デュエマ描写はありませんが、この物語においてとても重要な話となっております。
どうぞ。
秋特有の乾いた風が吹く住宅街のとある一軒。
学生達が夏休みを終え、学校へ行っている中、子供が居なくなり暇が出来た母親はTVのニュースを見ながら気怠げな表情で床に寝転がっていた。
『次のニュースです。Zプロジェクト事件の主犯とされていた
「なぁ、どこ出身!?」
「何か好きなカードとかあるの!?」
「デュエマ以外に何かやってる!?」
「えーっと」
どうも白菊 雪です。現在進行形で困ってます。
前回、委員長とのデュエマを全校生徒の前でVR機能を使用しプレイしたのだが、試合が終わった後、生徒は教師の指示に従いそれぞれの教室へと移動。俺も移動することになり、2ーBの教室へと移動したのだ。
そして、俺が教室に入ると一斉に人が押し寄せて来たのだ。物珍しさから来る行動なのは理解出来るが、それをされている側からすれば面倒なことこの上ない。
俺が慣れない今の状況にどうするべきか困惑していると、見知った顔の生徒が助け出してくれた。
「ほら、めっちゃ困惑してんじゃん。はい解散解散」
「えっ、憐・・・・・・」
「久し振りっすね雪ちゃん」
憐が解散と言うと、集まっていた生徒がワラワラと散っていく。流石に迷惑だな、と思い行動したようだ。
お前ここのクラスだったのか・・・・・・
「久し振り。で、俺はこの後どうしたら良いかな?」
「先生の指示を待つしか無いんじゃないっすかね?」
先生が来るまでか。それまでどうするべきか・・・・・・
「ぁ、」
そういえば、今まで自然過ぎて気にならなかったが、俺の今居るこの高校はどういった高校なのだろうか?カード専門らしく聞こえたのだが。
詳しい説明を憐に要求すると、憐は頭を掻きながら自信無さ気に話し始める。
「えーっと、絵札専高、良く使われる略称はF専なんだけど、カードゲームを専門とした高校っすね。確か高校が掲げているのは、世界に通ずるカードゲーマーの育成、だったっすかね?多分」
「専門なんて場所に試験も無しで入れるものなのか?普通」
「それは雪ちゃんが・・・・・・あー、良いのかな・・・・・・?」
「・・・・・・?どうした憐?」
いきなり口ごもる憐を不思議に思っていると、教室の扉が開き、この教室の担任と思わしき男性が入って来た。黒髪黒目に黒のスーツ。黒のネクタイに黒い靴と、至る所が黒だった。
「はい、着席して下さい。えー、この後の予定なのですが、予定を変更し、下校となりました」
――おおー!
――何でだろ?
「え?何でだろ?まぁ良いや、続きは後で」
唐突な発表にざわめくクラス。憐が着席したのを確認し、何故なのか理由を話さない担任は淡々と生徒に報告を続ける。
「一応、要望があれば白菊への質問などはするが、簡潔にし、質問は1人1つにすること。良いな?」
――はーい!
担任が質問のある者は挙手、と言うと、見た目からパリピと感じられる男女が何人か手を挙げていた。陽キャならまだしもパリピは苦手な雪は勘弁して欲しいと思いながらも、質問に答えていった。
――好きな人居る?
「居・・・・・・ないかな」
――どこ中?
「記憶喪失だから分からないですね。スミマセン」
――記憶喪失って何で?
「理由は僕も知らないですね」
――憐とはいつ知り合ったの?
「夏休みになg・・・・・・道に迷ってる時に」
嘘もあるが、誤解は生みたくないので仕方なし。凪さんの家とか言った日にはまともな男子の友達が出来なくなりそうな上に女子ネットワークで最悪死ぬしな。
というか前提としてそういう話は憐に迷惑を掛ける可能性がある。あまり迷惑は掛けたくない。
「他居ないか~?・・・・・・じゃあ終わりにするぞ~」
「きりーつ、礼」
――この後遊ばない?
――ダイダロス行こうぜ?
「あー、言い忘れてたが今日は外出を禁止します。先生達が見回りしてるからしてるのバレるからな?」
――はぁ!?
