Titanfallも三作目が作成確定との事ですし、楽しみです。
ウィッチ募集は続いていますので気が向いたら気軽にどうぞ。
「便利だね~、こんな事も出来るなんて」
カメラの代わりに使っているマーヴィンが薄暗い作戦室の
ボードに映し出す映像を見てヴァルトルートが呟く。
高解像度のカラー画像は、音声付きでブレも無い。動画として撮影されているので
一連の動きが把握しやすい。交戦記録としては実に有益な代物である。
タイタン側で共同撃墜の記録まで計算しているため、戦果の確認も楽に取れる。
「惜しむらくは、フィルム代が掛かる事ですね」
壁に映し出された映像をカメラで写し取る度にフラッシュが焚かれる。
電子機器同士での情報共有が出来ないので止むを得ない事では有るが、
情報量が多いだけにフィルム代は嵩む。
すれ違いざまにネウロイを殴り壊す管野。シールドで正面からの攻撃を守りつつ
逆側のネウロイを片手撃ちで墜とすニパ。密集地帯を突っ切り、同士討ちを誘う
ヴァルトルート。三者三様の動きが自由に見られるのは動画の利点である。
「う~ん・・・反省点も多々有りますね」
腕を組みつつエディータは顔を顰めた。なまじ画質が良い物だから、
弾道の逸れ方や各自の飛行軌跡、装備の破損原因すらも分かってしまうのだ。
「随分多く集まったもんだな。表沙汰にはしたくないだろうに」
見渡せば席の大半は埋まっている。人いきれで部屋が暖かくなっていた。
「巣の撮影どころか攻撃まで成功した例は希少なんですよ」
根元を砕かれ倒れこむブラウシュテルマー。その倒壊に巻き込まれて
吹っ飛ぶネウロイ。巣から湧き出す増援。撤退戦なので情報量は
乏しいが、一連の動きが誰でも分かるのは大きい。
「それはそれとして、恐ろしいものだ。力業だけで対抗できるとは・・・」
中型のネウロイが粉微塵に砕ける様子を逆再生しながら呟くラル。
死因・・・もとい、破壊原因は胴体を貫通する軌道で放たれた一撃だ。
後ろに控えていた小型諸共吹っ飛ばしている事からも威力は察せられる。
「ある程度予想はしていたけど、やっぱり違うものね」
「中国大陸壊滅・・・文化が流入してないのも納得だ」
一方、傭兵達も世界地図を前に腕を組んでいた。
「と言うか、まさか欠陥兵器が敵として存在するとはな」
ある意味で英国面の象徴たるパンジャンドラムが敵として襲ってきたとか、
ロシアの空挺戦車そっくりなネウロイが来た等々、突っ込みどころ満載の
戦闘記録が存在すると知れば頭が痛くなるのも当然だろう。
「こうも違うと仕込みも当てが外れたか? それなりに共通点も有る様だが・・・」
戦術装備の特性故に時間移動に関しては造詣が深いフェーズであったが、予想を
大きく外れた現状には頭を悩ませていた。アメリカ大陸が星形になっていたり、
エーテルとか言う未知の資源が存在するとは予想外にも程がある。
「何にせよ、危険地帯に踏み込む必要が有りそうだからな。協力体制は作っておかねば」
いくら高性能でも輸送機だけで対空砲火の嵐に突っ込む訳にはいかない。
露払いだけでも現地戦力に頼った方が生存の目は有る。弾丸も燃料も有限。
帰還直後に追手の襲撃が有り得る以上は尚更必要な事である。
「さて・・・そろそろ時間も残り半分だ。一旦情報交換は区切るとしよう」
その一言に周囲の注目が集まる。ボードの前へ立ったラルは、傭兵達を一瞥した。
「まずは状況を整理する。昨日未明、ネウロイの襲撃に巻き込まれた彼らだが・・・
暫定的に当基地の所属として扱う事にする。管轄はストライカーユニット回収班と
するが、今後変更の可能性は有る。各自留意するように」
「と、言う訳でよろしく」
