感想でツインパクトカードを片方のみ記載して地の文で補完しては?というのがあったので今回は実験という意味合いも込めて投稿。
個人的には思ったより地の文で表さなくてはいけないのが面倒だったというのが正直な感想。でも無理では無いから反応見てどうするか決めるかなぁ・・・・・・
「ドロー」
膨大な知識と、それを奪わんとする者の衝突は、目に見える場では無く、可能性――手札において引き起こされていた。
「《悪魔神バロム》をマナへ、2マナで《ジェニコの知らない世界》を唱えます」(マナ5)
ツインパクトとなり、マナを消し飛ばす強力な呪文、《バロム砲》を持つ《バロム》が順平のマナへと置かれる。きっとあの《バロム》こそ、あのデッキの切り札なのだろう。雪はそう確信していた。
そんな雪へと再びその増えた手札を刈り取ろうとツインパクトカードである《ボルギース》の呪文面、即ち《ジェニコの知らない世界》が唱えられる。
しかし、雪はその程度のハンデスでは痛くも痒くも無い。余裕のある表情を浮かべる雪は持っていた手札を裏面のまま相手に1枚選ばせる。
「それで」
「《終末の時計 ザ・クロック》を墓地へ」
バイケンよりはマシだが大ハズレは大ハズレだ。思うように良いカードを落とすことが出来ず、順平は顔をしかめる。
「ターンエンド」
「ドロー、《幻緑の双月》をマナに、5マナで《Dの花道 ズンドコ晴れ舞台》を展開」(マナ6)
《母なる星域》を持つ《幻緑の双月》をマナに置いた雪は、遂にデッキの潤滑油である自然のD2フィールド、《ズンドコ晴れ舞台》を場に展開する。
雪は顔には出さないものの、その内心では次のターンが楽しみで仕方がなかった。
次の雪のターンになった瞬間、雪のデッキはその真価を発揮する。勝利へと迫る為の連鎖が。
「ターンエンド」
しかし、そんなことは対戦相手である順平にも分かっている。使われているサイバー・ウイルスは大体が低コスト、そしてクリーチャーが出ることで反応し、マナを増やす《ズンドコ晴れ舞台》。
奴が、奴がこの戦いに終焉を齎そうと現れるであろうと。その準備が、もう完全なものになろうとしていることも。
――ここで何か引かないと、もう間に合わないかもしれない・・・・・・
「ドロー」
慎重に、カードを引く。引いたカードはドローソースとしての性質を持つツインパクトカード。
しかし、それを使うことは出来ない。等価交換の材料が順平の場には無いのだから。
「《凶鬼12号 ジャーゴン》をマナへ、ターン・・・・・・エンド」(マナ6)
《凶鬼12号 ジャーゴン》、《邪魂創世》を持って生まれたツインパクトカード。肝心な《邪魂創世》は、自身のクリーチャーを破壊しなければその強欲なドロー効果を発揮することが出来ない。此処に来て闇文明の癖のある効果が順平の足を引っ張る。
「ドロー」
そして、雪のターン。此処からは、水文明のドロー力と自然文明のマナブースト力による共同作業だ。
「《水上第九院 シャコガイル》をマナへ、3マナで《母なる星域》を唱える」(マナ7)
今回の雪のデッキの切り札は、低コストクリーチャーの多い中一際巨大なコストを持つ水文明のクリーチャー、《シャコガイル》であった。その名から分かる通り、シャコ貝がモチーフなのだが、その効果はデュエル・マスターズ屈指の凶悪な効果であり、本当はバカ貝なのでは無いか。そんな気持ちを雪は抱きながらも使っている。
「場の《マリン・フラワー》をマナに置き、マナから《アストラル・スーパーリーフ》を《アストラル・リーフ》の上に進化」
《アストラル・スーパーリーフ》が出現したことにより、雪の手札は急速に増加することになる。そして、場にクリーチャーが出たことにより、当然《ズンドコ晴れ舞台》も効果を発動する。
「《アストラル・スーパーリーフ》の効果で3枚ドロー。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ」(マナ8)
