魔女達は鋼の巨人と共に抗う様です   作:voros

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漫画とかの巻末を見ると、戦術なり時代考証なり専門の人が協力している理由が良く分かります。
一人で執筆から情報収集までやるのは負担が重過ぎる! まして、機体のIF要素まで取り込んでるもんだから情報源を探るだけでも一苦労。ストパン世界でミグは一体どうなったのやら・・・。とりあえず11話です。


第11話 祝福の魔女

「すみません、テーブルビートの箱はどちらへ?」

「左奥の壁際へ置いて下さい!」

 ぞろぞろと運び込まれる食料品の山。ランタンの僅かな

 明かりを頼りに倉庫へと積み上げられて行く。

 

「ああ~もうっ! また住み着いてる!」

 倉庫の隅をチョロチョロ逃げ回る鼠。ジョゼは悲鳴を上げつつも

 捕まえようと追いかけ回すが、流石に壁の中へと逃げ込まれたら

 手も足も出ない。

 

「折角居なくなって安心できると思ったのに・・・」

 がっくりと肩を落として残念がるジョゼ。食べる事が何よりも好きな

 彼女にとって食料を食い荒らす鼠は許されざる敵である。

 

「あの、良ければ捕まえて差し上げましょうか?」

 涙目で落ち込むジョゼへ荷運びの女性が話しかけた。

 彼女の作業服には刺繍で『イルヴァ』と名前が縫い込まれていた。

 

「え、出来るんですか?」

「少し時間を頂ければ。もし可能なら手伝って頂けると助かりますが」

「是非とも御願いします!」

 女性の手を両手で握りしめてジョゼは目を輝かせた。

 

「それでは少々お時間を頂きますね」

 頭から虫の触覚が、尻からは蜂が持つ黄色と黒の腹部が飛び出した。

 鋭く尖った針の先端は仄かに魔法の光が帯びている。

 

「暫くすれば鼠が穴から飛び出してくるので、それを捕まえて頂けますか」

「お任せください!」

 鼻息を荒く吹かせて返事をするジョゼ。気合は充分過ぎる程だ。

 

「分かりました。これ、一つ借りますね」

 積み上げた食糧の山から小さなジャガイモを手に取ると、表面に軽く息を

 吹き掛けて壁の前に置いたイルヴァ。魔法力特有の淡い光がジャガイモの

 表面を包み込んでいる。

 

「後は物陰に隠れて、出てきた所を捕まえれば・・・」

 木箱の裏に身を潜めると、先程逃げ込んだであろう鼠が早くも

 壁の穴から顔を覗かせた。ジャガイモを齧ろうと身を乗り出して近付き──

 

「はい、この通りです」

 ──齧るや否や鼠の体が宙に浮いた。古より魔女が使うとされる念動力。

 直接対象に触れていなくても、魔法の力場を生み出す要領で干渉すれば

 ちょっとした小物程度は宙に浮かせられる。

 

「捕まえたっ!」

 ジャガイモから離れようと暴れる鼠の尻尾を掴み、会心の笑みを浮かべるジョゼ。

 イルヴァは再度ジャガイモを穴の前に置き直した。

 

「後は繰り返すだけですね」

 隠れ、捕まえ、置き直す。固有魔法でも使っているのだろうか? あれよあれよと

 鼠が釣り出されてジャガイモに齧りついて行く。鼠が出なくなる頃には、ジャガイモは

 歯型でボロボロに変わり果てていた。

 

「では、仕事が残っているので失礼します」

「有り難う御座いました!」

 満面の笑みで見送るジョゼに一礼し、足早に去っていくイルヴァ。

 やるべき事は残っている。

 

「お疲れ様です」

 すれ違う基地の人々に労いの言葉を掛けつつ外に出る。そして視界の端に

 格納庫前の見慣れない飛行機を捉えた。プロペラが見当たらない妙な外見。

 傭兵達が乗って来た輸送機である。

 

 武器を使うネウロイを見た。ネウロイが人を食べた。ネウロイと組んで戦う人を見た。

 普段ならば流言と一蹴されるであろう話であるが、実際に助けられた人がいる。

 しかも502所属のウィッチ達と一緒に目撃されているのだ。単なる噂にしては奇妙。

 まして、ネウロイ同士が交戦と無線で聞けば調べぬ訳にはいかない。

 

「ネウロイを屠る巨人・・・あれでしょうか?」

 騒がしく出撃準備を整える人々に混じって動く鋼の巨人。陸戦型ユニットにしては

 桁違いに巨大。恐らく、アレこそが噂の震源地であろう事は想像に難くない。

 

