転生したら人類の敵側になってしまった 作:クォーツ
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ロシアが墜ちた。
カドックが負けたのだ。
その状況を私は
彼が『
彼の勇姿は私にはできそうもないかっこいいもので、『
だが、それは彼の戦いを汚すものだと、手を汚し切っている私でさえも理解していた。
本当を言うのならば、彼の戦いに介入してカドックに勝利を手にしてほしかった。
彼と皇女の
何が正しいのかさえもわからなくなってきたこの状況で、私はただただ茫然と彼がシャドウ・ボーダーに連れ去られていくことを見ることしかできなかった。
なぜ、私が現地に赴いていないにもかかわらず彼らの戦いを鑑賞できたのかは、私以外に優秀な術士がいたからに他ならない。
私の血液という魔術的には十分な媒介を用いて、『九尾の狐』印の魔術は現地に忍ばせた『海座頭』と視覚情報をリンクさせていた。
『海座頭』は、絵巻に絵があるだけで解説文すら存在しない妖怪である。
絵としては、巨人が海の上に立って杖をついて琵琶を背負っているものになっている。
『海座頭』は『海坊主』の一種とされることもあり、『海の上を歩き回る』ことが出来るとされている。
本来であれば、『海坊主』の下位互換としか思われないような妖怪だが、私の
知名度が高ければ高いほど力を増すはずの妖怪だが、解説文すらない『海座頭』は有名な『海坊主』よりも隠密性において遥かに優秀だった。
それこそ、ただ海を歩き回るだけならば『気配遮断 A+』程度を持ち合わせる程度に。
それを『ぬらりひょん』が「他所の
そのため、その特異性によって『王』が極秘に他の
『神霊』のように強い魔力があるわけでもなく、『サーヴァント』みたいに霊基があるわけでもない、『矮小な妖怪』だからこそ、彼は役目を果たしてくれている。
その上、使い魔としての契約を『王』を経由して結んでいるため、痕跡は残るかもしれないが呼び戻すのは一瞬だった。
妖怪の総大将、『王』である『ぬらりひょん』は『百鬼夜行』を行う権限を持っている。
彼と契約を結んだ妖怪たちは、『ぬらりひょん』が『百鬼夜行』を行う場合拒否する権利はない。
これも、『妖怪の総大将はぬらりひょん』という嘘実が独り歩きした結果なのだが、この権利によってこの
追い詰められたら『百鬼夜行』。
見つかったら『百鬼夜行』。
サーヴァントと対面したから『百鬼夜行』。
しかも、出てくる妖怪が『王』より強い。
本来の絵巻にはいない、『八岐大蛇』や『禍』、『鵺』に『九尾』まで揃っている妖怪オールスターだ。
『鬼』も、『温羅』を頂点として『酒呑童子』と『茨木童子』、『大嶽丸』を構えたメンツが固めている。
一人一種族の『両面宿儺』は単騎で軍隊を葬ることを容易く成し遂げる英雄でもあり、過去に『温羅』経由で邪魔になった悪鬼の群れを一人で皆殺しにした猛者だ。
『大天狗』は種族内の争いのせいで一人になってしまったが、それ故に天狗の頂点となった『大天狗』の力は凄まじい。
この『百鬼夜行を行う権限』が、そのままの意味で使われるのであれば大したことはなかったかもしれない。
出会い頭に『百鬼夜行』をしたところで、相手に見つからなければそれまでだ。
それに、その特性に気づいたら、見つかる前に殺す戦法を取られてしまう。
『王』が死んだら、この
『雷神』『風神』の抑止要因がいなくなったら、世界は
だが、真にヤバイのは、『九尾の狐』でも『風神』『雷神』でも『八岐大蛇』でも『温羅』でも『鵺』や『禍』でもない。
『大天狗』は理性的だし、『両面宿儺』は英雄としての一面もあることから無意味に暴れるようなこともしないだろう。
この
今でこそ、『ぬらりひょん』の命令で3メートルの巨人程度に落ち着いて山の中でひっそりと暮らす彼らだが、本来の大きさは富士山を作ってしまうほど大きい。
そんな『だいだらぼっち』、実は数十体いる。
『だいだらぼっち』とは、種族名であって個体名ではないのだ。
彼らは汎人類史では巨大すぎる故に繁栄できなかったが、この
身体のサイズを、『命令』によって弄られた彼らは仲睦まじく集団で生活しているのだ。
それも、身長を小さくしてもらった上に衣食住の安定した提供をしてくれる、『妖怪の総大将』への絶大な感謝と共に。
そんな彼らが、恩人であるぬらりひょんが殺されたらどうなると思う?
