帝都廻。   作:玉砕兵士

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なんとか間に合った!


3話

ある日、ある夜、帝都にて。

 

「お願い、殺さないで」

苦しそうに首を絞められながらそれでも命が助かるために声をなお上げる1人の女性。

傍らには、既に息絶え首だけとなった男の死体。

 

「駄目駄目こんな時間に出歩いてるお前たちが悪い。夜に教わったろ夜には怖ーいお化けが出るんだよ。」

 

「なんでもするう!」

 

「ほんと?俺おしゃべりだけど話し相手になってくれる?」

 

「うん!なる!なるから!!」

僅かに見えた一筋の希望に必死に縋ろうとする女も話し相手になるだけならと微かに見えた希望に必死になる

 

だが女に最初から希望はなかった

 

「首と胴が離れてるってどんな気分?ちょっぴり切ない?」

そう言い月明かりに照らされた男の顔は非常に冷たく残酷だった。

 

「え?」

 

女が自分の死を理解するよりも早く女の首は地面に転がり次第に首から流れ出た血に染まっていく。

 

「んーっ」

「愉快愉快、やめられないな」

 

さも楽しそうに男は笑い、いや嗤い醜悪に満ちた顔を笑顔を歪ませた。

 

 

 

その様子を街角から様子を伺うように静かに見つめている者のには気付かず男は暗い帝都の闇に消えていった。

 

見つめていたものはゆっくりと月明かりに出てくると徐々にその姿をみせてきた。

 

月明かりに照らされたそれはヨマワリさんとなったハルであった。

 

「あの人も悪い人なのかなぁ」

なんだか、なんでなのかは分からないけどちょっぴり悲しそうな人だったような気がする。

 

それはハルの中で不思議なことであった。

 

今まで帝都で出会ってきた人たちは皆外見は普通の人に見えても中身は恐ろしい拷問を平然と行うような人ばかりであった。

 

しかし今ハルの前にいる人は、たしかに側から見ていれば人を楽しそうに殺し、愉快、愉快と口で言ってはいたもののハルの見た限りではそのように感じることは出来なかった。

 

むしろその逆で、殺すたびに辛く悲しそうになっている気がするのだ。

 

このモヤモヤとしたよくわからない考えがハルの中に残ってはいるものの結局ハルには首切りザンクに抱いた考えがまとまらず彼を見逃していた。

 

「あの人を攫うのはまだもう少し考えよう、それにそれよりももっと倒さなくちゃいけない相手がいる。」

 

いつの間にやらヨマワリさんからハル本来の青いリボンが似合う幼い可愛らしい少女へと姿を変えた。

 

そのハルの右手には路地裏から拾ってきたであろう沢山の紙の束があった。内容は主に帝都において指名手配がされている者たちばかりであった。

 

ハルは紙束から一枚の指名手配の写真を抜き取り、それをじっと静かに見つめる。

 

その指名手配の写真には帝都を騒がす暗殺集団ナイトレイドの一人アカメが写っていた。

 

「まずはこの人達を倒さなくちゃ」

 

「頑張るよ、ユイ」

 

そう呟いたハルは帝都の暗がりに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってくれ、待ってくれよサヨ!」

 

首切りザンクを倒したタツミ達これで、帝具を回収して任務完了の報告をして終わりと思われていた時タツミが急に誰かを追うようにして走り出してしまったのだ。

 

突然のことだったので、滅多なことでは動じないアカメも任務の主目的も達成して帝具を回収して帰るだけで気が緩んでいたせいか一瞬キョトンとしたような顔をしたものの、すぐに顔を引き締めタツミの後を急いで追っていく。

 

「一体どうしたんだタツミ!いきなり走り出して、それにサヨってお前と一緒に帝都に来た親友じゃないのか。それにその親友はもう」

 

「分かってる!」

 

走ってから、幾分の時間もたってないが相当な距離をほぼ全速力で走っていたためお互いに息は上がってはいるもののまだまだ2人とも余裕はあった。

走るのをやめて、アカメに振り返り足を止めたタツミの顔は一瞬辛そうな顔であったが、すぐに気持ちを切り替えたのか顔は冷静であるものの一抹の希望に縋っているような辛そうな目になっていた。

 

「だから、追っかけてるんだ!サヨが俺の前に現れて来たのはただの偶然だとは思えないんだ。何か俺に伝えたいことがあると思うんだ。それにもし無事に生きているなら村に戻してやりてえしな」

タツミの心中には心優しいサヨにはこんな根深い闇が巣食う帝都では生きて行くのは厳しいだろうというサヨを救いたいという思いがあった。

 

 

