魔女達は鋼の巨人と共に抗う様です   作:voros

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内容が少なくても投稿ペースを速めるのと、間隔がゆっくりでも内容を多く書いて
投稿するのではどっちが良いんでしょうかね? では、第四話です。


第四話 誘い水

「全く・・・焚き付け代わりに使いたい位だ」

 デスクに山積みとなった書類を前に嘆くラル。書いても押し付けても

 一向に減らない事務作業。書類を主敵とし、余力を以ってネウロイを

 片付けるとは、まさにこの事であろう。

 

「とりあえず、調書は最優先で確認を」

 サーシャは情け容赦無く抱えた紙束をデスクの上に追加した。

「これではカップを置く所も無いな」

 正直、ネウロイ相手に銃撃をしていた方が精神的には楽である。

 とりあえず撃てば片付くし、胃を擦り減らす折衝作業も無い。

 

「で、あの連中は使えそうか?」

「少なくとも通信関連では有用でしょう。彼らが来てから

 通信妨害が改善されているようでしたし、こちらの周波数を

 短時間で割り出して介入した点からも保証できます」

 報告書の一部を抜き出すラルに、サーシャは答えた。

 

「そう言えば円滑に連絡が行き渡っていたな」

「向こうの方で中継を担っていた様です。問題は

 こちらの通信も筒抜けにされた点ですが・・・」

 ラルは渋い表情を見せた。

 

 会話に割り込んでいた以上、こちらの無線を傍受していた可能性は拭えない。

 民間用ならいざ知らず、軍用無線の暗号を半日も経たず解析して介入なぞ

 簡単にはできない。傭兵達の潜在的な危険性は飛躍的に高まった。当然だが

 来るかもしれない追手に対しても。

 

「念の為周波数は変更だ。暗号の件も伝えて防諜に注力するように」

「わかりました。それと、スティムさんがこれを渡すようにと」

 サーシャは折り畳まれた紙を渡した。

 

「これは・・・広告か」

 渡された紙はエイペックスプレデターズのパンフレットであった。

 開いてみると、業務内容や契約規定等々が綴られている。

 随分と用意が良いものだ。

 

「護衛、輸送、雑事代行、建造物補修・・・随分と手広くやっているな」

 元々は作業用外骨格の延長として作られたのがタイタンである。

 そのスペックを生かせるから戦闘用が作られたのであり、本来の

 用途はこちらが主流だ。尤も、彼女達には知る由も無い事だが。

 

「他にも遊撃戦術指南等も請け負っているそうです。上がりを迎えた時や

 ユニットの破損時に備えて指導を依頼しても良いかもしれませんね」

「何か見所が?」

 パンフレットを読む手を止めて視線を上げると、サーシャが続けた。

 

「ええ。陸戦ウィッチ主体のオラーシャなら、彼らの戦術は有用でしょう。特に

 都市部での戦闘となれば、下手な陸戦ウィッチより彼らの方が上かもしれません」

 サーシャは一枚の写真を差し出した。劫火に照らし出された林の中で、

 傾いた幹の側面を人間が走る一場面が写されていた。

 

「以前ロスマン曹長が雁淵さんへ指導していた際に壁を登らせていましたが、

 アレと似たような事を体系的な訓練内容として確立しているそうです。専用の

 道具の代わりに魔法力を使えるウィッチならば、同じ事が出来るでしょう」

 写真に写る人間の腰へ指を差しながら、彼女は話を続けた。

 

「これは噂に聞くジェットストライカーみたいな物か?」

 背中側に取り付けた装置からロケットの様に火が噴き出ている。

 これが姿勢の制御と落下阻止の働きをしているようだ。

 噴煙の軌跡から木を駆け昇っている事が窺える。

 

「陸戦ウィッチよりも機動力に秀でているようですし、追手を

 仮想敵として考えるなら模擬戦の一つは済ませておきたい所です」

 ラルは厄介事の種が増えた事に頭を痛めつつ書類を片隅に追いやった。

 

