具ってのは魂みてぇなモンだ。そうバカスカと――――」
「
虚しく罵声を上げる彼と私達の目が合う。
一度しばたくとアーチャーの肩に手を置く彼がいた。
「アーチャー!良いところに来たな、助かったぜ!」
そう声を張り上げた槍兵はじゃあなと言うだけ言って、陸上部の手本足り得るランニングフォームで走り去った。
「―――嵌められた」
ここで思考が追い付いた。
「――む、新手ですね――」
上段に朝日を掲げた女性が衛宮邸の敷地から路上に現れた。
平時であれば見惚れる光景だが今はそんな場合ではない。
「ちょっと、アーチャー!?」
隣の男は我を忘れ木偶と化していた。
「アーチャァァアアアアア!?」
「セイバー!待ってく―――
「―――
極光が視界に満ちる。
走馬灯の駆け巡った久遠の寸秒の後。
夜空が表れ、寒さを感じた体に自身の生存を知った。
「はへぇ」
変な声が漏れ出して座り込む。
何気無い星空が
「――坂、遠坂!」
「はっ」
級友の面前という実態にさながら幽体だった意識が戻り、曝した醜態に熱気を発する顔を背けてしまう。
「知り合いですか、マスター」
「あぁ、同級生の遠坂って言うんだけど…」
衛宮君の首の向きに連れ添う――間違いなく英霊だろう――が追従する。
「誰だ、アンタ。遠坂の知り合いか?」
「君は…」
「はい?」
衛宮君の問い掛けを無視して彼に付き従う英霊に食い入るアーチャー。
もう我慢ならない。
「アアアアチャァアアア!!」
出したことの無いような爆音が咥内を震わせた。
口を一文字に結んだアーチャーが私を向く。
ぜったい許さないから。
「何なのアンタ!?主人を見殺しにして早速新しい女に粉かけようってワケ!?」
「いや、そう言うわけでは…」
眉根と唇の上下の付近に筋肉が寄るのがわかる。私の形相は今どうなっているのだろう。
「じゃあさっきのは何?見蕩れてたとか抜かしてみなさいよ、その妙ちくりんな格好のまま警察に突き出すわよ?」
「妙ちくりん…」
「…」
「…な、なぁ遠坂」
ギッと衛宮君を穴が空くほどに睨み付ける。私に手を伸ばしていた彼が固まり、そっと引いた。
怒りを発散した私は途端に我に返った。
「あ…らぁ、端たない所をお見せしちゃったわね~」
「…」
「…」
「…」
衛宮君と隣の彼女からの眼差しが痛い。
アーチャーが同じモノを向けてくるのが度し難いほどに気に障った。
「何よ?」
全霊の敵意と殺意にも届く怒りを視線に込める。
「………いや、すまない」
「『いや』ってなに?」
「…すまない」
消え入る様に霊体化したアーチャーに鼻を吹き鳴らして鬱憤を外に放出する。
「…なぁ遠坂」
「なぁに?衛宮君」
そうだ。衛宮君に用があって来宅したのだった。まさかこのお人好しが魔術師とは思わなかったが。
しかし、そうなると危惧が生まれる。
「ここじゃ何だし、
「いいえ、ここで結構よ。それよりも大事な話があるの」
心当たりの無さそうに振る舞う衛宮君。
「…なんだ?」
「桜のことなんだけど」
「…」
魔術の余香は学内ではしなかったが、ああも足繁く通っているのを聞くと勘繰ってしまう。
「魔術で誑かしてない?」
「するわけないだろ!」
心外といった態度の衛宮君。
だが魔術師とは往々にして外道である。皮を一枚剥いでやればどうなるか。
「へぇ、ふーん」
「遠坂、信用してないだろ…」
「だって魔術師よ?」
「それはこっちの台詞だ。まさか遠坂が魔術師だなんて…」
同好の士を見付けたと嬉しそうな衛宮君。
…私達の認識が食い違っている気がしてきた。
「ねぇ、衛宮君。魔術師の定義は?」
