主人公「幼なじみ可愛い。人気者っぽい友達と幸せそうで嬉しい」
凪「書類やっといて」
憐「そんな~」
『アルカディアスDによって呪文のロックを受けているアメリカ。ブロッカーを出して耐えていますが、これは厳しいですねぇ~』
『そうですね、バロムは強力なcipを持っていますが出せなければそこまで脅威ではありません。イギリスもここは徹底して、クリーチャーを除去していきます』
生徒会室の中から聞こえて来る実況の声。扉を開けるとスマホを持ってその映像を無言で真剣な顔付きで見続ける青年の姿を目にする。
「あ、会長帰って来たんすか?いきなり書類渡されて1年の生徒会メンバー驚いてましたよ~」
「あ~、ごめんね、憐。ちょっと慌てちゃってたから・・・・・・何見てるの?」
憐の持つスマホを覗き込むと、テレビで見慣れた空間でデュエマをする二人の外国人が映っていた。
「アメリカとイギリスの試合っすよ。バロムvsアルカディアス。因みに会長はどっち派っすか?俺はバロムっすね」
「うーん、アルカディアスかなぁ~?」
「会長はアルカディアスっすか・・・・・・」
丁度実況が大きな声になり始める。どうやら戦局に大きな変化があったようだ。
『おっとアメリカ・・・・・・?マナゾーンのカードを進化元にして・・・・・・バロムクエイクを召喚したぁ!これは形勢逆転か!?』
『ヘブンズ・ゲートによる踏み倒しもこれで出来なくなりましたね。これはイギリス、かなり厳しくなりましたね~』
「おおぉ~、やっぱバロム強いっすわ、これはアメリカに流れが来たっすね」
「でもイギリスが勝ったんだよね?この試合?」
違ったかな?と憐に聞くと、そっすね。と頷きながら試合の結果を知っていることを証す。
「結果が分かっててもこう・・・・・・何て言うか、実際に試合をしている人達によって作られるこの駆け引きから生まれる緊張感のある空間に引き込まれちゃうんすよね」
「そうだね、確かに。私も好きだな~、こう、相手の手を考えてお互い自分の思い描いた先の展開への1手を打ち合う感じ」
「そうそう!それっすよ!いやぁーこれ見てたらデュエマしちゃいたくなってきたっすねぇ~」
そう言いながら、憐は手元に置いてあったバッグから綺麗な状態のデュエマのカードを取り出した。よく見るとバッグの奥には銀色に光るゴミが少し入っている。
「あ、もしかしてパック買ったの?」
「お、当たりっす。今回の成果は~・・・・・・ジャジャーン!」
憐は手に持っていたカードの束を生徒会室のデスクの上に滑ったのカードが見えるように広げる。何枚かレアカードはあるが、他はアンコモンやコモンで光っているカードは1枚も無かった。
「やっぱり駄目っすね~パック。全然ベリーレア以上出ないっすもん」
「あ、ヘブンズ・ゲートだ。交換出来たりする?」
「ん?いっすよ。じゃあ・・・確か会長ってインフェルノ・サイン持ってたっすよね?あれもし使わないなら交換して貰っても良いっすか?」
勿論良いよ~と言いながら、バッグに入れてあったカードファイルを開き、インフェルノ・サインを取り出す。闇文明を少々扱い切れていないと感じていた凪からしたら嬉しい内容だったのだろう。自然と顔が綻ぶ。
そんな顔の凪を見て、憐は両手を合わせる
「眼福眼福。美人の笑顔も見れたし、これで今日も一日生きていけるっ・・・!」
「大袈裟だなぁ~・・・・・・。あ、そうだ、夏休み明けたら憐のクラスに新入生来るから、もし困ってたりしたらよろしく頼むね」
「え!?マジすか!?女の子っすか!?」
デュエマの試合映像や交換に気を取られていたがこれを伝えなければ、と凪は憐に生徒会として新入生に色々教えてあげるよう言うが、憐はそれよりも女子かどうかが問題のようだ。無言で試合を見ていた時の真剣な表情の青年は一体どこへ行ってしまったのだろうか。
「残念!男子でした~!」
「何だ男子すか・・・・・・」
あからさまに残念がっている憐に凪は一つ憐が驚きそうな情報を提供する。
「実はね、その子は4c以上も扱えるデュエマプレイヤーだったんだ。まぁ、今は多分デュエマしたいと思ってないかもしれないけど・・・」
「・・・4c以上ってマジすか?てか本当にデュエマプレイヤー多過ぎやしないっすかねうちの高校・・・・・・」
驚きのあまり聞き返す憐だが、それよりもデュエマプレイヤーが増えるということに対して少し呆れたような顔と口調で凪に意見する。憐と凪の居るこの高校は他校と比べてもデュエマプレイヤーが多い。実際にカードゲーム部のデュエマ部門においてはうちの高校はトップクラスの強さを誇っている。そこに居る凪も自分もデュエマの大会ではかなり良い成績を残すことが出来ている。
凪はそうだね、とデュエマプレイヤーが多い事に同意を示しながら、何故自分達の高校はデュエマプレイヤーが多いのか説明を始める。
