寝取られものの主人公になりかけてるのでどうにかする   作:コーク厨

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この小説は、作者がNTR物を読んだ後に胸糞悪い気持ちを晴らすため書いた小説です。
細かい設定には断じて突っ込まず、勢いだけで読んでください。


誤字報告ありがとうございます!


寝取られものの主人公になりかけてるのでどうにかする

「お兄ちゃん……大好き♡」

 

「あぁ…… 俺も大好きだよ……」

 

今、俺は幸福の絶頂にいる。

愛する女と結ばれ、これ以上のない絶頂にいる……

 

「ねぇ? お兄ちゃん、私ね? お兄ちゃんに隠していた秘密があるの……」

 

しかし、俺の絶頂を邪魔する落とし穴がある……

 

「ん? どんな秘密だい?」

 

「私ね…… 実は! お兄ちゃんが大好きな神奈ユイだったんだぁ!」

 

知ってる

 

「え!? あの人気アイドルのかい!? そうかぁ…… 似てる似てるとは思ってたけど、まさか本人だったなんて……」

 

「うん…… 秘密にしててゴメンね? でもでも、これからはお兄ちゃんだけのアイドルだよっ!」

 

「あぁ、夢みたいだなぁ…… こんなに幸せだなんて……」

 

俺はこの幸せを保ち続ける……

保ち続ける為に様々な準備をしてきた……!

 

「もう一生離さないからな、優香……!」

 

「うんっ! 悠お兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

ふと目が覚めた時、俺は自分の立ち位置を理解した。

ある作家が書いたNTRものエロ漫画の主人公である、『独 悠(ひとり ゆう)』だと自覚してしまったからだ。

 

悠は極々普通の青年だが、優しい性格をしていて、昔からお兄ちゃんお兄ちゃんと慕ってくれる年下の幼なじみである『鹿目 優香(かなめ ゆうか)』と念願叶って付き合うことになる、そしてその幼なじみが自分が大好きなアイドルである『神奈(かんな ) ユイ』だと知り、幸福の絶頂に立つ。

しかし、付き合っている事がパパラッチにバレ、炎上。

事務所に損害賠償として1億を請求され優香は相談することも出来ずに借金の肩代わり申し出た株主に出された条件として株主の家に行き寝ることになり……

 

というのがマンガの内容である。

ごくありふれた内容のNTRものの導入であるが、自分が当事者となったらそう楽観視出来なくなった。

 

しかし俺には2年という時間があった。

そして前世で覚えたことは今の身体でも一通り出来た。

何より俺は優香の事を愛していたし、可愛い優香があんなおっさんの物になるのが我慢ならなかった。

 

そうして俺は、このNTRマンガをぶち壊す為に動き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

『人気アイドル神奈ユイの素顔!』

『清純派の皮を被った淫乱なアイドル!』

 

「おいっ! どうしてくれるんだこの記事っ!」

 

「すっ、すみません……!」

 

私、鹿目 優香は幸せの中にいるはずだった……

小さな頃から大好きだった、兄と慕う人と結ばれて……

何度も何度もお互いの愛を確かめ合って……

 

「ウチの信頼はボロボロ……! どうしてくれるっ!」

 

「本当にっ! 本当にすみません!」

 

だけど、詰めが甘かった。

私達がキスしているところを写真に撮られちゃった……

当然、外でした訳じゃ無い。

少しだけ空いていたカーテンの隙間から盗撮された。

 

「おい…… 当然賠償はしてくれるんだよな……?」

 

「……! はっ、はい……!」

 

「払えるんだよなぁ!」

 

「頑張って……払いますっ……! 幾らですか……?」

 

「ざっと1億だよ」

 

「いっ……1億……?」

 

そんな大金用意出来る訳ない。

アイドルとして稼いだお金はあるけれど、それを全部つぎ込んでも全然足りない……!

 

「なぁ……? もしかしてだけど払えないのか……?」

 

「そっ……そんな大金は直ぐには……! で、でもっ! ちゃんと払いますっ! 働いてお金稼いで絶対にっ!」

 

「今すぐ必要に決まってんだろうがっ!」

 

バンッ! と机を叩いて脅され、小さく悲鳴が出てしまう。

 

「…… おいっ! ちょっとまってろ!」

 

突然、社長が立ち上がって電話をどこかにかけた。

なんか新しい女がどうとかいくらで買いますかとかなんとか言ってるのが聞こえた。

少し経ってから電話を切った社長がこんな話をしてきた。

 

「今、うちの株主の方に連絡をした。そしたら、お前の態度次第では、1億を肩代わりしてやってもいいとの事だ。」

 

「えっ? ほ、本当ですか!? 」

 

「あぁ、その方の出す条件を飲めばの話だがな。」

 

「その、条件って言うのは?」

 

「あぁ、簡単な事だ、後日その方の家に行ってお前についてじっくり教えてくれればいいとの事だ。それで1億稼げるなら全然安いものだろう!」

 

「え……?」

 

自分についてじっくり教える、というのは、枕営業の事らしい。

噂程度でしか知らなかったけれど、本当の話だったんだ……

で、でも、枕営業なんてやりたくない……!

