起きたらチェンジ・ザ・ワールドしてた件   作:change

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デュエル描写ありです。


ネタデッキ・デスマッチ

夏の夜は涼しい。朝に感じる暑さと比べたら、冗談だろう?と聞きたくなる程だ。庭からは虫の鳴き声が自分の居る部屋の中にまで聞こえて来る。

ふと、窓を見る。綺麗な月が雲の中から覗いているのが見えた。なんて美しいのだろうか・・・・・・。自分の元居た世界と違う世界でも、この月の美しさはどうやら変わらないらしい。

 

「お~い、ゆっきー?何で外見てるの~?」

 

あぁ、だがやはり元居た世界の夜はもっと綺麗なものだった気もする。美しい月や輝く星々があるのに変わりはないが、何故か偽物のような感覚がする。一種の懐古主義というものだろうか?新しい世界に居ても、前の世界の方が良かったという点を、そこまで自分の世界に愛着があった訳ではないが探してしまうのだ。

・・・・・・そういえば、こういった懐古主義らしき意見を主張すれば、周りから老害老害と言われた人達が、ネット上やテレビ番組にもかなり居たんだっけ。

 

「ゆっきー?ゆっきーのターンだよ?おーい」

「」

 

さて、何故このようなことになっていたかというと、時は少し遡る・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「御馳走様でした」」」」

 

具材もなくなり、バーベキューを終えた雪と凪、憐と舞はそれぞれの行動を取った。雪は作成したばかりのネタデッキの一人回し。凪は風呂。憐はネットでカードの情報学習。舞は溜まっていた韓流ドラマを一気見するなど、見事にバラバラだった。

 

勿論デュエマの大会をしよう。と企画したことは忘れていない。現に雪はネタデッキを一人で回しているのだ。雪と憐がそれぞれ風呂から出た今、最後に凪が風呂から上がった時こそ、開戦の狼煙があがる。

雪がネタデッキを回している間に、憐はネット上から様々なデッキタイプとその動きの特徴を学習していた。過去のデッキタイプから現在のデッキタイプまで、幅広く調べていた。

突然だが、カードゲームの環境デッキというものはどうやって出来るのか考えたことは無いだろうか?憐はその研究をデュエマを題材に考えていた。結果、憐が出した答えはアドバンテージと封殺力、カード間のシナジーが組み合わさることで出来るというものだ。

 

アドバンテージというものは、手札とマナなどが分かりやすい例として挙げられる。手札は可能性、マナは可能性の実現に必要なものである。勿論、墓地などもあるが、これこそがデュエマの基本的なアドバンテージだ。それをどれだけ稼ぐかによって、自分のしたいことがスムーズに出来るかが変わってくる。対戦でスムーズに動くことが出来るというのは、勝敗に大きく関わってくることだ。

 

次に封殺力。これは相手の妨害に当たる動きだ。自分がどれだけ順調な動きをしていたとしても、相手の妨害があれば思った通りには動き辛くなる。妨害をするということは、相手の動きを邪魔する他に、場をコントロールし、自分の妨害をされないようにする行為でもある。例えるならば、事前にハンデスをしておけば自分がハンデスをされにくくなるようなものだ。

 

そして最後にカード間のシナジー。これが案外難しい。実際にカードを見ているだけでは、どのカードとの相性が良いのか掴み辛いものもある。前回雪の使っていたデッキを使い、考えてみよう。

まず、《超次元 フェアリー・ホール》はマナ加速効果を持ちながら、マナを回収出来る《タイタンの大地 ジオ・ザ・マン》が出せる上にアンタップキラーである《勝利のガイアール・カイザー》を出すことが出来る。

そしてマナの数によって大きな制圧力を発揮しつつ全体除去が出来る《百族の長 プチョヘンザ》はスピードアタッカーのアンタップキラーであり革命チェンジ元となる《勝利のガイアール・カイザー》と相性が良い。ビマナデッキはマナを加速し大型クリーチャーを出すことで制圧するデッキだ。よって、マナは後半かなり溜まる。《百族の長 プチョヘンザ》の制圧力はかなりのものになるだろう。

この時点で既に《超次元 フェアリー・ホール》はこのデッキにおいて1枚に出来る仕事の量が多いカードとなる。これがデュエマでいうカードを活かす行為である。

 

