魔女達は鋼の巨人と共に抗う様です   作:voros

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第二話 証拠品

「やっと終わった・・・」

 温かく降り注ぐ日光を浴びつつ安堵の呟きを零すテッポであった。

 凍り付いていた湖面は粉々に砕け、撒き散らされた土で黒く染まっている。

 木々は焼け落ちるか薙ぎ払われ、見るも無残な姿だ。ネウロイの白く輝く残骸が

 雪の様に散っており、見渡す限り動く物は見えなかった。

 

「おーい、無事ですか~!?」

 湖面の向かい側も片付いたのだろう。航空ウィッチ達が向かって来ている。

「大丈夫です! ユニットは片方被弾してますが、怪我は有りません!」

 手を振りながら返事を返すと、無線越しに隊長の声が聞こえた。

 

「よーし、良くやった。さっさと帰って飯にするぞ」

 やっと基地に戻れる。そう思うと、急に胃がシクシクと痛み始めた。

「所属不明の部隊に告げます。状況把握の為、事情聴取への同行を願います」

 アウロラに代わり、エディータの声が聞こえてくる。

 

「了解。総員武装解除」

 ハロネンを対岸に連れて行った男の声が無線で響くと、巨人達は武器を降ろした。

 

「ついでに我々が乗っていた輸送機を運ばせて貰えないか。全部で四機有るんだが、

 敵に鹵獲される前に場所を移したい。それは可能か?」

「・・・・・・少々お待ちを」

 上層部にでも掛け合っているのだろう。しばらく時間が掛かりそうだ。

 

「お嬢ちゃんの援護には感謝する。おかげで大分楽をさせて貰った」

 一息ついていると、眼下の巨人が語り掛けてきた。

「こちらこそ、助けてくれて感謝してます」

「さて、今の内に訊いておきたいんだが・・・ここは何て言う国の、どの場所だ?」

 唐突に質問が投げかけられる。周りの巨人達からも視線を向けられている気がした。

 

「えっ? ええと、ここはオラーシャ帝国のペテルブルグですけど」

「聞いた事が無いな。誰か知ってるか?」

 周りの巨人達も顔の前で手を振った。

 

「ふむ、じゃあ年号と年月は?」

「西暦1945年の、2月ですけど」

「そうか。なら、ハモンドと言う企業を聞いた事は?」

「ありません」

「う~ん・・・なら、ウィッチと言うのは一体なんだ?」

 

 次々と色々な事を訊ねる巨人達。どれもこれもが当たり障りの無い

 常識に関する事ばかりであり、どこか浮世離れした印象を感じさせていた。

 そうこうしている内にエディータから再度通信が来た。

 

「本部より許可が下りました。護衛として我々が同伴致します」

「どうも。んじゃ、御嬢ちゃんは降りて貰おうか」

 対岸からストライカーユニット回収中隊の面々が駆け寄って来ていた。

 それを見て跪く様に巨人が屈み、手を地面に着けた。腕を滑り降りる様にして着地。

 立ち上がろうとすると、体が揺れているような感覚がして真っ直ぐに立てなかった。

 

「これで全員集合だな。応急処置が終わり次第移動とする」

「「「「「はい!」」」」」

 アウロラの指示にウィッチ達が同時に応えた。

 

「では、達者でな」

 七人の巨人は、地面に足跡を残しながら去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく到着したみたいね」

 移動を続けて十数分。雪で簡易的な隠蔽がされた輸送機へ到着した一行であった。

「おいおい、こんな滑走路も開けた場所も無い所で飛べんのかよ?」

 管野は周囲を見渡して呟いた。周囲は生い茂る針葉樹で一杯だ。

 

「そもそも、あの輸送機プロペラが無いよね?」

 ニパが並んでいる輸送機を眺めて言った。巨人達が乗り込んでいる

 直方体の様な形をした輸送機も、機銃等が備え付けられている方も

 プロペラが見当たらないのだ。

 

「これから離陸する。ぶつからないように距離を取ってくれ」

 無線から指示が伝わって来た。取り巻く様に待機していたウィッチ達が

 十分に下がると、四機の輸送機は真っ直ぐ上に浮かび始めた。

 ストライカーユニットのように、呪符を浮かべる素振りも無くだ。

 

