茶番にお付き合い頂きありがとうございました。あまり設定の公開は出来ていないのですが、今回の話はいつかの誰かのストーリーです。まぁ、UA1000突破の特別回で少し遅いですが、クリスマスの日を舞台としています。どうぞ。
12月25日
寒い季節だ。今年もまたクリスマスがやって来た。クリスマスの今日は雪が降っており、俗に言うホワイトクリスマスに該当するらしい。ロマンチックな若者達は、自分の恋人と都会では滅多にないその現象に感動し、影でコソコソと熱い口付けをしている。何とも目出度いものだ、何故自分はこんなものを見ているのだろうか。大きなクリスマスツリーのある広場のベンチでイルミネーションと街灯を灯りに独り本を――失礼、紙の本をこんな状況で読んでいるのだと勘違いさせてしまいそうなので詳しく説明するが、スマホで電子書籍を読んでいた。雪の降る夜に、わざわざ寒い風が吹いている外で、だ。
とても愚かな行いに思えるし、そんな状況の説明を聞かされた所で、
そこで、僕の暇潰しに少し付き合って貰いたい。本を読むのも飽きてしまってね。僕の昔にあった話さ。
・・・・・・ん?ただの昔話の為にここまで話を引っ張ったのか・・・・・・だって?あぁ、それは申し訳ないことをした。こうでもしないと、話の入り方というものが思い付かなくてね。特別編、というものなのだから、多少のメタフィクションや強引さは許して欲しい。
許して貰えるというのなら、僕の昔話をお聴かせしよう。駄目なら今すぐブラウザバックするべきだ。あまりの酷さに目が眩み、こんなとってつけた様な話のせいで体調を崩してしまうかもしれないからね。
・・・・・・ここまで読んだのなら、もう話しても良いだろうか?
・・・・・・良し、それではしがない独りの男が体験した昔話を語るとしよう。
――さて、今から話すのは、かつてあったとあるクリスマスの日、僕が住んでいた家での出来事から始まった・・・・・・
『クリスマスが暇なんだけど食べに行かない?』
僕はこの日、あまりの退屈さに痺れを切らして、RAINで友人に外食の誘いを入れたんだ。サンタのくれるクリスマスプレゼントを楽しみにしていた少年は、青年になってからというものは、サンタがプレゼント出来ないものばかりを欲する様になっていたんだ。単位が欲しい、彼女が欲しい、コミュ力に知識、時間が欲しいってね。
『無理!生徒会で食べる予定がある(人ω<`;)』
そして返って来たのがコレだ。絵文字を使って感情表現をする辺りが如何にも彼らしい。
だが、本当に困ってしまった。生徒会で食べるということは、もう一人居る友人も予定が空いてないということだ。
そしてこの時の僕は、とうとう家を出て近くのカードショップに行ったんだ。退屈は毒と同じだと考えていた僕には、どうにかしてこの退屈を解決する様な物が欲しかったのだ。
カードショップはクリスマスの装飾が施されており、『デュエマクリスマスオリパ1回500円!』と書かれたポスターが掛かっていたのを覚えている。僕はオリパというものは滅多なことがない限り買わないのだが、今回はクリスマスだ。試しに一つ買ってみるのも悪くない、と買う理由を付けて一つ購入した。
少々混んでいる対戦ブースの空いているスペースに座り、オリパを剥く。合計5枚入っている様で、ベリーレア以上が1枚確定らしい。
僕はドキドキしながらクリスマスの退屈を吹き飛ばそうとパックに入っているカードを見た。
まぁ、所詮はオリパ。希少性の高いカードは、そんなに都合よく出て来てはくれなかった。
はぁ・・・・・・、と深い溜め息をつき、再び退屈になってしまった僕は天を仰ぐ。
そんな時、奇跡が起きた。対戦ブースの壁際に、クリスマスのデュエマ大会の予定が書かれていた。
僕はこれ幸いと、エントリーシートに名前を書きに行く。デッキは最近構築した新デッキを持って来ていた為、それで出ることにした。
ワクワクしながら大会の時刻を待っている僕は、遠目からはクリスマスプレゼントを楽しみにしている小学生のように見えたかもしれない。今考えると少し恥ずかしいな・・・・・・。
デッキをチラチラ見てはシャッフルし、またチラチラと見てはシャッフルをする。この繰り返しだ。手癖が悪いにも程がある。もう少し態度に出さないよう出来なかったのだろうか?