パルスが軽く笑みを浮かべて手を振った。
「おいおい、いきなり組ませて大丈夫なのか?」
あからさまに猜疑の視線を向ける管野。碌に付き合いの無い相手を
戦力として組み込むのは色々と不安だ。
「無論、いきなり共同出撃をするつもりは無い。色々と調整が必要だからな」
一口に軍隊と言っても、国によって戦闘教本は異なる。例えば突撃の際に
踏み込む足は左右どちらが先か、戦闘機同士で交戦開始となれば立ち回りを
どうするか等々。その違いを擦りあわせなければ誤射等の危険性が生じる。
「それに、彼らが持ち込んだ情報は非常に有益であると言わざるを得ない。
この映像もそうだが・・・さっきの設計図を出してもらえないか?」
「おうよ」
ホロがタブレットを弄ると、艦船の設計図らしきものが映し出された。
「・・・・・・? これって、赤城の──」
「違う。加賀の方だ」
ひかりの呟きに即フェーズが訂正を入れる。そこに映っていたのは、
扶桑海軍の艦艇たる加賀だった。
「次も頼む」
再び映像が切り替わる。今度は戦艦の設計図の様だ。
「あっ! これ、リシュリューの!?」
ジョゼが驚きの声を上げる。かつてダカール港で護衛任務に就いた事も有るのだ。
リベリオンの援軍が来るまで単独戦闘を強いられた事は忘れられようも無い。
「まだまだ有るぞ。フォッケウルフ、マスダング、零式艦上戦闘機・・・
陸上兵器ならT-34とかな。流石にストライカーユニットの設計図は無いが、
それ以外は一通り持っているぞ」
次々と映し出される設計図や写真。多少なりとも差異は有れど、
現物に関わった事がある者ならば本物ではないかと思える物ばかりだ。
「何でこんな物を持ってるんですか!?」
こんな物を見せられれば流石に驚きを隠せない。どれもこれもが軍事機密であり、
そう簡単に入手できるような物ではない。どよめく声が作戦室に響く。
「かつて過去の失われた記録を現在へ持ち帰るプロジェクトに
関わっていた事があるからだ。フェーズ、この話は任せるぞ」
タブレットを叩く硬い音。地球ではない何処かの写真が投影される。
「我々の故郷フロンティアでは人間以外の何かが作り出した文明の遺跡が存在する。
その遺産を解析する為に編み出されたのが時間移動技術。こうして消える他にも、
条件を満たせば過去と未来を行き来する事も出来るそうだ」
フェーズシフトが起動する。弾ける様な独特な音と共に姿が一瞬消え去った。
「今となっては失われた技術を、過去に戻って調査する計画。それは地球で成功を
収めていた。その最たる例が軍艦製造の技術転用だ。我々の世界では戦艦と言う
種別の艦船は廃れて存在していないし、建造当時の資料も機密保持で失われた。
それを過去に戻って回収したから此処に設計図の情報が有ると言う訳だ」
軍事技術の民間転用例は多い。戦時下で大和型戦艦に測距儀を納入した日本光學
工業株式會社が、レンズ制作技術を守り続けた結果が現代日本における株式会社
ニコンのカメラ業界シェア一位である。もしも機密保持で全ての資料が捨てられ、
生かされなければ今の繁栄は無かったかもしれない。
「尤も、過去に戻った際に完璧な隠密は達成できなかったんでな。UFO騒ぎに
なったりと色々問題も有った。結果として地球での試験は打ち切り。だから
フロンティアへ拠点を移して実験する事になったらしいがな」
ドローンが存在していなかった時代である。撮影の為に姿を見せた際に
過去の人々がUFOと見間違えるのも無理は無かったに違いない。
「この技術を用いて遺跡の過去を調べ上げ、更なる発展を模索しているのがアレス師団。
先日見せたアホみたいな爆発を起こした兵器の実験もやってる危険な所だ。万一にも
