魔女達は鋼の巨人と共に抗う様です   作:voros

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Apex Legendsをやってみようと思ったらエラー頻発。やむなく参加を断念しました。
それはさておき、漸くオリジナルウィッチの御披露目です。まだまだ募集は続けて
いるので思い付いたら気軽にメッセージをどうぞ。


第十話 変わり始めた歴史

「パンドラ、ねぇ・・・」

 情報交換会を終えて一夜が明け、執務室には上層部が集まっていた。

「部隊名としてはピッタリだろう?」

 ラルは紅茶を片手に答えた。

 

「ああ、そうだな。どちらにしても関わりたくないって意味で」

 箱の中には希望が残っていたとも、偽りの希望と言う救いの無い災厄が

 入っていたとも語られるパンドラの箱。あの傭兵達が持ち込んだ情報は

 皮肉としても最適な例えであった。

 

「で、あの映像を見て勝ち目は見えそうかい?」

 アウロラは横目で視線を投げかけた。

「少なくとも空中空母を持ち込まれたら詰む。そう結論付けました」

 現像された写真を指先で示すサーシャ。

 

 空に浮かぶ空母。そこからは戦闘機が飛び出したり、ドロップポッドが地上へ

 投下されている。何もない空中に突然ワープして現れていた様子を映像で見た

 ウィッチ達は、一目で危険性を認識した代物だ。

 

「こんな物が都市部上空へ現れようものなら戦いにすらなりません。

 万が一にもネウロイの手に落ちたとすれば、彼らの助力は必須でしょう」

 文字通りの瞬間移動。レーダーで事前予測も出来ず、目視で発見も不可能。

 奇襲を仕掛けられたら防ぎようが無いとは理不尽過ぎる。

 

「それでなくとも武器の射程は桁違い、戦闘機は音速を超えて当然。

 先手を取られた時点で対抗手段は皆無でしょう。なので、彼らの

 追手に対する考察は現時点では保留とします」

 

 ただでさえ携行火器が通用しないタイタン一機相手に苦戦するのに、

 ICBM等の超遠距離攻撃が出来る兵器や無人突っ込んで来た挙句

 自爆してくる迷惑極まりない連中が集団で来て対抗できる程の余裕は

 無い。元より大規模作戦の余波で物資が足りないのだから。

 

「それよりも彼らが新たな戦力として使える以上、ネウロイ残党の掃討や

 技術解析に注力すべきです。夜間戦闘員の増強が出来るだけでも負担の

 軽減に繋がりますから」

 

 傭兵達の持ち込んだ装備の中で一際興味を引いたのが脅威スコープだった。

 土煙による視界不良、暗闇や迷彩に対して絶大な効果を発揮し、夜間でも

 戦闘を可能とする。この世界でも生産が成功すればナイトウィッチ以外が

 夜間でも活動できる。その可能性は魅力的だ。

 

「完全に信用できる訳では無いが、少なくとも敵では無い。

 今の所は互いに利用し合って様子見に徹しよう」

 大量の情報を持っていた経緯が経緯だけに信用するのは難しい。

 が、それを態々話してくれた点は誠意の表れなのかもしれない。

 

「まずは目先の事だ。北部国境の山中で以前から補給物資が消えると

 報告が相次いで寄せられている。調査が終わり次第片付けるとしよう」

 大事を片付け、ようやく小事に取り組む為に魔女達が頭を捻っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・これもか」

 ドラム缶に匹敵する大きな空薬莢。例え戦車であっても

 これ程の大きな弾丸は発射できない。軍艦の砲弾ならば

 あり得るだろうが、此処はオラーシャの森林である。

 

「ここらで大きな作戦が有るって聞いたけど、とっくに始まってるのかな?」

 抉られた地面、焼き払われた木々。そして見た事が無い大きさの空薬莢。

 雪が覆い隠して尚目立つ激しい戦闘の痕跡が至る所で見受けられる。

 

「参ったなぁ、何か美味しい物が食えないか期待してたのに・・・」

 ロバに曳かせた荷台の上で渋い顔を浮かべる少女。荷台からは

 日月紋がペイントされたユニットが見え隠れしていた。

 

「どうしたもんか・・・お?」

 戦場跡地を独り寂しく進むと、トラックの荷台に何やら積み込む

 人だかりが見えて来た。服装からして民間人。見た所放棄された

 物資や武器を回収しているようだ。

 

「お~い、何やってんのさ?」

 声を張り上げて呼びかけると、トラックに群がっていた人々は

 ビクリと身を震わせて武器を手に取った。

 

「ちょっちょっ、敵じゃないって!」

「あん? 見ない顔のウィッチだな・・・」

 慌てて両手を挙げつつもシールドを展開できるように準備するも、少女の顔を

 見るなり警戒を解いた民間人。どこか安堵している気がする。

 