「えっ、垂直に飛べるの!?」

「おい、あっちは操縦席に誰も乗ってないぞ!」

 驚きを口にする面々。そんな彼女達の前へ輸送機が並んだ。

 

「準備完了だ。で、どっちに行けば良い?」

 思わぬ挙動に面食らうウィッチ達だが、すぐに気を取り直して隊列を組んだ。

 

「ここからは私達が先導します。どうぞこちらへ」

 楔形に並び直し、基地へと向かう502メンバー。その後ろをピッタリ追従する

 輸送機が飛行機雲を作りつつ空を駆け抜けて行った。

 

「ますます怪しいですね。一体どこから来たんでしょうか?」

 時折振り返りながら、エディータは輸送機をつぶさに観察していた。

「誰も人が乗ってなくても飛べる上に、発着に場所を選ばない

 飛行機・・・確かに、こんな物が一体どこで作られたんだろうね」

 ヴァルトルートも油断無く身構えつつ視線を向けていた。

 

「まさかとは思うけど、ウォーロックの技術が使われてるんじゃないだろうな?」

「有りえ・・・無いとは言い切れないわね」

 サーシャは渋い表情を浮かべた。

 

 赤いビームを放つ等の疑わしい点はある。されど、基地の近くで騒ぎを起こす

 理由は無いだろうし、何よりこうも簡単に基地まで付いてくる理由が無い。

 これがウィッチ不要論を掲げていた軍部による行動なら、あまりにも動きが

 お粗末なのだ。

 

「さて、到着だな」

 滑走路には整備兵達が準備を整えて待っていた。先んじて帰還していた

 ストライカーユニット回収班の面々も修理の為に集まっている。

 

「お疲れ様です。ご飯の支度は出来ていますよ!」

 航空ウィッチでの第一発見者として、先んじて帰還していた下原が真っ先に出迎えた。

「よかったぁ~・・・もうペコペコですよ~」

 げっそりとした様子でジョゼが嬉しそうに笑顔を見せた。

 

「飯ねぇ・・・こっちもマトモな飯に有り付きたいもんだ」

 続けて着陸した輸送機から兵士らしき人物が下りて来た。

 全員が顔全体を覆うヘルメットをしている為、素顔は見えなかった。

 

「うう・・・寒いわね。早く建物まで入りたいわ」

「生身は辛いな。シミュクラムが羨ましいぞ」

 続いて降りてくる装備も体格もバラバラな兵士達。警戒しながら見守る

 ウィッチ達であったが、最後の二人が姿を見せた時は驚きで思わず仰け反った。

 

「に、人間じゃない!?」

 最後に降りた二人は、生身の部分が一か所も無かった。手足だけなら義手や

 義足で説明が付く。だが、胴体や頭の部分まで作り物で出来ているとは

 予想外だった。

 

「で、誰が責任者ですかね?」

 頭の代わりに金属製のカメラを載せたような見た目の兵士が話しかけた。

「ああ・・私だ」

 多少面食らった様子ではあるが、ラルは兵士達の前へ進み出た。

 

「先程は援護をどうも。我々は、貴女方よりも遥か未来の時間にて

 傭兵組織エイペックスプレデターズに所属している者です」

 低い男の声。無線でローニンと名乗った巨人と同じだった。

 

「未来だと? ふざけているのか?」

「そう思うのも無理は無いでしょうが、これに関しては証拠が有ります。

 後で見せても構いませんが、まずは自己紹介を済ませても宜しいでしょうか」

 顔が無いので表情を図りかねるが、至って真面目な口調で話すカメラ頭。

 

「ならば後で見せて貰おう」

 ラルは話を進めると決めたらしい。それを見てカメラ頭が続ける。

「さて、まずは名前からと行きたいのですが、現在は契約中に基づく任務中で

 本名を名乗る事は出来ません。代わりにTACネームにて自己紹介をさせて頂きます」

 カメラ頭は軽く頭を下げた。

 

「私はフェーズ。端から順番にパルス──」

 体の至る所にナイフケースを括り付けた兵士が頷いた。

「スティム──」

 もう一人の全身義肢の兵士が進み出た。

「クローク──」

 首に毛皮を巻いた大柄な兵士が胸に手を当てた。

 