このようにカード1枚にどれだけの意味合いを持たせられるか、どれだけの活躍が期待出来るのか。そのカードを活かすことの出来るデッキとはどのようなデッキだ?そう考えてデッキを組む。環境や大きな大会の優勝デッキを見れば、その点においての学習はかなり進む。最初は見様見真似から。そのまま使って確認する。どのような動きが強いといえるのか分かったら、自分の考えで改造する。そして動かし、また改造する。これを繰り返すことにより、自分の手になじむ手足のように動かすことの出来るデッキが完成する。

 

「まぁ、そう分かっていても、組みにくいんすけどね~・・・・・・」

 

時計を見れば、既に画面の前に座ってから1時間が経過していた。そろそろ凪も上がっている頃だろうとPCの電源を切り、開催場所である凪の部屋へと移動する。

使用するデッキは勿論《バロム》だ。バーベキューで事前にそう宣言したが、その情報を元に雪がどんなデッキを作るのかが問題である。

 

「会長はガチのデッキではなく白騎士デッキという情報があるけど、雪ちゃんは何もないっすからね~・・・・・・。速攻だけは勘弁して欲しいっすけど」

 

《バロム》は大型クリーチャー故にデッキがどうしてもスロースタートとなってしまう。そこをどう解決するかが《バロム》デッキの問題点だった。故に、マナを加速するタイプのデッキとなると速攻タイプのデッキに弱くなってしまう。対策をしようにも、もうデッキにそれを割ける枠がない。

 

「まぁ、祈った所でどうにもならないっすよね」

 

憐はそう呟きながら、自分のデッキを片手に凪の部屋へと足を進める。憐は雪のデッキを心配しているが、1回戦目は雪と凪の試合である為、両方のデッキの動きを見ることが出来る。そこで何に注意してプレイすべきか考えれば良いだろう。

 

「あ、会長も雪ちゃんももう準備出来てるみたいっすね」

「うん、呼ぼうと思ったんだけど憐も来たし、始めよっか」

「じゃあ、先に僕と凪さんの試合ですね」

 

扉を開けると、風呂上がりでまだ少し髪が濡れている凪とデッキを片手に持った雪の姿が見えた。もう大会の準備は出来ているらしい。

 

「よし、準備完了。これ超次元ね」

「あ、超次元です」

 

お互いの超次元を確認する。

凪の超次元には《チャクラ》や《ギャラクシー》、《プリン》や《シュヴァル》などを始めとする光文明が多く入っていた。

対して、雪の超次元は勝利セットと《ラストストーム》

、《デビルディアボロスZ》に《パンツァー》といった有名なサイキック・クリーチャーが多く入っていた。

 

「そういえば、ゆっきーからしたら私とのデュエマって始めてだよね?」

「あぁ、そういえばそうでしたね。まだ生徒会の1年の子としかしてませんし」

 

雪のプレイングを凪は知っているが、凪のプレイングを雪は知らない。記憶を失う前の雪というのがこの世界で目覚める前の自分と同じ癖があったかどうかを雪は知らないが、もしあったとしたら、凪はこの対戦で雪よりも有利になれるかもしれない。

最も、凪が何のデッキを使用するかバレているというのはそれ以上に大きなハンデのようなものなのだが。

 

「じゃあ、始めよっか」

「サイコロは・・・っと・・・・・・」

 

お互いにサイコロを振り、出目の大きい方が先行となる。今回は雪が先行となった。

 

「さて、じゃあ俺は試合を傍観させてもらうっすね」

 

 

「俺のターン、《超次元ホワイト・グリーン・ホール》をマナへ。ターンエンド」(マナ1)

「私のターン、ドロー、《フェアリー・シャワー》をマナへ。ターンエンド」(マナ1)

 

《超次元ホワイト・グリーン・ホール》を見て凪は雪の得意とするビマナ系のデッキと仮定する。それにしては超次元が前回のと大きく変わっているが、何か方向性が変わったのだろうか。

 

「俺のターン、ドロー、《執拗なる鎧亜の牢獄》をマナへ。ターンエンド」(マナ2)

「うわ、懐かしい。私のターン、ドロー、《白騎士の聖霊王 HEAVEN》をマナへ。2マナで《フェアリー・ライフ》。マナをチャージして、ターンエンド」(マナ3)

 