――ふざけんなよぉ・・・・・・
ん?外出禁止なのか・・・・・・残念、カードショップに寄ってみようかと思ったんだけど。
俺は落胆を表情に出さずに何気なく窓を見る。
空を覆う灰色の雲は、どこか不穏な気配を感じさせていた。
「さっ、雪ちゃん帰るっすよー」
「ん。凪さんは待たないの?」
「あぁ、RAINで『ちょっと用事あるから今日は待たなくて良いよ』って会長からメッセージが」
下駄箱から外靴を取り出した雪はスマホを片手に雪を待っている憐に凪を待たないのか質問するが、どうやら凪は何か用事があるから一緒には帰れないらしい。
「まぁ、気にする程の事でも無いでしょうし、俺も会長と帰り同じなのはすぐそこの信号前までっすからね」
「あ、そうなんだ」
じゃあ憐からしたら帰りは待たなくてもそこまで問題ないのか。
にしても困ったな・・・・・・
「憐、ここから凪さんの家までの道、説明出来る?」
「え?まぁ、そりゃ一応」
助かった・・・・・・。
「なぁ、別に送ってとは言ってないんだけど」
「良いじゃないすか。俺、家帰っても正直退屈なんで。こうして雪ちゃんに会長の家まで案内するという大義名分があれば、もし先生にバレても怒られることは無いっすしね」
「お、おう」
憐が本当にそう思ってしているのなら良いのだが、やはり何処か悪い気がしてしまう。心の中で謝っておこう。
そうして住宅街が並ぶ帰り道を歩いていると、憐は何かを思い出したかの様に話し掛けて来た。
「そういえば、雪ちゃんはどこまで記憶喪失なんすか?」
「この世界が新世界に感じる位には記憶が無いかな」
「重症っすねぇ・・・・・・。じゃあ、会長についてとかは?」
「全く。生徒会会長でF専に通う俺と同じ高2の命の恩人、みたいな認識」
赤の他人、という訳では無いのだが、どこかまだ同じ家に住んでいる人、という認識が持ちにくいのは確かだ。全然知らないことの方が多い。
「成る程な・・・・・・」
「憐は凪さんについて何か他に知ってることない?」
彼氏に彼女について聞くのが一番だろう。雪は憐と凪さんが付き合っているという憶測でそんな質問をしてみた。結果として、憐は雪の知らない凪についての説明を幾つかした。
「まず会長はF専の優等生に位置付けられてるっすね。成績が優秀なんすよ。だからF専の2年ではそれなりに有名っすかね」
「へぇ・・・・・・やっぱり頭良いんだ」
「でも完璧って訳じゃないんす。会長は成績優秀とは言ったっすけど、それは評価全体で見た場合なんすよ」
ん?それってつまり・・・・・・?
「テストで1位とかそういう訳ではないってこと?」
「そうっす。授業態度やノート評価などは凄まじいんすけど、テストは周囲と同じで並みなんすよ。俺と同じ位っすね」
そうか、そういう意味で成績優秀なのか・・・・・・
俺は憐の説明を聞いて心の底から安心した。
「ふぅ・・・・・・良かった」
「ん?何がっすか?」
「凪さんが完璧過ぎて自分と同じ人間かっ!?って思う所だったんだけど、ちゃんと欠点があって安心した」
「そうっすね。今の雪ちゃんと同じことを、クラスの皆は思ってたんすよ。あー、そうと知らなかった頃が懐かしいなぁ・・・・・・」
もし凪さんが完璧超人だったのなら、孤立していたのだろう。だが、凪さんの欠点が、クラスの人に安心感を齎したのだろう。自分と同じ所が、あの人にもあるんだ、と。
雪はそう結論付け、気になっていたことを憐に聞く。
「そういえばさ、あの時なんて言おうとしてたの?あの、言っていいのかってヤツ」
「あー、実は雪ちゃんに言うとマズいんじゃないかなぁって話題なんすよ、ソレ。会長の心配していた姿を見た俺が言うのは流石にどうかなって」
「あー、理解した。ゴメン」
何か言えない事なのだろう。とても気になるが、いつか聞けることだと思い、我慢するしかない。
「いや、秘密にしてるこっちが悪いっすから。謝るのは雪ちゃんじゃなくて俺と会長っす」
「・・・・・・そっか」
そうこう話している内に、柴崎家に到着した。家までの道は覚えたので、これでもう憐に案内させてしまうことは無いだろう。
「じゃあ」
「んじゃ、また明日っす」
お互いに手を振って別れを済ます。さて、家に入るか、と家の方を向き、1歩歩き出そうとした。
その時だった――
「・・・・・・」
寒気がする。
ナニか変な感じダ。
汗ガ止マラナイ。
苦シイ。
――どこだ・・・・・・
声ga聞コエru。聞キ覚エnoナiハzuノ声。
ダガ、何カga訴エteイru。
奴da。奴ga来タnoダ。
逃 ゲ ナ ケ レ バ
逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ逃ゲロ
――そこか・・・・・・!