こんなことをしている内に時間が来て、店員が指揮を取り、大会が開催された。昔のことだから、今思い出そうにもどのようなデッキが使われていたのか、あまり思い出すことは出来ない。ただ、クリスマスというお祭りのような日であったからか、ただ好きに楽しむことを目的とした人達が多く、楽しみながら勝つことを目的とした環境デッキなどを見なかったことは覚えている。僕もその一人で、1回戦、2回戦と勝ち進んで行ったんだ。
そして迎えた決勝戦。負けた人達と店員さんが囲む卓の中で、それは行われた。
「えー、クリスマス大会決勝戦を行います。『惨タム』さんと『肝っ玉メリー』さんは準備が終わったら始めて下さい・・・・・・はい、それじゃあ始めます」
「「お願いしまーす」」
『惨タム』と呼ばれた俺は先行、手札を見て一波乱起こりそうな手札だな、と思った。悪い訳では無いのだが、良すぎるのだ。
向こうの『メリー』さんも俺の超次元を見て置き次元かと疑っている様子だった。まぁ、俺も初見だったらそう思う。というより、今の反応であちらが俺のデッキの動きを見ていなかったことが判明した。情報アドとしては重要だろう。
「《プチョヘンザ》をマナへ、ターンエンド」(マナ1)
「成長かなぁ・・・・・・?ドローします。《終の怒流牙 ドルゲユキムラ》をマナに置いて、ターンエンド」(マナ1)
安心しろ、成長ではない。というかアナタもインセクト型のユキムラデッキじゃないですよね?そこが怖いんですが・・・・・・。
「ドローします、《テック団》をマナへ、ターンエンド」(マナ2)
「あれビマナか・・・・・・?ドローします。《水上第九院 シャコガイル》をマナに置いて、2マナで《デスマッチ・ビートル》を召喚してターンエンド」(マナ2)
「うーんデスマッチィィィィ・・・・・・」
一番面倒なのが出て来てしまった。コイツを殺さないと本格的にマズいぞ。
「ドローします・・・・・・、《フェアリー・ライフ》をマナへ、3マナで《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》を唱えます。効果で1マナチャージしてターンエンド」(マナ4)
「・・・・・・これはビマナかな。ドローします、《超電磁マクスウェルZ》をマナに置いて、ターンエンド」(マナ3)
「《マクスウェル》が立たない内に・・・・・・いや、立っても問題ないか・・・・・・?」
呪文を封じられるのは痛いが、俺はこのデッキの動きを考えるとそこまで問題は無いと判断した。正直、《マクスウェル》より《デスマッチ》の方がキツい。
ただ相手が4マナになるのなら、きっとジャイアントデッキにほぼ入っている奴が出て来る筈だ。その時を待つ。
「ドローします、《リバイヴ・ホール》をマナへ、4マナで《フェアリー・シャワー》を唱えます。効果で山札の上からカードを2枚確認し、1枚を手札、1枚をマナに。ターンエンド」(マナ6)
手札に加えたのはこのデッキのキーパーツにして切り札。大分前にもしこんなカードがあったら、と考えていたのだが、公式がそれを出してくれたことと偶然見つけたとあるツインパクトカードで完成したのがこのデッキだ。正直、事故率は低めに感じている。構成の骨組みが長く使っていたビマナだったからかも知れない。
