中盤までは何やら怪しいお話。終盤はデュエマの描写が。珍しく1年に名前が出てるけれども、今後出て来る際に不便だと思って付けただけだから深く関わって来ることは無いと思われる。
UA3000突破。また何か企画しておきますかね・・・・・・今はストーリー書きますけど、いずれはやります。
地球。それは、人の無意識が統治する歴史紡ぐ地の名前。
時間と空間、その2つから成り立つ、生命が育まれる箱庭の名前。
しかし、もしその時間と空間の片方が失われたならば、人の住むこの楽園は、一体どのように姿を変えるのだろうか。
時間と空間をx軸y軸と仮定した場合、片方が失われれば軸に沿った直線、つまり、時間と空間のどちらかが変化のない世界が出来る。時間が失われたならば、成長も老化も存在しない、永久と呼んでも良い世界が。空間が失われたならば、現象というものが消え、物質という存在が存在することを許されない、意味も無く時のみが流れる閉じた世界が。
人や自然物が一つのもので構築出来ないように、人間には干渉することの出来ないこの宙のシステム、時間と空間の関係性でさえ、一つだけでは成り立たないように出来ている。
いずれにせよ、どちらかの無い世界に人間には生きることは出来ない。人間は時間と空間があり、初めてこの星の下に生きているのだ。
だが、もしもその二つの世界で人が観ることが出来るものがあるとしたら、それは間違いなく時間の流れない空間だけの世界だろう。私達は物質から出来ているのだから。
空間に属する物質から生成された私達は、純粋に物質の複合体であるから空間に干渉することが出来る。しかし、時に干渉することは出来ない。人間は純粋に時に属するものを内包している訳では無いからだ。
ならば、どうしたら人間は時に属する純粋なものを内包することが出来るのだろうか。
或いは、
人が肉体を捨てれば、
物質世界から自分を切り離すことが出来れば、
時に干渉することが、出来るのではないだろうか。
人が死に逝く直前に、走馬灯、というものを見るという話がある。あれは脳の中の今までに記録された情報が映像となって駆け抜けるというものである。
つまり、人間が肉体を捨て、非科学的だが仮に魂、思念と呼ばれる存在が抽出された場合、強引ではあるが、それは過去、現在の記録のみを持っている可能性がある。物質では無いもので構築されているかもしれない。
ならば、人は死後、物質という属性を持っていないことになる。魂という目に見えない不確かな存在が、物質世界の人間には認識できないのにも納得がいく。後は純粋な時に属する何かを内包するだけだ。
しかし、その何かがどうしても分からない。ならば、時間だけが流れる世界に、その魂を送ってしまえば良いだけの話だ。
前述した通り、人が時間だけの世界で生きていけないのは、自身が物質であるからであると私は考えている。ならば、既に物質を捨て去っているのなら問題は無いはずだ。
時を旅することも、いや、時の一部となることも、不可能ではないのかもしれない。
―Code;Lolo
ノックと共に、静かな保険室に失礼します、と女性の声が響く。ベッドの上で眠りについていた憐は、声を掛けることもなく、来訪者の行動に耳を澄ませていた。
「あれ?先生居ない・・・・・・か・・・・・・。じゃあ置いとこ。失礼しました~」
何かを置いて女子生徒は部屋を出て行った。大凡、自分には関係の無いことだと再びベッドの上で眠りにつこうとする。
目を閉じると、不思議な夢を見る。誰かが何かと暗い空間に居る夢だ。顔も分からない上に、何をしているのかも全く分からない。
何かを彼は失った。いや、奪われた、ような気がする。
それが何なのかが不思議と引っ掛かって仕方がない。ただの夢だと言うのに。
夢を見る自分の脳にノイズが走る。モノクロの映像から確認出来るこれは・・・・・・デュエマの盤面か・・・・・・?