「《鎧亜の牢獄》・・・・・・?グッドスタッフかな?」

「まぁ、このデッキはさっき組んだばっかなんで結構問題点が多いんですけど、それに近いですよ」

 

凪の白騎士も十分懐かしいものなのだが、《執拗なる鎧亜の牢獄》と比べたらかなりメジャーである。持っている文明がなかなか無い組み合わせという点と除去とハンデス、シールド焼却が出来るという点でかなり強いのだが、《執拗なる鎧亜の牢獄》を使うデッキは最近ではあまりない。そもそも、ビマナに入るようなカードではない、更にグッドスタッフに近いという時点で、凪がこの段階で雪のデッキの正体を察知するのは困難ともいえる。勿論、使ったことがあればある程度察する者もいるのだが。

 

「俺のターン、ドロー、《反撃のサイレント・スパーク》をマナへ、2マナで《フェアリー・ライフ》。マナをチャージして、ターンエンド」(マナ4)

「私のターン、ドロー、《霧隠蒼頭龍バイケン》をマナへ、3マナで《白米男爵》。マナをチャージしてターンエンド」(マナ5)

 

お互いにマナを加速する。傍観者としてこの場に居る憐には未だにどちらも互角に見えた。

 

「俺のターン、ドロー、《ドンドン吸い込むナウ》をマナへ、2マナで《コートニー》召喚。3マナで《フェアリー・ミラクル》。条件達成により2マナチャージ。ターンエンド」(マナ7)

「《コートニー》と《ミラクル》ってことは多色であることが重要なデッキか・・・正体が分かってきたかも。私のターン、ドロー」

 

グッドスタッフのようなデッキではあるがグッドスタッフという訳ではない。多色であることを重要視したデッキ。この時点で凪と憐は雪のデッキがどのようなタイプのどんなデッキであるか、多少検討が付いていた。それを使っている雪もバレたなぁと思いながら凪の盤面を注意深く見ている。

 

「《白騎士の精霊 アスティノス》をマナへ、5マナで《白騎士の精霊 アスティノス》を召喚。その効果により山札の上から4枚を表向きにする」

 

凪のすぐにでも折れてしまいそうな細い腕が山札の上を捲る。《アスティノス》は白騎士において起点ともなる重要なクリーチャー。この効果で捲れたカードの中に雪の恐れるクリーチャーは入っていた。

 

「《白騎士の精霊 アスティノス》《フェアリー・ライフ》《サイゾウミスト》《白騎士の無限龍 ウルフェリオス》。《ウルフェリオス》を手札に加え、その他をボトムに送る。ターンエンド」(マナ6)

 

「《ウルフェリオス》はマズいっすね。正直、白騎士の中でも《HEAVEN》と同等かそれ以上には」

「絶対入ってる気がするんだよなぁ・・・・・・俺なら入れると思うしなぁ・・・・・・《バイケン》も居るし」

 

憐は《ウルフェリオス》の効果が、雪は《ウルフェリオス》の存在そのものから感じる他のカードを警戒していた。雪は白騎士デッキを組んだことが無い為、実際どうなのかは分からない。だが、白騎士だからなどではなく、単純にそのカードが出たらお終いだから警戒していた。

 

「俺のターン、ドロー、マナをチャージせず、4マナで《デモンズ・ライト》、2ドローして《アスティノス》をパワー-3000する。3マナで《フェアリー・ミラクル》、2マナチャージ。ターンエンド」(マナ9)

「私のターン、ドロー、《白騎士の聖霊王 コバルト・ウルフェリオン》をマナヘ、7マナで《白騎士の無限龍 ウルフェリオス》を《アスティノス》の上に進化」

 

頼む頼む頼む、と《ウルフェリオス》が出た瞬間に神頼みになる雪。ネタデッキは回らなくては何の意味もない。勝ち負けなどこの際どうでも良いから動かさせてくれれば良い、と。

 

「《白騎士の無限龍 ウルフェリオス》で攻撃時、メテオバーンと革命チェンジ。メテオバーンの処理を優先し、山札の上から2枚を表向きに」

 

捲れたのは《奇石 ミクセル/ジャミング・チャフ》と《白騎士の霊騎 ラジューヌ》。捲れた白騎士は優しい方だが、そうではない方が恐ろしい。雪は革命チェンジするクリーチャーとその呪文の存在に絶望する他になかった。先程まで細く美しく見えた凪の腕も、今では破壊神の腕にしか見えない。