そんなタツミの止めるアカメを振り切ろうとするタツミにアカメは何も出来なかった。いや、動けなかったという方が正しかった。

 

アカメの腕には黒い触手が巻きつきタツミを止めようとしたアカメはタツミを止めることが出来なかったのだ。

 

「これは!?タッ!!?」

 

触手はアカメの手足に巻きつき身体の動きを封じるとそのまま路地裏に引きずり込もうとする。

アカメは必死に抵抗するものの、身体の四肢を封じられてしまっては何も出来ずに抵抗も虚しくアカメは路地裏に引き込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タツミがサヨを追いかけて幾ばくかの時が経ち、必死にサヨを追いかけるタツミであるがサヨは時折姿を見せ、すぐに街角を曲がったり建物の陰に隠れたりと姿を消してしまい中々追いつくことが出来ずにいたのだった。

 

努力も虚しくサヨを見失ってしまったタツミ。気がつくとタツミは帝都郊外の墓地にいた。

 

「初めてくる場所だ。」

〈墓地なんてアジトぐらいしかくるところなかったからな〉

 

人が生まれてから、最後に行き着くことになる最後の終着駅である墓地。タツミは知らず知らずのうちに不気味な場所に来てしまい内心では早くこんな不気味な場所から任務も終わったのだから早くアジトに帰りたいと思っていた。

だが、サヨを早く見つけ出さなければという親友を想う気持ちを考えれば彼女をこんな不気味な場所に彼女を置いてはいけなかった。

己を奮い立たせ、いざサヨを探すのを再開しようとしたその時であった。

 

ズルズル、ズルズル

 

なにかを引きずるような音を立ててなにかがこちらの後ろに近づいてきていた。

 

アイツだ!

 

屋敷でサヨとイエヤスを酷い仕打ちをした憎いアリアを攫った正体不明の化け物。

 

タツミも油断をしていたわけではない、こんな時でもいやこんな状況だからこそ周囲に注意をしていたから誰かが近づいてきているのであれば草むらに隠れるぐらいの余裕を持っていられるようにしていた。

 

そしてそれは、静かにゆっくりとしかし確実にタツミに近づいていたのだ。

 

タツミは恐怖した。

 

帝都で出会った反吐の出るような人間でも、人に襲いかかる危険種などという生易しいものではない。次第にタツミが感じていくのは得体の知れないナニカに対する恐怖でもましてアリアに行われたであろう想像を絶する苦しみに対する恐怖ではない。

 

 

 

似ていたのだ。タツミの近しい人の気配に、

 

 

だが、似ているだけで完璧に同一だとは断言することができなかった。

 

 

同じ人とは思えないほどに近しい人の形をした禍々しいナニカ。

 

 

辛く苦しい気分、自分の恩人が死んでしまった時のような酷い喪失感。

 

 

そして生きとしいけるものへの強い怒りと憎しみ。

 

 

それらを一緒くたに合わさったような禍々しいモノ。

 

 

誰の気配かは分からない。だがそんなことを考えている暇はタツミにはなかったし、何故そう思ったのかも分からない。

アカメのムラサメすら効かなかった相手にどうやって挑めというのであろうか、タツミの選択は三十六計逃げるに如かずの逃げの一択であった。

 

そして当然のように逃げる獲物を狙い、追いかけるヨマワリさん。

 

帝都郊外の墓地を舞台にした鬼ごっこの始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ走ったであろうか、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い墓地を右へ左へと逃げるタツミ。

元からサヨを探すために走り通しであったタツミにも体力の限界が見え始めていた。

息は切れ切れ、足ももつれて、今にも転びそうである。

だがここで止まるわけにはいかなかった。ここで止まればあの正体不明の化け物の餌食になることが容易にタツミには想像できた。

 

以前として、タツミはヨマワリさんから逃げおおせ、ヨマワリさんもタツミを捕まえ損ねていた。

 

だが次第に追い詰められていくのはヨマワリさんから未だに逃げおおせていないタツミであった。

 

クソ、もう体力が持たねぇ

 

内心で弱音を吐くタツミ。もう駄目かもしれないと諦めかけたその時再び彼女はタツミの前に現れた

 

「サヨ!」

今度はしっかりとサヨはこちらを待ち、早くこっちへと言っているような気がした。

 

あそこに行けば助かるかもしれない。

 

タツミにはそう思えて仕方がなかった。

心なしかタツミにはサヨがこちらに向けて微笑んでいるように見え、タツミは最後の力を振り絞りサヨを目指す。

 

そして、唐突に始まったヨマワリさんとの追いかけっこも終わりへと近づいていた。

 

 

 

行き止まりである。

 