これは・・・・・・本当にゲームの盤面なのか・・・・・・?それにしては少し、普通じゃないような・・・・・・
――運 わ ない
―― た 目・・・・・・ のか
ノイズが酷くなる。まるでテレビ画面に映る砂嵐のように。シーンがぷつりぷつりと飛んで行き、やがて一つのコマで映像が止まる。
――悠久の時を越えて、いつか・・・・・・
蝶のように、飛んで――
空へ手を伸ばし、何かを渇望する男の声が事切れるその瞬間、意識は暗転した。
「っ!」
高所から落ちるような感覚に襲われ、目を覚ます。そこまで時間は経過していないが、身体の怠さは完治していた。
頭は完全にクリアな状況で、脳が急激に冴えていく感覚を全身に感じる。
全ての思考回路を夢の内容に巡らす。
「あの、最後に喋っていたのは・・・・・・もしかしたら・・・・・・」
「あれ、伊原君起きてたの?」
シャーっとカーテンを捲り、自分を覗き込む保健室の先生。もう、オバサン、と言われてしまう年齢なのは、見える皺からも十分分かる。
「体調が良くなったんで教室に戻りたいんですけど・・・・・・」
「HRはもう終わっちゃってるけど、そう?じゃあこの紙を担任の先生に渡して」
熟年の女教師から青い紙を手渡される。内容は保健室に居たことを証明するものだった。
「失礼しました」
「はーい」
ガラガラ、と音を立てて扉が閉まる。現在の時間は午後4時、もう既に殆どの生徒が校舎を出ている頃合いだ。
憐は急いで階段を駆け上がり、自分の教室の扉を勢い良く開ける。
「おお、伊原。風邪大丈夫か?」
「はい、あ、これを・・・・・・」
そう言って担任に青い紙を渡す。それが何か知っている担任は、特に確認もせず閉じていた名簿のページに挟む。
ふと生徒がまだ何人か残っている教室を見回すが、雪の姿は確認出来ない。既に下校したということだろうか。
「体調管理気を付けろよー?」
「あはは、そうですね・・・・・・」
憐は担任との会話を終わらせ、廊下まで出た所でRAINを開く。上から2番目のトークアイコンの項目をタップし、手早く要件を伝える。
『風邪治った。学校居るなら今どこ?』
「それで生徒会室に呼ばれたと」
「うん、1年の子達が休憩がてらデュエマしてるだろうから、挑戦されたら受けてあげて。私こっちでまだ仕事あるから」
憐が目覚める前、HRを終えた雪は凪に生徒会室に来るように言われ、特に断る理由も無かった為に言われるがままに生徒会室を訪れた。
何故自分が呼ばれたのかを凪に聞いた所、憐が休んだことで少し忙しくなるらしく、各自にノルマとして課された仕事を終えた後の1年のデュエマの相手をして上げて欲しいとのことだった。今までは仕事が終わった者同士でデュエマをして解散まで時間を潰していたのだが、凪や他の2年が憐の仕事を肩代わりしたことで、2年に挑戦してくる1年は挑戦相手を失ってしまう羽目になった。
そこで凪は雪を呼んだ。日本代表戦に選ばれた1年生、御崎 透を倒したと噂にもなっている雪ならば、相手に不足は無いと判断してのことだった。
「了解しました・・・・・・頑張って下さいね?」
「あ、うん、ありがとー」
失礼します、と扉を開け、凪の後ろに付いて行くようにして部屋の中へと入って行く。さて、と雪は部屋の片隅にある椅子に座り、挑戦に備えてデッキを取り出す。体育ではイメンダーウィンを使ったが、今回はどうしようか・・・・・・。
「また使うか、それとも・・・・・・」
バッグの中にはもう一つだけデッキがある。ただ、そのデッキはあまり相手が楽しいと思わないデッキだと考えている雪は、少しそのデッキを使おうか迷う。
本来、相手のことを考えて相手にとって嫌なプレイをしないようにする対戦ゲームなど、真面目に勝とうとせずにやっていないのと同じ、相手へのある種の侮辱だと言うのが雪の考えなのだ。
どんな方法を使ってでも勝つ。相手から対戦後に後ろ指を立てられようと、俺の知ったことでは無い。
だが、だからと言って、相手が楽しいと感じない、と自分でさえ思うようなデッキを使う必要は無いのだ。
そういった諸々の理由で、このデッキを使うのは――いや、このデッキのエースを使うのはあまり気が乗らないのだ。
しかし、組んで使わないのも可哀想だと思う気持ちもある。だから迷っているのだ。
「・・・・・・聞いてからどちらかのデッキを使う、か?」
情報アドを事前に与えてしまうことにはなるが、相手の了承を得られればこちらとしては問題ない。つまらない試合になったとしても、確認はしているから文句など受付けない予定だ。
最も、相手が話掛けてくればの話なのだが。