「それより、こちらを済ませませんとね」

 巨人の事は一先ず置いておくとして、自分が成すべき事は済ませなければならない。

 乗って来たトラックへ戻り、積み荷を担いで再び建物の中へと戻るイルヴァ。今度は

 格納庫に届け物だ。

 

「すみません、受領印をくださいな」

「おう、お疲れ」

 整備士の傍らに積み上げられる木箱の山。本来ならフォークリフトでも無ければ

 持ち上げる事すら困難な重量物。何せ中身はユニットの補修部品等の金属なのだ。

 それを生身で軽々と持ち運ぶとなれば、魔力量の高さが窺い知れる。

 

「では、いつも通りに?」

「頼む。これから出撃だから、トラックを先にやってくれ」

 イルヴァの尻から飛び出した針が一直線に伸びると、淡い光が

 彼女の周囲を包み込んだ。そしてそれはトラックをも包み始める。

 

「ふぅ・・・えいっ!」

 大きく深呼吸。一拍置いて目を見開くと、イルヴァの触れた部分から

 トラックに光が付着し始める。それに合わせて少しだけ彼女の巨大な

 尻が小さくなった。

 

「終わりました」

「よし、次は男連中を頼む。第一班集合!」

 先んじて詰めていた兵士達がイルヴァの前に整列する。

 皆一様に片側の裾を捲り上げ、手首を外気に晒していた。

 

「では、少し堪えて下さいな」

 自らの股下から針を潜らせ、先頭に立っていた兵士の手を取り針へと宛がう。

 僅かばかりの位置調整。そして彼女は針を兵士の手首へと突き刺した。

 

「あづっ・・・」

 痛みに呻く兵士。使い魔たる蜂の部分が脈打つように

 蠢くと、兵士の体にも燐光が宿った。

 

「はい、結構です。次の方どうぞ」

 手慣れた様子で針を引き抜き、次の兵士へ針を突き刺すイルヴァ。

 こうして同じ作業を繰り返す事十数分。彼女の尻は人並みの大きさにまで

 小さく縮んでいた。

 

「今日はツイてるな。御蔭で瘴気を気にせず動けそうだ」

「あくまでも気休めですからね? 私達と違ってシールドは出せないんですから」

 最後の一人から針を引き抜きつつ、イルヴァは人差し指を立てて兵士を窘めた。

 

「くっちゃべってる暇が有ったら乗れ!」

「いけね、また会ったらよろしく頼むよ」

 小隊長にどやされて駆ける兵士を見送り、イルヴァは踵を返して格納庫を去った。

 

「これで全部終わりですね、うん」

 届け物は降ろした。サービスも振る舞い終わった。これで本命の仕事に取り掛かれる。

 緩んでしまった紐パンを締め直し、今度は基地の指令室へ歩み始めるイルヴァだった。

 

 

 

 

 

 

 

「晴れ続けていて良かった。雪の下に埋もれていたら骨が折れてたな」

 弾薬が残っている弾倉を拾い上げ、こびりついた泥や雪を払う。

 氷雪に晒され錆び付こうものなら、如何に軍用品と言えど故障の元になる。

 

「こっちは・・・もう駄目か」

 踏みつぶされたか、あるいは流れ弾でも当たったか。砲身が歪んだ戦車が

 埋もれていた。掘り起こすまでも無くスクラップ確定だ。

 

「しゃーない、使える物だけ集めて次行くぞ」

「了解!」

 分隊長の指示の元、兵卒達が物資を回収していく。ネウロイの餌にする位なら

 再利用するべきである。元より物資は有れば有るほど良いのだから。

 

「それにしても、俺達にもアレが有ればな・・・」

 ぼやく分隊長の視線は、傭兵達が操る巨人へと向けられていた。

 

「よーし、そのまま降ろすぞ」

 ビームで抉られた穴に嵌ったのか、数十トンにも達する戦車が斜めに傾いている。

 それを容易く持ち上げ、平地に置き直す。重機が無ければ手間の掛かる作業を

 僅か数分で片付ける巨人の姿は味方でいる内は頼もしい物であった。

 

「弾倉まで喰われてたら目も当てられなかったけど、ツイてたわね」

 流石に数日程度で根こそぎ喰われていた、何て事にはならなかったようだ。

 雪を掘り返す手間も左程掛からずに済んだのは幸運だ。

 