「それに加えて向こうからの申し出なのですが、

 正規雇用の際には武器の設計情報の提供も考慮すると」

「こっちは分かりやすいな。とは言え、対人用が主流ではな・・・」

 表情を曇らせて思案するラルであった。

 

 向こうの狙いとしては補充部品の確保や換装を可能とする事で

 販路を広げたいのだろう。実際に試射で使い勝手は確認している。

 素材や工作制度の問題は有るだろうが、逆行解析で得られる技術は

 こちらにとって利益になる。そして向こうは信用を得られると言った所か。

 

「それなんですが、一部の武器で設計が殆ど同じ物が混ざっているんです。

 名前まで一致しているので、もしかしたら此方でも近い内に生産されるかも

 知れないとの事です」

 サーシャは手書きの図が描かれた紙を見せた。

 

「これは・・・SKSじゃないか。一体どうやって知ったんだ」

 先日の大規模作戦の際に砲兵へ支給された、今年になって生産された最新式の

 自動小銃が描かれていた。御丁寧にも分解図まで添えられている。

 だが今朝の戦闘では砲兵が不在であり、この基地は航空戦力が主体なので

 そもそも武器自体が無い。故に傭兵達が詳細を知る事は出来ない筈だが・・・。

 

「陸戦ウィッチから此方の世界の年月を知って用意したそうです。

 ユーティライネン大尉からの借りは返すとの事で、こちらは無償で

 提供すると。この世界でも二年後には生産されるかもしれないとも言っていました」

 続けて別の設計図が出された。これも銃器の設計図のようだ。

 

「雇用については即断出来ないが、考慮しておこう。他に特記事項は?」

「今の所は有りません」

「分かった。では、引き続き警戒態勢を維持しておくように」

 ラルは図面の端に書かれた、Ak47の文字を睨むように見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「これも異国情緒って奴か」

 穀物粥に、酸味が利いた黒いパン。そして温かいスープとミルク。

 メニュー自体は質素だが、温かい食事が食べられるだけでも

 冷えた体には有り難い物である。

 

「御馳走さん。ところで、御代わりはあるかい?」

「いえ、これで終わりです」

「そいつは残念。ま、タダで食う飯は後が怖いしな。この辺にしておこう」

 のんびりとした様子で食事を済ませる傭兵とは対照的に、監視をしている

 一般兵達は緊張した面持ちだ。

 

「じゃ、部屋に戻らせて貰おうか」

 武装した兵士に囲まれているにも関わらず、余裕たっぷりに話しかける

 肝の太さ。それが強者が持つ自信の表れとして周囲には映っていた。

 

「・・・ん? ドアが開いてるな」

 兵士に連れられて宛がわれた部屋に戻ると、既に先客が居た。

 三角巾で髪を束ね、この寒い気候の中で平然と太ももを晒す服装をした女性。

 こちらに気付いた様子も無く、雑巾を手に窓を丹念に磨いている。

 

「誰かと思えば、さっき飛んでた嬢ちゃんか」

 アンプに話しかけられて漸く気が付いて振り返ると、女性はペコリと頭を下げた。

「あっ、先程はどうも。ジョーゼット・ルマールです」

「アンプだ。若いのに偉いねぇ。こんなきっちり掃除も出来るなんて」

 

 元々使われていなかった事に加え、老朽化が目に見えて分かる部屋だった。

 それが今やピッカピカである。漆喰が剥がれ落ちた部分から煉瓦が剥き出しに

 なっているが、そこに文句を言うのは贅沢だろう。

 

「すみません、まだ掃除中なので暫く掛かるかと」

「そのようだな」

 モップ掛けでもしたのだろう。床は水気を含んで

 明かりを反射しており、空中には埃が舞っている。

 

「しょうがない、時間を潰すか・・・そうだ。今の内に機体の整備を

 しておきたいんだが、誰に許可を取れば良いか知ってるかい?

