起きたらチェンジ・ザ・ワールドしてた件   作:change

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遅くなりました。GP8th殿堂で4ー3で環境デッキ相手に勝ち越したchangeです。
殆どの環境デッキに勝てるオリジナルのデッキを組めていたようで満足しました。後は赤青覇道とジョーカーズへの苦手を克服しさえすれば、環境を駆逐出来る・・・・・・。
オーリーの効果を勘違いしてなければ、もっと戦えたんだけどなぁ・・・・・・皆さんも効果の勘違いには気を付けて下さいね?

今回はデュエマ描写無しです。が、案の定ストーリー的には超重要な話。それでは、どうぞ。


失われし記憶の復元

体育の授業が終わり、その後二時間分の授業を経て、遂に学校は昼休みに突入する。

生徒達がそれぞれ仲の良いグループで食事と談話を楽しむ時間。勿論雪もその例に漏れず、今も隣の憐と共に楽しい時間を過ごしている。

・・・・・・生徒会室で。

 

「ごめん雪ちゃん。昨日はちょっと体調悪くて、書類捌ききれてない無いんっすよねぇ・・・・・・」

「良いよ、別に。気にしてないから」

 

ソファに座って雪は弁当を食し、憐は数枚のプリントを横に、目の前のプリントの生徒会日誌と書かれた欄を必死に埋めている。

どうやら憐は昨日から体調を崩しているらしい。どうりで体育の授業中、VRで立体化されたバロム系を見なかった訳だ。最初から組めないからと確認していなかったが、そうか、保健室にいたのか・・・・・・

 

今も少し寒そうだ、身体の震えを抑えようとしているのが分かる。これは、昨日の雨風に晒されて風邪をひいたな?

雪は横目で作業をし続ける体調の悪い友の姿を見ながら冷静に分析する。やがて、雪はいつまでも書き続ける憐へ顔を向ける。

 

「無理しない方が生徒会的には良いんじゃない?変に頑張って質とか下げられてやり直し喰らったら皆困るし、何より更に体調を崩されて休まれたら、しばらくは人手が減って大変困る。お前は皆に迷惑を掛けたいのか?」

「うわぁ・・・・・・雪ちゃん、有難いんすけど、それ少し心にグサッと来るっすね」

 

当たり前だ。強く言わないとお前休まないだろ。

本当は憐に聞きたいことがあったのだが、今は止めておこう。

 

「無理するお前が悪いんだろ。さ、風邪引いたのに無視して頑張る馬鹿は保健室にでも行った行った」

「えー」

 

しっしっ、と手を払って如何にも迷惑だとでも言うように邪険に扱うが、憐はそれでも引き下がらない。早く行け!

 

「了解したっす・・・・・・雪ちゃんって実はツンデr」

「誰が男のツンデレなんか得するんだよ。ふざけてないでさっさと逝け」

「何か最後だけニュアンス違わなかったっすか・・・・・・?」

 

そこまで言うと憐はやっと生徒会室から退散する。憐が出て行ったのを確認し終えた雪は、憐の書き途中の書類を手に取り、どんなことを書いていたのかを確認する。

 

「えー、『生徒会日誌~制服の規定への女子の要求~スカートの丈論争編』・・・・・・?」

 

 

『最近、急にやってきた記憶喪失の転校生、生徒会長の誰にも言えないお悩み相談、あるクラスのO石君の天照大神(てんてるだいじん)事件など、色々と身の回りで学園物の恋愛アニメ時空かな?という信じられない出来事が頻発している生徒会の伊原 憐です。

生徒会では皆さん御存知の通り、馬鹿みたいな事について真剣に討論することが多々あります。今日はかつてあったある討論とその結果についてを書くことでこの手紙の空欄埋めようかと思います。その内容は、そう、割と生徒会に届く女子生徒からの御手紙の4割以上を占める制服への要求。(尚、他の御手紙の1~2割は1年の御崎君への御手紙の模様。羨ましい・・・・・・!)女子のスカートの丈短くさせろ問題についての討論会の様子を――』

 

 

「埋めんで良いわ馬鹿」

 

雪はそう言って手に持っていた用紙を机の上に戻し、そろそろ教室に戻ろうと食べ終えた弁当箱に蓋をする。

 

「はぁ・・・・・・」

 

何故スカートを短くしたいなどと女子は思うのか、男子の俺には微塵もわからない。寒くないのだろうか?