彼らは非常に温厚な性格だ。
子供を掌に乗せて歩いていた話だってあるぐらいに、妖怪の中では非常に友好的な妖怪だと言えるだろう。
その時にふとした拍子で子供を投げ出してしまって、泣き出すような気弱さも持っている彼らだ。
そんな彼らが、恩人を殺されたと知ったらどうなるか?
標高3776mを誇る、富士山を作ったとされる『だいだらぼっち』がキレたらどうなるか?
ざっと4000mは下らない身長の彼らが本気でキレたなら、日本はあっさり滅びるだろう。
だからこそ、ぬらりひょんでさえ、『百鬼夜行』の時にすら滅多に呼ばない妖怪なのだ。
感情豊かである彼らの怒りに触れたら、どうなるかわかったもんじゃない。
話が逸れたが、私の
つい先ほどまで、視覚をリンクさせてロシアの
『妖怪総大将ぬらりひょんの命令に、妖怪は逆らえない』
『妖怪総大将ぬらりひょんには、百鬼夜行を行う権利がある』
この
どちらか一つが欠けるだけでも、この
前者はともかく、後者も元々が貧弱な『ぬらりひょん』にはなくてはならない能力だ。
後者のルールを実行に移すためには、ぬらりひょんが個人的に『契約』を結ぶ必要がある。
前者のルールで無理やり結ばせることも可能だが、ぬらりひょんは無理やり『契約』を結ぶことしなかった。
全ての妖怪の元に赴き、それまでに仲間にしてきた妖怪たちの知恵と技術を駆使して信頼を得ていったのだ。
そうして仲間にしていった妖怪たちを、私は彼の紹介で全員一度見ている。
だから私は、彼ら『妖怪』のことを嫌いになれないのだろう。
それだけで、一度も顔を合わせたことのない、凡人類史のどこかの誰かなんかよりはよっぽど仲良くできる。
現に今からここで報告会と会議を行うが、誰一人として私を笑う者も、嘲る者もいない。
お互いに出来ることを理解して、協力し合って今を生きているのだ。
『人』と『妖怪』の差なんて、そう大したものではないのかもしれない。
目の前にいる琵琶を背負った坊主姿の妖怪と、楕円形の長い禿げ頭の老人を見た。
彼らは必死にこの
それは、『
◆◇◆◇
クリプター同士の会議とは違い、四角い長机に『幹部』と呼ばれる『妖怪』たちが集まる。
一番奥には、後頭部が縦に長く髪がない老人がそこにいるもの全てを見通すかのように座っている。彼こそが、この
その右隣には青い着物を着ている黒い短髪の男性。、慣れたように正座をしている彼は、『クリプター
その彼の後ろで彼を守るかのように正座しているのが、彼のサーヴァント『アルターエゴ』。
真っ黒い髪を腰まで伸ばして、着物も帯も全て黒で統一している彼女は、真名をマスターにすら明かしていない。
そのため、彼女はマスターがつけた『クロ』という愛称で親しまれている。
彼女自身の表向きの性格はマスターを立てる献身的なものだが、その実を理解しているのは『王』であるぬらりひょんだけだ。
だが、それもまた一興と愉しんで、彼と彼女の掛け合いを見守っているあたり、ぬらりひょんも愉しんでいるのだろう。
そして、彼らの目の前には『幹部』と呼ばれる妖怪たちが集まっていた。
九つの金色の尻尾を蓄えた白髪の女性、生真面目そうな雰囲気を思わせる白い着物を着た鼻の高い青年、体に合わない大きめの着物を着て黒いメガネが特徴的な少年、手に酒の瓶を持ち赤い髪を伸ばして一本角が天を貫くかのように構えている男性、様々な動物の面を服のいたるところに引っ掛けている少女。
さらに空いている席が3つほどあるが、ここに居る彼らの一人一人が空間を歪ませるかのように錯覚させるだけの力を持っていた。
「それでは、これより臨時会議を行う。まず、急な召集にも関わらず集まってくれたことに感謝を」
ぬらりひょんはそう言って、長い頭を下げる。
自分の実力ではこの場にいる全員どころか、一人に敵うことすら怪しいことを自覚しているからこそ、彼は敬意を崩さない。
だが、妖怪という種族を一纏めにしている彼を馬鹿にするものも、下に見る者もこの場にはいなかった。
彼が頭を下げるのに合わせて、この場の全員が同じように頭を下げた。
ぬらりひょんが頭を上げたことを確認してから、再び面を上げる。
「早速本題に入る。水輝の予想通り、露西亜の
「私としては、彼らを迎え討ちたいのならここで叩くべきだと思ってる。私情もあるけど、この手の相手は早めに叩かないと力をつけていくタイプだ。
現に、彼らはあの危機的状況下で世界を一度救っている」
