起きたらチェンジ・ザ・ワールドしてた件   作:change

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前回のあらすじ
凪「お前を殺す」
雪「馬鹿な!?それは生存フラグでは無いのかっ!?」


アンラッキー・雪

雪の零した勝てるかも、という言葉は、確かに凪を刺激した。凪は5枚の手札とタップされた自分のクリーチャーを確認し、入念に雪の勝てる可能性を減らすべく思考する。

 

凪は負けず嫌いだった。幼い頃から変わらない性格ではあるが、どうにも凪にはその自覚がないらしい。今も傍観者として2人の試合を見ている憐は、勝ち目の薄い雪を更に追い詰めようとしている凪の今の姿を見て、負けず嫌いな凪らしい。と思っていたりするのだが。

 

――雪ちゃんが勝つ方法があるとしたら・・・・・・絞られてくるっすね。コスト7より大きく、多色との縁があるクリーチャー辺りっすか。雪ちゃんの使っているデッキが本当に超越オーケストラであるならば、超越男の早期召喚の為に《コダマダンス・チャージャー》が入っている可能性もある。もしあるならば、そのカードをこのデッキで活かせるカードは・・・・・・。

 

憐の脳裏にまず一枚のカードが思い浮かんだ。そのカードの存在を認知すると、自然ともう一枚のカードの存在が浮かび上がった。

 

「《佐助の超人》をマナへ、6マナで《白騎士の光器 ナターリア》を召喚。ターンエンド」(マナ8)

「俺のターン、ドロー」

 

凪のターンが終わり、雪のターンが回ってくる。凪の手札は3枚、内1枚は《ウルフェリオス》で確定。相手の攻撃を警戒しての《ナターリア》だったのだろうか。未確定2枚はマナ加速やドローなどのアドを稼ぐカードか《xii》、もしくはシノビと見た方が良さそうだ。何にせよ、常に警戒すべきだ。封殺する《xii》に除去の《HEAVEN》もあるのだから、マナや場を蹂躙する《天使と悪魔の墳墓》を握っている可能性も完全にないと言える訳ではない。常に警戒を怠らないように、と雪はそこまで考え、攻撃を受け増えた手札を見る。まずは・・・・・・

 

「・・・・・・ふぅ・・・・・・よし。マナをチャージせず、3マナで《コダマダンス・チャージャー》。効果でシールドを1枚手札に加える」

 

憐の読み通り、雪は《コダマダンス・チャージャー》をデッキに入れていた。そして、《xii》の効果が発動されていない今、雪のデッキの切り札が今、場に現れる。

 

雪は手札に加わるカードを手札ではなく(・・・・)墓地に送る。デュエマをそこまで知らない人には意味のわからない行為に見えてしまうだろうソレは、ミスではなく雪の明確な意志の元で行われた。

かつて、漫画版デュエル・マスターズの主人公の一人、切札勝負(きりふだ しょうぶ)が使ったコンボの要となった能力の一つ。今でこそ革命チェンジなどの能力や低コストドラゴンが多く存在するが、昔は強力なドラゴンは重いコストを持ったものが多かった。そんな中で、切札 勝負は4ターン目にしてある効果を持つ呪文を使い、そのターン中にコストの重いドラゴンを一気に3体も召喚して見せた。

 

S(ストライク)・バック。シールドから手札に加わる多色カード、《愛の無限 オーケストラ》を墓地へ送り、手札から《超越男》を召喚」

 

S・バック。カードを自分のシールドゾーンから手札に加える時、そのカードを捨てることで効果を発動する能力。クリーチャーならば召喚され、呪文ならば唱えられる能力。《デュアルショック・ドラゴン》が代表的なカードとして上げられる。

 

「《超越男》の効果、ロスト・プリズム。山札の上を表向きにし、多色ならば手札へ加える。《コダマダンス・チャージャー》は多色ではない為、そのまま山札の上に」

「・・・・・・来るかな?」

 

雪が《超越男》を召喚したことで、凪は次に来るであろうカードを予測する。ここまで持ち主を待たせたのだ。そろそろ来る頃であろう、と。

 

「5マナで《超越男》の上に《愛の無限 オーケストラ》を進化。《オーケストラ》で《xii》を攻撃。その時、下の《超越男》を墓地へ送り、メテオバーンの効果を発動」

 

雪の使うこのデッキを代償するクリーチャー、《愛の無限 オーケストラ》。コストが5ではあるが5色、そして全文明を使用しなければいけない超無限進化の制約から、扱いにくい部分があるクリーチャーだ。そこまでして、何故、超越オーケストラというデッキがあるのか。その答えはこのクリーチャーの持つメテオバーンの効果である。