 

「どうする…… 受けるのか!? 受けないのか!?」

 

「す、少し考えさせて下さい……!」

 

「ダメだっ! 今決めろ!」

 

「そ、そんな……」

 

「おいっ! 1億払えないんだろっ!? 払えないならさっさとこの話を受けろっ!」

 

何度も何度も机を叩いて威圧してくる。

やだっ! 怖いっ! でも1億円なんて払えないっ! 枕営業なんてしたくないっ! お兄ちゃん以外とえっちなことなんてしたくないよぉ!

 

「先方の気が変わったらどうするんだよっ!」

 

「ひっ……!」

 

やだっ! 助けてっ! お兄ちゃんっ! お兄ちゃんっ! お兄ちゃんっ! お兄ちゃんっ! お兄ちゃんっ!

 

 

 

 

「その話っ! 一寸待って貰えませんかね?」

 

 

 

 

「…………え?」

 

「……あぁ?」

 

応接室の扉を蹴破って現れたのは…………

 

 

「ごめんな、怖かったろ? 優香」

 

 

大好きな王子様(お兄ちゃん)でした。

 

 

お兄ちゃんは私を優しく、そしてしっかりと抱きしめてくれた。

あぁ……お兄ちゃんにぎゅ〜ってされると安心するなぁ……

 

「お前っ……! どの面下げてここに来たんだっ!」

 

入ってきて私を抱きしめてくれるお兄ちゃんに社長が怒鳴り声を上げる。

 

「まず最初にっ! 俺の行動の結果この事務所の皆様方に迷惑をかけた、その事はお詫び申し上げます」

 

お兄ちゃんが事務所のソファに座ったので、私も横に座る。

 

「そんなことっ……!」

 

私が気を遣えなかったから……!

1番迷惑かけたのは私なのに……!

 

「良い、優香。 俺が注意をしっかりと払わなかったことが原因でもある」

 

「お前のせいでなぁっ! ウチはボロボロだっ!」

 

「わかってます、わかってますとも」

 

「なんだその態度っ! ふざけるなっ! 払えっ!お前もっ! 賠償金払えっ!」

 

そんなっ! 私だけじゃなくてお兄ちゃんにも……!

 

「えぇ、払わせて頂きますとも………… でもなぁ……!」

 

お兄ちゃんが机に思いっきりかかと落としを決め、すごい音がなった。

 

「女売って金儲けようとするのは違ぇんじゃあねぇかなぁ!?」

 

え?

 

「えぇ!? 社長さんよォ! お前さん今売ったよなぁ! 優香をっ! 2億でっ! 売り飛ばそうとしたよなぁ!」

 

「売り飛ばすだとっ! 人聞きの悪いっ! その女のせいで出来た負債をその女に払わせるのは当然の事じゃないかっ!」

 

「あぁその通りだ、負債は払わなくちゃならねぇ…… でもなぁ! だからといって金持ちに女斡旋して回収しようとする挙句、更に儲けようとするのは違ぇじゃあねぇか!」

 

「えぇ!? これまでに何度もやってきたんだろ!? 可愛い未来あるアイドルを何人か!」

 

お兄ちゃんがそう言ったのを聞いてふと、デビューしてから見かけなくなった子が何人かいることを思い出した。

マネージャーに聞いても、辞めたの一点張りだったから、本当に辞めたんだと思ってたけど……

 

「とっくに調べはついてんだよっ! お前らグルで何人も沈めて来てるって事はっ!」

 

「ふんっ! なんの事だか検討もつかんなっ! それより払えっ! 賠償金っ! 今ここで! 一括で! 出来ないなら口を挟むなっ!」

 

一括なんてそんな無茶な……! 払えるわけないっ!

 

「ッチ! 口を開けば金金金…… 人間のクズめ…… まぁいい! 1億だったか……? 用意してやるよ! この場に!」

 

「……は?」

 

「用意してやるって言ったんだよ! 1億! 現金でっ!」

 

「ふ、ふざけるなっ! そんな大金お前みたいなやつが持ってるわけ無いだろうが!」

 

「そ、そうだよお兄ちゃん! 無茶な事はしないで! 私は大丈夫だからっ!」

 

そうお兄ちゃんに声をかけると、お兄ちゃんは私ににっこりと微笑んで、優しい声で語りかけてきた。

 

「ごめんな、優香…… 俺、お前に隠していた秘密があるんだ……」

 

「おいっ! 入ってこいっ!」

 

そうお兄ちゃんが声を外にかけると、黒ずくめの怖い外人さん達が何人も部屋の中にトランクケースを持って入ってきた。

 

「そこに置け」

 

そしてお兄ちゃんは外人さん達を顎で使っている。

 

「お、お兄ちゃん……? この人達…… 誰?」

 

大丈夫なのお兄ちゃん? 何かすごい怖いよこの人達?