「ドローします、《ソエルボ・クロウラー》をマナに置いて4マナで《西南の超人》を召喚します。ターンエンド」(マナ4)
見慣れたクリーチャーだ。使っていたこともあって痛い程このクリーチャーがジャイアントのデッキで活躍するのか良く理解している。次のターン、きっとこの人はドルゲを出す筈。その前にプランを崩すしかない。
「ドローします、《プチョヘンザ》をマナへ、6マナで《ドルツヴァイ・アステリオ》を召喚。マッハファイターの効果でアンタップしている《西南の超人》を攻撃します。何かありますか?」
「あぁーー・・・・・・いや、無いです」
相手が《ドルツヴァイ》入ってんのかぁ・・・・・・ヤバいヤバいと小声で焦りを口にしているのが聞こえる。予想外の一手だったのだろう。
「《ドルツヴァイ》の効果でバトルに勝ったことで山札からマナを2倍にします。ターンエンド」(マナ14)
「ドローします、《仁王の超人》をマナに置き、4マナで《怒流牙 佐助の超人》を召喚します。効果で1枚ドロー、1枚捨て、墓地から1マナチャージ。ターンエンド」(マナ6)
14マナもあれば本来このデッキは1ターンで決めに掛かれるのだが、《デスマッチ》があまりにも邪魔過ぎる。
山札も残り16枚だ。悠長なことはあまりしていられないだろう。
「ドローします、《ドルツヴァイ》をマナへ、11マナで――」
このデッキの切り札は、何やかんやであまり使われない11という重いコストではビマナではまずライバルが多すぎるクリーチャー、その正体は――
「《最高学府 インテリエイル》を召喚します」
「え、《インテリエイル》?え、何か嫌な予感してきた」
面白そうな効果だけどその重すぎるコストから「デリートでおk」とか言われたりする可哀想な子《インテリエイル》。ただ、コイツでしか出来ない面白いコンボを閃いた。偶然にもそれは割と実現しやすい癖にロマンがあった。
そして、閃いたのならば組むしかない!それがデッキビルダーの衝動というモノだ。
「ターンエンド」(マナ15)
「ドローします・・・・・・いやでも《デスマッチ》居るからまだ大丈夫かな・・・・・・?うーん・・・・・・《ルナ・コスモビュー》をマナへ、まぁ一応出しとくか。《デスマッチ》をもう一体召喚し、ジャイアントが3体、アース・イーターが1体居るので、合計4つコストを軽減し、4マナで《剛撃戦攻ドルゲーザ》を召喚します。効果で合計6枚ドローします。ターンエンド」(マナ7)
やっぱ凄いな《ドルゲ》。アド獲得力が段違いだ。環境にまでのし上がったという記憶はないが、中堅デッキとしてもその強さは結果からも読み取れていた。が、いざ相手すると面倒だな。このデッキも次からはもっと手軽にパワーの高い低コストクリーチャーを除去出来るようにしなければ。
「ドローします。マナはチャージせず、7マナで《テック団》を唱えます。効果は5以下を対象にします」
「あ、マズい!」
ふへへへへ、さぁ手札へ戻れ《デスマッチ》と《サルトビ》よ。お前達は手札でこの長ったらしいコンボを見させられるのだからな!
