真実に対するその認識は正しいものか。
それは語り手のみぞ知る。
実は本編だったりするかもね・・・・・・?
「ユキちゃん起きろよ。店の中だぞ?」
雑に肩を揺すられる感覚に不快感を抱き、ユキは深い眠りから目を覚ます。
「・・・・・・何だよ」
「相変わらず感謝ってもんが無いのかねユキちゃんは?気持ち良く寝てたのを起こしたから腹が立ってるのは分かるけど。もうちょい豊かな心を持てないのかねぇ~?」
黒髪黒目のユキという少年は、目の前で木製のテーブルに頬杖をつきながら椅子に座る茶髪の少年の戯けた態度に半目で睨む。
俗に言うジト目は、ユキが取りがちな態度の一つだった。
「はは、まぁまぁ良いだろ。お陰で変な目で見られなくて済んだんだしさ」
いやまぁ、そうなんだけどさ・・・・・・
「さて、デュエマするか。ユキちゃんは何使う?」
んー、そうだなぁ・・・・・・
「百十物語でも使うかね」
「了解、じゃあ俺は・・・・・・デスザにするか」
そう言うと彼はテーブルに置かれたポーチから、黒いデッキケースを取り出した。
「うわ、俺のデッキの動きを知った上でデスザ選びやがったな・・・・・・性格悪っ」
「何のことだかワイトは知りませんなぁ?よぉし、最初はグー、ジャンケン」
ぽん、とお互いに手を前に出す。
彼はグー、ユキはチョキ。彼の力強い握り拳が、ルールという圧倒的な力で貧弱、軟弱、虚弱と三弱付いたユキのか弱いチョキから先行をもぎ取る。
「じゃあ先行」
そう言って自分の手札からカードを一枚手に取ると、それを迷いなくマナヘ送る。
「《撃髄医 スパイナー》をマナへ、ターンエンド」(マナ1)
「ドロー、《サイゾウミスト》をマナへ、ターンエンド」(マナ1)
お互いに相手のマナに置かれたカードに興味を示さない。慣れているからだ。あのデッキなら《スパイナー》は受け以外使わない。あのデッキはトリーヴァだから《サイゾウミスト》は色合わせ。次のマナ加速の為だ、と言った風に既に相手が何を思ってマナヘカードを送ったのか分かっているのだ。
故に、小細工はそう易々と通用しない。お互いがお互いのデッキを良く知っているデュエル程、動きは早く、鋭く、プレイヤーの腕は洗練されて行く。
更なる高みへと、導いてくれる。
「ドロー、《スパイナー》をマナへ、2マナで《堕魔 ドゥンブレ》を召喚。効果で自分のシールドゾーンからカード1枚を手札に。ターンエンド」(マナ2)(シールド4)
《コダマンマ》と同じように見えて僅かに違う効果を持つ《ドゥンブレ》。城などのシールドに付けられたカードをシールドを割らずに手札に加えることが出来るこのカードは、単純に手札の補充としても扱える。
しかし、やはりシールドを手札に加えるのは本来は危険だ。それだけ攻撃から身を守る盾が無くなるのだから。
しかし、その心配は無い。
今、彼が対戦しているデッキは、相手を攻撃して勝つような利口なデッキでは無いのだから。
「ドロー、《バイケン》をマナへ、2マナで《電脳鎧冑アナリス》を召喚。効果で自壊し、1マナチャージ。ターンエンド」(マナ3)
《ジャスミン》と同じ効果でマナを加速する《アナリス》。何故わざわざ単色の《ジャスミン》ではないのか、その理由はこのデッキを見ればきっと気付ける筈だ。勿論、《ムゥリャン》と同じ自壊ドローの効果もあるから便利というのもあるが、それ以上に重要な理由がある。
「ドロー、《堕魔 ジグス★ガルビ》をマナへ、ターンエンド」(マナ3)
「ドロー、《カーネル》をマナへ、3マナで《神秘の宝箱》。効果で山札から《サイバー・J・イレブン》をマナへ、ターンエンド」(マナ5)
「あー・・・・・・置いちゃったか・・・・・・」