「グラップル──」

 最も軽装の兵士が軽く手を挙げた。

「ホロ──」

 ヘルメットの覗き口がT字になっている兵士が指差された。

「そしてアンプ」

 最後に左肩からクレーンの様に突き出た機械の腕が印象的な兵士が紹介され、

 フェーズはラルへと向き直った。

 

「して、我々の処遇はどのような物になるので?」

「流石に立ち話をする訳には行かないのでな。まずは事情聴取を行う。

 そちらに負傷者が居るなら治療を施すが・・・」

「いえ、問題ありません」

 泥や煤が付着しているが、兵士達の外見には血痕等は見られなかった。

 

「それでは付いて来て貰おう」

 踵を返して基地へと向かうラル。背後には周りから浮いた武装の

 兵士達が続くのであった。

 

「・・・・・・まさか人間ですらないとは思わなかったなぁ」

 ハトが豆鉄砲を喰らったかような表情で見送るヴァルトルート。

 周りの反応も似たり寄ったりだった。

 

「なんにせよ、まずは食事ですね」

 朝方から叩き起こされたので、朝食を摂れていないウィッチもいる。

 人によっては腹の虫が鳴る程まで空腹で胃が鈍く痛んでいた。

 整備員にユニットの整備を頼み、食堂へ向かう一行であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程、確かに巨人としか言いようが無いですね」

 食事を終え、502メンバーは武器の整備の為に格納庫へ集まっていた。

「それで、ネウロイは彼らから逃げていたって事?」

 ジョゼは下原に訊ねた。

 

「うん。私達が到着してからも空からは攻撃が飛んでこなかったし、

 恐らく、私達よりも巨人の方が脅威だと判断してたんじゃないかな」

 下原は巨人にペイントされた絵柄を見ながら返事をした。

 

 部隊証なのだろう。悪魔の頭を模した骨の様な絵に『APEX』と文字が描かれた

 イラストが見えた。あのようなデザインを採用している組織に覚えは無い。

 

「魔法を使わずに夜間戦闘をして、ネウロイに接近戦を挑み、

 コアを破壊出来ている? どう考えても普通じゃないね」

 瘴気を放つネウロイは、魔法力無しに近づけば命を落とす。そして、ダメージを

 与える事も難しい。戦車や艦砲などの大口径武器なら有効打にはなるが・・・。

 

「ウィッチの様にシールドを張り、ネウロイの様に赤いビームを使える。

 でも、ウィッチやネウロイの存在を知らない。うーん・・・」

 この世界でネウロイの存在を知らない人間はいない。それにも拘らず

 ネウロイが逃げていたと言う事は、コアを破壊していたのだろう。

 

「そしてロケット弾の全弾命中。射撃能力は相当な腕前と・・・」

 見た所では巨人達の武装は最小でも20mmは有った。ウィッチの武器用で使う単位の

 Magic Mass(魔法質量)の意味ではなく、純粋な大きさとしての方の単位換算でだ。

 他も40mm級の大砲や、自分の上半身と同じぐらいの弾が撃てる擲弾発射機まで有る。

 それを動いている空中の敵に当てるとは、並大抵の腕ではない。

 

「一体どこから来たんでしょうね?」

「少なくとも読める字が有るんだから、そこから出身を探せるんじゃない?」

 ヴァルトルートは格納庫の隅に纏めて置かれた傭兵達の武器に目を向けていた。

 企業のロゴマークや刻印が有る。ブリタニア語で読める辺り、

 欧州の製品なのかもしれない。

 

「・・・ん? これは手裏剣に苦無? 何でこんな物が」

「こっちはL.ARMORY、これはBrockhaurd Manufacturingで、あれは

 Burrell Defense・・・どれもこれも聞いた事がないですけど、

 皆さんは知ってますか?」

「いや、全然」

 誰もが首を横に振った。

 

「おおっと、あんまり触らない方が良いぞ。物によっちゃ

 死体も残らず吹き飛ぶ威力の物だってあるんだ」

 背後から砕けた口調で話しかけられた。振り返るとラル達とフェーズが来ていた。

 