 

「山札の上から3枚を表向きにし、多色のクリーチャー、呪文を好きな枚数使うことが出来る」

 

これが、雪の最後の希望。雪に勝ち目があるとすれば、このクリーチャーの能力で多色カードでどれだけアドを稼ぐかである。山札の一番上は《コダマダンス・チャージャー》であるのが確定してはいるが、残り2枚は不明。

 

そう、そして、この「ちょっとアドバンテージ稼ぎに行くか・・・」という思考から、雪はこの試合で多くの不幸を呼び寄せることになる。

 

雪の腕が山札の上へ伸び、指先で1枚ずつ捲る。

 

 

 

「1枚目、《コダマダンス・チャージャー》」

 

 

 

この場に居る全員が息を呑む。緊迫したこの瞬間に、全ての者の視線が釘付けとなっていた。

 

 

 

「2枚目、《メメント守神宮》・・・・・・」

「最後っすね・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 

 

最後、山札を捲る雪の指は微かに震えている。恐る恐る、掴んだカードを表向きにする。

 

 

 

 

 

 

「3枚目・・・・・・・・・・・・《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》」

「あ」

 

終わった。雪は「お前ぇ・・・お前ぇ・・・」と《オーケストラ》を恨む。

 

多色デッキで3枚捲って多色がないというその運のなさに、憐は「凄い」と口に出す。雪はそれに何の反応も示さず捲った3枚を山札の下に置き、《xii》と《オーケストラ》とのバトルの後、静かにターンエンドを告げた。

 

「・・・・・・ターンエンド」(マナ11)

「私のターン、ドローするね」

 

尚、そんな状況でも平然と自分のターンを行う凪。《xii》を除去してきたことを凄いとは思っていても、雪の運の低さには全く関心が無いらしい。

 

「《白騎士の無限龍 ウルフェリオス》をマナへ。5マナで《超次元 ドラヴィタ・ホール》。効果で《白米男爵》を回収。超次元ゾーンから《時空の不滅 ギャラクシー》をバトルゾーンに。3マナで《白米男爵》。1マナチャージしてマナゾーンから《白騎士の聖霊王 HEAVEN》を回収。ターンエンド」(マナ9)

 

やろうと思えばこのターン、《ウルフェリオス》を出すことも出来た。明かされていない凪の手札には《xii》もあった。しかし、それをしなかった。

凪は警戒していた。雪の《オーケストラ》のおかげで思い出せた多色デッキとの対戦での脅威、《ザ=デッド・ブラッキオ》を。

先程雪の使ったS・バックは、何年もの時を経て更なる進化を遂げていた。その名も、スーパーS・バック。

その能力を持つクリーチャーは、今現在《ザ=デッド・ブラッキオ》1体のみ。故に、カード全体で見てもその希少性からかなり有名なカードである。

では何故、凪はそれに気づかなかったのか。

思い出して欲しいが、この世界では4c以上を扱う人間が少ないのだ。つまり、5cはかなり限られてくる。

そして、《ザ=デッド・ブラッキオ》の持つスーパーS・バックという能力は、その能力を得る(・・)のに条件があるのだ。

それは、多色マナ武装と呼ばれるものである。

多色マナ武装を知るには、まずマナ武装について知らなければならない。

 

マナ武装とは、マナゾーンに指定の文明が指定の枚数以上あって初めて使用することの出来る能力である。一概には言えないが、マナ武装5を持つ自然のクリーチャーならば、大体は自然のマナ5枚が条件となる。

そして、多色マナ武装。マナ武装の説明を理解した方は察した方も多いのではないだろうか?多色マナ武装とは、マナゾーンに多色のカードが指定の枚数揃い、初めて使用することの出来る能力である。

そして、この多色マナ武装が《ザ=デッド・ブラッキオ》の存在を凪が忘れてしまっていた原因ともなっているのだ。

 

《ザ=デッド・ブラッキオ》の持つ多色マナ武装の条件はこのカードが自分の手札にあり、自分のマナゾーンにカードが5枚以上あって5文明がそろっていれば、このクリーチャーはスーパーS・バックを得る。というものである。

そう、このカードのみがも持つスーパーS・バックという能力は、マナに5cが無ければ使用出来ないのだ。

つまり、《ザ=デッド・ブラッキオ》は5cのデッキでその真価を発揮する。だが、この世界で5cは扱う者が少ない。よって、《ザ=デッド・ブラッキオ》の知名度は高くとも、実際に使われることが少ない為忘れられやすいという現象が起こったのだ。