などとヒールめいた台詞を胸中で話していた僕は、遂にコンボのスタートを宣言する。
「更に5マナで《リバイヴ・ホール》を唱えます。効果で《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》を回収。超次元ゾーンから《勝利のリュウセイ・カイザー》をバトルゾーンに」
ループが、始まる。
「《インテリエイル》の効果で手札に加えた《黒豆だんしゃく/白米男しゃく》を唱えます。効果で1マナチャージし、マナから《奇石 アンコバ/ブツブッツ・レイン》を回収します。そして《インテリエイル》の効果で《奇石 アンコバ/ブツブッツ・レイン》を唱えます。効果で墓地から《リバイヴ・ホール》を回収。再び《インテリエイル》の効果が発動し、《リバイヴ・ホール》を唱えます。効果で《奇石 アンコバ/ブツブッツ・レイン》を回収します」
「・・・・・・あれ?」
お、初見でお気付きになられるとは。良い目をしてらっしゃる。周囲の人達も気付いたかな。
「効果で《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンに。そして《インテリエイル》の効果で《奇石 アンコバ/ブツブッツ・レイン》を唱え、墓地から《リバイヴ・ホール》を回収します。これを繰り返し、超次元ゾーンから勝利セットを2つと《ガンヴィート》を1体バトルゾーンに出します」
さて、勝利セットが揃ったのなら、やることは一つだ。
「《生姜》と《醤油》と《勝利プリン》でV覚醒リンクし、《唯我独尊ガイアール・オレドラゴン》を2体形成します」
――おぉ・・・
観客から漏れ出る声に気分を良くした俺は、更に《インテリエイル》を酷使する。
「そして手札に戻る《奇石 アンコバ/ブツブッツ・レイン》を再び《インテリエイル》の効果で唱え、今度は墓地から《テック団》を回収し、《インテリエイル》の効果で唱えます。対象は《ドルゲ》で」
「あー、死んだか・・・・・・?」
よし、行こうか。
「《オレドラゴン》でワールド・ブレイクします」
「受けます・・・・・・トリガー無いです」
「じゃあ・・・・・・《ドルツヴァイ》で攻撃します」
「ニンジャストライク5で《佐助の超人》を召喚し、効果で1ドローして《バイケン》を捨て、墓地から1マナチャージ。《バイケン》効果で《ドルツヴァイ》を戻します」
「じゃあ《インテリエイル》で攻撃します」
「ニンジャストライク5で《佐助の超人》を召喚し、《バイケン》の効果で1ドロー、自身の効果で1ドローし《バイケン》を出します。《バイケン》効果で《インテリエイル》を手札に戻します」
む、意外と耐えるな。少しマズいかな?
「《オレドラゴン》で《バイケン》を攻撃します」
「無いです」
「バトルに勝ったので効果でアンタップ。もう一体の《バイケン》に攻撃します」
「無いです」
「効果でアンタップ。《オレドラゴン》で攻撃します」
「んーーーーーー・・・・・・無いです。ありがとうございましたぁぁ」
危なかった。《オレドラゴン》2体に少し油断してしまったのが原因かな。
「何か《インテリエイル》で超次元の穴ガバガバだったんですけど」
「きっとサイキックがトランザムしてたんですよ」(適当)
さて、優勝者には景品が貰えるらしい。何だか気になるな・・・・・・
店員さんがチケットのようなものを持っているような・・・・・・?商品券だろうか?
「はい、本日の優勝者は『惨タム』さんです!本日の1位の景品は『スタミナ次郎』さんの食事券です!」
あー、カード関連じゃないのか。まぁ、嬉しいものだし、何よりも試合がかなり楽しめた。退屈も感じないからこれで満足かな。
こうして大会を終えた僕は、確か・・・・・・あぁ、そうだ、RAINでアイツに優勝したことを報告したんだっけ。その時に食事券の話をしたんだけど――
『あ、そこで食べてる』
なんて返信が来たときにはビックリしたよ・・・・・・ホントにね。その後、僕は『スタミナ次郎』に行ってみたんだ。そうしたら、アイツの言った通り、その時の生徒会のメンバーが居てね。勿論アイツや彼女も居たな。手招きされた僕はホイホイとそこに座り、楽しい楽しいクリスマスを過ごしましたとさ。
え?もっと詳しく?そうだな・・・・・・あぁ、僕が大会で何して来たのか聞かれたから、答えてやったな。そしたら何故か、「オレドラゴン2体とかお前クリスマスに殺意高過ぎだろ」とか全員にドン引きされたな。うん。今考えてもアレは酷いと思うな、僕は。
さて、話すことは話したけれど、正直読んでいる君が満足出来ているか心配だ。こんな思い出話なんかを聞かされて、イライラさえしていそうだ。
でも、安心してくれ。もうこれ以上はイライラするような昔話を追加でしなくて済みそうだ。
「遅くないですか?」
「ごめんね」
さて、クリスマスを満喫しますかね。
絶対に人物名を出さないという鉄の意思で書きました。無駄に疲れた気がします。
今回のデッキは作者考案の『ビマナインテリエイルループ』です。というか、今の所このコンボについて話してるのTwitterでは多分私だけなのでリアルの方のアカウントがバレるかも知れませんね(笑)