「でも、燃料は取られたようだけど?」

 スターリンのオルガン・・・もとい、BM-13の荷台に倒れ掛かっていた木を

 タイタンに放り投げさせ、状態をチェックするクローク。燃料計の針は端に

 振り切れ、タンクからは零れたガソリンの跡が残っていた。

 

「ネウロイとやらは金属を喰うとは聞いたが・・・燃料も啜るのか?」

「それは無い。こりゃ人間の仕業だろうな」

 グラップルの問いに首を横に振ってアウロラは答える。

 

「こりゃ義勇兵の連中が持って行ったな」

 雑多な靴跡を見てユニット回収班の一人が舌打ちを鳴らす。

「義勇兵って事は民兵か? 素人にしちゃ手際良く持ち出したみたいだな」

 他の車両等を見ても丁寧に部品取りが成されている。少なからず工学知識を

 持ち得た人物が関わっているのは違いない。

 

「いや、そうとは限らない。退役した元軍人やウィッチも混ざっている事が

 有り得る。ま、十中八九は太陽の住人あたりが持って行ったんだろうけどね」

 アウロラは道を塞ぐ倒木を担ぎ上げながら話に加わった。

 

「おいおい、軍事物資かっぱらう連中を野放しにして大丈夫か?」

 ホロは隠す素振りすら見せずに顔を顰めた。

「そうもいかない。下手な軍隊より役に立つとか言われてるし、

 実際にオラーシャの戦線を維持できるのは奴らが居るからって話を聞くんだ」

 手に付着した雪を払い落してアウロラは続ける。

 

「此処オラーシャじゃ数日で戦線が前後する事が当たり前。その度に物資やらを

 運んでたら戦うどころじゃない。だからゲリラ戦用の補給拠点を各地に置いて

 運搬の手間を省いたり、橋頭堡に出来るようにしている。で、その拠点整備を

 一手に引き受けてるのが太陽の住人って訳さ」

 

 拠点と言っても軍事基地のような物ではない。精々が煉瓦と丸太で組んだ

 セーフハウスと言った方が正しい。ただし、地下には非常食や予備弾薬、

 その他サバイバル用品などが用意されている。規模が規模なので大部隊の

 補給には使えないが、分隊程度なら寒さを凌いで夜を明かす程度は可能だ。

 

「他にも民間人の護衛やらを引き受けてるもんだから、下手に抑え付けると

 こっちの補給まで巡り巡って滞りかねないって話さ。詳しい事は主計科の

 連中に訊けば分かると思うけど」

 横目でサーシャに視線を一瞬だけ向けるアウロラであった。

 

「今朝方荷物を持って来たのは、そいつらだったのか?」

 グラップルは少しだけ作業の手を止めて思案した。正式に名乗ってはいなかったが

 軍にしては妙に素早く物資を調達して来た上、デビーの紹介で来たと言っていた。

 もしかしたら、紹介予定だった裏社会の組織とは太陽の住人の事かもしれない。

 

「ん? これだけ轍が違う・・・って事は、これの後を追って行けば

 まだ間に合うんじゃない? 痕跡からして左程時間が経ってないわ」

 パルスは仲間へとシグナルを送った。

 

 タイヤにしては細い線が二筋。踏み潰されたであろう小枝の表面は

 まだ凍り付いていない。直近の時間に誰かが通り過ぎて行ったのだろう。

 何より、蹄の跡が残っている。軍は輸送に動物を用いていないのだから。

 

「態々追わなくても物資が残ってるしな・・・今から追う必要は無いだろう」

 轍の跡が残る方向へ視線を移し、見上げるホロ。その先には頂きに雪を残す

 山脈が並び立つ。行き先がどこかは不明だが、轍の後からして運べる量は

 そう多くは無いだろう。下手に追えば燃料代で足が出かねない。

 

「そりゃそうなんだろうけど――」

 同じく山脈を眺めたクロークの言葉が途切れた。空に赤い光が昇っている。

 

「グラップル!」

「分かってらぁ!」

 声を掛けられるのと殆ど同じくしてノーススターが宙に舞う。レールガンを

 構え、光の根元を注視。捉えた光景を仲間へと共有する。

 

「ネウロイ、一体。地上型! 航空魔女、一人。交戦中!」

「飛んでる? どこの基地だ!? 区域が間違ってるぞ」

 無線で噛み付く様に管野が吼える。基地毎に区切られた哨戒範囲が

 決まっている以上、こんな所で魔女が戦っているのは妙な話である。

 

「これより援護に向かいます。地上部隊は撤収開始!」

「「「「「「了解!」」」」」」」

 サーシャの号令の元、502部隊は飛行機雲を残して離れて行くのであった。

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