硝煙の先にあるものは   作:Allenfort

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第17話

 漸く撤退ルートが確保できた。デストロイヤーの猛攻をなんとか抑え、撤退を開始した。それでも416の残弾は弾倉2本に榴弾1発。心許ない量に減っていた。

 

「416とG11は先に。殿は私と9がやるわ」

 

 UMP45はUMP9と共に制圧射撃をしながら後退する。416とG11は耐久力に劣るため、2人を盾にするようにして撤退する。

 

 向かう出口は、まるで誘導されているとしか思えない。よりにもよって、あの時と同じ出口なのだ。そして、あの時と同じくデストロイヤーに追いかけられている。

 

 嗚呼、嫌な記憶がまた思い浮かぶ。全員が同じだろう。1人は死んで、もう1人は瀕死。人間のあまりの脆弱さに、なんと表現すればいいか分からなかった。

 

 今度は、誰を失うと言うのか。

 

 壊れた扉を通り抜け、光が差し込む。一瞬くらむような光が見えた。レーザー警報もない、反射光も見えない。それでも、なぜか分かった。

 

 ——そこにいる

 

 9と45が飛び出したのに遅れて、デストロイヤーがその姿を現した。あの時と同じように。もし、本当にあそこにいるのだとしたら、何をすべきか。それを知っている。あの時こうしていればと、何度も悔しがっていたのだから。

 

「伏せなさい!」

 

 振り向き、グレネードランチャーを構えて叫ぶ416。察した9と45はその場に伏せ、射線を開ける。狙うは、デストロイヤーの腕。どっちでもいい。榴弾でガードを崩す。

 

 最後の1発。外せない。外すわけにはいかないそれを、撃つ。私は完璧。だから、外さない。そう信じて。

 

 全てを賭ける気持ちで撃った榴弾はデストロイヤーのグレネードランチャーから露出していた弾帯を捉え、その弾薬に誘爆した。爆風がデストロイヤーの姿勢を大きく崩し、ガードを崩す。

 

 ——よくやった

 

 まるで、そんな褒め言葉のように銃声が響く。7.62mm弾の銃声。サプレッサーに減音されているが、確かに聞こえる。

 

 ※

 

「ここであっていますか?」

 

「ああ、下ろしてくれ」

 

 M4に運ばれ、漸く零士は狙撃地点にたどり着いた。あの日、デストロイヤーに狙撃を防がれ、追いかけられる羽目になった場所。ここで、あの時と同じように狙撃する。

 

 あの時は防がれた。また防がれないという保証はない。例えそうだとしても時間を稼げるのであればそれでいい。なんだってここにはAR小隊もいるのだから。

 

「誰かスポッターやれるか?」

 

「私が」

 

 M4は単眼式デバイスを手に取るが、零士はそれを制した。レーザー測遠機が付いているため、敵に居場所を知られてしまうのだ。

 

「こっちを使って」

 

 代わりに渡したのは、アナログな双眼鏡。メモリが刻まれているだけの何の変哲も無い昔ながらの双眼鏡。時村慶一郎の遺品である。

 

「了解、目測で計測します。あの出口に狙いを合わせるんですね?」

 

「そうだ。飛び出した瞬間ズドン、これに限る」

 

 ちょうど今の時間。出口から出た瞬間、薄暗い廊下から光差す眩しい外に変わる。その一瞬の目のくらみ。それが、狙撃するチャンスだ。それを逃したら、おしまいだろう。

 

 アドレナリンによる心拍の増加。それは照準のブレという副次効果をもたらしてしまう。二脚を立ててしっかり地面に固定し、なんとか軽減してやる。

 

 十字が見える。M4の教えてくれる諸元の通りにメモリを見て、照準をズラす。

 

 持ちこたえてくれ、俺の体。みんなが来るまで、奴を狙撃するまででいい。その瞬間まで、持ちこたえてくれ。

 

 トリガーに指をかけ、その瞬間を待つ。もうすぐだ。きっと、もう来る。あの時みたいに。

 

 ほら、見えた。G11と416の姿が見えた。UMP姉妹もすぐに来る。その後ろには、奴がいるはずだ。だって焦って逃げてるから。

 

 416は振り向き、遅れて飛び出してきたUMP姉妹が伏せる。何をする気か。考える前に、416は榴弾を撃った。デストロイヤー を狙って。

 

 デストロイヤーのグレネードランチャーに誘爆し、デストロイヤーは大きく姿勢を崩す。あの時と違って、ガードの出来ない無防備な状態。絶好のチャンス。

 

 ——よくやった

 

「撃って!」

 

 M4の声と、トリガーを引いたのはほぼ同時だった。反動が肩に痛みを、銃床に押し付けていた頬ぼねに殴られたような痛みをもたらす。

 

「命中です!」

 

 M4の声。当たった。ようやく、これで……

 

『デストロイヤー が止まった、回収地点に向かうわ!』

 

 UMP45の声が無線から聞こえてくる。嗚呼、あの時の仕返し、ようやくできたのか。

 

「じゃ、3分で来い」

 

『意趣返し?』

 

「デストロイヤーに仕返ししたついでにね」

 

 零士は笑う。移動を開始した404小隊を見送り、スコープのキャップを閉じる。目が霞み始めた。思いの外早く、アドレナリンが切れてしまったようだ。

 

「お疲れ様でした、指揮官」

 

 M4はぐったりとした零士を抱き上げる。片足分かるくなってしまったその体は、まだ生きている。死なせないために、M4たちはやや早足で回収地点へと向かった。




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