舞「やっぱり夜は焼肉っしょ!」
憐「異常な高さのテンションを感じる・・・・・・」
部活動が終わり外が暗くなり始めた頃、生徒が校内から立ち去る中、生徒会室にはまだ灯りが点いていた。
「え、何でっすか?」
「私も知らない・・・・・・」
部活動が終わり、生徒会として見回りをし終わった凪は、生徒会だけでなく部活仲間でもある憐にたった今送られて来た舞からのメッセージを頭を抱えながら伝える。
『バーベキューしようと思うから憐君誘って来て~。憐君のお母さんには許可貰ってるから、お泊まり会でもしないか聞いて?』
バーベキューしようと思うから誘うのもどうかと思うが、バーベキューついでにお泊まり会とはどういう要件だろうか? 全く関連性が見えない。それに、雪も憐もお互い初対面の筈だ。それなのにいきなりお泊まり会を開こうなどと、我が親ながら阿呆なのでは無いだろうか?
「一応私から断っとくよ。お母さん何考えてんだろ? もうこっちは高校生だって・・・・・・」
「小学生ならまだしも高校生っすからねぇ・・・・・・。ま、俺は良いっすけどね」
「え、」
ちょっと何言ってるかわからない。今の流れは完全に高校生だから遠慮する流れだったよね・・・・・・?
「えっと、理由は?」
「だって楽しそうじゃないすか、お泊まり会」
「うん? 」
どうしよう、憐に着いて行けない。
「良いじゃないすかお泊まり会、俺だってそういうのしてみたいんっすよ。こう見えて俺、友人の家に泊まるとかしたこと無かったんで」
「憐・・・・・・? いや、あの、憐さん?」
「ん? 何すか?」
まさか、まさかとは思うが
「それだけの理由で高校生にもなる女子の家に泊まるつもりなの・・・・・・?」
「え、そうっすけど。駄目すか?」
「普通駄目でしょっ!? 何考えてんの!? 馬鹿じゃないの!?」
憐には常識というものが無いのだろうか? 今まで生徒会だけでなく部活などでも話してきたが、ここまで自分の常識が通用しないとは思わなかった。憐は確かに少し元気な子供っぽい一面もある。だが、ここまでのものだとは思わなかった・・・・・・。
「ええー。でも会長のお母さんはもう家の母親に連絡取って許可貰っちゃってるみたいだし、行かないとお互いに親から小言言われたりしないっすかね?」
「それは・・・・・・あー、でもお母さんならなぁ・・・・・・。うーん、仕方ないかぁ・・・・・・」
凪から許可を貰い思わずガッツポーズを取る憐。先程まで渋々といった顔をしていた凪も、憐のその子供のような仕草に顔が綻ぶ。
「あ、そうだ。お母さんが、後デュエマのデッキ持って来てー、だって。何でだろ? 何でデュエマ?」
「まぁ遊び用に一応バッグに入れて持って行くつもりだったっすけど、何でっすかね?」
まぁ、家で対戦するのに変わりはないか。とお互いにそれ以上は深く考えなかった。舞が言わずとも、凪と憐は対戦をしていたらしい。デュエマプレイヤーだからというより、カードゲーマーの性というものなのだろうか。
「じゃあ今日の8時にってことで。家の場所、RAINで地図のやつ送っておいたから」
「あ、ありがとうございます。んじゃ7時っすね。了解っす」
お疲れ様でした~、と手を振りながら、憐は生徒会室から出て行く。凪の家と憐の家はまぁまぁ近い位置にある。時計を見れば針は6時を指していた。
「よし、私も帰るか」
凪は舞に、憐が泊まりに来ることをRAINで伝え、バッグを背負い、電気を消して部屋から出る。気付けばいつもは賑やかな学校も、人が居なくなりとても静かになっていた。
「いつも帰りは一人なんだよねぇ・・・・・・寂しいもんだなぁ私の高校生活」
そう口にしながら校舎から出た。
「ただいまぁ~」