《アストラル・スーパーリーフ》は《アストラル・リーフ》と同じ3ドロー能力を持つ。そして、“スーパー”になったことにより、その効果は更に進化したものへとなっている。
「5マナで《ハリケーン・クロウラー》を召喚」
「あー・・・・・・」
ツインパクトカードとなった《ハリケーン・クロウラー》の登場は、まさしくこの状況では順平にとって最悪の部類だった。相手の手札は4枚。そして場には《ズンドコ晴れ舞台》。
ノーコストのマナ回収に等しい。
「《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ。《ハリケーン・クロウラー》のcip効果で手札の4枚をマナに、マナから《ハリケーン・クロウラー》《アストラル・リーフ》《マリン・フラワー》《T・アナーゴ》を回収」(マナ9)
まだまだ、雪のターンは終わらない。
「1マナで《マリン・フラワー》を召喚。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ」(マナ10)
そして――
「《アストラル・スーパーリーフ》の効果で自分のサイバー・ウイルスが場に出たことで3枚ドロー」
手札が、増える。
コスト1のサイバー・ウイルスは、その全てが《アストラル・リーフ》と同じ効果を得る。
「2マナで《マリン・フラワー》を《アストラル・リーフ》に進化。《ズンドコ晴れ舞台》で1マナチャージ、cip効果で3枚ドロー」(マナ11)
しかし、雪も警戒はしている。《ロストソウル》を使われれば、かなり厳しいことは確かだ。《シャコガイル》で確実に勝てる盤面までは、欲を出し過ぎてはいけない。
「《スーパーリーフ》の効果は使用せず、3マナで《母なる星域》を唱える」
再び、ツインパクトの《母なる星域》が唱えられる。既に今の雪の対戦相手である順平は半ば諦めかけている。それ程までにこのデッキは――《シャコガイル》をエースとして作られたこのデッキは独り善がりなのだ。
「場の《ハリケーン・クロウラー》をマナに置き、マナから《スーパーリーフ》を《アストラル・リーフ》の上に進化。ターンエンド」
山札は残り4枚。このターンだけで計14枚ものカードが山札から削られて行った。もし《シャコガイル》が場に居れば、山札は間違いなく0になっていたことだろう。
そして、このままでは雪は確実に次のターンに勝つ。つまりはこれが順平に残されたラストターンになる可能性がある。運命を分ける最後のターンだ。
「ドロー・・・・・・」
ハンデスも、ドロー力も、何もかもが悪かったこの試合。最後くらい、応えてくれと山札の上からカード取る。
「――よし」
どんな奴が相手であろうと、その拳は未だ握られている。どれだけ逆境であろうと、完全に諦めていないのならば、デッキは、その声に応えてくれる。
「《ゲオルグ・バーボシュタイン》をマナへ、7マナで《ロストソウル》を唱えます」(マナ7)
《ゴースト・タッチ》のツインパクトカード、《ゲオルグ》をマナへと置き、手札を根刮ぎ消滅させるハンデスの代表的カード、《ロストソウル》が炸裂する。
《残虐覇王デスカール》とツインパクトになった《ロストソウル》は、雪の手札7枚を全て墓地へと叩き落とす。
「ターンエンド」
これで次のターン、雪が勝つことは若干難しくなる。しかし、未だに雪が優勢であることに変わりはない。
「ターンの始めに《ズンドコ晴れ舞台》のDスイッチを使用。効果でマナから《水上第九院 シャコガイル》をバトルゾーンに。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージし、《シャコガイル》のcip効果で自分の墓地のカードを全て山札に戻し、シャッフル」
山札が16枚へと回復する。そして次のドローによっては、雪の勝ちで終わる。
「ドロー、《幻緑の双月》をマナへ、ターンエンド」(マナ12)
此処に来て、雪が減速する。
――来たっ、僕のターンだ!