「あれ、何で此処に?」

「一時的に協力体制を築くのでな。撃墜記録を始めとした証拠の

 確認をしに来た。では、そちらの事情を説明して貰おう」

 ラルを尻目にフェーズが剣を持った巨人の前に立つと、巨人の目が輝き始める。

 

「これから我々がこっちに来るまでの記録を見せる。機密情報に

 関する部分は省かせて貰うが、そこは理解して欲しい」

 フェーズは装備の山の中から薄い板のような物を取り出した。

「よし、PDAもタイタンのバッテリーも充分と」

 彼がPDAを指で弄ると、空中にどこかの映像が映し出された。

 

「さて、まずは認識の齟齬から埋めさせて貰おう。我々が居た世界には

 魔法力なんて物は無い。代わりに科学が発達し、ある程度は時空間も

 制御出来る程だ。具体的には、こんな風に──」

 フェーズがラルに向き直ると、バチッと弾ける様な音がして彼の姿が消えた。

 

「──別の時間軸を通って、別の場所に移動したりとかも出来る。

 詳しい話をすると長くなるんで、今は省くぞ」

 いつの間にやら、格納庫の入り口までフェーズが移動していた。

 

「今、あの人がどうやって動いたのか分かった?」

「い、いえ、全然分かりませんでした」

 航空ウィッチとして視力の良さは優秀なのは当然だが、

 彼女らの目を持ってしても移動経路が全く分からなかったのだ。

 

「擬態していたネウロイも居たくらいだし、やっぱりネウロイの技術なんじゃ・・・」

 ニパは物に擬態したり、体の上半分だけ空の景色に溶け込んでいた

 ネウロイと交戦した経験を思い出していた。

 

「こうした技術の発展で地球以外の星を開拓し、そこに人が暮らせるようになった。

 だが、違う星の原生生物達は決して人間に友好的では無かった」

 彼女らの呟きを気にせずフェーズは続ける。

 

 映し出された光景は、明らかに地球の物では無かった。異形の動物達・・・

 中には100メートルを超すような巨大な生物が映っている。近くの人間や

 乗り物も一緒に映っている為、その異常な大きさが際立っている。

 

「星の開拓を進めるには、この原生生物をどうにかしなければならなかった。

 様々な兵器、道具が開発された。その一つがタイタン。目の前に並んでいる

 コレだ。こいつは戦闘用だが、本来は資材運搬とかの作業用に作られた物だ」

 フェーズはタイタンの腕に自らの手を置いた。

 

「そして開拓が進んだのは良いが、ここで地球と開拓先の間で衝突が有った。

 地球としては資源が欲しい。だが、開拓地としては資源を取られると困る。

 そこから武力衝突が起こり、やがて開拓地側はミリシアと呼ばれる組織を

 作り、地球側と戦争を起こすまでになった」

 

 映像が切り替わり、荒廃した街並みが映し出された。焼け落ちた建物。

 飛び交う戦闘機。地面には幾多の死体と凄惨な光景が広がっている。

 

「業を煮やした地球側は、ミリシア殲滅の為にフォールド・ウェポンと言う兵器

 開発が進められていた。さっくり言えば、重力波を撃ち込んで空間諸共相手を

 引き裂く兵器だ。その威力は、惑星を丸ごと吹き飛ばせる」

 

 また映像が切り替わる。今度は上空から地表を見下ろしている視点だ。

 皹割れた地表が強烈な閃光に包まれると、凄まじい爆発と共に吹き飛んだ。

 地中奥深くのマグマが剥き出しになって宙を飛んでいる。

 

「あれ、きっと作り物・・・ですよね?」

 余りにも現実離れした光景。この世界でこんな事が実際に

 起きていたなら、ネウロイどころじゃなくなっている。

「でも、とてもそうは思えないですよね」

 ひかりもジョゼも、半信半疑と言った様子で映像を見ていた。

 

「ここからが本題だが、このフォールド・ウェポンは膨大な威力故に時空間にすら

 影響を齎す。具体的には時間に裂け目が出来て、それに巻き込まれると過去に

 飛ばされる。我々が此処に来たのも、その裂け目に入ったからだ」

 

 今度は凄まじい数のタイタンが迫り来る様子が映った。人間の兵士は勿論、

 フェーズと良く似た見た目の兵や、地上型のネウロイに良く似た赤い機械が

 押し寄せている。

 