「儂もそう思っておる。露西亜での戦闘を確認する限りでは、儂らにとっては大した脅威になり得まい。じゃが、逆にとるとあの状況から露西亜を墜とすだけのポテンシャルを秘めておる。確実に彼らは実力で劣っていた。じゃが、それを覆した。アレは早いうちに摘み取らねばならない芽じゃ」
ぬらりひょんの言葉に、同じように意見を述べていた水輝以外の表情が引き締まる。
『妖怪総大将』の言葉は、他の妖怪の言葉よりも遥かに重い。
その『妖怪総大将』が最重要警戒どころか、進んで叩き潰さないとまずいと判断しているのだ。
『温羅』と大将格にどちらが相応しいかを競った時でさえも、彼がここまでの危機感を募らせるような言い方をしたことはなかった。
そのため、『温羅』が彼に従う前を知っている他のメンツは事の重大性を一瞬で感じ取った。
「汝がそう言うのならばそうなのじゃろう。妾はそれに従おう」
「俺は戦略家ではありませんので、あなたたちの言葉を信じます」
「僕も同じくだよ~」
「要するに久しぶりに強いやつが来るんだろ? なら歓迎しないと鬼じゃねえ」
「わちきもそれでいいや。あたしじゃあ、ようわからんし」
言葉の違いはあれど、彼らはぬらりひょんの意向に沿うことにした。
彼ら自身、ぬらりひょんに恩義があり、自分達の妖怪としてのプライドがある。
妖怪にとって良い方向に導いていった『妖怪総大将ぬらりひょん』への大恩と、大妖怪として『人間』に尻尾を巻いて逃げることを許さないといったプライドだ。
勿論、ぬらりひょんはそれら全てを踏まえて彼のためになるように誘導している。
人間でさえ築き上げることに出来ない強固な絆が、現代社会で消え逝こうとしている『人間性』が彼ら『妖怪』を通して『人間』に牙を向ける。
「皆の忠義が有難いわい。おかげでようやく本腰を入れることが出来そうじゃ」
「で、どういう手筈で
「それについては私の方から説明しましょう」
この
彼自身、ここに居るメンバーの中では力は低いものの、ぬらりひょんの紹介もあって孫か何かのように思われていた。
それ故に、『九尾の狐』が自分では幾つか思いついているものの、彼がどうしようとするのかを観察するかのようにみている。
「ほう、では言うてみよ」
「では、失礼して。そう難しいことをする気ではありませんよ。呼び込むのが無理なら、
彼の言葉に、少し考えるかのように首を傾げる『九尾の狐』。
だが、彼女が答えを出すより早く、痺れを切らした青年が水輝に続きを促し始める。
「確かにそれができるのなら手っ取り早くていいと思います。ですが、俺が聞いた限りでは虚数潜航しているカルデアの
「それについてじゃが、『船幽霊』の頭領と『海坊主』の頭領、それとお主で行ってもらう予定じゃ。
頼めるな『風雷』?」
「!! 御意に。
師である『風神様』と『雷神様』から授けていただいた『風雷』の名に懸けて、我らが総大将ぬらりひょん殿に絶対の成果を約束致しまする」
「お主には期待しておる。
「はっ!!」
白い着物を着た鼻の高い青年…『大天狗』の『風雷』は、彼にとっても尊敬するべき相手である『妖怪総大将』からの勅命に感激しながらも、その力を奮う決意を高める。
強さと速さを只管追い求めた『大天狗』の彼は、『風神』と『雷神』の両方から師事を受けている。
その結果合格祝いに、かの神二柱から名前を授けられたことからも彼の実力の高さを表していた。
「では、カルデアの者を招き次第、全ての妖怪にわかるように報せを送る。来た者は煮るなり焼くなり好きにするがよい」
「「「「「御意に」」」」」
この場にいる大妖怪とも言うべき彼ら全てが、一致団結して『人間』を襲う。
それが如何に恐ろしいことなのかを知る者は、この場にいるクリプターを除いて一人もいなかった。
独自解釈モリモリなので、大丈夫かなーと思いながらも投稿しています。
『海座頭』は『海坊主』の一種とされていることもあり妖怪ですが、その実態は一切不明で解説文がない妖怪なのです。
実は、このパターンは結構多くて、絵はあるけど解説がない妖怪には『ぬらりひょん』も該当しているみたいです。当時の文献全てに目を通したわけではない上に、最近の奴とごっちゃになっているので記憶が少々怪しいですが。
また、感想にて出して欲しい妖怪や取り上げてほしい妖怪を挙げていただけると嬉しい気持ちにもなるのですが、運営対処のリクエストや設定改変の強要に繋がってしまうそうなので控えていただければと思います。
感想はとても嬉しいのですが、全てに返していると非常に時間がかかることが判明しました。そのため、量と内容によっては返せないものが出てくると思いますので、ご了承ください。