因みにこの世界でも、多色とは何の関わりもないはずなのに《光器サーシャ》はあまり知られていない。悲しいなぁ・・・・・・。

 

「俺のターン、ドロー。マナはチャージせず、2マナで《薫風妖精 コートニー》を召喚。ターンエンド」

 

雪もまだ、完全には諦めていない。もしかしたら、程度には勝てると思っている。そんな中出した2体目のコートニー。マナの全文明化はこのデッキの命である分大切なクリーチャーとなっている。ただ、この状態ではただの壁要員であり、次のターンに飛んで来るであろう《HEAVEN》で少しでも盾を増やそうという目的もある。

残り9マナも使うことの出来る雪の手札の2枚は受けと返しのペアである。これを見事凪に食らわすことが出来れば、雪の勝ちで終わる可能性があるのだ。

 

故に、今は出さない。

 

「確定・・・・・・かな。私のターン、ドロー。マナはチャージせず、《ラジューヌ》の効果でコスト軽減。7マナで、エンジェル・コマンドである《時空の不滅 ギャラクシー》の上に進化。《白騎士の聖霊王 HEAVEN》」

 

このデッキの凪のエースクリーチャー。《HEAVEN》が遂に召喚される。

 

「《HEAVEN》の効果で、光文明以外の場のクリーチャーを全て持ち主のシールドに送るね。ゆっきーの《コートニー》2体をシールドへ。ターンエンド」(マナ9)

「俺のターン、ドロー」

 

お互いの場にはパワー15000のエースクリーチャー。場のクリーチャーの数では凪が勝っているが、雪の《ザ=デッド・ブラッキオ》を考えれば攻撃が出来ない。cipで《ナチュラル・トラップ》を持ちつつ、メメント守神宮でブロッカーを得てしまっているからだ。

 

しかし、雪の劣勢は変わらない。正直、《サイレント・スパーク》が盾にあればと、運に縋っているくらいに。まぁ、その《サイレント・スパーク》も、《ジャミング・チャフ》を唱えられてしまえばそこまでなのだが。

そして、まだ耐えられる。と、全体除去を放つ白騎士の切り札である《HEAVEN》が召喚され、そう少し油断してしまったのだ。

 

「《フェアリー・ライフ》をマナへ、ターンエンド」(マナ12)

「私のターン、ドロー。あ、」

 

凪の口から自然と零れた驚きに、雪は最大限の警戒をする。

 

「マナをチャージせず、コストを1軽減し、6マナで《白騎士の霊騎ラジューヌ》の上に、《白騎士の無限龍 ウルフェリオス》を進化」

 

ウルフェリオス、ここまでは良い。問題は何が捲られるかだ。

 

「《ウルフェリオス》で攻撃する時、革命チェンジとメテオバーン。メテオバーンの効果で2枚を表向きに・・・・・・おおー!じゃあ《ナターリア》の上に進化するね!」

 

捲られたカードを見た凪は驚いた。何故なら、もう一枚の聖霊王、《白騎士の聖霊王 コバルト・ウルフェリオン》が捲られたからだ。

 

「《ウルフェリオス》と《xii》の革命チェンジ。《xii》の効果で1枚ドロー。シールドを3枚ブレイク!」

「攻撃を受け、手札に加わる《コートニー》を捨て、多色マナ武装5、スーパーS・バックを発動。《ザ=デッド・ブラッキオ》を召喚。効果で《HEAVEN》をマナゾーンへ」

「だよねぇ~・・・・・・ターンエンド」(マナ11)

 

聖霊王の踏み倒しなど理不尽の極みと言いたい所だが、生憎と雪は既に灰となっていた。それはそれは真っ白に。

 

凪が声を掛けるが返事がない。ただの屍のようだ。

 

屍はふと、空を見上げる。完全に現実逃避である。

 

「ゆっきー、おーい。ゆっきーのターンだよー?」

「・・・・・・俺のターン、ドロー」

 

何故、凪はたった2枚からエースクリーチャーを捲れるのだろうか。と、自分と凪の運を比較する。此方は初手から《オーケストラ》を抱えるという事故をおかしたりと酷かった。それに比べて凪のデッキはクルクルと回転している。クッ、美人はクリーチャーに好かれるとでも言うのか・・・・・・!?