「此処に来る直前、大規模な襲撃を防ぐ様に依頼主から雇われていてね。

 こいつらを片付けて帰る途中にミリシアから襲撃を受けた。数は不利、

 更に戦闘後で消耗して居る時だったんでな。まともにやり合えば死ぬ。

 生き残るには博打に出るしかなかった」

 フェーズはラルへと向き直った。

 

「フォールド・ウェポンの実験跡地には、今も時間の裂け目が残されている。

 そこに飛び込んで奴らを振り切ったんだ。追跡を撒いたら、元の時間に戻る

 つもりで居たんだが・・・どういう訳か戻れなくなっちまった。そこからは

 そっちも知ってる通り、あの黒い連中とのドンパチだ」

 

 映像が途切れ、格納庫の中が少し暗くなった。

 

「戻れなくなった理由は幾つか考えられる。その前に一つ訊きたいんだが、

 こっちで膨大なエネルギーを使う事は無かったか? 大爆発か何か・・・」

「・・・まさか、グレゴーリが?」

 星一つとはいかないが、少なからず心当たりが有った。ネウロイのコア崩壊だ。

 扶桑海事変ではコアの崩壊で台風が消滅する程の爆発が生じたと聞いている。

 

「心当たりは有ると。此処からは推測交じりになるが、この世界でも

 膨大なエネルギーを使う何かが原因で空間に異常が発生したんだろう」

 フェーズは彼女の呟きに応じた。

 

「少なくとも過去に戻っただけならどうにかする方法は有った。

 救援要請をするなりすれば良いからな。だが連絡は取れず、

 元の世界に戻れなくなっていた。となると、帰還を妨害する

 原因が何かしらある筈だ」

 フェーズは新たに映像を流し始めた。

 

「それをどうにかしたいのが一点。元より時間の裂け目は一か所だけじゃない。

 他にも此の世界へ通じる穴が有れば、そこから我々の世界側の追手が来るかも

 しれん。そうなると拙い事になる。こっちは金属製の兵器ばかりで、魔法力は

 無いからな。下手すると兵器が乗っ取られるかもしれん。それを阻止したい」

 

 今度は暗闇の中、激しい戦闘を行っている様子が映された。

 目の前に置いてある物と同じ武装をしたタイタンが、ネウロイ相手に

 している。その背中には陸戦ウィッチがしがみついていた。

 あの時の戦闘だ。

 

「我々の故郷にネウロイが来ても困るんでね。奴らに対する対抗手段は学びたい。

 そちらにしても、万が一タイタンを始めとした我々の兵器がネウロイに

 変化した時の対処法は学んでおきたいだろう?」

 

 映像が途切れ、また格納庫の中が暗くなる。誰もが口を閉ざしていた。

 時間を超えて未来から過去へ。まるで御伽噺の様な話を真面目に話され、

 それが事実であると言われたのだ。反応に困るのも無理は無かった。

 

「さて、長々と話したが・・・何か質問は有るか?」

 しばし沈黙が続き、ラルが口を開いた。

 

「とりあえず、お前達が使い物になるか見極めたい。丁度ネウロイの襲撃で

 周辺の偵察を予定していた所だ。隊員と同行して実力を測らせて貰い、

 その結果で契約内容を詰めさせてもらう」

 続いてロスマンが置かれた装備の山から弾倉を掴んだ。

 

「弾薬はおそらく規格が合わないでしょうから、色々と調査させて欲しいわ。

 出来れば銃器類も見本として幾つか貸して貰っても?」

「構わないが、それなら弾薬とか武器はそっちで使ってる物の予備で良いんで

 多少は融通してくれると助かるんだがね」

 

 フェーズは置かれた武器の中から二丁の銃を引っ張り出した。商品名だろうか、

 一つはCharge Rifle、もう一つはL-STARと刻印がされている。

 

「出来ないとなると安心して使えるのは弾切れを起こさないコレだけだ。

 タイタンだったらイオン・・・レーザーをぶっ放してた奴だけだ。」

 その言葉に、整備をしていた全員の手が止まった。 

 

