我が道を往くヒーローアカデミア   作:恋の戦車

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 封印されていた物語が解き放たれるのだな……!刮目せよ!(訳:ずっと倉庫に書き下ろしたままのやつを引っ張り出してきたよ!良ければ読んでいってね!)




心操人使とフリージア:1

 

 

 

 常日頃、口煩く『戒め』を聞く毎日には聞き飽きた。硬い椅子に座って人の話を聞いた上で判断を下し、真っ白な紙に事細かく記載する作業を強制する故郷は、彼女にとってとても居心地が悪く、性にあわない最悪な場所であった。

 唯一の楽しみと言えば、『穴』から魂達を観察する事であった。生きている魂が惨めに足掻きながら動くその姿はとても滑稽で、彼女にとっては面白みのあるものであった。

 そして彼女は、その魂から怒り、悲しみ、喜び、苦しみーーー数多の感情を教わり、そして彼女は日を重ねていくにつれ、その魂達に『感情』を揺り動かしていった。

 ああ、この人は怒っている、こんなことで。ああ、この人は悲しんでいる、こんなことで。ーーーいつの間にか観察することとは別に、魂の心情や思考を推理したりし探し出したりするのが日課になっていた。いや、夢中になっていたのだ。

 

 日々の作業を怠る程に、彼女は魂達の観察に大層夢中になっていった。

 

 

 

 ふと、彼女は疑問に思う。

 

 

 

 

 

 ーーー『戒め』とは、なんだったのだろう、と。

 

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

 世界総人口の約八割が、何らかの特異体質となった世の中ーーー『超人社会』と呼ばれる現象は、瞬く間に世界各国に広まり、いつの間にかその特異体質が、当たり前の日常に変化していった。

 当時、医科学的にも調べられなかった『超能力』。中国のある市で生まれた赤ちゃんが『発光』していたことから、彼らはその現象をなんとか『超能力』と結び付けることが出来たのだ。

 そして次第に研究が進んでいった時、彼らは『超能力』を『個性』という名で区別し、さらに研究を深めていったという。

 

 そして時代が進んでいく内に、その個性を利用した職業が誕生した。

 その名は「ヒーロー」。アメコミ等でしか登場しなかった空想上の存在が、職業となって現実に現れた時は、世界中に激震が走った。

 初代から現代へ。受け継がれていくヒーローの歴史は数しれず。超人社会は「ヒーローのための世界」に変貌していった。

 

 そんなヒーローという職業だが、当然憧れを持ち始める少年少女達が現れる。なのでそんな少年少女達の為に、ヒーローになる為の育成所が設けられた。ーーー言い方を変えれば、高校の学科選択に新たな学科が加われたのだ。

 その名は「ヒーロー科」。ヒーローを志す為に少年少女達が奮闘する、ヒーロー育成に手がけた学科である。

 その学科を選択するものは計り知れない。希望するものは五万とそれ以上いる事もある。

 

 

 ーーーそんな「ヒーロー科」の入学を希望した、ある一人の外国の少女がいた。

 

 

 

 かのヒーロー育成の最高峰、『雄英高校』の入学を強く希望した少女は、父母の許可を強引にもぎ取って試験勉強に打ち込んだ。特に筆記を。筆記を重点的に。

 そんなこんなで試験勉強に明け暮れ、ついに受験日を迎える。

 少女は頑張った。特に筆記を。筆記を頑張った。

 実技は難なく終えることが出来た。自分としても重畳だという確信がある。

 そう、あとは筆記。筆記だけなのだ。筆記をクリア出来ればーーー!そんな思いで、少女は少しだけ分厚い手紙を開いた。

 

 

 

 ーーーこれは、ヒーロー科のある外国の少女が、最高のヒーローになるまでの物語。

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 「1ーC」の扉を開けた心操人使は、既に談笑しているクラスメートの横を通り過ぎて、自分の席へ座った。座った途端に前の席のクラスメートが軽く挨拶をしてきたので、心操も「おう」と返事をする。

 教材を机の中に突っ込んだ後、愛読書を手に取る。昨日まで読んでいた続きのページに挟んでいた栞を抜いて、そこから読み始めた。その間にも心操が登校してきたことに気づいたクラスメート達が、軽く挨拶をしてくる。返さないのも失礼なので、心操は「おう」や「おはよう」など、律儀に一人一人に返していった。

 