「私達の高校は元々Zプロジェクトの被害者のカードゲームへのトラウマの解決や、まだカードゲームをスポーツとして認識していなかった当時の世間にそのイメージを定着させる為に創られたものだからね。というか、学校のサイトとか新入生への校長先生の話でもあったと思うんだけど・・・寝・て・な・い・よ・ね?」
「イヤダナー、ネテタワケナイジャナイデスカー!アハハハハ」
「
トラウマの解決の為に少しずつカードと触れ合わせる。という試みだったのだが、勿論失敗例も存在する。教師側が体育でカードゲームの授業に参加しろと被害者に強制し、自殺したという事件も過去にはあった。スポーツとして認識されたことにより、体育会系のノリで生徒や教師がちょっとやってみないか?と無理矢理やらせたり、被害者を集団で虐め、自殺に追い込んだなどがあり、完璧に安心出来る環境とは残念ながら言えない。
凪は彼がデュエマプレイヤーとして戻って来て欲しい反面、そういった目に逢わないか心配なのだ。だからこそ、出来ればデュエマにもう触れないで欲しいと思ってしまう自分が居る。
段々と暗い表情になっていく凪を見て憐はまた暗い顔してますよ会長?と声を掛ける。この後ろ向きな思考へどんどん凄い速さで陥って行くのはこの人の悪い癖だ。何とかして治してやりたいものだ。
「デュエマを嫌いになってるかなんてまだ分かんないっすよ。記憶喪失ならそれこそ嫌いになった要因を忘れてるかもしれませんし?」
「それは・・・・・・確かにそうかもしれないけど・・・・・・」
「なら良いじゃないっすか。最初から諦めないで下さい。それとも会長はその子にデュエマを嫌いになって欲しいんすか?」
我ながら意地悪な返しだと思う。ただ最初から少し諦め掛けている様子の会長にはこれくらいしなければ効果は無い。
「別にっ、そういう訳じゃないけど・・・・・・」
「じゃあもう大丈夫っすね!俺、早くその人のデュエマ見たいっすわ~」
「あー、もう!」
憐の質問に悩んでいた自分が馬鹿らしく思えてきた凪は少しだけムッとして、意地悪な質問をしてきた憐の頭を握り拳でグリグリと両サイドから攻撃する。
「意地悪なこと考える頭はこれかなぁ!?よぉーし!ちょっと壊しちゃうぞぉー!」
「イ゛タ゛タ゛タ゛タ゛タ゛タ゛タ゛タ゛タ゛!!ア゛タ゛マ゛カ゛、ク゛タ゛ケ゛ル゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛!」
さっきまでの暗い表情は消え、いつも通りのこの人に戻ったことに憐は安堵した。
しばらくして1年生が生徒会室に戻った時には既に凪はいつも通りデスクで作業をしており、そのデスクの前にあるソファには頭を抱えて動かなくなった憐の姿があったという。
白い壁、白い床、白いカーテンのある部屋で、夏の景色を確認出来る窓が見える場所にあるベッドで俺は自分の退院までのスケジュール表を確認していた。
「退院まで早いもんなんだなぁ~。入院とか初めてだから知らんかった」
本来はもっと掛かるのだが、彼には入院などしたことが無い為、どれくらい長いのかは分からない。
ペラペラとスケジュールの書かれた紙を捲る。見ればリハビリの文字の下には7月26日から2週間と書かれている。実際、自分の体とは思えない程に重く感じはするが、そこまで筋肉が落ちているような気はしない。結構な時間寝てたというのに不思議過ぎる。
「・・・リハビリも良いけどデュエマしたいなぁ~・・・・・・。柴崎さんには悪いけど、リハビリって大変だし、このままベッドの上でデュエマのデッキ考えてたい・・・・・・」
この夏の暑い中で、冷房が効いていたとしてもリハビリに励める気がしないのだ。そもそも両親がまだ来てないのもあり、少しこれから先が心配になった為、いっそのこと病院でゆっくりリハビリしてその間自分の生活をどうしていくか考えていたい。
「新聞読んでるだけじゃ、自分については知れないし・・・・・・」
世間は知れても自分自身が分からない。
ただ予想以上に新聞から得られた情報は多かった。親が新聞を読めと言って来たりした理由だけあって最近の出来事はある程度把握していた。
「あぁ~・・・動きたいけど動きたくないぃぃ・・・・・・」
「何言ってるんですか~?リハビリ、頑張りましょうね?」
支離滅裂な発言をしていた俺に対して、目が覚めた時に居た看護婦さんがリハビリを促す。考え事のし過ぎで全く存在に気付かなかった・・・・・・
「冷房が効いているんですから、そこまで暑くないでしょう?怠ける理由作ってないで、ちゃんと退院出来るよう頑張って下さい」
「はい・・・・・・」