「魔術を使う輩じゃないのか」
「…聖杯戦争って、知ってる?」
「セイ、ハイ?何だそれ」
予想を上回る答えが返って来る。どうしたものかと頭を悩ませているとセイバーが衛宮君に水を差す。
流石英霊。聖杯からの知識は十全…
「恐らくHoly grailの事でしょう」
「ほーり…何?」
「…Christ…が晩餐に用いたという杯ですよ」
「くらい……て何だ?」
「お願いします、mu…ju」
「魔術師よ」
主従揃って何も知らないらしい。
セイバーに至っては長年海外に居着いた留学生並みの言語能力だ。
聖杯の不手際は御三家の不手際だ。私が責任を負うしかあるまい。
「…はぁ」
―――――――――――――――
―――――――――――――――
柳洞寺の山門へと続く階段を鋭い音色の足音を鳴らし、飛ばし降りる
人の背丈程もある打ち物、物干し竿と呼ばれる長刀。
半生を共にした相棒を棄て、武芸者であれば断じて許容できないだろう、礼節を失した半身への扱いに一瞥もしない男が頂の寺門にいた。
裡に産まれた違和感を知覚した時、己は手遅れなのだと悟った。
体内から
――――よもや、
内側から心臓を圧し潰され、途絶えた血液に脳が停止した男は仰向けに倒れた。
やにわに腹が、指向性を与えられた空気の叩き込まれた風船が如く膨張する。
■■■■■■■■■――――!!
産声が上がる。生への悦喜に満ちた、総身の毛が逆立つ怪鳥の歓呼が甲走る。
雛鳥が殻を突付き破る様に顕れた黒
臓腑と
―――――――――――――――
嗅ぎ馴れた臭いがする。
平安その物のこの場に度を過ぎて相応しくない、異彩な臭いが。
「どうしたのですか、宗一郎?」
立ち上がり一成に言う。
「皆とここにいろ」
―――――――――――――――
「アサシン、出てきなさい。アサシ…」
念話の通じなくなったキャスターは
確かにアサシンはいた。
陰惨な手口を想わせる屍体と成り果てて。
一目で術式の概容と生唾を飲み込んだ。
此れは悪辣なやり口だ、しかもサーヴァントというシステムに詳しい者のソレ。
必然コレを仕掛けたのは聖杯戦争において手練れとなる。
(宗一郎様!)
念話を試みながら、結界を起動させると領域内に集団から離れて行動する、愛慕するあの人の魔力。
強大な反応はない。
ああなんてこと、よりにもよって―――――
目の前に振り翳された刃が有ろうとも構わない。
慕い人の元へ転移する。
やはり、いた。
――お前、本来のアサシンか!」
近くにいた宗一郎様を後ろ手に庇い防護壁を周囲に展開、壁の曼陀羅を背に、如何にも暗殺者然とした男へ魔砲を掃射する。
暗殺者を触媒に暗殺者を召喚された。
だが此方には未だ令呪があり、マスターとしての権利を持ち合わせている。
やることは一つ。煙幕が晴れぬ内に詠唱する。
「令呪を以て命ずる―――」
「良いのか、その男」
暗殺者の片言めく呟きに、反射で宗一郎様を見る。術中にいると判っていても。
「首を、切った」
「――――」
ぱっくりと口の開いた首から絶えず鮮やかな血を垂れ流し、表に見える
彼の虚ろながらも一本芯の通った立ち姿は揺らめいている。
「宗一郎!」
平衡感覚を失った上体を抱き支え、治癒魔術をかける。
月明かりの照らす、足元の
「いや…いや…」
冷たい御身体に涙が溢れそうになる。血を流しすぎた。もう助からないかもしれない。
落ち着いて判断する冷めた自分がこの上なく忌々しかった。
「誰か!誰か!」
どれ程の時を喉よ壊れろと皹が入る勢いで声を搾り上げただろうか。
坊主の一人が駆け付けた頃には、召喚されたアサシンは姿を暗ませていた。