「あの、すみません・・・・・・」
「ん?」
感じからして1年の男子だろうか。小さな声で申し訳無さそうに聞いて来るその姿は、初対面の人にカードゲームの対戦を申し込むソレだった。
「あの、デュエマの相手って今出来ますか・・・・・・?」
「あ、良いよ~」
そこまで広い部屋では無い為、自然と凪や他の生徒会のメンバーからも見える位置で試合は行われる。
小さな折り畳み式の机を展開し、その上にお互いデッキを置く。雪は更にもう一つのデッキを取り出し、1年の子に選択肢を提示する。
「EXwinと攻撃して勝つデッキ、どっちが良い?」
「んー・・・・・・攻げ・・・・・・いや・・・・・・EXwinでお願いします」
悩んだ末に選ばれたのはEXwinのデッキだった。この世界に来てから初めて殿堂リストを見た時に思い付いたデッキでもある。
お互いにデッキをカット&シャッフル。友人は信用せよ、ただしデッキはシャッフルせよ。遊戯王にてパンドラという敵キャラクターの残した名言である。如何にフリー対戦であったとしても、その言葉を胸にゲームをするのが、カードゲーマーというものだ。
「じゃあダイスで決めようか。それで良い?」
「はい」
ダイスの結果は4と5、僅か1の差で雪は後攻となる。まずは相手のデッキを判別するとしよう、と頭の中で相手を調理する工程を組み立てて行く。
「先行貰います」
「あ、待って、一応名前聞いておいても良い?」
「あ、すみません。卯月です。
卯月 順平・・・・・・よし、これでデュエマでもすれば名前と顔が一致するくらいには覚えられるだろ。
雪は初手を眺めながら内心でそう思う。どうにも雪は他人の名前を覚えるのが苦手なのだ。不思議とこの世界に来てから前よりも覚え易くなっている気がしなくも無いが、苦手なのに変わりはない。取り敢えずは何か一緒に楽しいことでもすれば名前も印象に残るだろうと雪は考えている。
「そっか、あ、白菊 雪です。宜しくね」
「あ、はい。宜しくお願いします」
会話で何かと、あ、と付くのが緊張から来ているものであるのは明白だ。かく言う俺も付いているが。
・・・・・・そういえば、竹宮さんや凪さんと出会ったばかりの頃の俺もこんな感じだったなぁ・・・・・・
「じゃあ、僕のターンから。《特攻人形ジェニー》をマナに、ターンエンド」(マナ1)
「ドロー、《アストラル・スーパーリーフ》をマナへ、1マナで《マリン・フラワー》を召喚。ターンエンド」(マナ1)
《特攻人形ジェニー》、定番の闇のハンデスクリーチャー。超次元ゾーンにカードが無いのが気になるが、《特攻》の入るデッキなら青黒ハンデス、もしくはドロマーハンデスと見た。
雪が相手のたった1枚のカードからデッキタイプを予想しているのに対し、対戦相手である順平もまた自分の敵のデッキタイプを予想していた。
――《アストラル・スーパー・リーフ》に《マリン・フラワー》・・・・・・サイバー・ウイルスの種族デッキか?
「ドロー、《凶鬼92号 デンカ/世紀末ハンド》をマナへ、2マナで《ゲオルグ・バーボシュタイン/ゴースト・タッチ》を唱え、1枚ハンデスします。・・・・・・それで」(マナ2)
恐る恐る雪の手札から1枚のカードを選び取る。いくらサイバー・ウイルスのデッキだとしても、《バイケン》が入っている可能性だって普通にあり得るのだ。
雪は選ばれたカードを素直に墓地へと送る。
「《ハリケーン・クロウラー/ブレイン・チャージャー》を墓地へ」
「ターンエンド」
「ドロー、《Dの花道 ズンドコ晴れ舞台》をマナへ、2マナで《マリン・フラワー》を《アストラル・リーフ》に進化」(マナ2)
嘗てデュエマが出来た最初期から殿堂リストに入っていた水文明の違法薬物こと《アストラル・リーフ》が場へと現れる。今の時代に殿堂リストという檻から釈放された《アストラル・リーフ》は、そのコストに見合わぬ凶悪な能力発動する。
「バトルゾーンに出た時効果で3枚ドロー。ターンエンド」
減った筈の手札がすぐさま回復する。ハンデスデッキの特徴は相手の手札を細かに削って行き、自分のペースに勝負の流れを持って行くという非常に敵にしたくない厄介なタイプなのだが、相手が手札を即座に回復するようなデッキタイプならば、そのコントロール力は発揮され辛い。《ヴォルグ・サンダー》が超次元ゾーンに居ればわからないが、確実に無いと分かっている雪は山札を高速で削り、手札を増やすことを惜しまない。
――次のターンにまた《アストラル・リーフ》を出されたら堪ったもんじゃない。ここで落とさないと・・・・・・!