玄関の扉が開き、凪は暖かい室内、母親の居るであろう部屋へと移動する。
「おかえりー、バーベキューの準備は終わってるからね~」
「はーい。・・・・・・お母さん凄いウキウキしてるなぁ・・・・・・」
扉を開け、中を覗くと、庭へ出ることの出来る部屋には案の定自分の母親である柴崎 舞の姿があった。
と、そこで凪はふと気付く。玄関のすぐ側にあるいつもは仕事で帰って来ない父の物置として使用されていた部屋に電気が点いていたような気がする。そういえば、今日から一人家族が増えたんだった。
コンコンコン、と軽く扉をノックする。少しして中から予想通りの人物が顔を覗かせる。
「あ、柴崎さん・・・・・・えっと、御仕事お疲れ様です。その、迷惑をお掛けするとは思いますが、宜しくお願いします・・・・・・」
「あー、うん・・・・・・。宜しくね、ゆっきー」
雪のあまりに畏まった言葉使いに、凪は思わず苦笑いしてしまう。凪からしたら見知った存在である雪だが、雪からすれば凪は未だ良く知らない人という認識なのだから仕方がない。だが、凪からすれば幼なじみにこれからの生活でずっと敬語で畏まった様子で会話をされるのはどうにも歯痒い。凪はそれとなく雪に注意をすることにした。
「そんなに畏まらなくて良いよ。私もあんまり堅苦しいの慣れてないから・・・・・・。試しに、柴崎さんじゃなくて、凪って呼んでみるとか・・・・・・」
「・・・あのっ、凪さんじゃ駄目でしょうか・・・? その、まだ呼び捨てにして話すのはどうにも抵抗があって・・・・・・」
「え!? あ、うん!そうだよね!? ごめんね、無理言っちゃって。じゃあ!」
即座に要望を取り消し、無理しないで好きに呼んで良いからねと言って二階にある自分の部屋へと逃げるように階段を走って行く。雪は物凄い勢いで目の前から消えていった凪に呆然とし、しばらくしてハッと我に返る。
「あ、柴s・・・凪さん・・・・・・行っちゃった」
何か悪かったかなと思いながらも、雪は自分の新しい部屋の床に座り、カードを広げる。
凪が帰って来る前、バーベキューの準備の手伝いをしようと思っていた雪は舞から一つの依頼を受けていた。
『楽しく盛り上がるような雰囲気になりそうなデュエマのデッキ組んでみて。どんなものでも良いから』
要はサプライズ。ネタデッキのようなゲームの勝ち負けでなく楽しむことを中心に考えられたデッキを組んで欲しいということだ。所持していたデッキの中には勿論要望に応えられそうなものがあったが、入っているカードがこの世界で高額なものばかりであった為、使用するのを控えた。その結果、新しく組まなくてはならなくなった。
「困ったな・・・・・・。ネタデッキとなるとちょっと難しいぞ・・・・・・」
ネタデッキを組もうにも、ネタデッキに必要なカードを持っていなかったりすることがある。その点を踏まえるとどうしても組めるデッキやコンボのようなものが思い付かない。
「聞いてみるか・・・・・・」
雪はデッキ工房となった自分の部屋から出て、舞の居る部屋へと足を運ぶ。
「あ、舞さん。スミマセン、余っているデュエマのカードとかってありますか?」
「あー、あるよー。ちょっと待っててね・・・・・・」
舞はそう言うと天井にあるフックに先端が曲がっている長い鉄の棒を引っ掛け、下に引っ張る。すると切り込みが入っていた天井の一部が開き、屋根裏部屋に続く階段が現れる。
「どこだったかなぁ・・・確かここら辺に・・・・・・あった。よいしょっ、と」
舞は屋根裏部屋へ入るとガサゴソとダンボールの山の中を探し、目当ての物を見つけるとそれを持って屋根裏部屋から階段を使い降りて来る。ドスン、と音を立てて床に置かれたダンボールからは、大量のカードが入っていることが伺える。