そんな疑問とこれを書いていた憐に呆れた雪は、深い溜め息をつきながら教室へ戻ろうと廊下へ出た。

 

「あれ?何してるの」

「あ、先生。いや、生徒会の仕事を伊原君がすると言ってたので一緒に付いて来たんですけど・・・・・・」

 

男の名前は覚えていなかったが、ひょろっとした体型の現代文の先生と遭遇した雪は、憐が保健室で休んでいることを説明した。

 

「あ、分かった。じゃあ担任にはそう報告しておくね」

「すみません、お願いします」

 

代わりに伝えてくれると言う男にぺこりと一礼し、今度こそ廊下の階段を2段飛ばしで上がり、教室へと向かう。

 

そろそろ昼休みの時間が終わりを告げる。3階の廊下を小走りしていると、廊下の奥の方にある女子トイレ付近でスマホを弄る見覚えのある女子校生の姿が目に入る。

間違いなく、それは今日の体育の時間、雪をギリギリまで追い詰めた恵那 由里だった。

 

あの時のデュエマは本当に苦しかった。やはり、自分はコントロールよりもアグロに弱いな、と思いながらも自分の教室へと入る。

 

雪が教室に入ると同時に、校内中のスピーカーからチャイムが流れる。机とバッグに教材を入れていた為、自分の席に付いてから次の教科である数学Ⅱの準備をすることが出来た。そのため、数学担当の先生に早く席に着け、と怒られることもなかった。

 

「っぶねぇ・・・・・・」

「あれ?白菊、伊原どしたの?」

「保健室、風邪」

 

憐の友人である男子生徒に端的に説明し、数学Ⅱの授業に集中する。問1は・・・・・・いや舐めてるだろコレ、見たら分かるだろ。

 

授業が終わるまで、雪は数学Ⅱの問題を真摯に解いていった。因みに、雪は数学以外は致命的に出来ないが、数学だけはかなり出来る。

授業中に出題された全ての問題を、一問30秒掛からずに正解して行く雪の姿は、どこか生き生きとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

日の射す窓際の席、校舎一階の講義室で英語の授業を受けていた由里は、今日の体育の授業での出来事を思い出していた。

 

――《プチョヘンザ》、かぁ・・・・・・

 

黄金の鬣を持つエメラルドの瞳を持つ獅子と、神話に登場するケンタウロス、ケイローンを思わせる弓の名手のクリーチャー。

彼女は英語の授業に関心を持たず、ノートにそのクリーチャーを描いていた。

 

イラストレーターを目指している訳では無いが、それなりにクリーチャーや呪文などの絵は描くことがあった。物静かな彼女の秘めた趣味でもある。ノートを少し過去に遡れば、《バイス・カイザーZ》や《アイラ・フィズ》、《パラスキング》などの姿があった。

完成した絵ばかりがノートの中に確認出来る中、一枚の絵だけが、完成せずにいることに気付く。

 

――この絵に描かれているカードは、彼が再び使った時に、やっと一枚の絵として完成する。

 

懐かしむような、悲しむような表情で、彼女は未完成の絵に触れる。いつかの約束を確かめるように、目を閉じて心からの慈愛と敬愛を、彼女はかつての友人へと捧げた。

 

彼は、覚えているのだろうか。

 

「はぁ・・・・・・」

 

良い加減、板書しなければ。由里は目を開け、机の上に置かれたもう一冊のノートを開き、黒板に書かれた内容を残さず写して行く。

教師の説明に耳も貸さず、一心不乱にシャープペンシルを動かす姿は、端から見れば、独自に予習している勉学に励む優等生と言った所だろうか。現実は全く優等生では無いのだが、その勘違いのおかげで、教師からの由里の評価は高い。

 

「じゃあここに当てはまるのを・・・・・・恵那さん」

「え、あ、はい」

 

故に、こうして時たま指される。これまた双方に勘違いが起きており、教師側は勤勉で優秀な生徒として由里を当てているのだが、当の由里はと言うと、授業中に勉強を全くしていない自分に、教師は嫌がらせで当てているのだ、と思っているのだ。

 

――えっと、何だ。空欄に何を?

 

まず、何を聞かれているのかもわからない。しかし、前後の問題と、前の問題の答えから、数秒で聞かれているものと答えを直感的に導く。

由里は教科書の文から答えを探し、慌てていた内心を隠すような落ち着いた表情で一文を読む。

 

「God doesn't play dice」

「Yes.そうですね、これは日本語に訳すと、『神はサイコロを振らない』もしくは『神は賽を振らない』という――」

 

危なかった・・・・・・。全く、何が『神はサイコロを振らない』、だ。変な名言を遺さないで欲しい。

 

「――有名なアインシュタインの言葉ですね。ではnext・・・・・・」

 

・・・・・・そういえば、今の言葉と似たようなことを言っていた人が彼の友人に居たな。無口な方じゃなくて、茶髪の方の・・・・・・。

 

確か名前は――

 

「・・・・・・誰だっけなぁ・・・・・・」

 

名前は思い出せないが、雰囲気は覚えている。見た目はチャラそうな、彼の、きっと一番仲が良かったであろう男。その彼は見た目に反して知的な側面があった。私達のメンバーの中では三番目に頭が良かったんだと思う。

 

しかしあの日だけは、そんな彼も含めて、二人の天災のせめぎ合いによって生かされた。死ぬ定めであった筈の私達の殆どは、多くの代償を払うことにはなったが、確かに今を生きている。

彼もまた、何か傷を残しているのだろうか。

例えば、そう

 

