起きたらチェンジ・ザ・ワールドしてた件   作:change

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文章少なめ、デュエマ無し。しかしかなり物語が進む回でもあり、次回が最初からデュエマ。やっとここまで来たか、と少し疲れてる。
ちょっと急に見えるかもだけど、寧ろ今まで変化無かった分、ここでかなりストーリーが進む。


不諦の遺志

曇り始めた空の下、少し賑やかな生徒会室にて、制服のズボンのポケットに入っていたスマホにRAINの通知が来ていることに気付く雪。後輩達とのデュエマが一段落付いた所で、新しいメッセージに目を通す。

 

「あ、凪さん。憐の体調不良治ったみたいです」

「そうなの?じゃあ風邪じゃなかったのかな?」

「まぁ、何か僕のこと探してるみたいなんで今から会って来ます。辛そうだったら帰り付き添おうかと」

 

は~い、と力の無い声で返事をした凪にお先失礼します、と頭を下げ、後輩達に手を振りながら生徒会室を後にする。

 

『そっちに向かう。今どこ?』

『教室』

 

「教室にまで戻ったのか。・・・・・・あ、そういえば、またVRの医療についての本読み忘れたな・・・・・・また今度にするか・・・・・・」

 

階段を上がりながら呟く雪は、どこか問題を先延ばしにし続ける駄目男の姿に似ていた。

 

「あれ?」

 

ふと聞いた事のある声が聞こえ、階段を登るのを止め、顔を上に向ける。

 

「あ、えーっと、恵那さん、だっけ?」

「あ、はい。恵那です・・・・・・その、何か仕事ですか?」

 

名前の確認を取る雪に、肯定しながら気まずそうにする恵那。どうやら、偶然雪と出会い、こんな時間に何をしているのか気になって声を掛けてしまったらしい。

 

「いや、手伝いしてただけですよ。今から友達の所に行くところで・・・・・・」

「あぁ、そうだったんですね・・・・・・呼び止めちゃってすみません。それじゃあ・・・・・・」

 

引き留めたことを悪く思い、一礼をした後に少し足早で階段を下りる恵那。すれ違いざま、良く見れば眼鏡を掛けていることに気付く。上階の窓から射す夕陽の輝きによって、フレームの薄い眼鏡に気付けていなかったのだ。

 

「さて、と。俺も憐の所に行かないと・・・・・・」

 

恵那が去っていくのを見届け、雪は少しの階段を上り、憐の居る2階へと到達する。

 

もう誰も居ない廊下で、憐は立ったまま窓際に寄りかかりながら雪のことを待っていた。

 

「あ、憐。体調、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫。どうにも風邪じゃなかったみたいで」

 

それなら良いんだけど、と雪は憐の隣の壁に寄りかかる。憐は少し神妙な表情を浮かべたまま、雪の方に顔を向ける。

 

「・・・・・・変な話なんだけど」

「ん?」

 

いつもと違う、どこか暗い雰囲気の憐に、雪は少し違和感を感じる。あの、いつも周りを明るくするような彼じゃない。自分や凪さんに使う口調でもない。

 

何か可笑しいと、雪はその時、憐の様子を見て思った。

 

そしてその考えは、当たりだった。

 

「雪ちゃんは、本当に記憶喪失なの?」

「え?あぁ、うん。そうらしいよ」

「らしい?雪ちゃんは喪ったということを少しも覚えてないってこと?」

 

あぁ、と短く返す雪を見て、憐はどうやら本当にそうなのだろうという結論に至る。

 

自分でさえも、喪ったということは覚えている。いや、少し違うか、喪ったということを()()()()()

しかし、雪ちゃんにはそういったものが一切無い。まるでそう、例えるならば、PCのログのデータさえ消えているようなものだ。何のファイルが消えたのか、それが分からないのはその記録を喪ったからだろう。

 

今より前の『白菊 雪』の記憶を喪った記録が無いのならば、何故消されたのか、いつそれを消すタイミングがあったか。

 

――あったとしたら、多分・・・・・・Z事件だ。Z事件の夢原 翔真の実験で脳を弄られかけた時。つまり、雪ちゃんは以前、夢原 翔真にとってZ事件において知られてはマズいことを知ってしまった?

 

憶測ではあるが、可能性としては十分に有り得る。だがこの場合、雪ちゃんが夢原 翔真に狙われる理由が無くなってしまう。既に処置し終えた対象に、危険を冒してまで接触しようとするだろうか?それともまだ、完璧に処置出来ていないのか?もしくは・・・・・・実験途中、なのか?