「コイツが居ないと勝てないからな」
コスト11、名前もJとイレブン、パワーも11000と、どこまでも11に拘る水のサイバー・コマンド、《サイバー・J・イレブン》。このカードはその類い希なる強力な効果から、数あるアルファベットサイバーのグループの中でも有名な部類に当たる。
そして、ユキのこのデッキの切り札の1枚。
「ドロー、《ドゥポイズ》をマナへ、4マナで《ヴォガイガ》召喚。効果で山札の上から4枚を墓地に送り、墓地から《ヴォーミラ》を回収。ターンエンド」(マナ4)
「ドロー、《アナリス》をマナへ、5マナで《飛散する斧 プロメテウス》を召喚。効果でタップして2マナチャージ、マナから《バイケン》を手札に加え、ターンエンド」(マナ6)
手札に加わる《バイケン》を面倒臭そうに眺める彼。それもその筈。《バイケン》がある状況でハンデスするのはそれなりのリスクを伴う。闇のデッキとしては、《バイケン》のようなマッドネスクリーチャーは面倒なことこの上無い。
「ドロー、《ヴォーミラ》をマナへ、3マナで《ヴォガイガ》召喚。効果で山札の上から4枚を墓地に送り、《グリギャン》を手札に加え、そのまま1マナで召喚。効果で山札の上から3枚を墓地に送る」
墓地には彼のエースの姿が確認出来る。その効果を使用する為の魔導具の必要枚数も十分足りている。
まぁ、来るだろうな。と、ユキは彼の行動を予知しつつタップされている多色のマナ3枚を他のタップしているマナから少し離す。
「ターンの終わりに『無月の門・絶』の効果で場の《グリギャン》、《ドゥンブレ》、墓地の《ザンバリー》2枚と《グリナイブ》、《ドゥシーザ》の6枚の魔導具を素材に墓地から《卍月 ガリュザーク/卍・獄・殺》を召喚。ターンエンド」(マナ5)
「マナの《サイゾウミスト》、《プロメテウス》、《カーネル》をアンタップし、ドロー、《サイバー・J・イレブン》をマナへ、ターンエンド」(マナ8)
ビマナ殺しのマナフリーズ。一昔前に存在した《ガイア・クラッシュ・クロウラー》のようなマナをフリーズする効果を持つ《ガリュザーク》。《ガリュザーク》は相手にマナを3枚しかターンの初めにアンタップ出来なくさせるという変わった能力を所持している。
更に驚くべきことに、条件さえ満たせば手札と墓地から何度でも蘇るという《グールジェネレイド》もびっくりな不死とも言える能力を持っている。正真正銘、化け物と言って良いだろう。
「ドロー、2マナで《ヴォーミラ》召喚。更に1マナで《ドゥシーザ》召喚。《ドゥシーザ》の効果で《プロメテウス》をパワー-2000で破壊。《ヴォーミラ》の効果で墓地から1マナで《グリナイブ》を召喚」
んー・・・・・・と少し考えてから、意を決したように《ガリュザーク》へと彼は手を伸ばし、カードを手首の力で横向きにし、攻撃宣言をはっきりとする。
「《ガリュザーク》でシールドをW・ブレイク」
しかしまぁ、ユキも序盤に《ガリュザーク》を出されては困る。例え何度でも復活しようと、面倒なものは少しの間でも除去しておきたい。
まぁ、どちらかと言えば《ガリュザーク》を死守する厄介なクリーチャーの除去が目的でもあったが。
「ニンジャ・ストライク5で《佐助の超人》を召喚。効果で1ドロー1捨て、捨てられた《バイケン》の効果で《バイケン》をバトルゾーンへ。墓地の《プロメテウス》をマナへ、《バイケン》の効果で《ガリュザーク》をバウンスする」(マナ9)
「《グリナイブ》のウルトラ・セイバー能力で自身を破壊しバウンスを無効にする」
ウルトラ・セイバー:マフィ・ギャングを持つ《グリナイブ》がバウンスによる《ガリュザーク》の除去を防ぐ。