記憶喪失、とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業開始の合図から既に40分が経過した。

5時間目の教室の一角で、真っ直ぐな姿勢を保ちながら自習に明け暮れる女子高生。彼女は同居人との接し方を少し考えながら、休んだ教師からの課題をこなしていた。

机に入れていた彼女のスマホが、淡い緑色の光の点滅を3度発している。それは、誰かからのメッセージが届いた証拠だった。

 

「RAINだ・・・・・・」

 

授業中にRAIN、それも一応は生徒会長である自分へ向けられたものだと思うと、少々思う所もあるが、確認だけしようとスマホのロック外す。グループで誰かが話しているのに反応しただけかもしれない。

 

――雪君からだ・・・・・・『伝えるの遅れました。憐が体調不良で生徒会欠席だそうです』あぁ、成る程、了解・・・っと。

 

最後に適当にスタンプを送って、スマホを机の中にしまう。憐が休みだとすると、今日はプリントの生徒会が書く欄を埋めて解散するのがベストだろうか?流石にその後も一年に手伝わせるのは気が引ける。

 

凪は生徒会の今日の活動内容を決めると、自習を再開する。自習教科は自由ということで、凪は歴史を勉強していた。

とは言ったものの、勉強と言ってもとても偏っている。その内容というのは、デュエマの歴史なのだから。

 

デュエマがスポーツとして広まり、時代を造り上げたカード達。その歴史は見ているだけでも楽しいものだ。闘魂編の『青黒緑リーフ』一強の時代など、どれほどカードパワーに差があったのか笑えてくる程に面白い。

 

中でも、PS時代に環境に名を轟かせた『不滅オロチ』が凪は好きだった。《時空の不滅ギャラクシー》に《斬隠オロチ》を使い、大型を踏み倒しつつ自軍をブロッカーにするというデッキだ。雪が使ったシノビデッキでも、似たようなことが再現出来る。

本来は1体を犠牲に新たにクリーチャーを呼ぶオロチだが、その犠牲対象を《時空の不滅ギャラクシー》にすることで、本来はデメリットとなる筈の退去効果をメリットに変換する。攻撃に対して反応する《オロチ》に、全軍をブロッカーにする《撃滅の覚醒者キング・オブ・ギャラクシー》。更に山札からただ同然で出て来るクリーチャーという無駄の無いコンボに、凪は感銘を打たれたのだ。

そして、凪の持つガチデッキには、この『不滅オロチ』のギミックが搭載されている。使いたいコンボである上に、凪が一番得意とする光文明であるのだから、当然と言えば当然である。

 

――そうだ、この『不滅オロチ』って、雪君から教わったんだっけ・・・・・・

 

どうして自分がこのコンボを知っていたのかについて、凪は幼き日に雪から教わったのだと思い出す。守りを得意とする自分に、このコンボを紹介してくれたのは確かに彼だった。

 

余談だが、今の記憶を失った雪も『不滅オロチ』のように、《プチョヘンザ》を革命チェンジした際に、《時空の不滅ギャラクシー》を覚醒させ、制圧と守備を強固なるものにするというプレイをすることが度々ある。記憶を失った所で、凪の知っている雪とデュエマの腕はそこまで変わらないのだろう。

最も、その記憶を失う前の雪というのが今の雪からすれば謎の存在なのだが。

 

「今日、帰ったら雪君とデュエマしよっかなー・・・・・・」

 

一人小さな声呟く。虚空へと漏れたそれは、誰の耳にも届かず霧散する。そんなことをしている間に、かなりの時間が過ぎ去っていた。

 

キンコーンカーンコーン

 

「起立、礼」

 

授業が終わり、とうとう6時間目前。最後の授業を前に、寝ていたクラスメイトは次々に「やっと終わる、やっと終わるぞ」と歓喜する。まぁ、それに関しては凪も賛成だ。早く帰って、雪とデュエマをしたくなっている、要するに、体は闘争を求めているのだから。

 

あ、生徒会あるじゃん・・・・・・。と気付き、うなだれるまでにそこまで時間は掛からなかった。




恵那由里の描く森林に住む《パラスキング》

【挿絵表示】


用語解説
アグロ:ドラクエで言う所々の、『ガンガンいこうぜ』、なデッキ。使っていると頭馬鹿になって行く感覚と強烈な中毒性をプレイヤーに与える。大体は早い速度で攻撃して来る速攻デッキ。対義語はコントロール。
コントロール:相手の動きをコントロールするデッキ。ハンデスなどで相手の動きを制限し、ジワジワ攻める。対義語はアグロ。
環境デッキ:別名は流行デッキ。その時代に他のデッキと比べ強力な力で勝つことの多いデッキに付く勲章のようなもの。主に大会などで多く使われているのが証拠となる。一部のデュエマプレイヤーはこれをどう自分のオリジナルデッキで攻略するかに燃えることで強くなることもある。

次回は凪と雪のデュエマかな?多分そうなる。
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