・・・・・・いや、俺がこのデッキに嫌われている可能性も・・・・・・うわぁ。

 

「マナはチャージせず、《ザ=デッド・ブラッキオ》でシールドを攻撃、革命チェンジ。《プチョヘンザ》をバトルゾーンへ」

「《コバルト・ウルフェリオン》と《xii》をマナに置くね」(マナ14)

 

そして、とうとう凪のシールドがブレイクされる。3枚のシールドにはS・トリガーと書かれたカードはなかった。

 

「ターンエンド」

 

お互いにピンチといえる盤面。《プチョヘンザ》の制圧力がある分、雪の方が優位に立っているだろうか。

しかし此処で、雪の《プチョヘンザ》の能力が仇となる。

 

「私のターン、ドロー。《バイケン》をマナへ。4マナで《超次元ホワイトグリーン・ホール》。効果で超次元ゾーンから《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンへ。そして《ホワイトグリーン》の効果で手札を一枚新しいシールドとして裏向きにして置く。更に、マナゾーンから《白騎士の聖霊王 コバルト・ウルフェリオン》を手札に戻す。プリンプリンの効果対象はプチョヘンザに。8マナで《黒豆男爵》を召喚して、ターンエンド」(マナ14)

 

凪の手札は現在5枚。シールドも仕込まれており、マナも十分。

しかしクリーチャーは全てタップイン。《プチョヘンザ》は攻撃出来ないが、《オーケストラ》は未だに顕在している。

 

「俺のターン、ドロー」

 

対する雪は手札4枚。場には攻撃出来ない《プチョヘンザ》とメテオバーン後の《オーケストラ》。シールドは無いがマナは十分。

しかし、相手の場には《黒豆男爵》が存在している。cip持ちクリーチャーはバトルゾーンに残らない。

 

「マナはチャージせず、2マナでコートニーを召喚。8マナで《ザ=デッド・ブラッキオ》を召喚し、効果で《黒豆男爵》をマナゾーンに送る」

「《黒豆男爵》の効果で《ザ=デッド・ブラッキオ》をマナゾーンに送るよ」

「《オーケストラ》で《ナターリア》を攻撃」

「その時、ニンジャストライク5で《怒流牙 佐助の超人》を召喚。効果で1ドロー、手札の《バイケン》を墓地に送り、墓地の《超次元 ホワイトグリーン・ホール》をマナゾーンへ置く。そして捨てられた《バイケン》の効果でバトルゾーンへ」(マナ15)

「あ」

 

あ、マズ、と思った頃にはもう遅い。雪の攻撃は《佐助の超人》を召喚させてしまい、《バイケン》の効果により》《プチョヘンザ》が手札へと戻される。《オーケストラ》の攻撃は通ったが、雪にはアンタップしているクリーチャーが居ない。

 

「《プチョヘンザ》が除去されたなら、本当にお終いっすかねぇ・・・・・・」

「・・・・・・ターンエンド」(マナ12)

「私のターン、ドロー!7マナで《怒流牙 サイゾウミスト》を召喚。効果で墓地を山札に加えてシャッフル。あ、カットお願い」

「了解です」

「ありがと。その後シールドを新たに1枚追加。バイケンでダイレクトアタック。革命チェンジ。《xii》をバトルゾーンへ。効果でカードを1枚ドロー」

 

コスト7より大きいシノビはこのデッキには入っていない。アンタップしているクリーチャーも居ない。

雪の負けだ。

 

「何もないです。いやぁー、疲れたぁー・・・・・・」

「やったぁー!ゆっきーに勝てたぁぁ・・・・・・」

 

どちらも集中して疲れたのか、床に仰向けになる。床に敷かれたコルクが柔らかい。

 

「お疲れ様っす。でも会長は次に俺と試合があるんで。楽しみっすねぇ~」

「ちょっと休ませてぇ・・・・・・」

 

疲れから嫌そうな顔をしている会長に「3分間待ってやるっす」と言い、雪と凪のデュエマは凪の勝利という形で幕を下ろした。




専門用語解説
ちょっとアドバンテージ稼ぎに行くか:カードゲームにおける死亡フラグ。アドバンテージを稼ぐ時はバイケンの枚数に注意してプレイしよう。

遅くなりました。後数日で修学旅行のchangeです。
ちょっとリアルの方でデュエマの大会に出たり塾の補講があったり旅行の準備などで忙しかったのが辛かったです・・・・・・。あ、デュエマの大会は結構良い成績でした。3勝2敗。デッゾとNEXダンテにヤラレチャッタ。

徐々に増えていく文字数・・・・・・。デュエマはこうなる運命にあるんだろうなぁ。
次回は凪vs憐。トリーヴァ白騎士vsバロムデッキとなります。
感想や誤字指摘があればいつでも、評価やお気に入りは勿論、しおりを挟んで頂くだけでも作者は嬉しいです。
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