自分の看護をしてもらっていた分、失礼なことを言ってはいけないような気がして反抗出来ない。嫌がっていてもリハビリの時間は来るのだ。逃げていても仕方ないか、と渋々結論づける。
「よし、たかが2週間だ。やってやる」
「されど2週間ですからね。リハビリ大変ですから、2週間コースはキツいですよ?」
2週間コースとは何だろうか?今まで聞いたことのない単語だ。意味合い的にはリハビリ期間をコース選択するようなものなのだろうが、生憎俺はそんなものを決めていない。
俺は誰が2週間コースと決めたのか看護婦さんに聞く。
「先日いらっしゃった柴崎さんですよ。貴方の意識もハッキリしてますから問題はありませんし、何よりも柴崎さんの御両親は貴方の後見人ですから」
「え」
その時俺に衝撃が走る。まるで雷に打たれたかのようだった。
柴崎さんの御両親が後見人だったという衝撃の真実と、そこから導き出される自分の親が死んだのか子を捨てて行方を眩ませたのかということ。
「あ、リハビリの御時間ですね。行きましょう」
「え、あ、はい・・・・・・」
リハビリの時間が来たことを告げられ、人生初のリハビリに緊張し始める。医療ドラマなどでリハビリする人を見ていたりしたが、実際にリハビリしている人はあまり見たことがない。
看護婦さんに付き添われて自分の部屋を出る。
「この下の階にリハビリ用の施設がありますので、そこで2週間コースをすることになります」
「因みに何ですが、2週間コースとは?」
「説明していませんでしたか、すみません」
俺はエレベーターまで点滴棒を片手で持ちながらさっきまで疑問に思っていたことを質問する。看護婦さんは説明していなかったかを俺に確認するとすぐさま説明を始める。
「ここではリハビリにはコースが幾つかあり、その中から選択するようにシステムが出来ています。その中の2週間コース、1ヶ月コース、3ヶ月コース、6ヶ月コースの2週間コースを柴崎さんの御両親は選択しました。これは先程上げた4コースの中で一番過酷と言われているものです」
「一番過酷・・・・・・」
いきなりやりたく無くなって来た。すぐに病室に戻りたくなる。そもそも寝たきりに近かった俺に2週間コースとは如何なものか。どれだけ早く退院して欲しいのだろうか。
俺は柴崎さんの御両親に嫌われているのか考えているとエレベーターの扉が開き、中に入る。
「安心して下さい。柴崎さんの御両親は貴方を嫌ってはいませんよ。貴方が入院した時なんて酷く落ち込んでいましたから」
「そうですか・・・・・・。単純に早く会いたいからなのかな?」
『1階です』
俺の不安を和らげようとしてくれた看護婦さんの言葉に単純に早く会いたいから早くリハビリが終わるコースを選んだのだろうか?と考えているとエレベーターが目的の階に着いたことを報告し、目の前の扉が開く。
看護婦さんの案内に従って移動していると、しばらくして体育館のような場所に出る。
「辛くなったり苦しくなったりしたら無理せずに近くの者に声を掛けて下さい。大変でしょうが、リハビリ頑張って下さい」
「何から何まで、ありがとうございます」
今までの看護や案内までしてくれた看護婦さんに感謝すると、看護婦さんは仕事ですからと言い、リハビリの担当に変わる。容姿は男性で長身、少し筋肉質という所だろうか?
「君の名前を確認するけど良いかな?」
「はい」
白衣を着た男性は看護婦さんと話し終えると此方へ顔を向け、情報確認をし始める。
「2週間コース選択の
「はい」
「よし、それじゃあ早速リハビリを始めよう。僕の名前は
俺は差し出された手を握り、握手をする。何度も病院内で大変と言われ、これから先のリハビリが心配になったが、この優しそうな先生となら2週間で退院出来そうだ。
「よろしくお願いします」
用語解説
cip→バトルゾーンに出た時に発動する効果。comes into play abilityの略かと思われる。
踏み倒し→カードを使う際に払うコストを何らかの方法で無視して使う行為。
コモン、アンコモン→カードのレアリティ。コモンは一番出やすく、アンコモンはその次に出やすくなっている。
今回は凪の抱える雪への心配が描けていたら大成功。雪がデュエマをする姿をもう一度見たいと思う反面、カードゲームをさせないで嫌な記憶を取り戻させないようにしたいと思っている感じ。
そしてリハビリ2週間というコイツ将棋・・・誤字だ、正気か?というリハビリコース。案の定大変なコースです。小説の展開の為にも頑張ってくれ主人公()
流石にリハビリ描写いらないだろ、と思うので、次回はリハビリ後、つまり退院後のストーリーを書こうと思います。リハビリは回想シーンで十分なのさ(吾妻さんの出番が)
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