「ドロー、《魔刻の斬将オルゼキア/訪れる魔の時刻》をマナへ、2マナで《傀儡将ボルギーズ/ジェニコの知らない世界》を唱えます」(3マナ)
「どうぞ」
「失礼します」
冷静に、雪の目を見ながら落とすカードを選ぶ。
心臓がいつもよりも鼓動を早めている。間違いない、これは緊張と、高揚だ。
「・・・・・・これで」
順平がカードを1枚選び取り、そのカードを雪が指先で手札から墓地へと送られる。
落とされたカードは、今公開領域へと落ちその姿を露わにする。
そのカードの名は――
「《エボリューション・エッグ》を墓地へ送ります・・・・・・」
「ターンエンド」
外れだ。
――マズいっ!
「ドロー、《アストラル・スーパーリーフ》をマナへ、2マナで《アストラル・リーフ》の上に《アストラル・リーフ》を再進化。cip効果で3枚ドロー。1マナで《マリン・フラワー》を召喚。ターンエンド」(マナ3)
雪の手札が更に増える。アグロにハンデスは弱いと考え、攻めて来ないと言う雪のデッキを選んだが、とんだ誤算だった。
このデッキには、チマチマとハンデスした所で意味が無い。かと言って今すぐに手札を0に出来る訳でもない。
「ドロー、《残虐覇王デスカール/ロスト・ソウル》をマナへ、4マナで《フェルナンド・ソシュール/プライマル・スクリーム》を唱えます。効果で山札の上から4枚を墓地に送り、墓地からクリーチャーである《傀儡将ボルギーズ/ジェニコの知らない世界》を1枚回収します。ターンエンド」(マナ4)
今は時間を稼ぐ。ああ言ったデッキタイプのフィニッシャーは分かり易い。
「ドロー、《母なる星域》をマナへ」(マナ4)
――《母なる星域》・・・・・・ツインパクトじゃないってことは、4枚の《幻緑の双月/母なる星域》は確実に入っていると見て間違いない。かと言って8枚も《母なる星域》が必要そうなデッキでも無い。6枚辺りが妥当だろう。
既存のカードがツインパクト化したことにより、本来入れられない筈の5枚目以降のカードをデッキに入れられるようになったのは、デッキを組む者達、デッキビルダーには朗報以外の何ものでもなかった。この世界に来てからまさかツインパクト化してるとは露も知らずに居た雪は、早速5枚目以降の《母なる星域》を使い、デッキを組んでいた。
それがこのデッキである。
因みに、雪が買った訳ではない。と言うのも、凪と同じ家に住んでいることで、カードの共有化が起きたのだ。偶然、凪が買っていたBOXから、雪の使ってみようと思うカードが出て来たのである。
凪が買ったパックやBOXから出た使う予定の無いカード、余ったカードを雪が使う。凪がデッキを組む時は要求されれば必ず協力する。そういった関係が出来ている。
「4マナで《ハリケーン・クロウラー/ブレイン・チャージャー》を唱える。効果で1ドローし、《ハリケーン・クロウラー/ブレイン・チャージャー》をマナへ。ターンエンド」(マナ5)
まだまだ時間は経っていない。これからが本番だ。
用語解説
ツインパクト・・・クリーチャーと呪文が1枚になったカード。コストはそれぞれ別にあって、クリーチャーとして使うか、呪文として使うかをプレイする時に選べる。この作品では《名前/名前》の左がクリーチャー、右が呪文となっている。また、カードとしては別物なので、既存のカードとその名前を持つツインパクトカードを1つのデッキにそれぞれ4枚入れることが出来る。
また、クリーチャーとして場に出ているツインパクトカードの名前は《クリーチャーの名前》として扱うが、マナにあるツインパクトカードの名前は《クリーチャーの名前/呪文の名前》として扱う為、既存のカードと既存のカードの名前を持つツインパクトカードがあったとしても、《天使と悪魔の墳墓》によるランデス効果は受けない。
時間と空間に関しては学者でも無いので色々違うという意見があるかもですが、こんな感じなんだな、みたいな緩い認識にしといて下さい。一応、まだまだ伏せられた情報はありますので。
不思議!雪のデッキのフィニッシャーが容易に想像出来る!という方、割と多いと思うんですよね。ええそうですよアイツです。
凪とのデュエマでは無かったけれど、これはこれで良い。続きはまた今度、では