 格納庫に出入りするにも許可が居るそうなんで困っているんだが」

 思い出したかのようにアンプは頼み込んだ。 

 

「えっ? そう、ですね・・・」

 作業を止めて考え込むジョゼ。隊長格は全員事後処理の最中で動けそうにない。

 自身も掃除の最中で離れる訳には・・・

 

「大丈夫。許可は取って来たわ」

 金属質の足音を響かせながら全身機械の兵士が歩み寄ってきた。スティムだ。

「他の連中も食事を終えたようだし、声を掛けとくわ」

「おうよ。そんじゃ、掃除は宜しく!」

 ヒラヒラと手を振りながらアンプは格納庫へと向かうのであった。

 

「しっかし、時代が時代とはいえ、こんなのが動いてるなんてね」

 元の時代・・・この世界から見れば、遥か未来に於いては見かけなくなった

 プロペラ式の輸送機を見てアンプは呟いた。滑走路では、積み下ろし作業で

 多くの人員が動員されている。

 

「あれは流石に操縦できないな・・・お?」

 冷え込む通路を歩いていると、パンツ丸出しの子供が歩いている。

「よう、嬢ちゃん。さっきは助かった。怪我が無さそうでなによりだ」

「へっ?」

 視線を向ければ見覚えの無い男性。一瞬思考が止まるテッポであった。

 

「素顔だと顔を合わせるのは初めてだな。アンプだよ。ほら、アンタを

 肩に乗っけて戦ってたろ? 色々と質問もしたし」

「あ・・・ああ! あの時の」

 鷹揚に語り掛ける黒人男性の正体に合点がいったテッポであった。

 

「また近々組む事になりそうだからな。その時に一緒になったら宜しく」

 通る声を残して離れて行くアンプ。止めておいた輸送機に乗り込み、

 整備用具を引っ張り出した。

 

 相次いだ連戦で塗装が剥げ落ち、至る所に返り血や機械油が付いていた。

 放置すれば更に酷い事になるだろう。アンプは自分のPDAを探して弄った。

 輸送機の片隅に仕舞われていたロボットの目に光が宿る。

 

「マーヴィン、機体の掃除をしておけ!」

「──!」

 黄色の塗装が施されたロボットが返事の代わりに効果音を出した。

 メンテナンス用に手を換装し、圧縮空気が吹き付ける甲高い音と共に

 付着した汚れを落とし始める。

 

「さて、こっちもやらんとな」

 予備の弾薬を引っ張り出し、空になった弾倉へと再装填。

 分解してガンオイルを塗り直し、付着した火薬の残り滓を

 圧縮空気で吹き飛ばす。この後は電気系統のチェックも──

 

「良いなぁ~、便利そうで」

「こういうのが有ったら掃除も楽だろうな」

 何やら外が騒がしい。窓から外を覗き見ると、物珍しそうにマーヴィンへ

 群がる人々が見えた。中には生足を晒した寒そうな格好の女性も居る。

 

「──・・・」

「あっ、喜んでる!」

 胸元のディスプレイでスマイルマークを表示させつつ敬礼をするマーヴィン。

 ウィッチ達は、それを面白がってキャピキャピ笑いあっていた。

 

「おい、何か用か?」

「あ、どうも。今度の出撃に備えて合同訓練をしておこうかと思いまして、

 体調がよろしければ一緒にどうかと誘いに来ました」

 顔を出して声を掛けると、年長らしきウィッチが振り向いて話した。

 

「成程・・・俺は構わないが、他の連中にも声を掛けておいた方が良いか?」

「忙しいなら結構ですけど、可能なら御願いしたいなぁ・・・と」

「分かった。伝えておこう。で、いつからやるんだ?」

「13時からです」

 ちらりと視線を壁に掛けられた時計へと向けるアンプ。まだ開始時間は先だ。

 

「分かった。仲間には伝えておこう」

 輸送機の無線を動かし、メッセージを送信するアンプ。これで連絡は済んだ。

 次の出撃に備えるなら、今の内に準備しておかねばなるまい。

 

「はてさて、魔女の戦い方ってのはどんなものなのやら」

 厳つい義足の様なユニットを尻目に、アンプは整備を続けるのであった。

 

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