「S・トリガー。《カーネル》を召喚し、効果で《ヴォガイガ》をフリーズ」(シールド3)
「ターンエンド。やっぱ佐助バイケンセットは強いな・・・・・・」
「当たり前だろ。バイケン無しでも《佐助の超人》はビマナで鬼のような強さ誇るんだから・・・・・・《佐助の超人》を山札の下に送る」
他愛も無い会話をしながらも、ユキは淡々と《佐助の超人》を山札の下に送る。隔離していた3マナのアンタップも同時に行う。
「マナの《アナリス》、《佐助の超人》、《プロメテウス》をアンタップし、ドロー、《サイゾウミスト》をマナへ、《バイケン》で《ガリュザーク》を攻撃時、」
このままでは《バイケン》が破壊される。だが、自爆特攻では無いのは彼も重々承知している。あの佐助バイケンをした時から、これを実行するのは決めていたのだろう。
「革命チェンジ。《ミラダンテXII》をバトルゾーンに。登場時効果で1ドロー。ファイナル革命の効果を使用する」
「《ガリュザーク》は破壊されます・・・・・・っと」
パワー6000からパワー12000へと上昇した上に、次の彼のターンの終わりまで、彼はコスト7以下のクリーチャーの召喚を封じられる。マナを縛ってたのだからこの仕打ちは仕方が無い。インガオホー。
と、一見それだけに見えるが、《バイケン》が手札に戻っている。これでまた彼はハンデスをするのを考えさせられてしまう。此処まで来ると意地でもハンデスさせ無いというユキの強い意志が垣間見える。
「ターンエンド」
「エンド時に墓地の《ガリュザーク》の効果、『無月の門・絶』を発動する。墓地の《ザンバリー》2枚と《グリギャン》、《ドゥンブレ》、《グリナイヴ》、《ドゥシーザ》を素材に召喚」
しかし、何度でも蘇る渋といクリーチャー、それが《ガリュザーク》。その渋とさと墓地肥やしの際にゾロゾロと墓地で増えて行く様は、正に増殖する
そんな黒光りする
「更に『無月の門』を使用したことで、墓地から《ジグス★ガルビ》をタップしてバトルゾーンに」
「あ、負けた方が勝った方に焼肉カルビ次郎を奢るのどう?」
「・・・・・・
彼の脳裏に友人の母親の姿が過る。
――やっぱり夜は焼き肉っしょー!
「・・・・・・ドロー、《ジグス★ガルビ》をマナへ、《ドゥシーザ》で《ミラダンテXII》に攻撃」(マナ6)
「どした今の間?何も無い」
自爆特攻。しかしまぁ、今の状況では仕方が無い。
「《ドゥシーザ》を破壊。更に《ジグス★ガルビ》で《ミラダンテXII》を攻撃」
「何も無い」
「《ジグス★ガルビ》を破壊。《ガリュザーク》で《ミラダンテXII》を攻撃」
「何も無い」
《ミラダンテXII》に対峙する
怒涛の自爆特攻だが、彼は冷静さを失っている訳では無い。焼き肉というワードで思い出された人物によるマインド攻撃の影響などでも無い。
「《ガリュザーク》を破壊。ターンの終わりに墓地の《ガリュザーク》の『無月の門・絶』発動。墓地の《ザンバリー》、《ドゥシーザ》、《グリナイブ》を2枚ずつ素材にして召喚。無月の門を使ったので墓地から《ジグス★ガルビ》をタップしてバトルゾーンに」
此処まではあまり前と変わらない。しかし、《ジグス★ガルビ》が出たことで、新たなクリーチャーが出現する。
「更に、墓地の《デ・スザーク》の『無月の門』発動。場の《ジグス★ガルビ》と《ヴォガイガ》、墓地の《グリギャン》と《ドゥンブレ》を素材に《デ・スザーク》を召喚。登場時効果で《ミラダンテXII》を破壊。ターンエンド」
だが、《ガリュザーク》にも弱点がある。それは、素材となる魔導具が無ければ蘇生出来ないこと。そしてもう一つが、
相手がマナをタップしなければ、意味が無いこと。
