ニセコイを見守るもの   作:TL警備員

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テンニン

とても懐かしい夢を見た。

 

 

「――――――」

 

 

酷く懐かしい夢だ。

 

 

「Be happy…(幸せになって…)」

 

 

そう言って、自分より大切な少女を捨てた夢。そして…

 

 

「おめぇは今日から俺の息子だ。」

 

 

仕えるべき親が出来て、家族が出来て、大切な守るべき存在が出来た夢。

 

 

「愛、今日からこいつがおめぇの主人だ。名前は―――楽。一条楽。おめぇが生涯守り抜かなきゃいけねぇ、俺の息子で、おめぇの弟だよ。」

 

 

これは、ニセコイを送る主人公の話じゃない。これはその傍に仕える本来なら存在するはずのない、義兄の話。それ以外の話だ。

 

 

 

―――――――――

 

 

朝はまだ日が昇り始めたところ。自分は今日も坊ちゃんよりも早く起床する。他の家族達はまだ夢の中、そんな時だと言うのに誰よりも早く行動を開始し、いつの間にか数時間。

 

 

「おーい!飯できたぞぉー!てめぇらぁ〜」

 

『おはようごぜえやす、坊ちゃん!!!』

 

 

集英組。この地域では名の知れた組。実はそれなりに力の強い組である。そんな組の朝は早い。決まった時間に起きては決まった時間に皆で食事をとり、決まった時間に皆活動を開始する。

 

 

「おはようございます坊ちゃん。」

 

「おはよう。愛兄。」

 

 

一条愛。坊ちゃんの御身をお守りするために誰よりも早起きをして鍛錬にはげでいる。集英組一、坊ちゃんへの愛が強い男。

 

 

「今朝もまた朝食の支度ありがとうございやす。手伝いやす。」

 

「おぉ、いつも悪いな。」

 

「いえ、坊ちゃんこそ…」

 

集英組の朝食は何かと騒ぞうしい。理由は坊ちゃんの飯である。坊ちゃんが飯を作るまで、俺たち集英組はまともなものを口にしていなかった。やきすぎたパン、病院食を連想させるほどのお粥、極めつけは朝からガッツリステーキ。正直、拷問かと思わせるものが多かったらしい。自分からしたら全てがご馳走だが…

そんな所に自分たちの父親が登場する。

 

 

 

「やれやれ、毎日忙しねぇなテメェら…」

 

「親父。」

 

『組長、おはようごぜぇやす!』

 

「おはようごぜぇやす。親父。」

 

「おう。」

 

 

現れたのは自分を拾った。命の恩人であるお方。自分の親父だ。その姿は年老いたとはいえ今日も凛々しく神々しい。

 

 

「そういうや、楽。近々テメェにでぇじな話があるから覚えとけ。」

 

「大事な、話?」

 

「それと、竜、愛。ちと飯の後に俺んとこに来い。」

 

『へい。』

 

 

坊ちゃんを他の組員に任せ、安全に送り届け、皿洗いを済ませた後。俺と竜さんは親父の部屋へと赴いた。

 

 

「組長、失礼しやす。」

 

「おう。」

 

「…親父、大事な話ってのは一体?」

 

 

襖を開け、頭を下げながら部屋へとはいる。そこには煙管を咥えながら、煙を吐き出す親父の姿があった。

 

 

「来たな、早速だが。最近、ギャング共の動きが活発になってんのは知ってるな?」

 

「…へい。」

 

「お恥ずかしい限りです。自分の力不足で組長の顔に泥塗るなんだざ…」

 

「竜、テメェの落ち度じゃねぇ…面ぁ上げろ。問題はそこじゃねぇ…近々、ギャングのボスと会談がある。そこまで問題は慎んで欲しいっつう情けねぇ頼みだ。」

 

「!組長は悪くねぇです!ですが…」

 

「親父、いいんですか?そんなんじゃギャングにもおでこ(警察)にも舐められたままですぜ?許可さえ降りれば、自分がケジメ付けてきます」

 

 

親父の部屋に入り、会話はそれなりに進む。なんでもこれは大事になりそうな気配だ。正直、最近でてきたギャング達には自分も痺れをきらしそうな頃合いだ。

 

 

「愛、血の気の多いことは必ずしも俺たちにいいって事はねぇ。ちっとばかり気ぃつけろ。なぁに安心しろ、穏便に済ませる。」

 

「…会談の際、護衛は?」

 