「あんた、何者だ?」

「アタシは西沢義子。ここらで大きな作戦をやるって聞いたから

 手伝いに来たんだ。もしかして、この辺でやってたりとか?」

「いや、それならもう終わったぞ」

 トラックの運転手と思しき壮年の男性が運転席の窓から身を乗り出した。

 

「え、マジ? こんだけ真新しい痕跡が残っているのに?」

 愕然とした様子で西沢は運転手に問い返した。

「ああ。昨日ノヴゴロドの方からネウロイが攻めて来たそうでな、

 その時の爪痕がコレなんだよ。ところで、ウィッチって事は502の所属か?」

 顔の前で横に手を振りつつ西沢は否定した。

 

「いんや、今はどこにも所属してないね」

「それなら俺らの護衛をしてくれないか? またネウロイが襲って来る前に

 使えそうな物は集めたいんだ。放って置いて餌になるよりはマシだからな。

 当然タダじゃない。食事や物資を分けようと思うんだが・・・」

 

 荷台にはギッシリと弾薬や銃器類が詰み込まれている。万が一にも

 ネウロイのビームが当たろうものなら誘爆で木端微塵に吹き飛ぶだろう。

 護衛が欲しいと言うのも理解できるが、それにしては不可解な点が有る。

 

「アンタ達こそ何者なんだ? 軍の協力者でもないし、ただの民間人って

 割には物騒な物を集めてるみたいじゃん。流石に悪い事を企んでるなら

 掛ける情けは無いよ?」

 

 軍人の護衛も無く、502の所属かどうかを聞いた時点で少なくとも

 統合戦闘航空団とは関わりが無いのは間違いない。集めている武器も

 小銃とかだけなら民間人でも使えるが、戦車の砲弾も集めているのは

 流石に怪しいと言わざるを得ない。民間人が使える訳が無いのだから。

 

「アタイらは義勇兵だからね。国を放り出して逃げたような連中とは

 別物だから心配しなくても大丈夫! なんならアタイ達の拠点に来る?」

 打ち捨てられていた戦車のハッチが開かれた。中から女性の声も聞こえる。

 

「ほー、そういう事・・・!?」

 戦車の中から現れた人物を見て西沢の声が途切れた。

「驚いてる所を見ると、本当にアタイ達の事を知らないみたいだね」

 その人物には目が無かった。火傷の痕で両目が塞がっていたのだ。

 

「アタイはルフィナ・シャラポヴァ。よろしく頼むよ」

 珍しい事に動物の耳が見えない少女は、長い尻尾を揺らしつつ挨拶をした。

「お、おう・・・さっきも言ったけど、西沢義子だ。こっちこそ宜しく」

 多少面食らったものの、気を取り直して挨拶をする西沢であった。

 

「ま、軍を脱走して悪さしてる連中じゃないなら問題無いか。温かい飯と

 寝床、有れば弾薬とかの物資さえ有るなら手伝うのも吝かじゃないね」

「そいつは有り難い。何処に行ってもウィッチは足りなくてね」

 ルフィナは戦車の中から引っ張り出した砲弾をトラックへ積み上げた。

 

「ほらほら、今の内にさっさと移動する! またデカブツが来たら

 荷物を放り出して逃げるのも難しいんだからね!」

「あいよぉ!」

 彼女の掛け声と共に周りの男連中が動き回る。

 

「なんならアタシも運ぶのを手伝おうか? 人手は多い方が良いだろ?」

「飛べるアンタが疲れさせる訳には行かないよ。

 こちとら陸戦用のユニットしか持って無いんだ」

 ルフィナは西沢の馬車に積まれたユニットを指さした。

 

「何で分かったんだ?」

「アタシの固有魔法。見ての通り目は見えないけど、音で形を『視る』事なら

 出来る。言うなれば音響探知かな。流石に色までは分からないけど・・・」

 ルフィナは舌打ちを数回響かせた。

 

「日月紋・・・扶桑の出身みたいだね。弾も13mmなら有るから、

 足りないなら持って行って頂戴。手榴弾とかも有るけど使う?」

「見えないのに分かるもんなのか・・・弾は受け取るとして、

 デカブツがどうのと言ってたけど、そいつは倒してあるのか?」

 

 大型ネウロイともなれば流石に手持ちの武装だけで挑むのは分が悪い。

 火力不足もあるが、それ以上に非戦闘員を護衛しながら戦闘するのは

 キツイからだ。

 

「いや、そこまでは分からない。何せ夜襲だったし、固有魔法が有っても

 遠くまでは視られないからね。ま、空戦ウィッチが戦っていたんだし、

 追い払うぐらいは出来てたんじゃないかな?」

 ルフィナは戦車に立てかけておいた小銃を担ぎ上げた。

 