「二つだけは厳しいですね・・・とりあえず、

 一通りの武器で試射して貰っても良いでしょうか?」

「構わんが、一部の武器は特性上、高熱が出るからなぁ・・・下手すると火事になるぞ」

「消火器も用意した方が良さそうですね」

 武器を抱えながら、ラル達はフェーズを案内して行った。

 

「今の聞いた?」

「はい。弾切れが無いって」

 ひかりへ囁くように確認するニパ。

 

「あれが本当なら、是非とも欲しいよね。補給の為に帰還する手間も省けるし」

 手元のMG42のサドルマガジンに弾薬を込めつつ、ヴァルトルートは呟く。

「話が本当なら弾薬代が浮かせられるし、他に回せるかも」

 ひかりの呟きに下原が反応する。

 

「食事が豪華に・・・」

「・・・ジュルリ」

 以前備蓄庫が吹き飛ばされた時、味気ない食事が続いて辛酸を嘗める破目に

 陥ったのだ。料理好きな下原は勿論、食い気の多いジョゼも想像に胸を

 膨らませていた。

 

「よし、さっさと終わらせて見に行こう。万が一こっちでも

 使える日が来たら面白い事になりそうだ」

 各々考える事は異なるが、好奇心で作業の手が進むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぞ」

 執務室の扉が開けられ、アウロラが入ってきた。

 書類からペンを離し、サーシャは顔を上げた。

 

「ユニットの方は無事?」

「外装が多少凹んだものの、他は無事だ。それで、取り調べは済んだのか」

 サーシャは報告書を指で示した。

 

「生身じゃない二人は済んでいるわ。残りは回復を待ってから行う予定。

 詳細については纏めて有るから、読みたければ参考までにどうぞ」

「・・・小型撃墜211、中型5、それにブラウシュテルマー破壊?

 たった七人で? 戦果を盛っているとしか思えないな」

 アウロラは報告書に目を通しながら感想を述べた。

 

「私もそう思うけど、これだけの情報を渡されるたら真実なのかもしれないわ」

 別の報告書を差し出すサーシャ。アウロラは受け取って中身を見ると、

 ネウロイの形状やコアに関する解説図が連なっていた。手書きなので図が

 粗いが、挿絵として見るなら情報価値は充分だ。

 

「それ程の戦果を挙げられた理由は、彼らがコアの位置を特定する武装を

 持っているからだそうよ。勿論、それを破壊するだけの火力もあるけれど」

「やはりか。魔眼に近い何かが有るとは踏んでいたが・・・

 本当にあるとはな。一体どんな代物なんだ」

 ソファーに腰を下ろしてアウロラは報告書をめくった。

 

「レントゲンの原理を応用した物らしいわ。これでコアの位置を特定して集中砲火を

 浴びせられたそうよ。夜間でも戦えたのも、煙幕を透過して狙える照準器の御蔭。

 装備の質が段違いに優れているの」

 サーシャはリボルバー式の拳銃を差し出した。

 

「この拳銃にしたってそう。ダットサイトって名前の照準らしいけど、

 狙い易さは段違いよ。試しに覗いてみて」

 受け取ったアウロラは弾が抜かれているかを確認してから真っ直ぐに構えた。

 

 抜き打ちで引っ掛からないようにする為なのか、照星が削られている。

 だが照門の部分を覗き込むとレティクルの様に光の点が浮かぶので、

 狙いを定める分には問題は無さそうだ。むしろ、視界が広く取れる分

 扱い易そうである。

 

「武装の質もそうだけど、何より年期が違い過ぎるわ。ウィッチは十年もすれば

 上がりを迎える。でも、向こうは医療が進んでいて数十年は現役。彼らも全員

 現役で、私達の倍以上は戦争に参加しているそうよ」

「とすると、全身が生身で無くても戦っているのか?」

 

 全身が機械だった二人の傭兵。あそこまで人である事を捨てられる世界とは

 一体どのような物なのか? 想像もつかないが、薄気味悪さを感じる二人であった。

 

「さて・・・大分脱線したけど、そろそろ聞かせて貰おうかしら」

「ああ。昨晩は新品のユニットや部品が届いたんで、慣らしを兼ねて

 夜間行軍の訓練を行っていた。そしたら爆音が響いたんで、湖を

 越えて偵察に向かったんだが──」

 アウロラは夜中に起きた出来事を話し始めるのであった。

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