 心操が雄英高校に入学して、一週間が経とうとしていた。最初は新しい環境や見たこともない人達にギクシャクとしていたクラスだが、さすがは雄英高校に入学するレベルの生徒達。一週間も経てば軽口を叩けるほどの仲になっていた。

 心操もその一人とは言わないが、クラスメート達とは適度な交流を取っている。個性の話になると驚かれたり興味を持たれたりと、中学では考えられなかった反応に頬を緩ませたことだってある。

 ーーー敵向けの個性だと言われていたのに、こいつらは邪念にしないんだな、と。何度思ったことか。

 心操はこの生活に大変満足していた。中学時代よりもずっと。充実した毎日を送っていた。

 ーーーある一つの要因を抜けば。

 別にその要因のせいで楽しめないとか、そういう事ではない。と心操は即座に否定する。逆に少し楽しいくらいだ。だが、限度というものがある。

 『教室に入った瞬間目が合った』。それだけで何故か凄く交流を持ちかけてきたかの少女を、心操は思い浮かべた。自分のパーソナルスペースを尽くぶち破り、マイペースに自分の流れに持ち込んでいくーーー一言で言えば、「変な少女」。これはクラスメートも認知している。一週間でそんな印象を持たれるとはどういう少女なのだ、と気になる者もいるであろう。

 

 愛読書を読み進めていた心操だが、秒針がある時間を指しているのを確認するやいなや、直ぐにその愛読書を仕舞った。その行為に目敏いクラスメート達は、「お、そろそろか?」と心操に声をかける。

 

 「ああ……あいつはいつもこの時間に来る」

 

 そう声をかけながら、心操は改めて体勢を立て直した。なるべく"衝撃"を緩和させるように少し重心を前に倒して、然るべき時が来るのを待つ。

 ーーーやがて、ガラリと扉が開いた。心操がそちらを確認する前に、ソプラノの天使のような声が、クラス中に響き渡る。

 

 

 「Hello、everyone!皆さんご機嫌麗しゅう!」

 

 

 豪華のように真っ赤な真紅の瞳。それを引き立てるような雪のような真っ白な肌に、夕暮れのような橙色の長髪。耳の付け根辺りからは白い羽が飛び出している。

 雄英高校の生徒であると分かる灰色のブレザーに緑のスカート。太腿まで上げられたニーハイソックスとスカートから覗く生足は、何処か艶かしい。

 非常に端正な顔つきの絶世の美少女。だが目を引くのはそこだけではない。

 少女の腰辺りから生えている、「天使」のような純白の翼。それが尚、彼女を美しく引き立てていた。当初のあるクラスメートが「女神」と呟いたほどに、彼女と翼は非常に相まっていた。

 

 その絶世の美少女は心操を捉えると、途端に目付きを変えた。それはまるで捕食者のような目付き。その目付きをみたクラスメート達は察し、そして心操はその目線を感じ取って、直ぐ様顔を伏せた。

 かの少女は動き出す。その場で跳躍してみせた彼女は、目をキラキラとさせて心操に飛びついた。

 

 「心操さ~~~~~~~~~~んっっ!!」

 

 「ぐふっ」

 

 背中から来る衝撃に耐えきれずに呻き声を発する。それに「あ、ごめんなさい」と即座に悪びれなく謝罪した少女だが、途端に満面の笑みになって、心操の顔を背中越しに見た。

 

 「おはようございます、心操さん!」

 

 そして飛びついた後の、第一声。

 それに「ああ、いつも通りだ」と心底呆れを溜息と共に零した心操は、その挨拶に答えて返事した。

 

 「ああ、おはようーーーーフリージア」

 

 その挨拶に少女ーーーフリージアは、翼をパタパタと動かしながら、笑みを零した。

 

 

 

 訂正しておこう。

 

 

 

 

 これは、ヒーロー科のある外国の少女が、最高のヒーローになるまでの物語ーーーではなく。

 

 

 

 これは、"普通科"に在籍する外国の少女が、我が道を行く物語である。

 

 

 




(心操との恋愛物語は始まら)ないです。

 >>筆記を頑張った。特に筆記を。
読者1「なんか嫌な予感がするぞ」
読者2「あっ...(察し)」

 >>ヒーロー科のある少女が~~~。
読者1「なんだ、結局ヒーロー科じゃないか」
読者2「あっ?(期待)」

 >>「1ーC」の扉を~~~~~
読者1「あっ(察し)」
読者2「あっ(確信)」

 今回はプロローグだからこんなに短いんだ!次からは長くする予定だから許してヒヤシンス!(極寒)


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