 

絶望し、サヨの前で崩れ落ちるように倒れこむタツミ。ズルズルと引きずる音をたてながら尚も迫るヨマワリさん。もはやこれまでとタツミが諦め、せめてサヨだけでもと思い、サヨを逃がそうと剣をとりヨマワリさんと戦おうと決意し、後ろを振り返ると

 

サヨが自分を守るように両手を広げていた。

 

いつの間に自分の背後に回ったのかとかそんなことを考えている余裕は今のタツミには無かった。

 

「サヨ、やめろあれは俺たちが勝てる相手じゃねぇ!!」

 

タツミが声を張り上げながら言うも、サヨは微動だにしなかった。

 

そしてヨマワリさんもまたタツミへ襲ってくることもなかった。奇妙な静寂が訪れ、永遠に続くかと思われたその静寂は突然ヨマワリさんが背景と同化するように消えていったことでそれもまた終わった。

 

「消えた!」

突然消えたヨマワリさんに驚き、またどこからか襲ってくるんじゃないかと周りを見渡すも出会ってしまった時のような悪漢もなく、また恐怖もなかった。断言できるわけではないがタツミにはもうヨマワリさんはどこにもいないと感じていた。

 

「一体どうしたんだ?」

 

そのまま暫く呆然としていたタツミではあったが、取り敢えず近くにいるサヨに声を掛けた。

 

「なぁサヨ、アイツ一体何処に消えちまったんだ…。サヨ?」

 

辺りを見回すもサヨの姿は何処にもなく、替わりにあるのは今更ながらに気づいた当たり一面に広がる赤い花畑であった。

 

「サヨの奴また居なくなっちまった。なんで居なくなっちまうんだよ。」

 

ヨマワリさんが消えたことで幾分か余裕を取り戻したタツミはサヨがまた突然自分の前から消えてしまったにせよ生きているのを確認でき嬉しくあった。

 

「良かった、生きてたんだなサヨ。」

死んだと思っていた仲間が生きていた。これほど嬉しいことはタツミにはなかった。

涙が溢れるのを我慢できなかったタツミは嬉し涙を暫く流し続けた。

 

そして今日はもうアジトに戻ろうと歩き出したタツミは何か硬いものにつまづき転んでしまった。

 

「イテテ、なんだよこれ?」

タツミがつまづいたものは、赤く鉄さびた大きな四角い箱の取っ手であった。と言ってもそのほとんどが地中に埋まっており、見ることができるのは地表から出ている取手だけであった。

 

「こんなところになんでこんなものが?」

興味本意で中を開けてみると、タツミは驚いてまた転んでしまった。

 

「アカメ!大丈夫か!?」

 

中に居たのはタツミを止めようとしたところで帝都でヨマワリさんに襲われていたアカメであった。

 

「おい、しっかりしろアカメ!」

 

「うぅ、」

アカメが頭を押さえながら立ち上がるのを見たタツミは先ずは無事であったアカメに安堵した。

 

「ここは何処だ…タツミ?」

 

「良かったぁ。」

 

思わぬところで、アカメに再会出来たタツミはアカメと別れてからの経緯

を説明し、アカメもタツミを止めようとしたところでヨマワリさんに襲われた事を説明して、お互いの状況把握に努めた。

 

「サヨが、サヨが生きていたんだ!」

そしてタツミは嬉々としてサヨが生きていた事をアカメに話した、そのサヨがあの化け物を退いた事などを嬉しそうにアカメに語った。

 

「本当に、本当に良かった。サヨが生きているのをしれただけでも俺すっごい嬉しいんだ。」

 

嬉しさで興奮しているタツミを遮るようにアカメは声を掛けた。

 

「すまない、タツミ話しているところで悪いんだが」

 

「なっなんだよ」

話を遮られ、若干不機嫌になりながらタツミはアカメの声を聞いた。

 

「あそこにいるのは誰なんだ?」

 

タツミが振り返ると、アカメの視線の先には確かに人がいた。

 

タツミには一目で分かったサヨだった。

 

サラサラの綺麗な黒髪は悲しげに風に靡き、身体は痛々しい傷が無数にあるものの顔は穏やかなものであった。

 

そこにサヨは居た。

 

ただしタツミの望む結果とは真逆であり、彼女は既に永遠に眼を覚ますことなく、ただ眠り続けていた。

 

残酷な現実だけがそこにあった。

 

 

「サヨ…嘘だろ。」

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

あらん限りの声でタツミは目の前の現実を否定した。

 

アカメはその様子を見守ることしかできなかった。

 

 

 

 




次はもっと遅くなるかも、ごめんなさい!
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