「マナの《サイバー・J・イレブン》、《パクリオ》、《サイゾウミスト》をアンタップし、ドロー、《パクリオ》をマナヘ、10マナで《キングダム・オウ禍武斗/轟破天九十九語》を唱える」(マナ11)
マナヘと送られたユキのクリーチャー達が、全てバトルゾーンへと現れる。《デ・スザーク》の効果により全てタップしてバトルゾーンに出るが、そんなこと今は関係無い。
「効果でお互いのマナのクリーチャーを全て、登場時能力をトリガーさせずバトルゾーンに出す。俺はマナの《サイゾウミスト》2枚と《プロメテウス》2枚、《パクリオ》2枚に、《カーネル》、《アナリス》、《佐助の超人》、そして《サイバー・J・イレブン》をバトルゾーンに」(マナ0)
バトルゾーンに大量に展開され、僅かにユキのカードと接触する
「この瞬間、水のクリーチャーが11体以上自分の場に存在するので《サイバー・J・イレブン》の効果が発動し、俺はゲームに勝つ」
《サイバー・J・イレブン》、その効果は自分の場に水のクリーチャーが11体以上存在することでゲームに勝利することの出来る驚異的な能力。しかし、その条件を達成するのは難しい。チマチマと並べているだけでは、相手からの妨害などでなかなか勝てない。
そんな時、ユキは《轟破天九十九語》に目を付けた。一度にクリーチャーを大量に場に出せるのなら、デッキのクリーチャーを水を持つクリーチャーにしつつ、マナを加速出来るようにすれば楽に条件を達成出来るのでは無いか、と。
「負けたぁ!いや、《デ・スザーク》もうちょい早く出しておけば良かったかもなぁ・・・・・・」
「かもな・・・・・・はい、焼き肉次郎」
請求は忘れない。ユキは彼から10円を貰い満足する。人の金で食う食い物の味?聞くな、美味いに決まってんだろ。
「次は何でする?」
「んー、そうだなぁ・・・・・・」
10円を財布にしまい込み、ユキは次のデッキを彼に尋ねる。
「じゃあ――これにしよう」
黒と緑、旧枠の進化クリーチャーを彼はユキに見せる。
「よし、じゃあやろう」
「「じゃんけんぽん」」
懐かしい誰かの記憶。忘却の彼方に消えてしまった、大切な思い出の欠片。思い出すべき人は、もう居ない。
されど、その日々は色褪せず、
この世界の夢の一つとなりて
いつまでも、いつまでも
永遠に
輝いて
用語解説
・マッドネス・・・手札から墓地へ送られると、墓地に行く代わりにバトルゾーンに出てくるクリーチャーの総称。
え?エイプリルフールなのにおふざけ感が無い?寧ろ今までよりしんみりとしてる?
気のせいだ(ゴリ押し)
まぁ、この話をどう取るかは読者の皆様に任せます。
いずれにせよ、この小説のお話の真実はいつか語られますので、その時にもう一度この話を吟味して頂れば幸いです。
ユキが今回のデッキを百十物語と言ったのは《轟破天九十九語》の九十九を99、《サイバー・J・イレブン》を11とすると、合計数値は110となるので、よし、この2枚を使うからデッキ名は百十物語で良いや、なんて話があったりします。
後、何でデスザを選んで性格悪いと言っていたのかというと、このデッキには《ドルツヴァイ・アステリオ》が入っていて、そいつ1枚で12マナ行ってすぐに《轟破天九十九語》出来るんですけど、タップインには滅法弱いんですよね。後は単純にマナフリーズ。
別に普通のアカウントみたいに呟いて良い?
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特に許す
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絶許