 

ほら、事務所の人もみんな顔青ざめてるよ……?

社長さんなんて青ざめるどころか土気色になってるよ?

 

「優香」

 

短く名前を呼ばれお兄ちゃんを見上げると

 

「俺、実はマフィアの幹部なんだ」

 

と、全く予想だにしない一言を私に向けて発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このマンガをぶち壊す決意をした俺がまず最初にやった事はパスポートの取得。

幸いにして、俺は成人していたのですんなりと行った。

 

言語に関しても、前世で4ヶ国語を喋れた俺には問題無かった。

向かった先はイタリア、マフィアの総本山である。

 

そこであるマフィアの構成員に取り入り、まずはファミリーに入り込んだ。

次は幹部の1人を殺し、そいつの隠し財産を奪い取りその金で幹部になる。

そして今の組織に不満を持つ者達と結託し、組織に反旗を翻し抗争を仕掛けた。

 

抗争に勝利した俺たちは見事に組織を乗っ取り、俺は安寧の地位を手に入れることに成功した。

 

幹部として莫大な利潤を上げ、総資産は11桁に到達した。

そして悠々と日本に帰国、地元のヤクザとも話をつけ、今この事務所に乗り込んで来た訳だ。

 

何度も何度も命の危機に陥ったが……

人間死ぬ気になれば何でも出来るものだな、やっぱ。

 

相手は金持ちであり、組織である。芸能界との癒着も激しいだろう。

そういう相手と戦う時に必要なのは同じ組織の力と金の力であると思い至った。

そして今、ここで、実際に役に立っているわけである。

 

 

「優香、隠していて済まない」

 

まだポカンとしている優香に話しかける。

正直、話すのは嫌だった。

反社会的勢力であるのは間違いないし、この地位を築くまでに何人も殺してきたからだ。

これで愛想をつかされても、それは仕方のないことなのだと受け入れるしか…

 

「……え? あっ! ううん! 全然問題無いよ! たとえお兄ちゃんがどんな過去を持っていて、どんな人であろうと! 私はお兄ちゃんが大好きだもん!」

 

思わず、涙が出てきた。

あぁ、本当に、本当によかった。

この天使の様な子が、俺を受け入れてくれて本当に嬉しい。

そして、この天使の様な子が泣かずに済んだことが何よりも嬉しい……!

 

「さぁ! 社長さん、1億はこの場で用意した! 足りないというなら俺の分でもう1億あるっ! これでもう文句はないだろう!」

 

「はっ……はいっ! こ、これまでの態度、誠に申し訳ございませんでしたっ! 何卒……! 何卒命だけは……!」

 

「お前の命なんざ貰ってもいらねぇよゴミクズが」

 

「さ、家へ帰ろう、優香」

 

「表に車を停めてあるんだ、車の中で少し話そう」

 

そうして、この事件については一応の決着を見せたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇお兄ちゃん? まふぃあ? の幹部? って話なんだけど、いつの間にそんなのになってたの?」

 

「あぁ、俺が放浪の旅とか言って半年くらい家を開けた時あっただろ? あの時だよ」

 

「え!? そのあいだお兄ちゃんイタリア行ってたの!?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「えぇ〜! ずるいずるい! 私もイタリア連れてって欲しかった!」

 

「あのなぁ…… 遊びに行ったわけじゃ無いんだぞ?」

 

「でも本場のピザとか食べたんでしょ」

 

「あぁ、凄い美味かった、やっぱり本場は違うな」

 

「ず〜る〜い〜!」

 

「ははっ! すまないすまない、でも、優香も直ぐに味わえるさ」

 

「え?」

 

「俺たちの間ではカタがついたが、世間一般ではまだこの話は終わっちゃいない」

 

「そっか…… 家族にも迷惑がかかっちゃったんだね」

 

「あぁ、俺の家族はもう居ないからどうとでもなるが、優香の方はそうも行かないだろう?」

 

「だから、優香」

 

「家族揃って、しばらくイタリアに行かないか?」

 

「金とか、向こうにいる間の事とかは心配しなくていい、全部俺が面倒見てやれる」

 

「一緒に暫くヴェネツィアで優雅に暮らそう」

 

「……うんっ! うんっ! 私はもちろん行くよお兄ちゃん! お兄ちゃんの隣が私のいるところだもん!」

 

「よかった、じゃあ、おじさんとおばさんを説得するの手伝ってくれるか?」

 

「うん!」

 

「よし! さぁ、着いたな」

 

「おいっ! あんまり急いで降りるな!」

 

「お父さん! お母さん! ただいまっ! 一緒にイタリア行こーっ!」

 

 




読了お疲れ様でした!
感想お待ちしております!


あ、あとジョジョの奇妙な冒険第5部黄金の風アニメ化おめでとう!

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