「――ッ!?」
「どうしたの雪君・・・・・・?」
「え、あ、嫌、立ち眩みがしただけです」
「?そう?凪と一緒じゃないのね」
何だ今の感覚・・・・・・普通じゃない。
心の底から感じた恐怖の様な感覚。本能が警告を鳴らしていたかの様に感じた。
今のは絶対に気のせいなんかじゃない。
今まで生きて来た中で、初めて感じた感覚だった。思い出しただけで、手が僅かに震える。
「ねぇ、本当に大丈夫?」
買い物から帰って家の鍵を開ける舞さんの心配を気にもせず、雪はボーッと立ち竦む。
考え込む雪とは対照的に、雪の体は既に汗が引いて、苦しさも無くなっていた。何だったと言うのだろうか・・・・・・。
「そういえば、早いわね。帰るの」
「あ、あぁ、急に先生が帰る様に言って・・・・・・」
「ふーん・・・・・・。本当はエスケープしたんじゃないのぉ?」
「してませんよっ!?」
本当かなー、と言いながら、舞は雪と家に入る。
――・・・・・・
その姿を誰かに見られているということには気付かずに。
「あの、先生、話って何ですか?」
生徒達が帰り始めた頃、教員室にて女生徒と男性教師が向かい合っていた。女生徒は何故呼ばれたのか理解出来ておらず、何かやらかしたのかと心配そうにしている。そんな女生徒の姿を見て、男性教師はゆっくりと話し始めた。
「・・・・・・今朝ね、夢原死刑因が逃走したとのニュースがあった」
「・・・・・・えっ、」
信じられない。そんな顔で凪は目の前の教師に説明を求める。何故、何故逃走したのか、と。
「搬送車の中で違法なVRソフトを使用し、監視を気絶させたらしい。入手口は不明。今も調査中とのことだ」
「そんな・・・・・・。・・・・・・白菊君はどうなるんですか?折角目を覚ましたのに、また監視が付くんですか・・・・・・!」
「落ち着け柴崎。確かに夢原翔真は白菊を狙うかも知れない。だが、まだ本当にそうなるかは不明だ。だからこそ、警察は下手に動けない。国の汚点として有名になってしまったZプロジェクト事件に、憶測だけで警察は動けないんだよ」
確証が必要だ。そう言って男性教師は苦い顔をする。こんな話をしたくなかったということが凪の様な生徒からも見て取れた。
「だから今は、夢原翔真を泳がせる。夢原翔真が脱走したのも、確実に共犯者が居るからだ。なら、夢原翔真が脱走した今、安全な場所としてソイツと共に生活する可能性が高い。そこを抑える」
「白菊君はまた夢原の脅威に脅かされるんですか?もう止めて下さいよ。何でまた・・・・・・」
雪だけが、巻き込まれなくてはならないのか。
凪は雪の知らない以前の“白菊 雪”を知っている。だからこそ、許せなかった。記憶を失う程にまで被害を受けた雪に、何故まだ不幸が訪れようとしているのか。
凪の声音は震えていた。
「酷な話だが、分かってくれ。もしここで夢原を取り逃せば、死刑が廃止された場合、終身刑が最高刑になってしまうかもしれない。下手をすれば、元号が変わることで刑が軽くなってしまう可能性があるんだ」
それは、凪にとっては大きなことだった。
悪逆の限りを尽くした非人間の罪が軽くなる。
そんなことは、許される筈が無い。
「・・・・・・分かりました」
「ありがとう。本当に感謝するよ。私達教員も、警察も、必ず白菊君を助ける」
確証の無い言葉を口にする教師だが、凪はそれでも、その言葉を信じたかった。
「ふぅ・・・・・・柴崎さん帰ったか」
「にしても、嫌な話だねー」
「ね~?凪ちゃん可哀想だったよね」
「そういえば、Zプロジェクト事件ってどんな被害出たんすか?俺、その頃海外に居たんで詳しく知らないんすよ」
「あー、僕ももう覚えて無いんすよねー」
「うわー、二人ともそれは無いですよ」
「Zプロジェクト事件ってのは、当時天才だと言われていた夢原翔真を代表として実行した国の企画、Zプロジェクトで起きた事件なんだよ」
「Zプロジェクトとは、スポーツとなったカードゲームで負け続きの日本を強豪国にする為の選手育成プロジェクトだったんだ」
「そして、そこで事件は起きた」
「Zプロジェクトは企画段階の内容では大きく纏めるとただプレイヤーが限られたカードでデッキを組み、対戦をするという内容だったんだ。だが、夢原がしたのは全くの別物だった」
「あ、そこからは俺も覚えてますよ。確か、大量自殺に追い込んだんですっけ?」
「まぁ、それは結果で。そうなった理由は、企画の途中で夢原が急遽内容をより良くすると言ってプランを変更したことにある。しかも国には言わず、独断でだった」
「その内容は、限られたカードでデッキを組み、対戦。そこで勝った者が敗者に対し、夢原の提示する3つの条件の内どれかを飲ませることだった」
「その3つって何なんですか?」
「1つ目は勝者へのカードの提供、2つ目は夢原の研究への協力、3つ目が――自殺だった」
用語解説
Zプロジェクト・・・夢原翔真が代表となり実行した国が企画した日本カードゲーマー育成プロジェクト。後に大量自殺を引き起こしZプロジェクト事件としてカードゲームの歴史に大きな影響を与えた。
ちょい暗い話になりましたかね?でも、これからの話には必要なものなので書きました。
デュエマが無いのはここで手を抜く訳にはいかなかったので会話や描写を徹底したかったからです。代わりに正月辺りでイベントシナリオとデュエマ描写は書こうと思います。間に合えば良いなぁ・・・・・・どのデッキにしようか?
(まーたデュエマ無いから閲覧数ここからガタッと落ちるんだろうなぁ・・・・・・(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル)
しおりやお気に入り登録して次話のデュエマを楽しみにして待っていて欲しいなぁって(((( ;゚д゚))))アワワワワ