 

いきなり質問して黙り込む自分に困惑している雪に、憐は更に問を投げ掛ける。

 

「雪ちゃんは、夢で変な夢を見たことない?例えば、とても苦しそうにデュエマをしている夢とか、空に手を伸ばして息絶える夢とか・・・・・・」

「無い、と思う。夢なんて覚えてないし」

 

夢は覚えていることの方が少ないだろう。しかし、とても印象的なものなら起きても記憶していると考えていた憐は、これも事実なのだろうと考える。

 

――それにしても、夢、か。もし雪ちゃんが少しでも思い出せたなら、夢にも影響が出るかもしれない。

 

夢は記憶の整理の際に出るノイズのようなものだ。本人が思い出し掛けていることを自覚せずとも、脳はその情報を整理しようと夢というノイズを吐き出す可能性がある。そして、その内容を夢で見た時、デジャヴによりその夢を忘れずに記憶出来るかもしれない。

 

・・・・・・そういえば、何故自分の記憶にあんな記憶があったのだろうか。あそこでデュエマをしていたのも、手を伸ばしていたのも、間違いなくあれは雪ちゃんだ、と思っていたのだが、良く考えてみれば、それでは可笑しい。

 

デュエマの盤面が正面から見えるのも、空へ手を伸ばして息絶えるのも、どちらも主観でなければ有り得ない。

 

しかし、現に憐はその視点で見た。夢だから多少ねじ曲がっているのかもと少し考えたが、あそこまで鮮明な夢で少しでもねじ曲がっていたとはやはり思えない。

 

何故、自分が雪ちゃんの主観の夢を見たのか。

 

憐はその疑問に辿り着いた時、自分の全身に恐怖が纏わりつく感触を味わった。

 

「雪ちゃん、もしかしたら、事態はかなり深刻なのかもしれない。夢原 翔真は必ず雪ちゃんに手を出して来ると思う。きっと、こうして話をしている間にも、雪ちゃんの個人情報から雪ちゃんのことをずっと監視しているかもしれない」

「・・・・・・あ」

 

雪はそこで思い出す。少し前に凪の家の前で感じた悪寒を。あれは、監視だったのだろうか。そうだとすれば、いつ自分や凪、舞が危険に晒されても可笑しくは無い。

 

自分の居場所、自分の関係者が、自分を狙う犯罪者に知られている。それは、雪にとってとても恐ろしいことだった。

 

「・・・・・・憐、少し前に、俺は凪さんの家の前で視線を感じたんだ。もしかしたら・・・・・・それって・・・・・・!」

「落ち着いて、雪ちゃん。確かにマズいけど、相手は嘗て天災と謳われた夢原 翔真だ。バレるのは時間の問題だった。問題はバレた後、これからの行動だ」

 

過去に囚われれば、人は今を動けなくなる。動けなくなったら最後、抗うことは不可能だ。

 

「雪ちゃん、何でも良い。可笑しいと思える記憶があったら言ってくれ。雪ちゃんの記憶が無いのが夢原の仕業で、今も狙われているのなら、その目的はきっと完全な記憶、いや、記録の抹消だと思う。つまり、まだ雪ちゃんは何か覚えている、記録している筈なんだ」

 

そう言われ、雪は少し戸惑ってしまう。

病室で起きる前、自分の中にあったのはこの世界ではない世界の記憶だ。流石に他者にその話をするのは信じられないだろう。そして、信じてもらった所でどうしようも無い。

 

しかし、憐は続けて真剣な顔つきで雪に言うのだ。

 

『どんなことでも自分は信じる。だから、頼む』と。

 

少しの迷いを見せながら、遂に雪は今まで誰にも言って来なかった話を、友である憐に打ち明ける。

 

「本当に、信じられる?」

「勿論」

「絶対に?」

「絶対に」

「じゃあ・・・・・・言うぞ」

「・・・・・・うん」

 

 

「俺は・・・・・・――ん?何か・・・・・・声、聞こえない?」

「え?何が?」

 

雪が言うのを止め、身構えていた憐は少し力が抜ける。憐はすぐさま耳を済ましてみるが、雪のいう声は聞こえない。幻聴では無いのかと疑うが、雪は窓の外に耳を向け、音を拾おうと集中している。

 

「・・・・・・これは、女子の・・・・・・悲鳴か・・・・・・?それも尋常じゃない・・・・・・助けを呼んでる」

「雪ちゃん?」

「行こう、憐。嫌な予感がする。あの悲鳴は絶対に身の危険を訴えていた」

 