 

「《ラジューヌ》をバトルゾーンに出し、《ジャミング・チャフ》をボトムに送る。そして、待機していた革命チェンジを処理。《ウルフェリオス》を手札に戻し、《時の革命 ミラダンテxii》をバトルゾーンに。《xii》の効果で手札から《ジャミング・チャフ》を唱えるね。効果で次の私のターンの始めまで相手の呪文を封じて1ドロー。そして、次の相手のターン終了時まで相手のコスト7以下のクリーチャーの召喚を封じるよ」

 

呪文禁止、7以下召喚禁止という制限に、雪のデッキは殆ど対抗策がなくなった。それどころか、動けなくなった。

サレンダーしたいが、それだと申し訳ない微妙な雰囲気になりそうな予感もする為続行はするが、待っているのはサンドバックとなる未来だけである。

 

「《xii》でシールドを3枚ブレイク」

「受けます。チェック・・・無いです」

「ターンエンド」(マナ7)

 

「これ、雪ちゃんの負けっすかね」

 

察しの良い憐は雪が負けると予想した。

憐の予想では、雪が使った今回のデッキは超越オーケストラ。その中の多色カードを少々使い勝手の良いカードにしたデッキだと考えていた。その予想は大当たりで、雪のデッキには沢山のコスト7以下のクリーチャーや呪文が入っている。その殆どが封じられてしまった。

 

「俺のターン、ドロー、あっ、ん?どうにかなるか・・・・・・?《コートニー》をマナヘ、4マナで《メメント守神宮》を展開。ターンエンド」(マナ10)

「私のターン、ドロー」

「その時」

 

凪のターンに入ったその時、雪は自分の場のD2フィールドを逆さまにした。

 

「《メメント守神宮》のDスイッチの効果を発動します」

 

《Dの牢閣 メメント守神宮》、光のコスト4のD2フィールド。自分のクリーチャーをブロッカーにする効果を持ち、S・トリガーでもある防御に適したカード。しかし、D2フィールドの真の力はそんなものではない。

 

「効果で《xii》と《ラジューヌ》をタップ」

「んー、そう易々と倒させてはくれないかぁ・・・・・・」

 

相手のクリーチャーの全タップ。基本的に一枚につき一度しか使えないとされるD2フィールドの持つDスイッチという能力。この《メメント守神宮》が持つ能力は、プレイヤーのドローに反応し、任意で使用出来る《スーパー・スパーク》。クリーチャーのブロッカー化と合わせ、とても厄介な効果を持っている。

 

今の《メメント》の使用には攻めて来られないようにするのとは別の理由もあった。

《xii》の革命チェンジを封じる為である。

雪が前に居た世界でも良くあったもので、《xii》と《xii》の革命チェンジをすることで永遠と相手の7以下のクリーチャーの召喚を封じるコンボである。

 

「まぁ、いっか」

 

それを封じれば勝てる可能性がある、と考え始めた雪に対し、凪は自分のドローしたカードと手札を見て不適に笑った。




用語解説
グッドスタッフ:強いカード、使い易いカードを1~2枚入れて構成されたデッキの名称。そのおかげで対応力はずば抜けて高いが、プレイヤーの腕が試される玄人向けのデッキ。

遅くなりました。ほんのちょっとだけ文字数が増えましたね。
えー、Twitterで報告しましたが、この度、本作【起きたらチェンジ・ザ・ワールドしてた件】がUA1000突破しました!
今はまだ記念に話を作れる程設定を本編で出していないのでしばらくしたら書くと思います。(それまで続いているのかという問題)

雪のデッキは超越オーケストラでした。対する凪はガチではなくトリーヴァの白騎士です。ウルフェリオスからダンテが飛んで来るというのはあまり見ない、というか白騎士自体もう珍しいと思います。作ってて、「あれ?白騎士って死神よりクリーチャーの性能弱くない・・・?」と思う程にはデッキを組むのが大変でした。白騎士クロニクルはよ。
・・・・・・え?じゃあ凪のガチデッキは何かって?さぁ?

もう結果はお察しですが、次回は雪と凪のデュエマの決着です。
誤字脱字の指摘や感想、評価、何時でもお待ちしております。しおりを挟んで頂けるだけでも嬉しいです。
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