「ここに入ってるのは私が前に使ってたカードだから好きに使って良いよ〜。もうカードゲームすることなんて無いしね」
「ありがとうございます!早速使わせて貰います」
雪はカードの入ったダンボールごと自室へと持って行き、中のカードを床一面に広げる。そういえば、小さい頃はこうしてカードを床にバラ撒いて、片付けなさいと親に怒られていたな、と思い出す。
「さて、デッキを組むか」
約束の時間、ピンポーンと人が来たことを伝える音が柴崎家に住む全員の耳に入る。
「お邪魔しまーす……」
「あ、憐君、来てくれてありがとね〜。バーベキュー、楽しんでって」
言われなくとも楽しみますよー、と応え、憐は上から下りてきた凪の誘導に沿って荷物を持ちながら庭へと向かう。
「そこに座ってて、隣のバーベキューコンロで焼いてるから、食べたかったら自分で取ってね」
「了解っす。何か手伝うことありますか?」
「憐は客なんだから手伝わなくて良いよ。それに準備も終わって、もう具材を焼くだけだからね」
そう言っている間に舞が庭に飲み物が入ったクーラーボックスを持ってくる。その後ろには氷水と赤ワインの入ったバケツを持った雪の姿があった。
「おまたせ〜。さ、食べよっか!」
「あれ? 会長って弟居たんすか?」
「弟じゃないよ、今日から退院して此処に住むことになった同い年の白菊 雪君。ほら、前に話した4c以上使える知り合い」
「?」
何の話をされていたのか分からない雪とは違い、あぁー、と思い出したような反応の憐。
「君が雪君っすね、じゃあ……雪ちゃんと呼ぶか」
「スミマセン、僕男なんですけど。それじゃあ女みたいじゃないですか? 」
「じゃあ白雪とか?」
「もっと駄目です」
勘違いされそうな仇名だと抗議するが、細かいことは気にしないっ!、と言われ押し負ける。それにしても中々に、というよりかなりフレンドリーだ。会う前はどう接触すれば良いものかと考えていたが、いつの間にか普通に話せている。これが陽キャの持つコミュ力というものなのだろうか……。
まぁ何にせよ、取り敢えずはこの御馳走を頂くとしよう。
「「「頂きまーす」」」
「そうだ、雪ちゃんはどんなデッキ使うんすか?」
「色々あるけど、主に多色デッキですかね。3c〜5cが多い感じです」
「良く使う文明とカードは?」
「自然、《フェアリー・ライフ》です」
「好きなカードは?」
「《奇跡の覚醒者 ファイナル・ストームXX NEX》」
「嫌いなカードは?」
「《音感の精霊龍エメラルーダ》。もしくは《時の秘術師ミラクルスター》」
憐の投げかける質問に淡々と答えながらも、雪はコンロから焼けた肉や野菜を皿に取る。因みに雪の皿に乗っている具材の割合は野菜が9割肉1割である。すぐ隣で何を取ろうかと悩んでいた凪もこれには驚きである。
「成る程なぁ…。ドラゴンとか好きだったりするんすか? 《ファイナル・ストーム》が好きで5cも使うとなると、5c龍とか使ってたり? 」
「いや、使ってない。5c龍のパーツは何枚かあるけれど、組むにはまだ足り無いのが現状かな」
出会ってたったの数分しか経っていない。だが、不思議な感じがするのだ。カリスマのようでそうではない。もっと柔らかい、そう、小さな子供の頃、無邪気に誰とでも楽しく遊べていた時のような、あの感じがするのだ。
「5c龍・・・・・・いつか見てみたいっすね~」
「憐はドラゴンに限らず花形種族が好きだもんね~」
「へ~、憐君はドラゴン好きなのね~。凪はエンジェル・コマンドとかが好きだったよね?」
成る程、凪さんはエンジェル・コマンドが好きなのか・・・・・・。
「まぁ、俺はデーモン・コマンドとか特に好きっすけどね。例えばバロム系とか」