雪はそう言うと一目散に階段を下り、校舎から出て行く。小さくはあったが、悲鳴が聞こえたということは、校舎から出て近くの筈だ。

 

「っ」

「いやっ、来ないでっ!」

「―――」

 

学校付近の交差点で、階段ですれ違った恵那が、真っ黒いナニカに怯えていた。周りを見渡してみるが、人の気配はまるでしない。不気味な程に静かだった。

ふと、後ろを振り向く。憐は来ていない。途中まで一緒に来ていた筈なのにも関わらず、雪は此処にたった一人で来ていた。

 

「恵那さんっ、大丈夫?」

「お願いっ、助けてっ!」

 

パニックになり、体に力が入っていない恵那は、雪の制服を弱々しく縋るように掴んで泣き叫ぶ。

 

心臓が煩い。冷や汗が止まらない。あの時と同じ感覚が、雪の中で蘇る。

 

雪は落ちていた恵那のトートバッグを腕に掛けて、恵那をお姫様抱っこで急いで高校まで運ぼうと一目散にナニカから逃げる。

 

「恵那さんっ、しっかりして、落ち着いて!」

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

「過呼吸か・・・・・・!」

 

徐々に苦しくなっているのだろう。雪の服を掴む恵那の手の力が更に少しずつ弱々しくなっている。後ろを振り返ると、黒いナニカは未だに此方を向いている。顔は無いのだから、本来は此方を見ているのかは分からないが。

 

追って来ている。雪は前に向き直し、高校へと向かう。しかし――

 

「どういうことだよ・・・・・・!?」

 

前方に黒いナニカが回り込んでいる。後ろを向けばもう一人の黒いナニカ。

 

挟み打ちだ。

 

「クソっ」

 

憐へと電話を掛ける。が、通じない。続けて凪に電話を掛けるが、これも通じない。

 

恵那の呼吸が激しくなり、眼鏡が地面へと落ちる。焦っている雪は眼鏡を拾わず、そのまま電話を掛け続ける。

 

「何なんだよこれ・・・・・・!」

 

突然の非常事態に精神が不安定になり掛ける雪。しかし、ここで自分が取り乱せば、恵那が危ないのは十分に理解している。故に、冷静さを失わないように自分へと言い聞かせる。

 

「・・・・・・これも、夢原 翔真の仕業なのか・・・・・・!?」

 

憐との会話を思い出す。夢原が狙っているのは自分の記憶、記録の抹消の可能性があるということを。そして、天災の二文字を持つ者であることを。

 

「・・・・・・ごめん、恵那さん。巻き込んじゃったのは俺のせいなんだ。本当に、ごめん」

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

「―――」

 

もうすぐそこまで来ている。前後からジリジリと距離を詰めて来るナニカは、恐怖の化身とでも言った所だろうか。

 

雪は左の二の腕と右腕を使い恵那を支えることで、空いた左手で重力に従って垂れている恵那の手を握る。

冷たく、汗ばんでいる。こんな目に合った理由が自分にあるのだと思うと、とてつもない罪悪感を感じてしまう。

 

「大丈夫。落ち着いて、恵那さんは大丈夫だ。これは悪い夢だから。後もう少しで覚めるから」

 

突拍子も無いことを言い、恵那の手を強く握る。それは果たして恵那に向けて言った言葉なのか、恐怖している自分の為に言ったのか、それは雪にも分からなかった。

 

遂に、ナニカが雪の目の前にまで来た。雪は恵那を下ろし、持っていたトートバッグをぶつけようとするが、ナニカにぶつかるも貫通してしまい効果が無い。遠心力に従い振られたトートバッグが、雪の近くに1冊のノートを落とす。ノートは地面に落ちた衝撃で開き、間に挟まっていた1枚のカードが風に乗って雪の足へと当たる。

 

「―――」

 

それとほぼ同じタイミングで、雪と恵那の視界は闇で覆われた。




Q.足にカードが当たった描写とか必要?
A.滅茶苦茶必要でした

Q.恵那の眼鏡描写は?
A.都合が良いので入れました

Q.何凪以外のJKをお姫様抱っこしてるんだよ
A.うちの雪がスミマセンでした

とまぁ、憐がかなり描写多かったんじゃないかな?口調が最後まで変わっている憐は本当に描くタイミング少ないだろうからかなりレアかも。

そして遂に雪がemptyhumanと対決。使用デッキは・・・・・・はて、何でしょうかね?
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