この世界に目を付けようものなら、根こそぎ資源を分捕っていくのは目に見えている」
映像が切り替わり、動画が再生され始めた。
「もとより、IMCは民間人の虐殺を黙認している。新型兵器の実験をする為に
植民地の住人を問答無用でモルモットにしたからな。降伏もするだけ無駄だ。
敵対する事になれば、こういうのを相手取る必要が有るぞ」
魔女達の前に映し出されたのは空に浮かぶ船だった。戦闘機と思われる飛行機に
囲まれながらも対空砲火を浴びせ、船底から地上へと箱らしき物を落としていた。
その箱の着地点へ目掛けて一発の爆弾が戦闘機から落とされ、味方の戦闘機を
巻き添えにして白い閃光と共に紅蓮の火球が全てを呑みこんだ。
「燃料気化爆弾。三千度に達する爆炎と、酸素を失った爆風が半径数百メートルを
薙ぎ払う。仮に生き残っても範囲内は有毒ガスで呼吸すら出来なくなる。魔女は
何でも防ぐ盾を出せると言っても、息をせずには動けないだろ? 」
映像が進むにつれて土埃が薄れ、爆心地の状況が露わになった。
「うえぇ・・・っ!」
誰かが堪らず呻いた。映像から目を反らす者、顔色が目に見えて悪くなる者・・・
映し出された凄惨な死体の山は、歴戦の魔女達すら受け止めきれぬ地獄であった。
ネウロイの攻撃はビーム主体。故に死体は断面が焼き潰され、下手をすれば
肉片すら残らない。が、燃料気化爆弾は爆風による肺へのダメージや一酸化
炭素での呼吸困難、もしくは高熱で死ぬ。それだけに死体は原形を残すのだ。
生々しい苦痛の痕跡は、映像越しでも塗炭を舐めた事が想像が出来てしまう。
「空を飛べる奴なら範囲外に逃れるだろうが、火力が足りないからな。
燃料切れで飛べなくなるまで持久戦に持ち込まれたらチェックメイトだ」
喉を掻き毟りながら白目を剥いた死体。火膨れで変わり果てた死体・・・
そして墜落した戦闘機に潰されて原型を留めていない死体が映し出された。
「資源が存在する以上はIMCから見れば搾取対象になり得るし、ミリシアから
見ても真っ当に人が住める絶好の開拓地だ。どっちが来ても戦争の火種に
なりかねん。そして本当に戦争となれば、どちらの勢力にもついていない
我々も一纏めで攻撃対象となる」
争いと言う物は同じ実力同士の間でしか発生しない・・・等と言う様に、
力無くして対話はできない。傭兵達が今此処で魔女達と会話が出来るのは
ネウロイを倒せる実力を示し、魔女達が一機のタイタン相手に苦戦した事で
脅威と認識されたが故。実力に差が有れば対話の前に押し潰されるだけだ。
「そんな訳で、未来の技術や我々の戦力を提供する代わりに手を組もうって事に
なった。流石に出会って数日程度で信用しろってのは無理があるからな。当然
結果で示す。よろしく頼むぞ」
そう締めくくり、フェーズは身を引いた。
「クソッ、マジで頭が痛くなってきた・・・」
「だろうね。こっちも正直悩んでるし」
苦虫を噛み潰した表情を浮かべるグラップル。相槌を打ちつつクロークが答えた。
情報を整理すればするほど如何に自分達が拙い環境下に在るかが突きつけられる。
「周りは自然だらけで人が住める環境じゃない。
心置きなく化学兵器が使えるとなればキツイわ」
毒ガスを撒いたとしても機械兵士ならば一切影響は無い。
生身の仲間が多い傭兵達としても頭痛の種だった。
「とりあえず最優先で物資を確保しないとな。贅沢は言えないが、
グリスだけでも調達できると良いんだがな・・・後は代替武器もな」
幾ら極限環境に対応しているタイタンとて消耗品だ。油を差さねば
動きは鈍る。それは死に直結しかねない問題だ。先行きの暗さに
頭を抱えるのは、魔女達だけでは無かったのであった。