順平は思わずニヤリとする。来る可能性は少なかった筈だ。しかし、まだ生きている。対処出来るカードがこのデッキにはある。
これでそのカードを引ければ・・・・・・
「《シャコガイル》の効果で5枚ドロー、3枚を墓地へ」
「ドロー」
雪が大量にドローし、勝利の為に山札を削るが、構わない。必要なカードは引けたのだから。
「6マナで《デーモン・ハンド》を唱え、《シャコガイル》を破壊します」
《マッド・デーモン閣下》というクリーチャーとのツインパクトになった《デーモン・ハンド》が次のターンに勝つつもりで居た《シャコガイル》を粉砕する。これでまた雪は《シャコガイル》を出さなくてはならない。
しかし、順平のやっていることは所詮は負けを回避する為の行動。勝つ為の行動ではない。雪が自爆する可能性に賭けているに過ぎない。
「ターンエンド」
「ドロー、5マナで《ハリケーン・クロウラー》を召喚。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ。cip効果で手札の2枚をマナへ、マナから《T・アナーゴ》と《シャコガイル》を回収」(マナ12)
回収されるコスト1のサイバー・ウイルス。場には《ズンドコ晴れ舞台》に《スーパーリーフ》。
「1マナで《T・アナーゴ》を召喚。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ。《スーパーリーフ》の効果で3枚ドロー」(マナ13)
漲る手札、減らないマナ。無尽蔵にも思える手札とマナで、雪は更にドローしたカードを使用する。
「5マナで《ハリケーン・クロウラー》を召喚。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ。cip効果で手札3枚をマナへ、《シャコガイル》《ズンドコ晴れ舞台》《ハリケーン・クロウラー》を回収する」(マナ14)
残りのマナでは《シャコガイル》は出せない。故に、雪は確実に勝つカードを場に投げる。
「5マナで《ズンドコ晴れ舞台》を再展開。ターンエンド」
「流石に、無理かな・・・・・・ドロー」
順平は負けた。諦める、とは、勝てる可能性があるのにも関わらず、そのビジョンを否定し、信じないことだ。
これは決して、諦めではないのだ。順平のデッキに、D2フィールドを除去するカードも、コスト7以下でマナを消し飛ばすカードも、相手の山札を超回復するカードも存在しない。
今からたった1枚で勝つことの出来るカードは、無い。
「《ジャーゴン》をマナへ、ターンエンド」(マナ8)
「《ズンドコ晴れ舞台》のDスイッチ効果。マナから《シャコガイル》をバトルゾーンに。《ズンドコ晴れ舞台》の効果で1マナチャージ。《シャコガイル》の効果で墓地のカードを全て山札に加えてシャッフル。そして、ドロー」(マナ15)
山札の枚数はこれで、5枚。雪の勝ちだ。
「ターンエンド。そして、君のターンの始めに《シャコガイル》の効果で5枚ドロー」
「山札が0で《シャコガイル》の効果によりEXwin、ですね。ありがとうございました」
そう、《シャコガイル》の能力は、自分の山札を引ききったら負けるかわりに勝つ、というルールを改変する効果。その為、このカードを使用するデッキは山札を多く削るデッキとなる。順平が初見でこのデッキのフィニッシャーを当てられたのも、それが原因である。
「ありがとうございました。その、どうだったかな?」
「どうだったって、何がですか?」
雪は感想を聞こうと順平に質問をする。このデッキと戦っていて、どう感じたかを。
「このデッキに対して、不快に思ったりしたかなぁ~ってさ」
「あぁ、まぁ、そりゃ正直思いましたけどね?ハンデスしてもドローしてすぐに回復するし。でも――」
「良いデッキだと思いました。綺麗な動きで、強味がわかりやすい。シンプルでいて洗練されたデッキだと思います。間違いなく“強いデッキ”だと、僕は思いました」
「・・・・・・そっか」
雪は少し顔が熱くなるのを感じた。ここまでこのデッキを誉められるとは思っていなかったのだ。
自分が作ったデッキを誉められる、というのは、カードゲーマーからすれば自分が誉められるのと同義なのだ。デッキを良く作る者程、これ以上に嬉しいことは無いだろう。
「よし、じゃあ次、対戦したい人が居たら来てくれるかな?次はこっちのデッキで行く」
「あ、じゃあ自分良いですか?」
気付けば、雪の周りには生徒会の1年生の多くがデッキを片手にスタンバって居た。今の試合を見て、それぞれが自分のデッキを眺めていたり、話し合っていたり、挑戦しようと話し掛けようと挙動不審な者も居た。
「良いよ、じゃあ、ダイスを振って」
結局、生徒会の仕事が終わるまで、雪は1年生とデュエマをし続けた。
嫌悪していた、デッキも使って――
嫌って“いた”《シャコガイル》
【挿絵表示】
宣伝用にと作ったTwitterのアカウントで色々話しても良いのでしょうか?そこら辺わからなくて迷惑にならないよう敢えて報告程度しか呟いていないのですが・・・・・・