「必要ねぇ。男同志、腹割ってのもんだ。」

 

「へい…」

 

「つーわけだ。竜、愛。組のことは一旦任せる。会談は1週間後。その間、頼んだぜ。」

 

 

『へい。』

 

 

そんなこんなで自分と竜さんは少しの間、組を預かることになった。そして、坊ちゃんにもまたほんのわずかな変化が生じ始めた。

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「ただいまぁ〜…」

 

「!坊ちゃんっ!どうしたんですかい?!ここ最近、酷いですよ?」

 

「あぁ…愛兄。怪我の事は気にしないでくれ…」

 

「ですが…」

 

「それ、よりも…ペンダン、ト…」

 

 

あれから数日が経過したある日、坊ちゃんが急にボロボロになり始めて、ついに等々玄関でそのまま睡眠を開始した。ただ寝ていただけたというのに、気が動転しすぎて、自分は慌てふためいた。

 

 

「坊ちゃん…?…竜さーん!?皆ぁ?!坊ちゃんが…!坊ちゃんが死んだぁ?!?」

 

「なんやとぉ?!?!」

 

『2代目ぇぇぇっ?!』

 

 

そうして、波乱万丈な数日が過ぎ去った時問題は起きた。

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

「愛…気ぃ、つけ、ろ…」

 

「…ギャングの親玉か?」

 

「ふん、ボスが貴様らのような猿共に直接お会いするはずがないだろう。弁えろ」

 

「身の程は知っているつもりだ。だが、兄貴分をこんなにも、しかもたった一人にやられておめおめと帰る訳にもいかねーよ。名前は?」

 

「…極東の猿が…口の利き方に気をつけろ。」

 

「テメェこそ、日本のヤクザ舐めてんじゃねぇよ…」

 

「「!」」

 

 

観戦者は居ない。そこには白髪のメガネをかけたエリート様と、泥臭く穢れ多い、ヤクザが拳をぶつけ合っていた。

 

 

「っ?!」

 

「っ!」

 

「Surprised(驚いた)顔を殴られたのは久しぶりだ…」(先程の猿共とは違うらしい。これならば本気で殺り合っても良かろう。)

 

「そいつぁよかったなぁ…」(ふざけるな…一撃で肋が三本はいったぞ。こいつは確実に殺しを知ってやがる。)

 

 

そこで俺は自覚した。この男は生半可な覚悟で打倒出来るものでは無い。

 

 

 

「なかなか骨があるな、試させてもらおうか」

 

「光栄なこった…」

 

「「!」」

 

「ちぃ、ポリスか…!」

 

「はぁ…」

 

「今回は見逃してやる。だが、次合間見えた時はその命を頂くぞ。」

 

 

再び、2人が拳を交えようとした時。パトカーのサイレンが轟いた。それに反応し、ギャングの白髪は退散し、自分は九死に一生を得た。

 

 

「…たく、三丁目からの通報があったかと思えば…まぁたお前か愛。」

 

「―――右助さん。」

 

「はぁ…まさかとは思ったがこの痕跡的に大方ギャングとでもドンパチしたか?」

 

「すいやせん…」

 

「ヤクザもんが俺に頭下げてんじゃねーよ。仮にも一条の《狂犬》だろうが」

 

「すいやせん…」

 

「だから…!はぁ、もういい。ここは俺とお前の間ってことで不問にしてやる。次からは気をつけろよ…」

 

 

 

橘グループ直属の機動隊隊長が俺のような人間と接点があるのは正直良くないが、彼自身が何かにつけて接点を付けようとしてくるのだ。

 

 

「へい…ありがとうございやす。」

 

「たく…背中の墨さえなきゃあなぁ…」

 

「?」

 

 

最後の言葉は聞こえることなく宙へと消えた。そして、ここから事態は急速に変化していく。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

「あー、先週転校生が来て野郎どもが浮かれたばかりだが、今度は私ら女の出番だァ!」

 

 

何やら教室がざわめき出している今日この頃、ギャングとの接触もあり、重大発表もあり、坊ちゃんにも相談を乗ったこの数日。自分は再び人生の岐路へと立っていた。

 

 

「紹介するぜ!今年1年間お前達の副担をすることになった―――一条愛先生だぁー!!!」

 

「…一条愛です。皆さん、1年間ですが、よろしくお願いします。」

 

「なっ?!」

 

「なっ?!」

 

「「愛(さん)兄?!」」

 

 

偽物の恋は急激に加速する。

 

 




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