「《バロム》は人気だよね~。今年の正月にあったクリーチャー人気投票で確か《ドルバロム》が6位だったっけ?」
憐の好きなカードである《バロム》はこの世界でも人気らしい。雪も好きなカードの1枚である為、凪の言った人気投票で上位に食い込めていたというのは嬉しく感じた。
「あ、そっか。折角デュエマするなら《バロム》使うのも良いっすね!」
「あ、憐が《バロム》なら私は白騎士使おっかな~」
「白騎士と《バロム》・・・・・・見応えがありそうな組み合わせですね」
じゃあ、バーベキューが終わったら3人で大会開こっか!という凪の発言に雪と憐は賛成し、それぞれのデュエマ談議で盛り上がる。
「デュエマの絶望する瞬間って個人的にどれすか?」
「私はアレ、《団長》と《醤油》が並んだ時」
「俺は1ターン目に肉汁ブランドされた時ですかね」
「私の時代は何だったかな~? あ、メルゲループ・・・だったかな? あのずっとドローして来るの嫌いだったなぁ~」
「「「あったなぁ~メルゲループ」」」
それぞれが自分の体験や最近の話題などで会話を弾ませる。もしかしたら付き合っているのでは? 邪魔に思われるのでは? と思っていた雪も、いつの間にか凪以上に憐と仲良くなっている。
「俺はアレっすね、《ジョラゴン》。アレ出たら大抵そのターン中に終わるんすよね~」
「大体出たら、攻撃、《マンハッタン》、《ガヨウ神》、《オッケーBros.》、アンタップ。の動きですからねー」
「ホントそれっすよ。最近はJチェンジまで出て来て、どこまで強くなるんだか・・・・・・」
「頭可笑しいですからね。強すぎる」
憐の愚痴に共感していると、ジーっと凪が自分と憐を見ているのに気付く。
「どうかしたんすか会長? 」
「ん? いや、何か憐の方がゆっきーと仲良さそうだなーと思って」
此処まで雪が凪と話した回数は数える程なのに対して、今日1日、それも約1時間程で雪は憐と何回話したことだろうか。雪と改めて仲良くなろうとしている凪からすれば、一瞬で仲良くなってしまった憐が羨ましく感じる。
憐はそんな羨ましがる凪を見て、面白そうだと思い少しからかう。
「あ、もしかして会長嫉妬っすか? 俺に大切な雪ちゃんが盗られちゃう~みたいな」
「憐、そこに土下座に向いてそうなコンロがあるんだけど――」
「スミマセンでした」
セーフ。後少しで憐が具材になる所であった。それにしてもこの会長、煽り耐性が少し低い。
「まだまだ肉はあるからね~!やっぱり夜は焼き肉っしょ!」
舞の置いた肉はコンロの上でジュゥゥゥという音を立て、焼けた肉の臭いが雪や凪、憐の食欲をそそる。
「やっぱり皆で食べると美味しいっすね!」
「だね、あ、凪さん胡椒取って貰える? 」
「はーい」
舞の企画したお泊まり会は、どうやら上手くいきそうだ。
用語解説
RAIN:メッセージのやり取りだけでなく、メッセージの他にも写真や動画のやりとり、そして通話など便利な機能がたくさん備わっているアプリ。
パーツ:ここでいうパーツとはカードのこと。デッキを機械に見立て、予定通りの動きをするのに必要なカードを指す。
5c龍:5cのドラゴンデッキ。
醤油:勝利のリュウセイ・カイザー
やっとテストが終わる・・・・・・。スペシャルパックでミラミスのシールカードが出て、「えっ!?ミラミスプレ殿解除!?は!?」と馬鹿みたいなことをしていました。
次は3人によるデュエマ大会。しばらくはデュエマ描写になるのかな?多分。
デュエマ描写は大変ですが、なるべく日曜日辺りに更新出来るよう頑張ってみます。
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