「ま、細かい話は後にしよう。こんな寒い所で長話をするのは辛いからね。

 さぁ、野郎共! 次の場所に移るよ! 早いとこ回収しないと雪に埋もれて

 掘り出すのが面倒になるからね!」

 

 目ぼしい物資は回収したのだろう。散っていた男連中が戻り始め、

 ルフィナの呼びかけと共にトラックのエンジンが唸り声を挙げた。

 

「んじゃ、付いてくとするか」

 ロバの手綱を握り、えっちらおっちら後を追う西沢。

 少なくとも飯の種には困らなくなりそうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、面倒な事になってきたな」

 情報交換会を終えて早速内容を纏めた傭兵一同。割と詰みかけてる

 悲惨な人類に協力しながら帰還手段を探さねばならない状況に頭を

 痛める破目になるとは、運が悪いと言わざるを得ない。

 

「敵は主兵装はビームと砲撃、もしくは近接攻撃。金属を吸収し、増殖や再生を

 行いつつ毒性のガスを放出する。主な弱点はコアと呼ばれる物体への攻撃。

 破壊するとコアを持つ本体から派生した子機は一斉に自壊する・・・」

 

 知れば知るほど訳が分からない存在である。ビームと自己修復程度なら

 ドローン等によるものだと説明が付く。だが、毒ガス発生や自己成長を

 行うといった特徴まであると、元の世界から流れ込んだ技術とは思えない。

 

「エネルギーサイフォンは効果が有る以上何らかの電気的刺激で反応している筈だ」

「テザートラップも引っかかったしな。金属で構成されてるのは確実だろ」

「アークウェポンならともかく、通常弾だと効き目が薄いし・・・IEDでも作る?」

「移動手段が徒歩と言うよりも諾足だから・・・直接投げつけた方がマシかも」

 

 各々の交戦記録や所見を元に対ネウロイ用の戦術を模索。近い内に

 ブラックマーケットとの伝手が出来そうなので、資金の調達や売買

 出来そうな情報等の精査も必須。いつ契約が途切れるか分からない

 立場である以上、予め顧客を見定められる状況は整える事は必須だ。

 

「機体も休ませたい所だが、元手が無いのは不安だ。さて、誰が出るべきか」

「スコーチは論外。こっちで留守番だろうね。ノーススターは」

「小物相手には不向きだからな。汎用性で考えるならトーンだろ」

 揃いも揃って頭を捻っていると、一人のウィッチが傭兵達に近づいた。

 

「あの・・・フェーズさん、ですか?」

「そりゃあっち。ちょっと、客だよ」

 スティムが手招きをしてフェーズを呼び寄せた。

 

「ん? 見ない顔だな・・・」

 頭から虫の触覚らしきものが飛び出ており、尻からは黄色と黒の縞模様の

 太い突起物の先から黒光りする針が見える。どうやら蜂のウィッチらしい。

 だが、情報交換の際には見なかった顔だ。背中には大荷物を背負っている。

 

「初めまして、イルヴァ・ランデスコーグです。

 記者のデビーさんから話を伺って参りました」

 ぺこりと頭を下げると、彼女は背中の荷物を降ろして差し出した。

 

「こちらに皆様全員分の生活必需品が入っております。どうぞ、ご確認を」

 イルヴァに言われるがままに封を解くと、肌着からコートまで

 多様な衣類が詰め込まれていた。洗面用具に爪切りと言った

 小物類まで随分と至れり尽くせりである。

 

「成程、取材の報酬の後金って訳か」

「助かった~。何日も着替えずに居たら臭いが付く所だったわ」

 流石に採寸はしていないので丈が少々合わなかったりするが、

 着替えられずに居るよりは遥かにマシだ。そこは目を瞑ろう。

 

「それと今後の取引について相談の場を設けたいのですが──」

「すまんが、これから出撃で今直ぐには対応できそうに無い。

 連絡先を教えて貰えるか、日を改めて再度来て貰えないか?」

 デビーの紹介で訊ねたのだろうが、生憎と間が悪すぎた。

 

「分かりました。では、今日の所は失礼致します」

 柔らかな物腰で一礼。品の良さを滲ませながらイルヴァは去って行った。

 荷物を背負っていた時には見えなかったが、彼女の尻は肩幅より大きい。

 異様な大きさだが、あれも魔法力の影響なのだろうか?

 

「さ~て・・・懸念事項が一つ消えた事は良いとして、何から手を付けるべきやら」

 一瞬浮かんだ疑問を振り払いつつ、偵察任務と言う条件も有り見た目からして

 表に出られないスティムは己の成すべき事を探すのであった。

 

 本来ならば出会う筈の無い人々が出会い、歴史は変わり始める。

 その変化が吉と出るか、凶と出るか? 予想する事は誰にも

 出来ないのであった。

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